勝った――だが凄まじく後味の悪い勝利。卑怯だと言われても仕方がない。
鬼は嘘を吐くことと約束を破ることを嫌う。卑怯なことも同様だ。勝負に勝ったのだから約束は守ってくれるだろうが、今は良くても、将来的には大損だ。
フランはさりげなく意識を後方に向ける。やはりというべきなのか、大半の鬼達は嘆きと、そして怒りを持っていた。
――放っておけば暴走しちゃう。
今はまだ、シオンも、勇儀も、そして萃香も、誰も動かない。だからこその静寂。
――だけど、それもすぐに……でもやらせない。シオンは絶対、
私が守る。
そう決意し、いつでも動けるよう、また炎の壁でもって阻害できるように『レーヴァテイン』を召喚できるようにしておく。
見据える先で、シオンの手がスルリと解ける。けれどそれは、力を抜いたというより、力を入れられなくなったかのようだ。
もしかしたら、かなり重度の怪我を負ったのかもしれない。勇儀からの圧力に耐え切れずに腕の骨が折れてしまったのだ。直にそれを味わっていた手がどうなっているのか、想像したくない。
「ふ、ふふ……アーハッハッハッハッハ! いやー負けた負けたぁ!」
「何笑ってんだよ勇儀ぃ! 私の楽しみ奪いやがって!」
お前はいいかもしれないけどさぁ、と勇儀を責める萃香は、けれどどこか楽しそうで。周りで嘆き怒っていた鬼達も「まさか
まさか、とは思うが。単に姉貴分が負けたから沈んでいただけで、シオンに対する悪感情を向けていないのか、とフランは推測する。
「なんで――俺を、責めないんだ? 俺は、卑怯な真似をしたのに」
「ん、なんだい? 別にあんたは卑怯なことをしてないじゃないか」
「何を根拠に」
「ゲーム外で小細工をしなかったからさ」
どこから取り出したのか、大きすぎる盃に、零れおちそうな程に並々と入れた酒を飲み、喉を潤す。
「確かにゲーム台から肘を浮かせるのはズルだ。でもそれは『通常の』ルールでの話。あんたはゲームが始まる前に私に聞いただろう?」
――台から肘が離れたらどうする?
「そして私は続行で構わないと答えた。あんたが決めたんじゃない、私が決めたことだ。それを逆手に取ってギャーギャー騒ぐなんてみっともないよ」
「だからって、そんな簡単に納得できない」
「頑固な奴だ。というか、シオンは卑怯な手段を厭わない人間だと思ってたんだけどね?」
「相手と状況による。外道な相手ならこっちもそうする。そうしなければ生き残れないならその手段を選ぶ。でも、しないでいい状況でそれをし続ければ、俺はきっと、あの人に顔向けできなくなる。相手が誠意を持っているなら尚更だ」
そういうことか、と納得する。目の前の人間は血の匂いが『濃す』ぎる。何人同族殺しをしてきたのかと気になるくらいだ。
だからこそ真っ直ぐになった。純粋培養の殺人者。それがまともに機能しているのは、本当に奇跡だったのだろう。
「……やっぱりあんたは卑怯者じゃないよ」
本当の卑怯者は、と勇儀は忌々しい記憶を思い返す。
「毒や薬を躊躇なく使って、寝首を掻く輩のことさ」
姿を見せず、不意打ちで決める。確かに種族差も考えればその程度はしなければならないのだろうが、それが屈辱でもあった。
――どうせ死ぬなら戦いの中で。
それさえできずに死ぬ鬼が、一体何人いたことだろう。
勇儀の呟きはシオンに聞こえなかった。それくらいの声量なのもあったし、シオンもそこまで注意していなかったからだ。
誤魔化すように勇儀は笑う。力強く、雄々しく。
「誇れよ人間。『お遊び』とはいえこの私に勝ったんだ。笑って勝ち誇りな。それが私にとっての手向けだよ」
その笑顔は、問答無用で相手の言い分を打ち負かすものだった。誰かの上に立つ存在が持つカリスマ性。
「なんっというか……本当、理不尽だけど人間よりもさっぱりしてるなぁ。わかったよ。勝ち誇ってやるさッ。この勝負は俺の勝ちだ。約束は守ってもらうぜ、鬼!」
返礼の笑みは、勇儀と同じ力強く。
「里に来ないでほしい、という約定。期間も何も定められていないが、まぁ。そちらの『誠意』に期待させてもらうよ」
「そう言われると弱い。そう、だね。しばらく私がなんとか抑えるけど、数年程度が限界だ。その間に解決策を出さなきゃ、今度こそ止められない。今言えるのはこれだけだね」
「それでいい。むしろそこまで譲歩してくれるとは思わなかった」
最悪一度戻って準備したらまた来ると言った展開まで考えていたため、きちんと時間を決めていなかったのを後悔していたのだ。この辺り、まだまだツメが甘かった。
と、勇儀が右手を差し出してくる。
「楽しかったよ。またやりたいもんだ」
恐らく他意は無いのだろう。シオンも素直に応じる。だが、
「こっちとしては遠慮願いたいところだ」
差し出された手は、左手だった。
握り合うのではなく、シオンの手が勇儀の手の甲を包むようにして触れている。何故、と勇儀は疑問に思う。黒龍の鱗を纏ってはいるが、踏ん張りための両足と違い、右手はほぼ肥大化していない。精々鋭い爪が見える程度。
だが、そこで更に疑問が浮かぶ。
――なんで解除しない?
答えは、無い。それでも動かさないなら動かせない理由があるのだろう。
「帰るぞ萃香。尻尾巻いてトンズラだ!」
「なぁに偉そうに言ってんだ! 帰ったらまず一発殴りつけるからな!」
「アハハハハ、あんたの腕力で私に痛打を入れられるのかい? そりゃ楽しみだ」
誰かに気づかれる前に手を戻し、萃香をダシにして場を誤魔化す。
――ありがとう。
遠くからそんな言葉が聞こえてきたが、それには答えず鬼は去っていった。
「まるで台風みたいだったな……」
心底からそう思う。酷い例えだが一過性であるのに変わりはない。
色々なモノを破壊していく暴風である、というところが。
とはいえ台風と違って、『力』さえあればある程度話を聞いてくれるところが救いか。そこまで行くのに色々失うハメになるだろうが。
ふと意識を逸らし続けていた両腕に激痛が走る。左腕は重力増加による圧力で骨が凹んでいる。右腕は折れた骨を折り直したりしたせいで複雑骨折。
そして鎧を解除し、現わになった右手は、粉砕していた。
確かに鱗は勝負を続行するという観点では役立ってくれた。しかし勇儀は恐ろしいことに、『拳を握る』というただそれだけの動作で異常な衝撃を生み出し、鱗の内部に貫通、あっさりとシオンの手を圧砕してくれた。
(鬼、か……末恐ろしい限りだ)
「シオン、大丈夫……じゃ、なさそうだね。両腕がひっどいことになってる」
「まぁマシな方だろ。もがれてる訳でもないし。くっついてるだけ
「最近シオンの判断基準がわかってきたような気がする……」
ジト目を向けてくるフランは努めて無視。とはいえ彼女も茶化していられると思っていなかったのだろう、すぐにすまなさそうにしていた。
「ごめんね、無理言ってついてきたのに何もできなくて」
「いや、フランはよくやってくれたよ。わかんないだろうけどね」
シオンが気力・体力共に充実した状況で挑めたのは、彼女のお陰だ。
「……???」
やっぱりわかっていなかったけれど。今はそれでもいいと思えた。とりあえずは両腕を直すのが先決だ。
いつも通り能力を発動させる。気負う必要はない。いつもと同じ、腕を直すだけ。
「……アレ?」
ふと、シオンの後方に真っ黒な人影が見えた。『外』から迷い込んだ人なのか、と思ったが、それにしては足取りがはっきりしすぎている。
(鬼が近くにいた状況で、人……?)
おかしいと気づく。シオンのような状況でも無い限り、ここに近づくメリットなど無い。では逆に考える。
――
極論だ、と断ずる。まだ偶然迷い込んだだけという方が可能性が高い。
――パリィ――……ン。
何かが割れたような音。それはとても身近から聞こえた。続いてドサリ、と何かが倒れたような音が響く。
「シ、オ……?」
目を瞑り、倒れているシオン。身動ぎもしないその姿はまるで、まるで――死――?
「あ、ああ……イヤ、嘘――なんで、いきなり」
シオンしか見ていないフランは気づかない。
風切り音を伴って飛んできた、短剣が。
「なにやってんのよこのバカ!」
グイッと襟を引っ張られて引き寄せられる。首が一瞬絞まったが、今のフランはそれを気にする余裕さえなかった。
それでも、反射的に問う。
「霊夢、どうしてここに?」
「……一応、少し前からいたんだけどね。変な結界のせいで中に入れないし、無理矢理入ろうとしてシオンの集中を途切れさせたら悪いから、遠くから見てたのよ」
霊夢が警戒したのは、探知用の結界かどうか判断が付かなかったからだ。しかもシオンは何かをやらかしている最中。必然、遠くから見ているしかなかった。
フランは気づいてしまう。結界が張って霊夢が通れなかったというのなら、霊夢が来る前からいたあの男は、結界が張られる前からここにいたという事に。
「私が、もっと早く気づいていれば……おかしいからって、問題を後回しにしないで……」
ビキッ。
「私のせいでシオンが死にかけてるのに何もできない」
ビキキッ。
「私が――」
――プチッ。
「ダァァァァーもうウッザイわよあんた!!」
叫び札を飛ばして爆発、あの男が回避したのを見計らって半回転、フランの胸元を掴んで、
「一回頭ン中リセットしろこのド阿呆!」
その小さな頬を、引っぱたいた。グーで殴らなかったのはせめてもの情け。無いとは思うがこれがシオンだったら、抉りこむように打ち込んでいた。
爆風は止んだ。回避させて取れた時間はもう無い。向けていた背を正面に戻し、あの男を見据える。
「アンタが今しなきゃいけないのは嘆くこと? それなら今すぐここから逃げなさい。足でまといは余計。邪魔なだけよ」
辛辣なセリフ。そこに優しさはない。
「……ううん、逃げない。ここで逃げたら、私は」
「なら何かしなさい。きっとできる事があるはずよ」
話をしながら、おかしい、と霊夢は違和感を感じていた。
――なんで何もしてこないの?
そう思うも、ありがたくはある。後ろを気にしながら戦えるほど、霊夢の戦闘経験は積まれていない。
霊夢があの男の警戒をしている隙に、フランは多少の知識を総動員してシオンの状態を確認していた。
(呼吸――無し。心拍も……心臓が動いてない。なら人口呼吸と、心臓マッサージを施しておけば……)
と、フランの耳が、異常自体を捉えた。
(え、嘘、なんで。ありえないッ。動いてない、
シオンの身体にある全てが機能していない。それが指し示すものは――死んで、いる、こと。
咄嗟に能力を発動させるフラン。
「い、ヤ……」
無い。
シオンの中に壊すべき場所にある目印が、無い。
(違うッ、違う違う違う違う違うッ! そんなことある訳ない、ありえない! だって、アイツはシオンに何もしてない! どんな事があればこんなっ、誰にもわからない方法で、一瞬でシオンを殺せるの!?)
けれど、事実は変わらない。
シオンは動かない。決して動いてくれない。優しい声を出してくれない。仄かな微笑を見せてくれない。
強くて、優しくて、でも弱い彼は。
――『大丈夫』だと、抱きしめてはくれない。
空っぽだった。空虚だった。心にポッカリ大きな穴が空いていた。ふとフランは、どうしてシオンがあそこまで復讐に拘っていたのか、知った。
――そう、だね。耐えられない。こんなの、耐え切れないよぉ……!
姉がいて、シオン以外にも『大切』があるフランでさえ、心がバラバラになりそうだ。なら、彼はどうだったんだろう。
どんな想いで、唯一の人が喪われるのを見続けたんだろう。
きっと比ではないはずだ。自分の全てを喪って、それで正常でいられるはずがない。自分の命でさえ駒のように扱える人間が。
だから走るしかなかった。自分を支える精神的支柱を作るために。
それが復讐だった。何も無い人間が最後に残された、たった一つ。
「ねぇ霊夢。シオンのこと――頼んで、いいかな……?」
「待ちなさいフラン。アンタ、ちょっとおかしいわよ。何があったの?」
「……お願いね、霊夢」
「フラン……ああもうッ、勝手な事して!」
背中から飛んできた霊夢の憤りに内心で謝りながら、それでもフランは止まらない。
「私はお前を知らない。興味もない。でもね、だけど――」
翼を広げ、異様に爪を延ばし、鉤爪とする。それを歪に動かし鳴らしながら、喉の奥で叫んだ。
「シオンを殺したお前を、私は絶対に許さない……ッ」
「いきなり何やらかしてんのよフランは」
豹変、と言ってよかった。額を押さえて頭痛を堪える霊夢は、シオンの体に触れ、そして――ただ理解した。
「……そういう、こと。なんだ、それなら、言ってくれればよかったのに」
冷たい骸。微かに残る体温が、目の前の人間だった存在が生きていたことを教えてくれる。
霊夢はフラン程シオンに思い入れが無い。それでもほんの少しだけ共に過ごした間柄だ。勝手に死なれて何も思わないくらい、薄情ではなかった。
「腕の一本……いえ、両手両足、かしら?」
ナニをするつもりだ、と返されるべき言葉に返答はない。死んだ人間は話さない。それを理解していて、何度も見たことがあるのに、慣れる事はない。今まではただ、ああ、死んだのか、くらいにしか思わなかった。なのに、こんなにも痛い。
懐から札を取り出す。
「こんな事、生き残った奴を慰めるだけの自己満足だとわかってるけど」
それを胸の中心に貼り付け、保存の術式を発動させる。腐敗を止め、体を朽ちさせないようにさせるためだけの札。結局燃やすか埋めるかだから、死体の見栄えをよくするくらいにしか、意味が無いことだけれど。
「精々眠りなさい。深く、長く、安らかに」
霊夢は気づいていなかった。自分の感情が酷く乱れていたことに。如何に平静を装おうと、彼女は九歳の子供に過ぎない。身近な人間が死ぬ事に、慣れていなかった。
だから気づけない。勘が働かない。
「これは――しま――!?」
転移術式。それを刹那で勘づいた霊夢が反応しようとしたが、その小さな両腕を無骨な鎖が縛り付ける。
(まさか――まさかまさかまさか……!? 相手の目的ははじめっから……!)
シオンの死体を回収すること。そのためにあの男は自ら姿を晒し、注意を惹きつけ、シオンから目を逸らそうとした。フランを殺そうとしたのは不確定要素を排除しようとしたから。
「ダメ、そんなことさせるもんですか……! アンタらなんかに、シオンを渡してッ」
女の細腕で鎖に抗おうとしても無駄なのはわかっている。だけど、彼の死体を何に使うのか、霊夢にも少しはわかっていた。
おかしな人間であるシオンの体を解剖するか、はたまたその身の内にあった魔力、その残存を利用するか、あるいは人の肉を好む妖怪に食わせるか。
させたくなかった。死した人間を弄ぶような真似を。
でも無理だった。どれだけ力を入れても、霊力で強化しても。相手の慎重に過ぎる用意周到さが霊夢を動かせてくれない。
一人で来る、なんておかしなことだと気づいたってよかったのに。だが霊夢は今まで他と群れない妖怪と戦い続けてきたせいで、その根本的な部分を忘れていた。
――人は、誰かと組んでこそその真価を発揮するのに。
消える。既に魔力はこもっている。後はもう、上から下に降りるように、簡単にシオンは連れ去られる。
「クソッ、クソッ、クソッ……! シオン! 嫌だ、やめろ! 私はお願いされたのよ! フランに、あの子に! だから、絶対ッ」
子供の霊夢ではなく、成長し成熟した霊夢だったなら。あるいは奪い返せたかもしれない。
でも今は子供だ。
「――大丈夫よ」
ならばそれを助けるのは、その成長し成熟した大人であるべきだろう。
風に乗ったその声は、不思議と荒れ狂う霊夢に届き、落ち着かせた。聞き覚えのあるそれはとても穏やかで知性溢れるモノのそれ。
数百メートル離れたところから命中させたにも関わらず、永琳は誇らない。背に幼き少女を乗せながら、まるで歩くように優雅に、けれど一瞬で霊夢の元へ移動する。
「八意、永、琳……? どうしてここに?」
「無茶をやらかした弟子の怪我を見る、ことだったのだけれど。どうやら意味がなさそうね」
永琳は一目で把握した。シオンが死んでいることに。もう生き返らせる手立てが無いことに。
「そう……幻想郷で一番の腕を持つアンタがそう言うなら、そうなんでしょうね」
「ええ。少なくとも、
「私には……?それって」
霊夢が聞き返そうとした瞬間、再度魔法陣が足元に展開される。
二重の罠。一度目のそれよりも鎖の数が多く、中には鋭く尖ったものさえ存在した。下手に避ければ今度は殺す。そんな意思が感じられる。
「――破魔矢」
けれど遅い。魔法が発動する前から既に永琳は行動している。
魔を祓い浄化する矢が地面に落ち、術式を完全に破壊する。永琳手製のそれに、ただの魔法陣が抗う術はない。
しばし様子を見る永琳。だが三重の罠が無いと悟ると、小さく息を吐き出した。
「もう無さそうね。アリス、行けるかしら?」
「はい、いつでも。ですが私の
「普通なら、そうよ。でもね、『あなたとシオン』なら、話は別。きっとできる。さ、疑問は後回しよ。今はとにかく能力を使いなさい」
わかりました、と素直に頷くアリス。彼女は永琳が冗談を言わないと知っている。特にこんな酷い冗談は。できると言ったなら、できるのだ。
「ねぇ永琳。あの子――アリスとやらに、一体何ができるの?」
さりげなく気配を殺して永琳に接近した霊夢が尋ねる。変なモノクルを付けていたのに疑問を抱いたが、今はどうでもいい。
「霊夢。あなた、自分の体を見知らぬ他人に触られるのをどう思うかしら?」
「ハァ? アンタ正気……か。嫌よ、絶ッ対にイヤ。服の上からでもゴメンよ、そんなの」
「で、しょうね。でもね霊夢、あの子はそれを許してしまう魅力を持っているの」
と、永琳が霊夢の両腕に触れる。
「アリスがやっているのは、相手の肉体――正確にはその細胞に干渉して、活性化させること。でもね、それをするには相手の肉体を知らなければできないことなのよ。活性化させすぎて相手の体を歪に治したら意味がないでしょう?」
永琳にも真似事ならできる。だが、それがもたらす結果は――
「ッ、放せ気持ち悪い!」
全身を悪寒に包まれ全力で脱出した霊夢を見れば、わかるだろう。
「どんな感じたったかしら?」
「まるで体の内側と外側を変な触手が這いずり回ってるみたいだったわ……わかりやすいけれどもう絶対ヤメテ。治してくれたのは素直に感謝するけど」
両腕をさすり、先程の気持ち悪さを打ち消そうと必死になる霊夢。
「でもわかったわ。アリスはこの気持ち悪さを相手に感じさせないどころか、無意識に許したくなるような魅力があるのね?」
「ええ。正確には、相手が気持ちいいと感じる程度の強さと速さで少しずつ相手の肉体を把握していってるのだけれど」
「だけど、それがシオンと何の繋がりがあるのよ?」
「……細かいところは話せないけれど、似ているからよ。人間としての本質ではなく、一個としての在り方が」
仮にアリスの力を例えるなら、相手と寄り添い支える彼女は『同調』だろうか。同じ調べを作り上げられる彼女の能力は、とても優しく甘い。
永琳のモノクル越しに見る光景は、酷かった。吐き気を催す程に。見下ろすシオンの死体は、本当のところ『まだ生きている』。だがその『内側』がダメだった。
このまま放っておけば、本当に死ぬ。輪廻転生すら許さず、『シオン』という存在はもう二度と生まれ変われない。
今目を閉じ祈るようにシオンの手を握る、アリス。
アリスだけが、シオンを救えるただ一人の女神だった。
すいません、前回の更新から色々あってモチベが死にかけです。多分今までで一番最短。なんとかあげようとは思っていますが、筆が乗らない。
ネタは、あるんですけど……頭が痛い事がありまして。
なんとか続けられるよう頑張ります。