東方狂界歴   作:シルヴィ

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さて、今回でやっと戦闘が終わります。何故か一話どころか三話分の量と同じくらいに(28000文字超えました)なりましたが、分割せずにお送りさせていただきます。
理由としては二つ。単純に分割できないのと、次回で終わらせると言ったからです。
代わりにと言っては何ですが、真に勝手ながら、次回のお話は5/17日に投稿しますので、ご了承ください。


暴走を止める為に

 地底の底から戻ってきたシオンは、レミリアたちが構えたのを見ると、ほんの少しだけ足に力を込める。

 それに全員が警戒を強めたと同時に――重力の力を操り、縮地を利用して、最も遠く、そして全員に守られる存在であるパチェリーの目の前に移動した。

 「え……?」

 先程とは違う静かな攻撃に、誰も反応できなかった。

 ゆっくりと、それほど急ぐまでもないと言わんばかりに、爪がある右手の掌の部分をパチェリーの顔に向けた。

 そして、パァン!! という、何かが破裂するかのような音を立てて、パチェリーの体が吹き飛んだ。

 「パチェ!!!」

 後ろに振り向いたレミリアの目に映ったのは、顔面が破裂したようになっているパチェリーの姿だった。

 「……ッ!」

 息を呑みながらもレミリアは自身を恥じた。油断しすぎていた、と。

 シオンが掌を向けた時。あの瞬間、シオンは掌の重力をかなりの割合で操作したのだ。突如変化した重力によって急激に気圧が変化し、その結果として生まれた圧力による爆発によって頭が破裂したのだ。

 本来ならば急激に圧力を増減させるには一定の条件が必要なのだが、シオンはそれを重力操作で無理矢理な代替行為として行っていた。

 だがやはり理性が無い状態での力技――演算による制御が全くできていないせいか、極小規模だった一撃ではパチェリーの命を刈り取ることができなかった。

 しかしそんなことはレミリアには理解できない。レミリアにわかったのは、シオンの今の攻撃の威力が、あと少しでも高ければ、パチェリーがどうなっていたのか、それだけだ。

 「シオン!!!」

 自らの親友を殺されかけ、激情に心を支配されたレミリアは後先考えずに特攻する。それがどれほど危険で、隙を生む行為なのかを理解していながら、それでもなお。

 「あああああああああああああああああああ!!!!」

 サポートぐらいの妖力ぐらいしか使わずに長時間の戦闘をしていたとはいえ、それでもレミリアの力はあがっていた。

 『怒り』という単純故に強大な感情は、時に自身が出せる全力を遥かに上回る力が出る。しかしそのせいで攻撃は単調になりやすく、そして目の前にいる獣は、それを嗅ぎ取りって隙を見つけるのが、何よりも上手かった。

 レミリアの大振りすぎる連撃を易々と避けながら、バレないようにしながらもシオンは重力の球体を周囲に配置していく。

 「お嬢様、後ろです!」

 美鈴が叫ぶも、それは遅すぎた。

 「ッグ……!?」

 超高密度の重力の塊をぶつけられたレミリア。その威力は、まるで腹を抉られるような痛みだった。いや、違う。実際に()()()()()()

 「こん、なの……!」

 戦慄く唇から血が零れ落ちる。それを拭う前にまたも重力球が飛んで来た。

 翼をはばたかせて避け、それ以上の追撃を受けるのを避けるも、思いっきり抉られている脇腹の痛みが酷すぎる。しかも余り回復してくれない。おそらく神気にやられている。

 「フランに忠告した、私がこんなんじゃ、世話無いわね」

 大きく息切れしながらもフランたちのいるところに戻ったレミリア。同時にグングニルを力の限りに放り投げ、グングニルに宿るほんの微かな加護と運命を操る能力を使って、シオンに無理矢理ぶちあてる。

 避けられないと悟ったシオンは爪で受け止めるが、グングニルに込められた膨大な妖力に気付いた。即座にグングニルを地面に向かって逸らし、そのまま後方に跳んだ。

 瞬間、ドガァァ!! という轟音が周囲に響く。グングニルが爆発したのだ。

 シオンはグングニルが爆発する前に空中に逃れることで熱や爆風を喰らわないようにしたのだ。しかしその結果、踏ん張りの利かない空中にいたせいで、かなりの距離を吹き飛ばされてしまった。

 「お姉様!」

 「ごめんなさい、神気を飛ばすために、少し時間をちょうだい」

 そう言ってすぐさま体の内部に侵入した神気を消し飛ばす準備をする。フランの心配そうな声すら無視しているのを見るに、余程看過しえないほどのものなのだろう。

 それはフランにもわかる。しかし、それ以上に嫌な思いがあった。

 (嫌だよ……シオンとお姉様が殺し合うなんて……)

 大切な人間(シオン)と、ただ一人しかいない大好きな(レミリア)。その二人が殺し合う姿を、フランは見たくなかった。

 (でも、でもどうすればいいの!?)

 パチェリーはやられ、レミリアも動けない。フランと美鈴と咲夜は病み上がりか怪我を負ったせいで戦うのがきつい。

 対して、シオンの方はほぼ万全の状態だと言ってもいい。激情に駆られて戦っているわけでもなく――憎悪という激情に駆られてはいるが、そもそも獣には理性が無いため、あまり関係が無い――能力を無作為に使っている訳でもない。妖怪すら超える強大な身体能力と、汎用性が高く、一撃一撃の威力も重い重力制御本来の力を取り戻している今、シオンとまともに戦うのは不可能に近い。というより、瞬殺されるのが目に見えている。

 最悪だった。何もできずに、全員殺される。そんな光景が目に見えるようだった。

 「どうしよう……どうしよう、美鈴、咲夜」

 子供のようにオロオロとするフラン。違う、実際に子供なのだ。五〇〇歳に近いとは言っても、フランの精神年齢は一〇歳程度の子供となんら変わらない。

 レミリアのように外に出ず、外部からの刺激を与えられなかったフランの心は、強制的に閉じ込められたあの時から一切成長していないのだ。

 それゆえに、一度でもそのメッキを剥がしてしまえば、小さく震える幼子の姿に戻ってしまう。最初にシオンと戦えたのは激情に駆られていたためで、今回は『シオンを助けたい』という思いがあったからこそ戦えたのだ。もう無理だとフランが思ってしまえば、戦うための意思が燃え尽きてしまう。

 美鈴にはそれがよくわかる。如何に強大な力を持っていたとしても、それを扱う方の心が折れていれば意味が無いと。

 例えば強盗か何かに襲われたある人間が拳銃を持っていたとして。それが撃てば必ず当たるような状況で、そして自分たちが助かるとしても。撃った相手が死ぬとわかっていてなお、それを撃つことができるのだろうか? 

 答えは無理だ。大抵の人間は相手を死なせるのに恐怖を感じ、躊躇い、そのまま折れてしまう。

 今のフランも同じだ。フランの能力である、『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』を腕輪を外して使えば、今すぐにでもシオンを殺せる。

 しょせんシオンも生きている『物質』であるのに変わりはない。その命を散らすのは、フランにとって赤子の手を捻るよりも楽だった。

 だができない。なまじ一度『助ける』と決めてしまったせいで、『殺す』という選択肢を選ぶことができないのだ。

 それ以前に、自分にとってとても大切な相手を殺すことなどできないだろう。もしできるとするならば、そいつは余程無感情な人間か、あるいはもうどうしようもなくなった時か。あるいは元からそういう人間なのか。とにかくまともな状況で、まともな者がやるのは無理だ。例え極限状態であっても、できないことが多いのだから。

 「……フラン様は、下がっていてください」

 「そうですね。その方が安全です」

 「え? 二人とも、何をするの!? まさか……ダメ、私も戦う!」

 二人の思惑が読める。おそらく、もう二人は決めてしまったのだ。フランたちの手を借りずに、自分たちだけで終わらせようと。

 「それではフラン様は戦えるのですか? 今のシオンと。殺すかもしれないのに」

 「――――それ、は……」

 フランは答えられなかった。ただ顔を俯かせて、手を握り締めながら自分を責めることだけしか。どうしてこんなに弱いのか、どうしてこんなに情けないのか。そんな風に自身を責め立てて、それでも怒りは収まらない。

 怒りに震えているフランを、美鈴は自身の子供を見るような、そんな慈愛の籠った優しい目で見ていた。

 「しかたがありませんよ。まだフラン様は戦い方を知らないが故に満足に戦えないのですから。だから、私が代わりにやります」

 「代わり? !? 美鈴、シオンを!!」

 「はい。私は、シオンを()()()()

 「まあ、かなり不本意ではありますが」

 美鈴は、戻ってきているシオンに、敵を見るような――いや、本当に敵を見ている眼でシオンを睨む。咲夜は渋面を作りながらもシオンを見ていた。

 「私が殺します。咲夜はサポートを」

 「……美鈴だけには背負わせません。隙があれば私も殺しにかかります」

 「……無理をしないでくださいね。咲夜はまだ人を殺したことがないのですから」

 咲夜の決意を貶さないように、しかしその意思を尊重する言葉を慎重に選んで言う。けれど内心では、こんな小さな子供たちばかりが不幸な目にあっているのを憤っていた。

 (子供は……無邪気に笑って、楽しく過ごすモノですのに)

 美鈴は旅をしている間に、そういった子供をよく見ていた。その嬉しそうな、楽しそうな笑顔が、美鈴は好きだった。

 ここにはそれがない。しかも、これからさらに自分がフランやシオンの笑顔を奪うことになるのを考えると、美鈴の心はどんどん沈んでいった。

 だがそれを押し殺す。心を殺して、ただ相手を殺す殺戮兵器のように。

 「行きますよ、咲夜」

 「は、ハイ!?」

 余りにも凍りつきすぎている美鈴の声音に、咲夜は裏返った声を返してしまう。それほどまでに凍てついていたのだ、その声は。

 美鈴は先程の爆心地に跳び下りてきたシオンの元へと走る。途中で美鈴の接近に気付いたシオンが重力球で応戦するが、それらを全て回避しながらそのまま突き進む。

 点の攻撃では当てられないと悟ったシオンは、左手に黒色を宿し始める。

 それが臨界点に達すると、左手の腕を鞭のようにしならせて放つ。その左手から黒い線状のようなモノが現れた。おそらく、点の攻撃では無く線の攻撃をするつもりなのだろう。

 「甘いですよ!」

 鞭やそれに似たようなモノを使う相手を幾度も相手にしてきた美鈴にとって、この程度の攻撃は簡単に避けられる。さらに言えば、シオンは鞭は得意では無いらしい。そんな相手が適当に振り回している攻撃など当たるはずも無かった。

 腕の動きに注視し、鞭が動く方向を見切る。ある程度まで接近すると、シオンがいきなり鞭を爆散させる。四方八方に飛び散った小さな黒い塊。

 「本当の狙いは、まさか!?」

 ある程度まで接近させて、弾丸のように塊を放つこと。

 流石の美鈴も、これほどの膨大な数を捌くのは不可能だ。

 「私一人なら、ですが。咲夜!」

 「わかっています」

 そう言うと同時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()前に出て、時間加速を使う。ほんの少しだけできた時間で魔力で作った大量のナイフを前方に設置した。

 それと同時に加速を解く。もうかなりの魔力を消費したからこそ、これ以上の消費を避けるためにやめたのだ。

 元の速度に戻った時間。動きが遅くなっていた球体はその速さを取り戻し、美鈴たちを襲い始める。しかし、その間に挟まっていた大量のナイフが盾となる。

 球体はナイフを穿ち、抉る。それでもナイフの盾は全てを防ぎ切った。

 「美鈴!」

 「防御、ありがとうございます!」

 咲夜の背中から跳び出した美鈴がシオンの元へと迫る。ここまで完全に防がれるとは思っていなかったのか、シオンの顔がピクリとするが、防ぐところまでは想像できていたらしく、すぐさま走り出す。

 人間の時と同じく、上体をほとんど倒した動きだ。しかし極たまに爪で地面を触っているのを見るに、重過ぎる左半身の制御が面倒らしい。傍から見ると、ほぼ完全に四つん這いで走る獣のような姿だ。

 「ですが、その走り方は不安定すぎます」

 氣を込めた足を振り上げ、振り下ろす。地面が爆発し、轟音を立てた。唐突に起きた大きな揺れに、シオンは手足の爪を地面に突き刺して堪える。

 通常の震脚とは違い、この震脚は足に込めた氣を地中で爆発させることで、二重の揺れを引き起こす。シオンならば慣れればその類稀なバランス感覚で当たり前のように移動できるだろうが、現状ではそれはできない。

 つまり、今のシオンは今までにないくらい無防備だ。そして、その隙を逃すようなバカはこの場にいない。

 「……ごめんなさい」

 縮地で四つん這いになっているシオンの目の前に移動する。人影に反応したシオンが顔を上げた瞬間、美鈴の膝が顎にぶち当たり、体がふわりと浮かび上がる。

 「!?」

 目を剥いて驚くシオン。それも当然、現在シオンの体重は測定不可能なほどに重い。それを顎を蹴り上げて浮かすなど、どれほどの難行か。

 「別に不思議なことでもありませんよ? どれだけ重かろうと、要はやり方次第です」

 丁寧にも解説をした美鈴は、未だに浮かんでいるシオンの()()()()()()()()。そのまま腕に力を込め、ほんの少し突き出した。

 「寸勁」

 小さく呟く。動作を限りなく小さくし、それでいて高い威力を出す技。そこに、もう一つの技を付け加える。

 「ガ……!?」

 ()()()()()()。鱗に覆われた部分を突き抜け、生身の部分を貫通してきたのだ。

 「わかりやすい言葉で言うのなら、『鎧通し』とでも言えばいいのでしょうか? 如何に強靭な鱗と言っても、しょせんはそれを着ているだけ。鎧のようなモノです。中身も龍そのものになっていないのであれば、これくらいはできますよ」

 コレが美鈴の技術。震脚も鎧通しも、学べば程度の差はあれいつかは使えるようになれる基本的な技。だが、それを極限までに追求した結果、美鈴はそれらをとてつもない練度で扱えるようになっていた。

 「基本に忠実。……私の好きな言葉です」

 基礎だからこそ疎かにするのではなく、基礎を極めてこそ他の技が輝く。それが美鈴の考えだ。

 美鈴は鎧通しで瞬間的に肺を圧迫されたせいで嘔吐いているシオンを鎧通しで殴る。

 「貴方にはそれが抜け落ちています。そうしなければ生き残れなかった状況にあったとしても、やはり限界はある」

 無意味だとわかっていても、やはり言いたかった。おそらくは誰にも教わらずに身に着けたであろう技術を、あそこまでの練度に昇華させたシオンの才能は凄まじい。戦闘を生業にしている存在からすれば、喉から手が出るほどに欲しいモノなのだから。

 「もしもシオンがしかるべき場所で、しかるべき師に出会えていれば……歴史に名を残すほどの達人になれたのかもしれません」

 もう、その可能性はありませんが、そう思いながらも美鈴は殴る。

 殴られつつもシオンも行動する。体をズラして打点と衝撃を逃すように移動していく。それでも美鈴の攻撃は重過ぎた。

 「ガアアアアァァァッッ!!」

 足の爪を上げ、下ろす。地面に抉り込ませた足に力を込めて、またも鎧通しを使ってきた美鈴の攻撃をあえて受け止める。

 「!?」

 いきなり避けるのを止めたのに驚きはした美鈴だが、それでも攻撃は止めない。だが、すぐにそれを後悔することになる。

 シオンは美鈴が殴って来る前に口を開ける。口腔の奥から、何かチロリと暗く光る『何か』が見えた。それを見て、シオンが何をしたいのかを悟った。

 むしろ使わない方がおかしいのだ。龍が使う代表的とも言える技を。

 「まさか――」

 わかってももう遅い。この至近距離、しかも攻撃している途中では避けられない。

 「――ブレス!?」

 避けられないならばせめてガードをしようと、左手で頭を、右手で心臓や腹の前に置く。そしてほんの少しの小細工をした瞬間、黒い閃光が見えた。

 「美鈴!!」

 ブレスによって吹き飛ばされた咲夜に近寄る。しかし、すぐに息を呑んだ。

 「そん、な……」

 顔や心臓、腹といった急所は手でガードしていたからか、ほぼ無傷だった。おそらくは氣による強化でなんとかなったのだろう。実際、美鈴が氣のオーラを手足に集中させてブレスの一部を受け流さなければ、全身が吹き飛んでいた。それでも酷い有様だ。

 肉が吹き飛び、骨が剥き出しになっている。しかも神気によって再生能力がほとんど封じられてしまっているのだ。

 美鈴が少しだけとはいえ回復できていたのは、妖怪としての位があまり高くないのと、氣と妖力の併用によって回復速度を増加していたからだ。それに加えて、受けた神気の量が少ないのも理由の一端だろう。

 だが今回はそれができない。気絶してしまっている美鈴は、妖怪として自動的に発動する再生能力しか頼るものが無い。しかも受けた神気の量は莫大だ。このままでは、死ぬ。

 「どう、すれば……」

 もう、本当に全滅寸前だ。今ならまだ咲夜が全力を出せば逃げられるだろう。シオンには停止の影響が無いため停止は使えないが、加速があればそれくらいは可能だ。

 しかも今のシオンは鎧通しを喰らった影響か、手で胸を抑え付けている。鎧通しとは体の外でなく内に響く技だ。それに加えてあのブレス。シオンの体内が人間であるのに変わりが無いのを考えると、おそらく内臓がやられているのだろう。

 それでもあと数分――あるいは十分程度くらいだ。

 「ですが、無理です」

 全員を連れて何とか逃げたところで、傷を癒したシオンに追いかけられれば、やはりどこかで終わってしまう。終わりのない追いかけっこ……それも生きるか死ぬかを賭けてやるものなど、誰もやりたいとは思わない。

 ならばどうするか。

 答えは――出なかった。

 「もう……何も……」

 顔を俯かせて諦めかけた咲夜に、あの声が聞こえた。

 「諦めるの? まだやれることはあるでしょう?」

 「――! お、お嬢様!?」

 顔を上げた咲夜の眼に映ったのは、いつも通り優雅に振る舞うレミリアと、その横でどこか面倒くさそうにしているパチェリーだった。

 「さて、この状況、どうしたらいいと思うかしら? ねえ、パチェ?」

 「さぁ? とりあえず今言えるのは、さっさと終わらせないと美鈴が死ぬかもしれないってことだけね」

 やはりいつも通りの現実主義者(リアリスト)の言葉。

 「お嬢様はともかくとして、何故パチェリー様が……?」

 あの時確かにパチェリーの顔は破裂していた。あの傷では、ここまで早く動けるようになるはずがない。

 「私の研究の成果が一つ役立った……そんなところかしら」

 「え?」

 実は、パチェリーの手の中には、燃え尽きかけた紙が一枚入っている。

 顔が破裂させられたあの瞬間、パチェリーはそのまま気絶しかけた。しかし気絶するその寸前、一応念のためにと持ってきていた紙に書かれた術式――回復魔法の類のモノを発動させたのだ。

 (ぶっつけ本番だったけれど、意外と上手く行くものね)

 何の実験もせずにやった術式。下手をすれば回復するどころか即死していたが、それでも使うしかなかった。

 何もせずに死ぬか、何かして死ぬか。どこまで行っても現実主義なパチェリーは、まだ可能性のある後者を選択したのだ。結果、賭けに勝った。

 もう一度やりたいとは思わないけれど、と思ってはいたが。

 「パチェ、何かこの状況を打開できるものはある?」

 「無理ね。どの道私にできることは少ないわ。魔法を使うには時間がかかりすぎるし」

 「……なら、最後の手段を使うしかないわね」

 「切り札でもあるの?」

 訝しげに問うパチェリー。実際、レミリアがそんな切り札を聞いたことが無かった。だからこその疑問。

 「ええ、あるわよ。本当に本当の最後の手段……『()()()()()()()()()()()()()()、ということを」

 「は……? ま、待ちなさいレミィ! 貴方、死にたいの!? 本物を降ろすなんてことをすれば、どうなるのかなんてわかっているでしょう!!?」

 パチェリーの言葉は大げさなモノではない。本当に、死ぬのだ。人間ではなく吸血鬼であるレミリアでも、一瞬で。いや、吸血鬼だからこそ、相性が悪いのかもしれない。

 レミリアやフランが聖なる武器を扱えるのは、自前の妖力で形成しているからだ。その過程が無ければ、使っている途中に聖なる力に当てられて死ぬ。

 それが本体。洒落になっていなかった。

 「問題は無いわ。降ろしたとしても使うのは一瞬。ただ投げるだけよ。グングニルは()()()()()()。それを使って、シオンの命を刈り取るの」

 「本物を、どうやって召喚するというの? 何の前準備も無しに降ろすことなんて、いくらなんでも不可能よ」

 どんな物でも、前準備は必要だ。氣は膨大な体力を、魔法は魔力と詠唱を必要とするように、神器を召喚するには特殊な術式と、供物とも呼ぶべき媒体が必要となる。

 だが、今回に関してだけは例外だった。

 「『スピア・ザ・グングニル』があれば召喚するための媒体としては十分だわ」

 そう、レミリアには贋作ではあっても、グングニルの力の一端を持つ槍がある。コレを足掛かりにすれば、本体を降ろせるはずだ。

 「……仮に召喚できたとして、投げるまでの時間はどうするつもり? 降ろすのにもかなりの妖力を使うはずよ。投げている途中に……いえ、それ以前の問題として、投げる前から死んでは笑い話にもならないわ」

 「……ねえ、パチェ」

 「何かしら?」

 パチェリーの質問にはあえて答えない。少し苛立った様子のパチェリーに、レミリアは苦笑いを返した。

 「力の無い人間がよく使うものって、何だと思う?」

 「話しを逸らさないで。それが何だと……。!? レミィ、つまり貴方は……!!」

 「そう。寿()()()使()()()

 人間ならば命そのものを捧げるだろうが、幸か不幸かレミリアは吸血鬼だ。不老に近い寿命の大部分を投げ捨てれば、グングニルそのものを降ろすのには十分だ。

 「そんなことをすればどうなるのか……。神器を降ろすためには、レミィの寿命が残り()()()()()()()()

 パチェリーの知っている中で妖怪の最大年齢は約一七〇万年ほど。現在レミリアの年齢は大体五〇〇だ。文字通り桁が違う。それが残り数百年。最大でも一〇〇〇年しか生きられない計算になってしまう。

 おそらくレミリアは寿命の大部分を降ろすのに使い、聖なる力を残った妖力全てを使って防ぐつもりなのだろう。確かにコレならば誰も死なずにシオンを殺せる。

 レミリアの命を代償とした攻撃。確かに人間らしい戦い方だ。どうにもならない状況に陥った人間は、自らの命を懸けるしかないのだから。

 「……神獣を殺すには、神器が一番効果的だとは思うけど」

 神器も神獣も、どちらも神の力を宿したモノ。だが力の配分で言えばやはり神器の方が上回る。当たり前と言えば当たり前だ。神自らが使う武器を、何故僕よりも弱くしなければならないのか。

 「でも、私は認められないわ。親友の命を削ってまで生き延びるほど、私は腐っていないから」

 「パチェ……」

  珍しく親友と言い切ったパチェリーに驚く。けれど、今の言葉で決まってしまった。レミリアがどういう選択を取るのかが。

 「なら、私も言わせてもらうわ。自分の親友が目の前で死ぬかもしれないとわかっているのに、何もしないはずがないでしょう?」

 右手を空に上げる。その手に、妖怪にとって嫌悪すべき気配が集まってきていた。

 「レミィ、やめなさい! ……お願いだから、やめて!」

 パチェリーらしからぬ懇願の声。それでもレミリアはやめない。その時、集まっていた嫌な気配が消し飛んだ。

 「!?」

 レミリアが咄嗟に周囲を見渡すと、こちらに手を向けていたフランの姿があった。

 「まさか……破壊したの? 能力で?」

 フランの手首を見ると、白銀のブレスレットが外されていた。『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』を使って、レミリアが集めていたグングニルを降ろすための力を根こそぎ破壊しつくしたのだろう。

 「……何故……?」

 まさかフランに邪魔をされるとは思ってもいなかったのか、レミリアの声は震えていた。

 「グングニルを降ろさなければ、私たちは全員死ぬのよ? それなのに?」

 「それでも……私は、シオンを助けたい」

 「だから、それが無理だと言っているのよ! 私たちが殺されるか、私たちがシオンを殺すか、その二つしかないの!」

 「でも、でも……! まだ全部の情報を出しきったわけじゃない! だから、もう少しだけでいいから、だから……!」

 「ダメよ、そんな時間は無いわ。シオンが傷ついている今がチャンスなの。これ以上の時間が経てばまたシオンが私たちを殺しに来る。そうなったら、今度こそ全滅よ」

 「どうしてなの!? お姉様は、自分が助かりたいからシオンを殺すの!?」

 涙を流して叫ぶフラン。それでもレミリアは受け入れるわけにはいかなかった。

 「――貴方たちを殺されるわけには、いかないのよ」

 「……え?」

 予想外の言葉。だがパチェリーはそれを予期していた。わからないはずがない。自らの親友なのだから。

 「私は紅魔館の主で、主とは従者を守る責務があるの。それに――家族を守りたいと思うのは、至極当然の感情でしょう? できるのなら、私だってシオンを殺したくないわ。でも、シオンと私の家族、どちらかを選べと言われたなら、私は迷わず家族を選ぶわ。多分シオンも、それを受け入れてくれるはずよ」

 どこか疲れたように、けれど心の奥底で思っていたこと言う。

 「フラン……諦めなさい」

 「パチェリー!?」

 親友であるはずのパチェリーからのお願い。それは、フランにとって予想外もいいところだった。

 パチェリーの言葉は確かに辛辣で、歯に物着せる言い方を知らないようにズケズケと言ってくる。しかし本心では、レミリアたちのことが大切だからそうしているだ。

 本当にどうでもいいのなら、そもそも話しをしてくれるはずがない。それがパチェリー・ノーレッジという少女なのだ。

 「……そもそも、本当に自分が助かりたいのなら、無理矢理にでもフランに力を使わせればいいのよ。それなのに自分の手でケリをつけようとしてる。寿命を減らしてまで、ね。その理由が、貴方にはわかるのかしら?」

 「え……? ……わ、わかんない。わかんないよ」

 「でしょうね。……答えは、貴方のためよ」

 「私? どうして?」

 「少し考えればわかることよ。貴方はシオンを殺したくない。でも殺さなければ私たちが殺される。だけど無理にでも殺させれば心が壊れてしまう。だったら、恨まれるとわかっていても、レミィ自身の手で殺すしかないのよ」

 それが真実。結局のところ、レミリアはどこまでいってもフランたちのためだけに行動しているのだ。その果てに自分の死期を早めることになろうと、フランたちの命や心には変えられないのだから、と。

 (そんな……そんなのって、無いよ……!)

 本当にレミリアが自分のためだけに行動しているのであれば、逆恨みだとわかっていても恨むことができた。だが、できない。フランたちのために命を懸けているレミリアを、恨むことなどできるはずがない。

 (どうして……どうしてシオンは暴走したの……? シオンが暴走しなければ、こんなことにはならなかったのに!)

 行き場のない感情が、遂にシオンの元へと行きそうになる。それは筋違いだ。シオンは自分を殺して欲しいと言っていたのだから。

 しかし、同時に思い出す。あの時シオンが言っていた言葉を。

 (シオンは……『もう抑えられない』、そう言ってた……)

 まるで、本来なら抑えられたはずという言葉。そこから更に、シオンが最初に暴走した時に戦っていた途中で感じたことを思い出す。

 (暴走してしまったのには、何か他の部分に理由があるはず……)

 けれど外見には何かおかしな部分が存在しない。

 (外側なら? じゃあ、()()()()()……?)

 そこまで思い至って、パチェリーなら知っているかもしれないと思う。何故なら、シオンが激情に駆られたフランと戦い終えて治療した時、シオンの体の中身を診ているからだ。

 「待って、お姉様!」

 「フラン……もう諦めて」

 駄々っ子を諌めるように言う。しかし、フランは別の考えを持っているのだ。

 「違うの! パチェリーに一つだけでいいからお願いしたいことがあるの! シオンの体の中身を調べて、今すぐに!」

 今までの、ただ感情を発散する叫びとは違い、きちんとした指針がある内容。流石に無視できなかったレミリアは、フランと目線を合わせる。

 「何か、わかったことでもあるのかしら?」

 「うん。シオンは精神力が強い。それはこの場にいる皆がわかってることだと思う。そんなシオンでも抑えきれない感情なら、何か理由があるはずなの。例えば……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、とか」

 「「――!!」」

 レミリアとパチェリーが息を呑む。今の今まで思いも至らなかった可能性。

 「待って。パチェリー、その可能性は?」

 「……確実とは言えないけれど、確かに……。いえ、()()

 断言するパチェリー。額に指を当て、何かを思い出すようにグリグリと押し付ける。

 「確か……そう、シオンが目を覚ます寸前。あの時、私はシオンの体の中に何かがある、そう感じたわ」

 「!! なら、シオンがああなってるのには、理由があるんだよね!?」

 「多分、そうなるわ」

 「なら、そういった特殊な理由があるのであれば、それを破壊すれば元に戻る、と考えるのが妥当よね?」

 「あくまでも可能性よ。私の勘違いかもしれないし」

 逸る二人を諌める。しかし、パチェリーの言葉も少し弾んでいた。知らずして心が高ぶっているのかもしれない。

 「それにそれがわかったとしても、調べる間の時間稼ぎ、発見の仕方と壊す方法、そして壊す段階になってからの戦闘。コレだけの数があるわ。どうやってこなすと言うの?」

 「――方法なら、ありますよ」

 「な、美鈴!?」

 今まで美鈴を看ていた咲夜が驚愕の叫び声をだす。それに反応して、三人もそちらの方を見た。

 「え……」

 「嘘、どうやって……」

 「美鈴、スゴーい……」

 あそこまでズタボロになっていた体が、完璧に復元されている。だが真に驚愕すべきはそこではない。神気を喰らい、気絶していてなお完治させた部分に驚愕すべきだ。

 「私もパチェリー様と同じく、保険をかけておいた、ということですよ」

 「保険?」

 眉を寄せるパチェリーに、立ち上がった美鈴が頷く。

 「氣を使った過剰回復。体の中にある体力、生命力を極限まで振り絞ることで体内の氣を強制的に活性化させ、それら全てを細胞の回復に使うのです。軽傷で使えば逆に体が損傷してしまいますが、先程のような状況では重宝します。まあ、代わりに氣が全く使えなくなりますが」

 そして、美鈴は珍しく……そう、本当に珍しく、妖力をその身に宿す。

 「鍛錬のためにもできる限り妖力は使いたくないのですが、お嬢様たちのためです、目を瞑りましょう」

 クスリと笑いながら手首と足首を曲げる。

 「と、言うわけで、時間稼ぎと壊す段階の戦闘は私がやります。残り少ない氣と有り余っている妖力を併用すれば、もう一度くらいであれば過剰回復は使えますので、あまり心配はいりません」

 「なら、私も戦います」

 咲夜は服に付いた土や埃をはたきながら立ち上がる。しかし、すぐに美鈴に止められた。

 「いえ、咲夜は壊す段階に備えて魔力を蓄えておいてください」

 「それは、どういう……?」

 「体の内部にあるというのであれば、おそらく内臓……私の勘ですが、脳にある可能性が高いのです。そしてそんな場所にあるモノを壊すのであれば、方法はたった一つだけしかありません。そう、フラン様の能力だけ。」

 「確かに、その可能性が高いわ」

 「パチェ? それはあの時診て知ったこと?」

 「ええ、それもあるわ。けど大前提として、心を操るのなら、体を動かす脳に取り付けた方が効率がいい、というのもあるの」

 「そして本当にそれがあるのなら、確かにフランの能力でしか不可能ね」

 「そういうことです。私たちの能力は、その一部分だけに作用させる、といった精密作業は得意ではありません。というか、そういったのはシオンの領分なのですが……」

 暴走している本人にやれるわけがない。逆にやれたら恐ろしいくらいだ。

 「フラン様、やれますか?」

 「うん、多分。違う、やる! 私が壊して、シオンを助ける!」

 「……いい返事です。ああ、それと一つ。咲夜の空間歪曲は、使い方次第で強力な力を発揮します。後は自分で考えてくださいね。それでは、行ってきます!」

 「美鈴、待って下さい! 今の言葉の意味を――!」

 戦闘狂としての本能が若干ながら出てきたのか、武者震いをしながら再度シオンの元へと突っ込んでいく美鈴。

 咲夜は無視されたことすら忘れて、今の言葉の意味を考え始めた。

 その姿を呆れながら見つつも、パチェリーは魔法を発動させるために詠唱を開始する。

 それと並行して言った。

 「触診しながらじゃないから、別の魔法と同時に使うわ。少し時間がかかるから、その間は守ってちょうだい」

 「言われるまでもないわ。フラン、咲夜、パチェリーの前に立って。こちらがやっていることを少しでも知られたら、多分終わりよ」

 コクリと頷いた二人はパチェリーの前に立つ。

 「……美鈴ばかりに苦労をかけるわね」

 三人がいる場所からはレミリアの表情が見えないが、苦渋に塗れているのであろうことは想像できた。

 だが大なり小なりの差はあれど、三人も同じ気持ちだった。この場にいる全員の中で最も年長であることも相まって、知らず知らずの内に美鈴を頼っていた。

 フランは五〇〇年近く前に、それも少しだけしか話したことは無いが、それでも当時の印象は深く残っている。温かく包み込んでくれるような、そんな優しさを。

 だが――

 「まだ甘いです! やるのならもう少し踏み込んでください」

 楽しそうに嬉々としながら戦っている様子を見ると、余り心配する気が無くなってきてしまうのは何故だろうか、そんなことを思ってしまう。美鈴の印象が一八〇度狂ってしまうような気分だった。

 元々戦闘に関してかなりの執着を持っていたのを知っているレミリアとパチェリーは余り動じていないが、逆に知らないフランと咲夜は固まっていた。

 「アレが……美鈴?」

 「私に優しく戦い方を教えてくれた姿は、いずこに……」

 「本当はあの姿が本来の姿なのだけど。ね、パチェ」

 「まあ、そうね。本人も自覚していたようだから、普段は抑えていたのだけれど」

 一度爆発すればご覧の有様だった。笑えない話である。

 「けど、今の状況ではそれがありがたいわ。むしろ恐れて威圧されるよりはマシよ。そう、マシなのよ……マシ、なのよね?」

 自分に言い聞かせるように何度も呟くレミリア。その眼は、少しだけ遠くを見ていた。

 それから数十秒後、パチェリーが()()()()()()()()特殊な術式を発動させる。

 「さて、と……。美鈴、余りシオンを動かさないで! 座標がズレると、またやり直しになってしまうから!」

 「了解です!」

 叫び返しつつ美鈴はシオンの胸元に抱き着く。そして両手を背中に回して押し倒した。

 「グゥル!?」

 鎧通しをほぼ使わずに戦っていたとはいえ、それでもある程度離れて戦っていた状況でのいきなりの急接近。シオンの持つ技術のいくつかを使えない現状、その前動作が見れなかったのは大きかった。

 「ハッ!」

 蛇のように自身の体を巻き付かせる。シオンは何とか体を動かそうとするが、全く動いてくれなかった。

 「仰向けの状態で手足を動かなくして口を閉じさせれば、もう何もできませんよ。頼みの綱の尻尾も、シオンの体に押し潰されていますし」

 そう、なまじ体が重すぎるせいで、尻尾が動かせない。しかも最悪なことに、押したおされる寸前に美鈴が足が傷つくのも厭わずに尻尾を巻き取ったせいで、地面に突き刺すのも不可能になっていた。

 まるで曲芸のような一瞬の早業。

 「流石ね、美鈴!」

 パチェリーは即座に魔法を発動させた。シオンの体――特に今一番怪しいと思われる脳を中心として魔法を発動させる。

 「足、胴体、胸、手、異常無し」

 首から下に関しては大雑把に調べる。そして肝心の頭を調べ始めた。

 「……無い……ここにも……コレ? 違う。シオンの頭は一体どうなっているの? 普通の人間よりも複雑すぎるのだけれど。……! 見つけた!」

 途中で愚痴を零し、汗を流しながらも発見する。

 「美鈴、もういいわ!」

 「そう、ですか! なら、コレでも喰らってくださいな!」

 手足を絡み付かせているせいで美鈴も動けないが、唯一動かせる場所はある。それは頭であり、美鈴がしたのは頭をぶつけること――いわゆる頭突きである。

 「~~~~~~~!!!!」

 が、流石にシオンの頭は固すぎるらしく、美鈴の方が軽く悶絶していた。しかしそれをしただけの価値があったらしく、シオンの頭は地面に埋まっていた。

 「……だ、大丈夫、ですよね?」

 やった当の本人の方が心配してしまうと、本当に締らない。そこでシオンの体がピクリと震えた。そして、その口が開く。

 「……すいません!」

 二度目は喰らいたくなかったのか、シオンの体から離れると同時に蹴り飛ばして、ブレスの射程圏外に離脱する。重過ぎるせいで動かないかと思ったが、逆に()()()()()()()動いた。

 頭突きの影響で脳を揺らされて意識が朦朧としているのか、シオンはそのままのゴロゴロと転がって、やがて止まり――()()()()()()()()()()()()()

 そのままレミリアたちのいるところに移動している途中、背後で黒い塊が吐き出されるのを感じた。

 「え……」

 「あ……」

 「丸ごと吹き飛んだわね」

 「……アレを修復するのは、私でも不可能なのですが」

 フランたちのところに戻ってきた美鈴は、レミリア、フランの呆然とした、パチェリーの冷静な、咲夜のとても疲れた声が聞いた。

 「……どうしたのですか?」

 「……後ろを見れば、わかるわよ……」

 もうどうでもいいと言わんばかりのレミリア。美鈴が後ろを振り向いて――そのまま固まった。

 「紅魔館の……屋根が……」

 そこから先は言葉にならなかった。美鈴の蹴りどころが悪かったのか、シオンの口が紅魔館の屋根の方へ向き、そのままブレスが発射されてしまった。

 シオンのブレスは超高密度の重力の塊。流石に宇宙に存在するアレ並ではないが――それを放つことができるほど、シオンの体内は頑丈では無い――そんなモノを浴びれば、紅魔館の屋根が吹き飛ぶのは必然だった。

 「え、えっと……すいません」

 「まあ、別にいいわ。美鈴の命には代えられないのだし、屋根ならまた直せばそれでいいのだから」

 「……ありがとうございます」

 暗い顔をしている美鈴を見て流石に気が咎めたのか、フォローをするレミリア。

 「今はそんなのどうでもいいことよ。とにかく、発見したわ。予想通り脳内に、ね」

 「……外れて欲しい予想だったのに」

 「しかたがないわよ。……それよりももっと最悪な事だったのだから」

 パチェリーの顔が自分でもわかるほどに醜く歪む。それほどまでに嫌な事実だったのだ。

 「機械の大きさは一センチにも満たないわ。多分六ミリ以下。それが、シオンの脳に()()()()()()()()()

 「「「「……!!」」」」

 四人が息を呑む。言葉すら出てこなかった。脳の付近に埋め込まれていのであればまだ納得はできる。しかし脳に直接埋められている。コレが意味するのは、一つしかない。

 「絶対に外せないようにしたってこと……? けど、そんなものを埋め込まれるなんて、普通は無いんじゃ……」

 「……予想が当たりそうで、本当にイヤな気分。まあ、今は置いておきましょう。効果はわからないけれど、多分アレがシオンの暴走の原因。フラン、行ける?」

 「……正直に言っちゃうと、少し難しい、かな。私の能力は視認するのを前提にしているから、見ない状態でやると、あらかじめめ固定した場所にしておかない限りは、どうしても制御が甘くなっちゃう。元々私の能力は制御なんてできないから、六ミリ以下のモノを破壊するような精密な制御なんて、私には無理だよ」

 片手で手首を押さえるフラン。まるで能力が暴走しないように抑えているようだった。そこで咲夜が思い出す。あの白銀のブレスレットのことを。

 「あの、今回は余り強い力は必要無いのですよね?」

 「? ……まあ、そうね。というより、力が大きすぎると、逆に必要のない部分まで破壊してしまうわ。脳を破壊したら、シオンは即死よ」

 「なら、シオンの作ったブレスレットを使えば、極限まで力の強さを抑え切れるのでは……」

 「「「「あ……」」」」

 今の今まで存在すら忘れていた、制御装置の役を持ったブレスレット。フランは服のどこかにしまっていた――大きさ的にどこに隠し持っていたのか気になるが――白銀のブレスレットを取り出した。そのまま腕に取り付ける。

 「……できる、かも。これならほとんど制御する必要が無いから、座標さえあっていれば……」

 「それなら、私がやれますよ」

 「咲夜?」

 軽く手を上げる咲夜に驚くレミリアとフラン。しかし美鈴とパチェリーはその話の内容を予測できていたのか、余り驚いてはいない。

 「私の空間歪曲を使って、小さく簡易的な檻を作ります。これならシオンの固定はできると思われます。どうでしょうか」

 「確かに咲夜の空間歪曲は十二分に硬いけれど、檻を作るのにはある程度の時間がかかるでしょう? その間はどうするの?」

 レミリアの疑問。そこで横槍を入れたのは美鈴だった。

 「先程も言いましたが、壊す段階での戦闘は私がやります。シオンを引き付けておきますので、咲夜、失敗しないでくださいね?」

 「もちろんです。お嬢様」

 「……拒否できるはずがないでしょう? でも一つ付け加えるわ。パチェリー、私も前に出るから、フランとイメージの共有をお願い」

 「共有? どういうことなの、お姉様?」

 「壊す方法がわかっても、それがある座標を知らなきゃいけないのでしょう? 一言で脳と言っても、その大きさは今はかなり厄介ね。なにせ比較対象が六ミリの機械なのだから。正確な居場所を知らなければ、いざと言うときに困るわよ」

 咲夜の空間歪曲の準備と並行してやれば、十分でしょう、そう付け加えてレミリアたちはシオンの元へと跳び出した。

 「一刻猶予も無いわ。早く始めましょう」

 「うん!」

 「少しキツいと思うけれど……我慢してね」

 パチェリーは返事すら聞かずにフランと額を重ねる。本来ならば額を重ねる必要は無いのだが、今回はより正確なイメージが必要なのだ。多少の手間はかけなければならない。

 「……! 頭が、絞られる感じがする」

 「我慢して。こっちも辛いのだから」

 二人から周囲の気配や音が全て消える。その瞬間、フランの頭の中に人間の脳と思しき物体が見え――その中に、黒い塊が見えた。

 「見え、た!」

 「場所は、わかった、の?」

 フランがほんの少しだけ頭を動かして、わかったと伝える。それを感じたパチェリーは即座に頭を引き離した。

 「ッ……もう一度やりたいと言われてもできないから、忘れないでちょうだい」

 「私、だって……またやりたいなんて思わないよ……」

 重ならないはずの記憶を無理矢理、そして正確に合わせる。それは二人の脳に相応の負担をかける作業だった。

 マリアの微かに残っていた記憶を見る時にも激痛がしたが、それとはまた違う痛みにフランは頭を押さえるしかなかった。

 「でも、ありがとう。これで、シオンを助けられるから」

 「あくまで『かも』の話しよ。ここにいる誰かが一つでも――レミリアと美鈴がやられてしまえば咲夜の空間歪曲が発動できず、発動できても捉えられるかはわからず、捉えられたとしても貴方が少しでも座標を間違えればシオンの脳を破壊し、殺してしまう。最後まで気を抜かないことね」

 辛辣な言葉。しかし、この言葉はフランの気を引き締めるためのものだ。それがよくわかるフランは、忠告通りに気を引き締めた。

 「そう、それでいいの」

 もうパチェリーがすべきことは無い。だからだろうか、まるでフランの姉――レミリアとよく似た、見守るべき存在を微笑ましく見ている、そんな顔をしていた。

 「ここからは、咲夜とフランの出番よ。いい? 二人とも、これから先後悔することがないように、全力でやってきなさい」

 フランと咲夜は大きく返事をする。小さく綻んだパチェリーを見て、二人は珍しいと思ってしまった。それと同時に、やはりパチェリーは優しいのだとも。

 「さ、行ってらっしゃい」

 「はい! 行きましょう、フラン様!」

 「わかってる!」

 咲夜は駆けだし、フランは飛んで移動し始める。

 「さて、念のために魔法を用意しておきましょうか。こういったのは、大抵――ッ! ゴホッ! ゴホッ! ……喘息が始まってしまったわね。急がないと」

 口元を手で押さえながら魔法を発動させる。誰にもバレないように保険を準備しておきながら、シオンを助けるのが成功するのを祈った。神では無く、自分たちに。

 フランたちがレミリアたちが戦っている場所に辿り着いた時、そこはもう戦争をしていると言っても過言では無い有様だった。

 シオンは爪や尻尾に重力の力を宿しているらしく、それを飛ばしていた。爪の先から放たれる五本の線と、尻尾の動きで曲がる光線、その二つだ。さらに爪を地面に叩き付けると同時に重力を増加させる技を使って、辺り一面を陥没させたりもしている。

 そのせいか、周囲の景色は抉れ、沈んでいるものばかりだ。あるいは吹き飛んでいたりしている場所もある。唯一の救いは、体にそれ相応の負担がかかってしまうブレスを使っていないことだろうか。

 対するレミリアと美鈴の戦い方は避けることばかりに注視している。コレは元々が時間稼ぎであるのと、どのみち二人では倒せないこと、何より今回の戦闘は倒すのが最終的な目的ではないことからだ。それ故に避けることに意識が向く。

 それを先読みしてシオンの攻撃が行くのだが、やはり二人のコンビネーションは流石の一言だ。お互いがお互いのフォローをし、補い合っている。長年一緒に生きてきたお蔭でおのずと蓄積されていき、培われていった経験のおかげだろう。

 だがシオンの方が優勢であるのには変わりない。攻撃する側とされる側では、する側の方が圧倒的に有利だからだ。いつこの均衡が崩れてもおかしくはない。

 「お姉様!」

 フランは叫びつつもレーヴァテインの最大火力量をシオンに放つ。もちろん当たるなどとは思っていない。単純に牽制するためだけに使ったのだ。

 例えほんの数十秒程度であろうと、それだけあれば十分なのだから。

 「フラン、もう行けるの!」

 「うん! いつでも準備はオーケーだよ!」

 それだけで意味は伝わる。レミリアは視線を咲夜に移した。

 「なら、私と美鈴で引き付けるわ。咲夜、準備ができたら言ってちょうだい」

 「いえ、準備ならもうできています。後はこの演算が解けないように集中し続けるだけで十分ですので」

 レミリアの言葉をあらかじめ予想していたのか、眉間に皺を寄せながらも返す。その顔を見るだけで、かなりの集中力を使っているのがわかる。

 「じゃあ、私と美鈴が突っ込んで無理矢理にでも隙を作るから、そしたらタイミングを見てやっちゃってちょうだい!」

 「了解致しました」

 ちょうどレーヴァテインの炎が虚空に消える。同時に二人は跳び出して行った。

 それを待っていたかのように待ち構えていたシオンが、大きく息を吸う。

 「!? 全員急いで耳を塞いで――!」

 その場に急停止して耳を抑えた美鈴に習ってか、即座に耳に手を当てる。……刹那、轟音が響いて来た。

 『――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!』

 人間が出せる音域を超えた声の高さと音量。どうやら特定の周波数を発しているらしく、何やら変な音までもが混じっていた。

 抑えている耳の隙間から咆哮が届いてくる。あまりの声の大きさに頭が狂うと錯覚するような痛みを覚えた。どうしても動けない。致命的な隙だ。だがシオンも大声を出しているせいで動けないため、そこだけが救いだった。

 やがて咆哮が終わると、ようやく耳から手が放せた。そのまま駆け出すが、何かが足りないのに気が付いた。

 (……? 翼がはばたくような音が、しない?)

 そこで理解する。シオンの狙いは動きを止めることなどでは無く、先程の特殊な周波数を発すること。コレの狙いは、たった一つ。

 「お嬢様、フラン様!?」

 咲夜の慌てたような声。それで確信した。おそらくシオンは、吸血鬼の一部分の特性を狙ったのだろう。

 吸血鬼はコウモリに化ける能力がある。そしてコウモリは、特定の周波数を浴びせられるのが極端に苦手なのだ。それを、あんな大声量で聞かせられれば、死んだと錯覚しかけるほどの生き地獄のようなものを浴びせられたのだろう。

 「マズいです……本当の本当にマズいです」

 距離的にフランは少しすれば回復できるので大丈夫だろう。だがレミリアはそれなりの時間がかかる。そしてその時間、美鈴は一人で戦わなくてはならない。

 確かにただ相手をするのであれば問題は無い。けれど、美鈴の身体能力では躱すことはできても押さえ込むのは不可能だ。美鈴がシオンの攻撃を回避できるのは、身体能力では無く技術によるものなのだから。

 シオンを一時的にでも押さえ込めなければ、咲夜の歪曲空間による固定ができない。それが示すのは、ここで全滅するということ。

 (それだけは……! く、何故シオンは今更先程の咆哮を使ったのですか!?)

 タイミングが悪すぎた。せめて最初の段階から使ってくれていれば、まだ警戒できていたというのに。だが違和感に気付く。シオンが苦しそうにしているのに。

 (……そういう、ことですか。あの大声と特定の周波数を出すのは、シオンでもまだ難しいのですね。だから、最後の最後まで使()()()()()()

 使わなかったのではなく、使えなかった。当然だった。アレは人間の出せるような声ではない。それを無理矢理、腹の底から出したのだから、喉がイカレているのだろう。

 おそらくシオン自身も狙ってやったわけではない。単純に、一対四では勝てないと踏んだからこそ、一時的にでも数を減らすために使ったのだ。

 それこそが、美鈴たちにとって一番効果的な作戦であるというのに。

 だが問題はそこではない。数を減らすのに成功したのであれば、シオンが次にすることは目に見えている。それは――

 「っく!」

 美鈴を、殺す事だ。数を減らさなければ負けるのであれば、数を減らせば負けることはないとうこと。であれば、この場で最も強敵である美鈴を狙うのは道理だ。レミリアはともかくとして、フランは手負いだ。咲夜はしょせん能力を使ったトリッキーな戦法でしか戦えない。その気になればいつでも殺せる。

 美鈴にもすぐにわかった。シオンは自分を殺す気なのは。

 「それでも、私は!」

 足を一歩前に踏み出し、そこから一気に近づこうとする。だが、その一歩が踏み出せなかった。

 「ッッッ!?」

 突如全身に途方もない重圧が襲いかかる。耐え切れずに膝を着く美鈴。顔を前に向けると、シオンが体を捻りながら、右手に重力球を作り出しているのが見えた。

 必死にもがくが動けない。このまま重力球が放たれれば、美鈴は死ぬ。そして美鈴が死ねば、一気にこの作戦が瓦解する。

 考えるまでも無くわかることだ。しかし美鈴は何もできず、ただ重力球が自身に向かって放たれるのを見ているしか――

 その時、風に乗って声が聞こえてきた。

 「本当、保険を用意しておいてよかったわ」

 同時、空から淡く輝く槍のようなものが降ってくる。それはシオンの周囲に降り注ぎ、それぞれが斜めに落ちることでシオンの体を一時的に拘束していた。

 淡く輝く槍は、空に浮かぶ月光を浴びてキラキラと光っている。月の光を宿した特殊な槍。パチェリーが手繰る属性の一つを使ったのだろう。

 一時的に拘束されたシオンは、それを振り解こうと体を捻る。必然、重力制御に集中することなどできるはずもなく、美鈴に襲いかかっていた重圧は解けてしまった。

 「――! 今なら!」

 即座に背後に回ってシオンに背中から抱き着き、手を拘束する。魔法の槍による邪魔と、全開にした妖力で身体能力を底上げした美鈴に押さえられ、満足に動けない。

 だが槍の拘束がやや甘かった。上半身はともかくとして、どうやっても下半身の狙いは甘くなってしまうのだ。距離が遠すぎるのが理由の一端だろう。

 シオンは拘束の緩い足を徐々に動かそうとして、そこでまた邪魔が入った。

 「詰めが甘い、わよ!」

 耳から血を流しながら、気絶したはずのレミリアがグングニルを拘束の緩い下半身にほぼ無理矢理に投げ込み、魔法の槍の位置を変えてシオンの足を完全に拘束する。

 「お、お嬢様!? 大丈夫なのですか!?」

 「大丈夫なわけないでしょう! 今も吐き気が収まらないし、頭もガンガンなっててかなり気持ち悪いわ! でもね――」

 グングニルで足を拘束したレミリアは、シオンの頭を押さえ付ける。いくら体を押さえつけようと、頭が動いてしまえば座標が狂ってしまうからだ。

 「――フランがここまで足掻いてシオンを助けようとしたのよ? 姉である私が、それに応えないわけにはいかないでしょう!」

 姉であるが故の矜持。レミリアは元から妹であるフランにはかなり甘かった。ずっと牢獄に捉え続けていたフランを、いつ暴走するのかもわからない爆弾の元(フラン)を、それでもなお愛していられたほどに。

 本当はフランが自ら決めたことを、心の中では応援したかった。だからこそ、無謀だとわかっていても、シオンを助けるのに協力した。表には出さず、シオンを助けたいが、それでもフランたちの方が大切だとカムフラージュをして。本当は単純なことだったのに。ただ単にフランを助けたかっただけなのに。

 どちらも本心だ。それは嘘では無い。

 「……本当に、お嬢様はフラン様に甘いのですね」

 「言われなくてもわかっているわ」

 「この議論に関しては、後に回しておきます。そんな状況ではありませんしね。ですが、覚悟しておいてくださいね? ――咲夜、今です!」

 「はい!」

 美鈴の叫びに応じて、咲夜が跳び出してくる。そのままシオンに近づき。叫んだ。

 「『拘束』!」

 技名ですらない、単なる叫び。だが、今最も大事なのは空間を固定する場所を決める演算と、それを明確にするイメージ。

 咲夜がイメージしたのは、鎖による拘束、というものではなく、重過ぎる鎧のせいで動けなくなった人、というものだ。

 コレは偏に、鎖の拘束ではシオンを押さえつけられない、と思ったからだ。本当は手足に空間歪曲を纏わりつかせるだけにしようとしたのだが、シオンは歪曲空間の壁を爪で破壊した。だから、それだけでは不十分だと判断したのだ。

 だが拘束できない場所もある。美鈴がいる場所と、美鈴が押さえ付けている腕、レミリアがいる場所に、頭。そういった部分だ。手、足、胴体や胸などはできているが、頭、腕、背中は不可能だったのだ。もしすれば、レミリアと美鈴ごと巻き込むことになる。下手をすれば、体を引きちぎってしまう。だから空間歪曲が使えなかった。

 しかも、拘束されながらもシオンが重力を集め始めている。それに呼応して、少しずつ空間が軋みをあげ、歪み始めていた。

 それで理解する。

 シオンは、超高密度の重力力場を作ることで空間を歪め、拘束を外そうとしているのに。

 「まさか、拘束するのにこんな弱点があったとは……!」

 苦々しいレミリアの声。重力力場に巻き込まれているのはシオンとレミリアと美鈴。シオンは元から重力を身に纏っているので問題は無いが、レミリアと美鈴は別だ。だが、美鈴ならば少しの邪魔ができる。

 美鈴は右足でシオンの右足に打撃を入れ、その集中力を掻き乱す。シオンが全く動けないようのと同じように、美鈴もほとんど動けない。だが例えほんの少しの痛みであろうと、獣と化しているせいで集中力など無いに等しいシオンには効果的だ。

 「であれば、私たちがするのは一つだけですね」

 覚悟を決めた美鈴の声。その間にも地味な攻撃は続けている。

 「「このまま、押さえ続ける……!」」

 二人の声がピタリと重なる。そのまま、重なった声で叫んだ。

 「「フラン(様)! 私たちのことは気にせず、今すぐに、シオンに取り付けられた機械を破壊しなさい(してください)!」」

 「わかってる!」

 その叫びに、やっと起き上がれたフランはすぐさま応じる。右手を前に出して、すぐに能力を発動させようとする。その瞬間――視界が揺れた。

 (え……?)

 体中がガクガクと震える。遂に限界が来てしまったのだ。タイミングが悪い。先程の咆哮よりも悪すぎた。いや、先程の咆哮のせいで限界を超えてしまったのかもしれない。

 (まだ……まだ終わってないのに! あと、あとちょっとなのに……!)

 歯を噛み締めて無理矢理意識を集中させるが、視界はどんどん揺れて行く。ところどころ明滅もし始めていた。

 元々限界を超えていた体だ。血を失ったばかりの貧血状態、そこからの激しい戦闘、そして何回かもらったダメージ。それらが蓄積され、体を動かすのを許さなかった。

 (どう、して……。コレ、だけなのに。能力を発動させる、だけなのに)

 上げていた右手すら徐々に下がってきている。その様子は、レミリアたちの目にも見えていた。

 「まさか……限界が!?」

 「マズいですよ、お嬢様。コレではこの作戦そのものが終わってしまいます!」

 「信じるしかないわ! フランを、あの子を!」

 それでも二人には信じて待つしかない。ここで殺してしまうのは、まだ早いからだ。最悪殺すとしても、フランが気絶してからにしなければならない。

 (……こんな、状態じゃ、座標も固定、できない……!)

 意識が集中できないのに、能力が発動できるわけがない。

 そして焦れば焦るほど、意識が暗闇に落ちて行きそうになる。

 (どうすれば……!)

 (――手伝いましょうか?)

 (!? え、『ナニカ』……!?)

 一瞬混乱するも、すぐに誰かを察するフラン。だが同時に疑問が湧き上がる。

 (もう出てくる気が、無いって、思ってた、んだけど……)

 (……私の忠告が無駄だったのに気付いただけよ。だから起きてきたの)

 確かに『ナニカ』は言っていた。シオンは、フランとはまた別の意味で危険だと。

 (……今更だけど、どうして、シオンが危険だって、気付いていたの?)

 ただ思考するということすら厳しくなってきている。それでもなお聞かずにはいられなかった。こんなことをしている暇すらないと分かっていても。

 (単純に、似ていただけよ)

 (……? 誰、と?)

 (……………………今は、そんなことをしたいの? 貴方が気絶すれば、もう彼を助けられるような存在はいないわ)

 話しを逸らしているとわかっていても、フランはそれを無視できない。

 (結局、『ナニカ』は、何が、したいの……!)

 (()()()()()()()()

 (え……)

 予想外の言葉。意識が一瞬停滞する。それと同時に気絶しかけ、それに気付いたフランは唇を噛むことで抑える。噛み締めすぎて血が流れたが、それを気にする暇は無かった。

 (何で、そんなこと、が、できるの?)

 (今気にするのはそこなの? 私が演算をしておくから、貴方は合図したら手を握り締めるだけでいいわ。……信じられないなら、やらないけれど――)

 (――信じる、よ)

 即答すると、息を呑んだような音が聞こえる。だが、フランにとっては当然だった。

 (『ナニカ』は、なんにも、教えてくれない。貴方の、本当の名前、も、どういった存在、なのかも。だけど、貴方は、いつも聞かせて、くれた。外の世界の、お話を。それが、どれだけ私の助けになった、か……。だから、私は、『ナニカ』を信じる)

 ほとんど真暗になった視界の中で、それでも思う。本当に、『ナニカ』がいなければ、自分はとっくの昔に狂っていただろう、と。

 (フラン、貴方は――)

 「ぐ、きゃああ!」

 「美鈴!?」

 何かを言おうとした『ナニカ』の声は、美鈴とレミリアの悲鳴によって掻き消される。

 美鈴は、押さえつけられていなかった尻尾で体を貫かれたのだ。右足、左脇腹、右胸のすぐ下の三ヶ所を。最悪なことに右足を貫かれたせいで、もう邪魔ができない。

 狙ってやったのであろうシオンは、即座に重力力場を形成し直していた。

 「美鈴、大丈夫なの!?」

 「まだまだ、全然、平気ですよ! これより、酷い、大怪我を負った、ことだってある、くらいなん、ですからね?」

 強がる美鈴。だが、その声は震えていた。むしろ脇腹と胸の近くを貫かれて意識を保っていられるだけでも驚嘆ものなのだ。

 (『ナニカ』! 今すぐ、始めて!)

 (わかってる! 数秒だけもたせて!)

 意識を集中させる『ナニカ』に倣って、フランも意識を途切れさせないようにする。しばらくすると、『ナニカ』の声が聞こえてきた。

 (今よ! すぐに能力を発動させて!)

 思考を『ナニカ』に返す前に、無意識でフランの手は動いていた。なぜか既に手繰り寄せられていた『目』を破壊する。コレで、シオンに埋め込まれていた機械は破壊できたはず。

 やっと、終わった――そう安堵して膝をついてペタリと座り込んだフランの耳に、咲夜の驚愕した叫びが聞こえてくる。

 「な……終わって、ない!?」

 (え……?)

 視界をあげると、未だに獣となったままのシオンがいた。

 (なんで……。確かに、破壊したはずなのに……)

 『ナニカ』が細工したとは思わない。演算したのが『ナニカ』とは言っても、直接破壊したのはフランなのだ。つまり、破壊したモノの感触は、フランの手に伝わる。

 そしてフランはわかっていた。破壊した時の感触は肉のモノではなく、何か硬いモノだったと。

 なのに、止まらない。止まってくれない。暴走し続けているシオンは、重力力場で空間を歪め、遂にその拘束を外してしまった。

 (……まさか……そんな……)

 フランは朦朧とした頭である仮説を組み立てる。

 (あの機械は……あくまでシオンの感情を暴走させるだけ……。だとしたら、シオンの憎悪……元からあった感情が臨界点に達していたとすれば、暴走は止まらない……。理性が戻って来るまでには、ある程度の時間が必要になる……)

 シオンの憎悪は、フランたちの想像していたものを遥かに超えていた。『機械を壊せば元に戻る』のではなく、『機械を壊して一定時間が経てば元に戻る』だったのだ。

 だが不可能だ。暴走しているシオンを相手にするには、現状の戦力では無理なのだ。レミリアと咲夜はまだしも、体を貫かれた美鈴は過剰回復を使わなければならず、そうした場合は身体強化が使えなくなる。パチェリーはもう喘息をし始めているためほとんどの魔法は使えず、フランは即効で殺されるほどに弱っている。

 つまり、一定時間も待っていられない。

 あるいは、何らかの方法でショックを与えれば元に戻る可能性があるかもしれない。しかしそちらはそちらで難易度が高すぎる。暴走している相手を元に戻せるほどの強いショックなど、与えられるはずがないからだ。

 (それじゃあ……今までのは……)

 ただの徒労。もっと効率よく戦っていれば別だったかもしれないが、そんな『もしも』の可能性など来てくれない。

 全滅をしかけている現状、シオンを()()以外に選択肢は無かった。

 (あ、ああ……)

 そんなのって、無い、そう思いながらも現実は非常だ。レミリアたちは何とか応戦しているが、いつ殺されてもおかしくはないほどに追い詰められている。

 「もう……殺すしかないの……?」

 認めたくない事実。認めたくないが故に最後の最後まで足掻いていた。全てが無意味と化してしまったが。

 そんな時、ずっと、もう蜃気楼のように不鮮明とした記憶を思い出す。今の今まで忘れていた、古い古い記憶。

 『ねえ、お母様! 少し前に聞いたあのお話――あの傷ついた獣がどうなったのか、続きを聞かせてよ! ねえ、いいでしょ?』

 『もう、しかたないわね。それじゃ、こっちに来なさい』

 『うん!』

 まだ能力が発動していなかったくらい昔の思い出。その頃のフランは無邪気に笑っていることができて、母親もそれを微笑ましそうに見ていた。

 フランは母親の膝の上に乗り、母が静かに話す物語を聞いていた。

 『――そうして、その獣は、自身の魂を癒すような歌で静かに息を引き取りました。……あら、フラン、どうしたの?』

 『……お母様、どうして獣は死んじゃったの?』

 『さぁ、それは私にもわからないわ。でも、獣は死にたかったのかもしれないわね』

 『死にたい? どうしてなの? 普通は生きていたいと思うものじゃないの?』

 ただ疑問に思ったことを不満気に漏らす。当時のフランは理解していなかったのだ。死ぬことが救いである時があるのを。

 フランの母も、ただ苦笑いを返すだけで、何も答えなかった。代わりに、静かに子守歌を歌い始めた。

 『……それで誤魔化さないでよ。……でも、私はこの歌、大好きだよ』

 不満をこぼしながらも、嬉しそうに笑うフラン。フランの母は、歌うのを止めて、フランの髪を優しく撫でた。

 『フラン、歌と言うのはね、何かを鎮めるためにあるものなのよ』

 『鎮める?』

 『そう。だから、誰かが嘆き悲しんでいる時は、歌うのが効果的よ? 覚えておいて損は無いと思うわ。あるいは――をすれば、助けられるかもね?』

 そう言って歌の続きを歌いだす。フランは母の歌を聞きながら言葉の意味を考ええる、結局その意味はわからなかったが、現状では意味があるのかもしれない。しかし、その言葉はどうしても思い出せなかった。

 「そう……歌……歌を歌えば……シオンを、元に……」

 不可能だとわかっていても、歌を聞かせられれば、と思わずにはいられない。

 (……フラン……もう、諦めた方が……)

 疲労の滲んだ『ナニカ』の声が聞こえてくる。おそらくあの演算のせいだろう。元々『ナニカ』が表に出てくることはほとんど無い。仮説に過ぎないが、過度の干渉をすると何らかのペナルティを科せられるのかもしれない。

 (まだ……何か、あるはず)

 『ナニカ』の声すら届かないほどに、フランの意識は『シオンを助ける』ことだけに向かっている。

 そして、母に聞いた最後の部分を明確に思い出す。

 (コレをすれば……助けられる、かも)

 その考えがどれほどのおかしさをはらんでいるかなど思いもしない。ただ、『助けられるかもしれない』というだけで、フランの朦朧とした思考は埋め尽くされる。

 「今、行動すれば……!」

 動かないはずの体が動く。フランは翼を大きく広げ、飛びだした。

 「な、フラン!?」

 最初に気付いたのはレミリアだった。動かせない体を動かしているフランに、ほんの一瞬だけ動きが止まる。

 その隙を逃さずに動こうとしたシオンだが、自らに向かって来ているフランのせいで動こうにも動けない。

 シオンは重力球、爪による一閃、尻尾での光線を使うが、全てフランに避けられる。シオンの狙いが甘いのではない。フランの速さが異常なのだ。

 元々フランの速さは美鈴の縮地ほどでは無いが、それでも速い。()()()()()()()()()()()()()、だ。激情に駆られた者は大抵の場合、効率的な動き方など一切考えず、ただその激情をぶつけたい相手に突っ込んで行く。そう、パチェリーがやられた時のレミリアのように。

 それに加えて攻撃している最中でも速かった動きが、ただ動く事だけを追求すればどうなるのか――それが、今の光景だった。

 躱される、躱される、躱される――ただ速いだけの相手に全てを躱される。技術もクソも無いのに、全く当たらないという悪夢のような光景だ。

 近づけば近づくほどに弾幕の密度が増すと言うのに、それでもなおフランには当たらない、止まらない。

 そしてシオンの眼前に辿り着いたフラン。シオンは逃れようとするが、加速でいつの間にか後ろにいた咲夜が空間歪曲を使ったせいで、壁に追い詰められた哀れな動物のように逃げられない。

 背筋が凍るような錯覚。理性無き獣だからこそ、本能でわかる。自身の攻撃が当たらないフランは、言い換えれば一切の攻撃が通じない。やがて力尽きた自分が殺されると、理屈ではなく直感で理解する。

 獣は弱者には従わないが、強者には素直に従う。それが普通だ。しかしシオンは普通の獣ではない。本能は諦めて従えと叫んでも、ほんの少しだけ戻っていた理性は最後まで抗えと言っている。どんな状況でも諦めなかった、その理性が。

 だがシオンは、根本から間違っていた。フランは戦いに来たのではない。そもそもそんな体力など残っていない。

 フランはただ、母親に言われたことを実行しに来ただけだ。

 そしてフランが攻撃を躱してできた隙に()()をして、()()を見た全員が驚愕し、時が止まった。そう――シオンですら、例外なく。

 「「「「…………」」」」

 誰も言葉が出ない。かなり遠めに見ているパチェリーでさえ、その光景が見えていた。笑えなかった。笑えるわけが無かった。

 やがてフランは、()()()()()()()()()()()()()()

 そう、フランは――シオンと、()()()()()

 フランが母に言われた最後の言葉。それは――

 『あるいは、キス、をすれば、助けられるかもね? 女の子のキスは、男の子からすれば、かなり衝撃的なモノなのよ?』

 クスクスと笑いながら告げていたフランの母は、悪戯が成功した幼子のように無邪気な顔をしていた。

 だが、それが効果的だったのは、今、わかった。それはすぐに証明される。

 

 

 

 

 

 シオンは、戻りかけていた意識の中で、自らの元へと躊躇なく突っ込んでくる赤い服を着た誰かと戦っていたのを理解していた。だがそれが誰かはわからない。少しずつ意識が戻っているのは感じていたが、それでも意識の大部分が未だに憎悪に呑みこまれていたせいで記憶が混濁していたせいだ。

 しかし直感で理解していた。この人影が誰なのか。それでも収まらない。抑えていられるほどの気力は当の昔に尽きていた。だが、それはすぐに覆されてしまう。その人影が、自分の顔に近づいていって――そのまま、キスをしていた。

 わけがわからなかった。驚愕した。憎悪の中に、驚くという感情が生まれた。そしてそれを足掛かりにして、困惑を始めとした様々な感情が溢れてくる。

 それに追いやられて、憎悪の感情に染まっていた心が、徐々に人らしい心を取り戻す。人影――フランの顔が離れた瞬間、シオンは意識せずに呟いていた。

 「え、な……フラン……?」

 「「「「ええ……!?」」」」

 今度こそフランを除く全員が本気で、全力で驚愕する。シオンの姿は未だに龍によく似た獣のままだ。しかしその顔には、人間らしい動揺が浮かんでいた。

 フランは、シオンにキスをするという方法で、『何らかの強いショックを与える』という手段を果たしたのだ。まあ、それを知っているのはフランだけだが。

 「フラン、何、を……!?」

 正気に戻ったシオンは、キスについて尋ねる前に、暴走し、神獣と化していたその体が悲鳴を上げ始める。それに抗うことができず、シオンはその意識を落とした。

 目の前にいたフランは反射的に受け止めようとするが、元々フランの体も限界だった。そのまま押し倒されてしまい、小さな背中を強打してしまう。

 「~~~~~!!!」

 普段ならばほんの少しの痛みも、今は全身に激痛を走らせてきて、悶絶させられる。それでもフランは笑っていた。今にも泣きだしそうにしながら、笑っていた。

 「よかった……シオン、よかった……」

 フランはその表情を維持したまま、気力で繋げていた意識を手放した。




 全部読み終わった人はわかっていると思いますが……ええ、最後はっちゃけました。
 本当はするつもりは無かったんです。本当ですよ? 当初は単純に気絶させるだけのつもりが……ええ、良い訳ですすいません。マジでどうしてこうなった……。

 そしてようやっと紅魔館メンバーの性格が出ました。
 レミリアは家族や親友>その他であり、その他は基本認めない。シオンの場合は特例で、『フランを助けた』から助けようとしただけ。その上()()()()()友人ですらないため、見捨てようとしています。
 フランの場合は幼い子供。精神が未成熟であるため、戦闘が怖いと思う普通の子供です。ただし頭の回転は速い。
 咲夜は未だ成長途上。原作通りに『完璧で瀟洒なメイド』とは言えません。将来的にはなるとは思いますが。
 美鈴は若干戦闘狂であるのを覗けば穏和です。
 パチェリーは冷たいけれど、それが実は優しさから来ているモノ。わかりにくいですが、大切な人には優しい人。
 コレで全部とは言いませんが、まぁ大体こんな感じです。
 次回は多分また説明会になるかと……(シオンの脳に埋め込まれたアレとかの)。

 それと、今の今まで忘れていた技をここに追記

 『黒の斬撃』ランクB
 剣に重力を纏ませる。その剣を振ることで、重力を纏わせた部分をその場所に置き、その場所周辺の重力の方向を決めることができる。
 効果はいくつかあるが、一つに一瞬で効果を発揮できること。例えば無重力空間を作り出そうとした場合、普通にやればそれなりの時間がかかるが、この技を使えば一瞬で生成できる。
 二つに、重力を上下前後左右どちらにでもできる。例えば17話の『暴走』で使った時のようにグルリと円を描いて、重力を内側に向くように設定すれば、絶対に出られない即席のリングができあがる。外から中に入ろうとした者は、潜ろうとする途中にある重力力場に影響されて入れない。
 三つに、数に制限が無く、一度生成すればシオンの意識が向かなくなるまで解除されない。言い換えれば、少しでも意識が向いているのならば無制限に生成できる。
 四つに、上下に指定して場合、そこに入った者を強制的に巻き込む。例えば重力が下に向いている場合、そうと気付かずに上空を通った者を地面に叩き落とす。
 逆に重力が上になっている場合、入った人間を上空に重力が無い場所――宇宙近くまで放り出すというものだ。
 最後に範囲に限定が無いこと。形態変化を使えばどこまでも形を変えるその特性を利用すれば、それこそ世界中どこでも使える。

 獣の項目は……その内で。近いうちにやっておきます。

ではでは、また次回で~
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