思い立ってから書くまで、一週間くらい間が空きました。その間、このネタのことばっか考えてて、塾の授業がまぁ集中できないことできないこと。おかげで地学全滅です・・・。妹が保育園児なんで、アンパンマン、連ドラ予約してあるんですよ。そんで毎週欠かさず見てるんですね。俺が。いや、結構面白いんですよ。バイキンマンも、苦手なキャラがいるんですよ。そのキャラ相手にした時のうろたえ方とかマジいいんですよ~。っていうことで書きました。皆さんもぜひ、アンパンマンで、童心を取り戻しましょう!
「っつぅぅ~・・・あっ!いっ、いたたたた!」
「はぁ・・・また負けたのね・・・。いい加減何とかしなさいよ!」
打撲に擦り傷、切り傷に骨折、今日も彼は、怪我のオンパレードで帰ってくる。
「ところで、もちろん私の言った通り、おいしいパンをたくさん持って帰ってきたのよね?」
自分が無茶なことを言っているのは分かっているが、ついそう言ってしまう。居候の身のくせしてこんな態度をとるのはおかしいっていうことは知っているつもりだ。でも、私から話しかけなければ、彼は、私でない違う人に、つきっきりになってしまう。
「いやーそれはそのぉ・・・はぁ、ごめんなさい。失敗しました・・・」
彼は本当に申し訳なさそうに私に謝る。
「はぁ・・・まったくもう・・・アンパンマンには負けて帰ってくるし、パンもないし・・・まったく・・ダメダメじゃない!」
アンパンマン。みんなのヒーロー。落し物探しから悪者退治まで、なんでも、嫌な顔一つせずにする、人気者だ。対して彼は、悪の権化。嫌がらせから世界征服まで、嫌なことしかしない、鼻つまみ者だ。
「今度は勝てると思ったのになぁ・・・」
彼は、世界中の不幸をいっぺんに背負ったような顔で、うなだれる。町のやつらの前では世界征服だのなんだの言って強気だが、私の前ではこんなもんだ。
「それ、毎回言ってるじゃない。・・まあいいわ。今日のご飯は何にするの?」
「・・うーん。そういえば、シチューおばさんに、シチューを貰ったんだった。それにしようかな。」
すべての人が彼を嫌っているわけではない。数人、ほんの数える程度の人が、彼の持っている優しさに気づき、普通に接してくれている。
「じゃあ、できたら呼んで。私は、食パンマン様とお話ししてくるから。」
「ほんとに好きなんだな~。あんな奴のどこがいいんだ?」
「うるさいわねー。次、食パンマン様の悪口言ったら、承知しないんだから!」
「はいはいごめんなさい・・・。」
まったく、いつになったら気づくのかしら。私だって、あんなナルシスト野郎、嫌いなのに。そう思いつつ、自分の部屋を眺める。
「気づかないのも無理ないか・・・」
ピンクの壁紙に欠けられた額縁には、食パンマンの絵。二人用のベットにおいてある食パンマンのぬいぐるみ。
彼が鈍感なのは知っているけれど、それでも、この気持ちがばれないように必死になってしまう。傍から見たらおかしいかもしれない。皆から嫌われ、疎ましがられ、いつだってヒーローに倒される役まわりの彼に恋をするなど、普通じゃないのかもしれない。でも、それでも私は、彼が好きなのだ。だから、本当は、傷つく姿を見たくはない。でも、私が言っても彼は、毎日の戦いをやめることはないだろう。
「あぁーっ!もーう!」
暗くなっていく思考を止めるために大声を出す。
「うわあっ」
ドアを見ると、バイキンマンが寝転んでいた。
「・・・なにしてんの?」
彼は起き上がって頭を掻いた。
「いやー、ご飯できたって言おうとしたらいきなり大声出すから・・・いやー、ほんとびっくりしたよ。どうしたの?」
「っくぅぅ・・いいからほら、いくよ!ごはんごはん!!」
彼をせかしながら席に着く。ほんのりと甘い香りが漂っている。今日はもらいものだが、彼は料理後得意なため、いつも作ってもらっている。
おいしい料理は私を饒舌にした。いわないでいいこと、いってはいけないこと、その区別もつけぬまま、私は話をしてしまった。
「バイキンマン、どうせ勝てないんだから、もう戦うのやめたら?」
言った瞬間すぐに分かった。それが言ってはいけないことであるということは。しかし、彼の体を心配しているんだという想いと、私だって、彼と同等だという自尊心が、謝ることを邪魔した。
「キン」
彼がスプーンを置いた。私の真意を探ろうとしているのだろうか。私の瞳をじっと見つめてくる。数秒がたつ。
彼はふぅ、と小さくため息をついて口を開く。
「ドキンちゃん。俺は、やめないよ。」
「どうして?あれだけ嫌われて、これだけ傷ついて、なんでまだ戦うの!?」
私は彼の腕、擦りむいた部分をつかむ。治療されていない、生々しい傷。バイキンであるがゆえに、消毒すらできないその宿命が、彼の腕一本から伝わってくる。
「っっ!!」
彼は苦痛に顔をゆがませ、それでも私の手を振り払うことなく、話を続けた。
「俺は自分の信じた道をいくしかないんだ。それが、バイキンとして生まれた俺の自分を慰める、唯一の方法なんだ。だから俺は戦い続ける。それだけなんだよ。」
彼は自分中の凶暴性を抑え込もうと、大きく息をしている。できるだけわかりやすく。できるだけ丁寧に。彼が私を大事にしてくれているのは知っている。けれどそれが、私には、つらい。
「アンパンマンが生まれて、この世界は平和になったんだろう。あいつはすごいよ。俺がいくら妨害しても、あいつがいる限り、それは崩れないよ。でもそれは、あいつがつくった、あいつなしには成り立たないものだ。それじゃだめなんだ!こんなこと、バイキン風情のおれがいうのはまちがってるかもしれない!それでも俺はっっ!・・・とにかく、おれはやめられない。誰が言おうとだ。だから、それがたとえ、ドキンちゃんだとしても・・・変えられない。」
彼は目を瞑り、大きく深呼吸をした。
「・・・・そうなんだ。そう・・そうだよね・・・。」
私は逃げるようにその場を離れた。いや、実際のところ、逃げたのだろう。ただそばにいるだけで、知ったような口をきいて、そんな自分が恥ずかしくなって逃げたのだ。きっと。部屋を出た私はUFOに乗り、そして城を出た。
・・・それが、最後の会話になると知らずに。