獣憑きの少年も異世界に来るそうですよ?   作:モグモグラ

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第9話

細かな話は中で残った飛鳥とも聞こうと、中庭から屋敷に戻ろうとし、直感が働いた。

月琉とともに顔を動かす。三人も遅れて反応した。

遠くから褐色の光が射し込む。それが何か知っているようでレティシアが叫んだ。

「あの光‥‥ゴーゴンの威光!? まずい、見つかった!」

ゴーゴン? あの石化のか?

ともかく、あの光はやばい気配がしたので、周り、特に月琉を庇うように動こうとし、突き飛ばされた。

「!?」

「レティシア様!?」

‥‥どうやら、突き飛ばしてきたのはレティシアのようだ。

即座に起き上がり顔を上げると、褐色の光を浴びたレティシアが瞬く間に石像に変わった。

「いたぞ!吸血鬼は石化させた!すぐに捕獲しろ!」

声の方に顔を向けると、虚空から姿を表した騎士風の男達が空から大挙して押し寄せてきた。

「例の”ノーネーム”もいるようだがどうする!?」

「邪魔するようなら構わん、斬り捨てろ!」

物騒な連中だなー。まあ人を斬る気なら自分達も斬られる覚悟ぐらいはあるんだよな?( ^ω^ )

「そら‥‥。落ち着いて。」

おっと、ついうっかりイラッとしてしまった。

だが、俺よりも不機嫌なのは十六夜だ。不機嫌そうに、尚且つ獰猛に笑い、十六夜は呟いた。

「まいったな、生まれて初めておまけに扱われたぜ。手を叩いて喜べばいいのか、怒りに任せて叩き潰せばいいのか、空はどっちだと思う?」

「とりあえず斬り捨てるべきかな?」

「そんな場合じゃありません!!とにかく本拠に逃げてください!」

黒ウサギに叱られ、本拠に十六夜と一緒に引きずり込まれた。意外と力強いんだね。黒ウサギ。後、月琉は目線で引っ込むよう指示しといた。

扉の内側から外を窺うと、男達の内の三人が下に降り、石になったレティシアに縄をかけ始めた。

「これでよし‥‥‥‥危うく取り逃がすところだったな。」

「ギフトゲームを中止してまで用意した大口の取引だ。台無しになれば”サンザントアイズ”に我ら”ペルセウス”の居場所は無くなっていたぞ。」

ペルセウス? 英雄ペルセウス?

「それだけじゃない。箱庭の外とはいえ、交渉相手は一国規模のコミュニティだ。もしも奪われでもしたら―――」

「箱庭の外ですって!?」

黒ウサギの叫び声に、レティシアを運び出そうとしていた男達の手が止まった。

そしてこっちに殺気を向けてきた。たが黒ウサギはそんなことは気にせず、外に飛び出して男達に走り寄った。

「一体どういうことです!彼らヴァンパイアは―――”箱庭の騎士”は箱庭の中でしか太陽の光を受けられないのですよ!?そのヴァンパイアを箱庭の外に連れ出すなんて‥‥!」

「我らの首領が取り決めた交渉。部外者は黙っていろ。」

黒ウサギの抗議を突き放すように語り、男達は翼の生えた靴で空を舞う。

「英雄、地に堕ちるだな。」

周りを取り囲む騎士達に聞かれないように呟く。

〜キング・クリムゾン!!〜

「‥‥あれ? 何か飛んだ気がする。」

「いや何言ってんだ? これから”サンザントアイズ”に向かうとこだろ?」

? 何か、カットされた気がする‥‥。まあいいや。気にしたら負けだ。

思考を放棄し、現状を確認。月琉から経緯を聞く。

あの後、堪忍袋の緒が切れた黒ウサギが暴れそうだったのを十六夜が止めてるあいだに騎士たちが逃走。逃げた”ペルセウス”に関して知っているであろう白夜叉の元へ行こうという展開となった。行く面子は、黒ウサギ、十六夜、飛鳥に俺と月琉だ。耀とジンは留守番となった。

「こんないい星空なのに、出歩いてる奴はほとんどいないな。俺の地元なら金とれるぜ。」

「そうなのか?俺のとこはそこそこ田舎だったし、このくらいは毎晩見てたけど。」十六夜は都会の人間なのだろうか。

空を見上げてみると、確かに満天の星空だが、そこまで珍しいとは思えない。

「これだけハッキリ満月が出ているのに、星の光が霞まないなんておかしくないかしら?」

「箱庭の天幕は星の光を目視しやすいように作られてますから。」

へえー。

「そうなの?だけどそれ、なにか利点があるのかしら?」

飛鳥の問いに黒ウサギは焦るような小走りから歩幅を緩める。

「ああ、それはですね。」

「おいおいお嬢様。その質問は無粋だぜ。”夜に綺麗な星が見れますように”っていう職人の心意気が分からねえのか?」

質問に答えようとした黒ウサギを遮り、十六夜が言った。

「あら、それは素敵な心遣いね。とてもロマンがあるわ。」

「‥‥‥‥。そ、そうですね。」

黒ウサギはそう言ったが、別の理由がありそうだ。なんとなくカンで思ったことだけど。

「‥‥ねえそら。」

「なんだ?」

「あの星ってさ‥‥」

「多分そうじゃないかな。」

月琉とこそこそと話し合う。おかげでお互いに確信が持てた。

 

 

昨日とは打って変わって、あっさりと女性店員は通してくれた。

案内された離れに入る。

「うわお、ウサギじゃん!うわー実物初めて見た! 噂には聞いていたけど、本当に東側にウサギにいるなんて思わなかった! つーかミニスカにガーターソックスって随分エロいな!ねー君、うちのコミュニティに来いよ。三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ?」

入って早々、変態がいた。早速だが、斬り捨てたい。なぜなら、黒ウサギだけでなく月琉に邪な目線を向けたからだ。確かに月琉は美人の卵な容姿だけど、月琉に手を出す気なら、箱庭全部を敵に回しても構わないレベルで暴れるぞ? ‥‥おっといけない。自重自重。前に月琉絡みで揉め事起こして、シスコン呼ばわりされてたし、またやらかすところだった。

全身を舐め回すように視姦された黒ウサギは、足を両手で隠し、飛鳥が壁になるように黒ウサギの前に出た。

俺は月琉を守るように後ろに隠す。

「そら。怒っちゃダメだよ?」

「‥‥大丈夫だ。」今はまだ。

一応、《焔》と《凍土》を出せるようにはしておく。

「これはまた‥‥分かりやすい外道ね。先に断っておくけど、この美脚は私達のものよ。」

「そうですそうです! 黒ウサギの脚は、って違いますよ飛鳥さん!!」

ナイスツッコミ。

「そうだぜお嬢様。この美脚は既に俺の物だ。」

「そうですそうですこの脚はもう黙らっしゃい!!!」

「‥‥全く、この美脚が欲しいなら相応の額が必要だな。」

ため息混じりに言う。

「よかろう、ならば黒ウサギの脚を言い値で」

「売・り・ま・せ・ん! あーもう、真面目なお話をしに来たんですからいい加減にして下さい!空さんも乗らなくていいです!黒ウサギも本気で起こりますよ!!」

「馬鹿だな。起こらせてんだよ。」

十六夜の一言で、黒ウサギのハリセンが一閃。俺は躱すけど。

即興漫才(違うけど)について行けず、唖然としていた変態(ルイオスだっけ?)は唐突に笑い出した。

「あっはははははは! え、何? ”ノーネーム”っていう芸人コミュニティなの君ら。もしそうならまとめて”ペルセウス”に来いってマジで。道楽に好きなだけ金かけるのが性分だからね。生涯面倒見るよ? 勿論、その美脚は僕のベッドで毎夜毎晩好きなだけ開かせてもらうけど。」

「お断りでごさいます。黒ウサギは礼節も知らぬ殿方に肌を見せるつもりはありません。」

嫌悪感を吐き捨てるよう、黒ウサギは言った。

「えー? それって見せるようじゃないの?」

うん、俺もそう思ってた。

「へえ? 違うのか?」

十六夜もか。

「ち、違いますよ!これは白夜叉様が開催するゲームの審判をさせてもらう時、この格好を常備すれば賃金を三割増にすると言われ嫌々‥‥」

なる。つまり白夜叉の趣味と。

「ふぅん? 嫌々そんな服を着せられてたのかよ。‥‥おい白夜叉」

「なんだ小僧」

キッと白夜叉を睨む十六夜。白夜叉も負けじとにらみ返す。そして同時に右手を掲げ、

「超グッジョブ」

「うむ」

互いにサムズアップをしあう。仲いいなこの二人。

ガクリと項垂れた黒ウサギを哀れに思ったのか、店員が助け舟を出した。

仕切り直しとして客間に移動することとなった。




あれ? 空ってシスコ‥‥うわ、何をするっ!
〜作者は(現世から)ログアウトしました〜
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