艦隊これくしょん~鎮守府活動記録~《更新停止中》   作:鉄夜

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第二話《呉》過去と現在

呉第一鎮守府 通路

 

バキ!

 

高雄型重巡洋艦3番艦、摩耶が天龍型軽巡洋艦一番艦、天龍を殴り飛ばしていた。

 

天龍は軽く吹き飛び壁を背もたれにするように倒れ摩耶を睨みつける。

 

「・・・てめぇなにしやがる!」

 

摩耶は天龍の胸ぐらを掴み、無理矢理立たせると自分の元に引き寄せる。

 

「なにしやがるだと?ふざけたこと言うのも大概にしやがれこの野郎!

いつもいつも無茶な特攻しやがって!」

 

「それで戦闘には勝ってんだからいいだろうがよ!」

 

皐月と夕立が二人の間に入り止めようとする。

 

「二人とも!落ち着くっぽいぃ!」

 

「喧嘩はダメだってば!」

 

だがそんなふたりの静止も虚しく摩耶が天龍に怒鳴りちらす。

 

「勝ち負けの問題じゃねぇ!大破状態で敵に突っ込むなんて何考えてやがる!

下手すりゃ死んでたんだぞ!」

 

「・・・・だからなんだよ。」

 

「・・・何?」

 

天龍が呆れたような目で摩耶を見ながら言う。

 

「俺達は元々そのために生まれたんだろうが。

そんなことも忘れちまったのか?

摩耶様よぉ!」

 

ゴッ!

 

そう言って天龍は摩耶の顔面に頭突きを食らわせる。

 

「ハッ!さっきのお返しだ!」

 

「てめぇ・・・上等じゃねぇかこの野郎!」

 

そこから二人の激しい殴り合いが始まった。

 

「金剛さん!見てないで止めてよ!」

 

皐月が側で見ていた金剛に助けを求める。

 

「えぇ!私デスか!?」

 

「同じ艦隊の仲間でしょ!

それに戦艦の金剛さんなら止められるかもしれないし!」

 

「わ・・・わかったネ。

やってみまス・・・。」

 

金剛は二人に近づき説得を試みる。

 

「あ・・・あの・・・二人とも落ち着いて、クールになるネ!

あ!そうだ!私と一緒に紅茶でm」

 

「「引っ込んでろぉ!」」

 

「・・・スミマセンデシタ。」

 

チンピラ二人に怒鳴られた金剛は、半泣きで皐月たちのもとへUターンしてくる。

 

「なにもしないで帰ってきたっぽい!? 」

 

「何やってんの金剛さん!」

 

「いやいや、無理デスって!

あんな目で睨まれたらこわくてちかづけナイヨ!」

 

そんな会話をしている間にも二人の殴り合いは激しさを増す。

 

すると。

 

パシッ!

 

「「!!」」

 

二人の拳を一人の少女が両手で掴み、止めた。

 

この鎮守府の秘書艦、龍驤である。

 

「楽しそうやなぁお前ら・・・うちも混ぜろや・・・」

 

そう言って龍驤は摩耶を後方へ投げ飛ばす。

 

そこには高雄型の二番艦、愛宕が待ち構えており飛んできた摩耶を受けとめる。

 

「キャ〜ッチ。」

 

「あ・・・愛宕姉!邪魔すんなよ。」

 

「はいはい、大人しくしましょーねぇ。

もうすぐ終わるから。」

 

「はぁ!?」

 

龍驤は天龍の腹を足の裏で蹴り飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

天龍は、壁に持たれるように倒れる。

 

「何すんだよ龍驤さn」

 

バキィ!

 

天龍の顔の横の壁、顔面スレスレに龍驤の足が叩きつけられる。

 

天龍は青ざめた顔で龍驤の顔を見る。

 

龍驤の鋭い目が「それ以上しゃべるな」と言っていた。

 

龍驤は天龍の襟首をつかむと引きづっていく。

 

「隼人が呼んどる、こっち来い。

愛宕はそのアホ医務室に放り込んどけ。」

 

「は~い。」

 

「り・・・龍驤さん!俺自分で歩けるから!

だから離してくれ!」

 

天龍は叫ぶがなすすべなく引きずられていく。

 

#####

 

執務室

 

「・・・・」

 

隼人は連れてこられた天龍を見て困った顔で聞く。

 

「なにこれ。

なんで天龍ちゃんそんなボコボコなの?

龍驤がやったの?」

 

「う・・・ウチやないもん!

天龍呼びに行ったらこいつ摩耶と喧嘩しとってん。」

 

「喧嘩って・・・ハァ・・・。」

 

溜息を吐いた隼人に天龍が言う。

 

「提督、用があるなら早くしてくれ。

俺忙しいんだよ。」

 

「あぁ、戦闘訓練なら出来ないよ。」

 

「なんで。」

 

「だって君、一週間の艤装使用禁止及び出撃禁止だから。」

 

「・・・はぁ?」

 

天龍は隼人の前に歩み寄ると、机を強く叩いて怒鳴る。

 

「どういう事だそりゃあ!」

 

「どういうことって君ねぇ。

大破状態で敵陣に突っ込むような危険な戦い方する子、戦場に出せるわけないでしょ?」

 

「戦果は挙げてんだろうが!」

 

「戦果云々の問題やない、下手したら轟沈してまうんやで?」

 

「轟沈が怖くて戦えるか!!

俺を前線から下げるな!!死ぬまで戦わせろ!!」

 

「・・・お前・・・ふざけた事言うんも大概にせえよ!!」

 

天龍に近づこうとする龍驤を、隼人は手で制した。

 

「隼人・・・」

 

隼人は天龍の目をまっすぐ見る。

 

「天龍、処分を一週間から二週間に延長ね。」

 

「なっ!?」

 

天龍は悔しそうに下唇を噛み、拳を強くにぎる。

 

「ちくしょお!!」

 

天龍は不機嫌そうに扉を開けると、大きな音を立てて閉め執務室から出て行った。

 

それを見届けた隼人は椅子にもたれかかって溜め息をはいた

 

「天龍ちゃんにも困ったもんだねぇ。

どうしたもんか・・・」

 

「なぁ隼人、ホンマに例の件アイツに任せるんか?

他にも適任なやつがおるやろ、木曾とか。」

 

「木曾には軍事部の統括任せちゃってるからねぇ。

これ以上負担かけるわけには行かんでしょ。」

 

「それは・・・そうやけど・・・」

 

「それにね龍驤、今回の件はあいつ以上の適任はいないと思うんだよ。

艦娘の中じゃあ君の次に駆逐艦達に懐かれてるしね。」

 

「でもそれならこのままやったらマズイで?

なんとかせんと。」

 

「うーん、そうだねぇ。」

 

隼人は椅子から立ち上がると窓から外を眺める。

 

「・・ねぇ、龍驤。」

 

「なに?」

 

隼人は龍驤の方を振り返ると、爽やかな笑顔で言った。

 

「デートしよっか。」

 

#####

 

「いってぇ!」

 

自室に戻った天龍は、天龍型二番艦の龍田に、摩耶にやられた傷を手当されていた。

 

「もう少し優しくしてくれよ龍田!」

 

「天龍ちゃんの自業自得でしょう。

少しはその死にたがり精神どうにかしたらどう?」

 

「いってぇぇ!」

 

しばらくすると龍田は、救急箱に道具を直した。

 

天龍の顔には絆創膏が貼られている。

 

「はい、おしまい。

それで?すごく不機嫌そうだけどなにがあったの?」

 

「・・・提督が、お前は二週間の出撃停止及び艤装使用禁止だって。」

 

「ふーん・・・で?」

 

「・・・え?」

 

龍田のまさかの冷たい態度に天龍は少し焦る。

 

「で?って・・・ほかになんかあるだろ!?

せめて慰めてくれるとかねぇのかよ!」

 

「あんな滅茶苦茶な戦い方してたら当然でしょ?

むしろ今まで見逃してくれてた提督に感謝すべきじゃない?」

 

「そう!その提督!!アイツなんにも分かってねぇよ!」

 

「分かってないって何が?」

 

天龍は少し不貞腐れながら言う。

 

「俺達は戦うために作られた兵器だ、

それは今も昔もかわらねぇ。」

 

「昔・・・ねぇ・・・」

 

艦娘は、素体となる人間に軍艦の魂を入れる事で生まれる。

 

ここでいう魂とは、艦の残骸などから抽出されたものである。

 

素体と魂の適合率が高ければ高いほど、記憶は鮮明に引き継がれるのだ。。

 

そして、艦娘なった人間は、普通の人間だった頃の記憶をほとんど失ってしまう。

 

つまり適合率が高い艦娘にとっては、軍艦の頃の事が唯一の記憶なのだ。

 

「俺達にとって戦うことだけが存在意義なのに、それなのにアイツは命を無駄にするなだのなんだの・・・。

それに周りの奴らも同調しやがって。

ほんと分かってねぇよ。」

 

龍田は天龍の言葉を聞いて溜息を吐いた。

 

「分かってないのはどっちなのかしらねぇ。」

 

天龍は少しムッとする。

 

「なんだよそれ・・・どういう意味だよ。」

 

コンコン

 

とここでドアを誰かがノックする。

 

「はーい。」

 

龍田が部屋のドアを開ける。

 

そこには、隼人が立っていた。

 

「おいっす。」

 

「あらぁ提督、どうしたの?

天龍ちゃんにまだなにか御用?」

 

「アンタと話すことなんざなにもねぇ。」

 

天龍は隼人に背を向けていう。

 

「いや、君たち二人に用なんだけどね。」

 

「あら、そうなの?」

 

「ほら、明日休暇でしょ?

だから龍驤といっしょに遊園地行こうって話してたんだけどさ、二人も一緒にどうかなぁと思ってね。」

 

「いいの?夫婦水入らずの時間を邪魔して。」

 

「いいのいいの、大勢で言った方が楽しいしね。」

 

「他の女の子連れて来て龍驤さん怒らない?」

 

「大丈夫だよ、浮気するわけじゃあるまいし。」

 

「でも私愛人枠狙ってるわよ?」

 

「うん、冗談でもそういうこと言うのやめよ?一瞬ドキッとしたから。」

 

龍田は隼人をからかってクスクスと笑う。

 

「それじゃあせっかくだし行こうかしらね。」

 

「ホント?じゃあ決まり。」

 

と、そこに天龍が割って入る。

 

「ちょっとまて!勝手に話進めんな!

俺は行くなんて一言も言ってねぇぞ!」

 

「ええ、いいじゃない。

天龍ちゃんしばらく出撃も遠征も訓練も出来ないんだから」

 

「そうそう、せっかくだしパァーっと遊ぼうよ。」

 

「んな事言ってなにか企んでんだろ。」

 

「何を根拠に?」

 

「顔に書いてあんだよ!その顔はなにか考えてる時の顔だ。」

 

隼人は深刻な顔をする。

 

「バレちゃあ仕方ないね、実は・・・。」

 

「実は?」

 

龍田が聞くと隼人は答える。

 

「一度でいいから可愛い女の子複数人連れて歩いてみたかったんだよね。」

 

「・・・は?」

 

隼人のまさかの答えに天龍は唖然とする。

 

「だってそれだけでなんか勝った気がするじゃん男として。」

 

「やだもー、提督ったら。」

 

龍田と隼人は笑いあっているが、天龍はポカンとしたままだ。

 

「じゃあそういう訳で、明日の朝九時に正門前集合ね。」

 

「はーい。」

 

「え?あ!ちょっとまて!!俺の話を聞け!!」

 

隼人は扉を閉めて執務室に戻っていった。

 

「あしたがたのしみねぇ、天龍ちゃん。」

 

「なにがだ!!人の意見も聞かず勝手に決めやがって!」

 

「何着ていこうかしら。

というより天龍ちゃんに何着せようかしら。」

 

「おい!だから話を聞けってぇの!」

 

#####

 

翌日、鎮守府正門前

 

隼人と龍驤は先につき、天龍達を待っていた。

 

龍驤はいつもの防止を脱ぎ、赤いズボンとパーカー姿だった。

 

隼人は、革ジャンとGパンを着ている

 

「しっかしアンタ革ジャン着るとチャラさ二倍増しやな。」

 

「ひどくない?これ結構高かったけど奮発して買ったんだよ?

もうちょっと褒めてくれたっていいでしょ。」

 

「休日のやっすいホストみたいやで?」

 

「ヤメテ」

 

そんな会話をしていると、遠くから龍田の声が聞こえてくる。

 

「提督ー。」

 

龍田は手を振りながら隼人達に近寄っていく。

 

龍田の頭にはいつものアンテナはついておらず、可愛らしいワンピース姿であった。

 

そしてその側にもう1人。

 

「おいっす龍田。

それと・・・…誰?」

 

「天龍だよ!」

 

天龍は声を荒らげる。

 

天龍も龍田と同じくワンピース姿で、頭に付けていた機械と眼帯を外していた。

 

「木曾といい君といい、なんで意味もなく眼帯つけてんの?」

 

「別にいいだろ!人の趣味にケチつけんな!」

 

「いや。別にケチつけてるわけじゃないけどさ。」

 

隼人は天龍に近づいて顔をじっと見る。

 

「な・・・なんだよ。」

 

「うん、やっぱり眼帯つけてない方が可愛いね。」

 

「なっ!////」

 

天龍が顔を赤くする。

 

龍驤は無言で隼人の足にローキックを食らわす。

 

「いったぁ!何すんの龍驤!」

 

龍驤は少し不機嫌そうに言う。

 

「・・・女ったらし」

 

「いや、別にそんな意味で言ったんじゃないから。」

 

隼人が龍驤をなだめていると、天龍が腕を組んで言う。

 

「で?遊園地いくんだろ?、行くならさっさと行こうぜ。」

 

「そうだね、それじゃあ車に乗ろうか。」

 

隼人たちは車に乗り込む。

 

「で、例のごとく運転はウチか。」

 

龍驤が、不満げに言う。

 

「隼人もたまには運転せえや。

免許持っとるやろ。」

 

「いやー、ペーパーなもんでねぇ。」

 

「ペーパー講習行ってきいや。」

 

「えぇ、めんどいじゃん。

それにどっちにしろ龍驤の方が運転うまいしね。」

 

「・・・しゃあないなぁ。」

 

龍驤はキーを差し込みエンジンをかける。

 

「・・・龍驤さん。」

 

「なんや?龍田。」

 

「足(ペダルに)届くの?」

 

「お前そんなにドリフト地獄にあいたいか?」

 

「ちょっ、やめなよ、俺と天龍ちゃんもいるんだよ?」

 

「いや、なんかペダルを踏もうとする度に足をプルプルさせてる龍驤さん想像しちゃって。」

 

「そこまでちいさないわ!

あと天龍!ツボにはまったかもしれんけど笑い堪えんのやめぇ!」

 

天龍は龍田のそばでプルプルと震えている。

 

「あぁー足届かへんー(モノマネ)」

 

「プッ!」

 

龍田の追い打ちに天龍はついに吹き出す。

 

「笑うな!」

 

怒っている龍驤を隼人がなだめる。

 

「龍驤落ち着いて、龍田もからかわないの。

じゃないと遊園地まで無事に行けるかわかんないから。」

 

「はーい。」

 

「まったくもう、ほな出るで」

 

四人を載せた車は静かに走り出した。

 

#####

 

数分後、一行は遊園地に到着した。

 

車を駐車場に止め、入場ゲートに向かう。

 

入場ゲート前はたくさんの人で溢れていた。

 

それを見た龍驤が声を漏らす。

 

「人多いなぁ。」

 

「休日だからねぇ。

家族連れとか、友達同士で来てる人がいるんでしょ。」

 

「駆逐艦の子達も連れてきてあげればよかったわねぇ。」

 

龍田が言うと隼人は微笑む。

 

「今度は皐月達とかも連れてこよう。

て言うかこのこと話したら十中八九ゴネられるだろうしね。」

 

「せやなぁ。

せめて土産は買っていかんとな。」

 

そんな会話を聞いていた天龍が吐き捨てるように言う。

 

「ハッ、家族サービスご苦労さまだな。」

 

「実際家族だしねぇ。」

 

「・・・あっそ」

 

「あ、もちろん天龍ちゃんもだよ」

 

「・・・」

 

隼人は三人の方を向く

 

「さてと、人数は大人3人と子供1人でいいんだっけ。」

 

「おいこら。」

 

龍驤が隼人に詰め寄る。

 

「ウチそこまで小さないわ!」

 

「ごめんごめん、冗談だよ冗談。」

 

4人は遊園地の受付に向かう。

 

列に並んでしばらくすると、4人の順番がまわってきた。

 

「大人4人で。」

 

「・・・え?」

 

受付の女性は一瞬だけ龍驤の方を見ると、

 

「畏まりました。」

 

そう言って隼人から賃金を受け取り四枚のチケットを渡す。

 

4人は入場ゲートへと歩いていく。

 

そして、入場ゲートにいるスタッフにチケットを渡して遊園地の中に入っていく。

 

「お前らー!今日はとことん遊ぶでー!」

 

ヤケクソぎみに叫ぶ龍驤をみて、隼人と龍田が小声で話す。

 

「龍驤さん、さっきの受付嬢の『え?大人でいいの?』って視線のせいでちょっと不機嫌ね。」

 

「俺らからならまだ冗談で済むけど初対面の相手にあんな目で見られたらねぇ。」

 

と隼人は苦笑いで龍驤を見て言った。

 

「で?隼人、最初は何乗る?

ウチはなんでもええで?」

 

「んー、そうだねぇ。」

 

隼人は少し考える。

 

「やっぱり遊園地って言ったらあれでしょ。」

 

#####

 

隼人たちがやってきたのは、ジェットコースターの前。

 

レールを登り高いところまで登ったコースターが90度近い角度で急降下していく。

 

それととも乗客たちの悲鳴が聞こえてくる。

 

「うっひょー、高いねぇ。」

 

「最高高度と最高速度は国内で一番らしいわよ。」

 

「へぇ、そりゃあすごい。」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

楽しそうに話す隼人と龍田のそばで、天龍と龍驤は顔が真っ青になっていた。

 

「ん?どうしたの?天龍ちゃん、

ひょっとして怖いの?」

 

龍田が聞くと天龍はごまかすように言う。

 

「いや、そういうわけじゃねぇんだけど。

こういうの乗るの初めてだし。」

 

「天龍ちゃんったら休日もろくにでかけないで訓練場に缶詰だものね。」

 

対して龍驤は、

 

「ウ・・・ウチはやめとこかなぁ・・・こういうの苦手やし。」

 

そう言って遠ざかろうとする龍驤の襟首を隼人がつかんで捕まえる。

 

「さっきなんでもいいって言ったよね?」

 

そう言って隼人は龍驤を肩に担いで歩いて行く。

 

「ちょ!隼人!ほんま無理やって!

勘弁してぇぇ!」

 

その光景を見て龍田がつぶやく。

 

「楽しそうねぇ、提督。」

 

「だな。」

 

「ねぇ天龍ちゃん、これからもいろんなところに出かけて遊ばない?

折角こうやって自由に動ける体を手に入れた訳だし。」

 

「・・・人間の体になっても俺達の本質は変わらねぇだろ。

今回みたいな事もこれっきりだ。」

 

そういうと天龍は隼人のあとをついて歩いていった。

 

「天龍ちゃん・・・」

 

竜田はその背中を少しの間、悲しそうに見つめていた。

 

#####

 

隼人達4人は列に並び、しばらくしてジェットコースターの一番後に座ることになった。

 

龍驤が安心したように言う。

 

「よかったぁ1番後で。

一番前やったら視界が開けて怖いからなぁ。」

 

「・・・そりゃあよかった」

 

四人が座り、少しすると安全バーが下ろされコースターが動き出す。

 

そして、上へ上へと登っていく。

 

その途中で天龍が気づく。

 

「なぁ、龍驤さん。」

 

「ん?」

 

「ジェットコースターってさ、原理的に一番後の方がスピードかかるから怖いんじゃね?」

 

「・・・え?」

 

そう言った頃にはもう遅く、コースターは急降下を始めた。

 

「ぎゃああああああああああああああああ!」

 

「イヤッフウウウウウウウウウウウウウウ!」

 

「きゃああああああああああああああああ!」

 

「・・・・・っ!!」

 

天龍以外の3人はそれぞれ悲鳴や歓声を上げる。

 

コースターは上下左右を縦横無尽に走る。

 

「あかん!死ぬ!死ぬ!」

 

「こんなんじゃ死なないって。」

 

「隼人!キミ知っとったやろ!

一番後ろの席が一番怖いって知っとって黙っとったやろ!」

 

「教えてても結果は変わんなかったって。」

 

コースターはしばらくすると、スピードを落としスタート地点に戻ってきた。

 

4人はコースターから降りる

 

「」

 

龍驤は言葉を失い呆然としている。

 

「いやぁ気持ちよかったねぇ。」

 

「フフ、そうねぇ。」

 

隼人は龍田とにこやかに会話している

 

「・・・」

 

「ん?どうしたの?天龍ちゃん、さっきから黙っちゃって。」

 

「え?・・・いや、その・・・」

 

天龍は、隼人に近づくと隼人の服の裾を掴み恥ずかしそうに顔を赤らめ目をそらしながら言う。

 

「て・・・提督、俺・・・もう1回乗りたい」

 

「え?」

 

「すごく気持ちよくて楽しかったから・・・だからその・・・」

 

隼人は微笑んで言う。

 

「いいよ、行こうか。

まだ時間はあるしね。」

 

天龍は花が咲くような笑顔で喜んだ。

 

「え?ちょっと待って、ウチの意見は!?」

 

「よし行こうか。」

 

「ちょっ!引っ張んな!ウチの話を聞けー!」

 

こうして4人はもう1度ジェットコースターを楽しんだのであった。

 

#####

 

4人は次の目的地に向かって歩いていた。

 

龍驤は隼人におぶられている。

 

「アカン・・・あれはアカン」

 

「さっきからそれしか言ってないよ龍驤。」

 

「誰のせいやと思ってんねん!

もうええから降ろせ!」

 

龍驤が隼人をポカポカと叩く。

 

「はいはい、降ろす降ろす。

降ろしますから暴れなさんな。」

 

隼人は龍驤を降ろした。

 

「まぁまぁ、龍驤さん。

提督も悪気があったわけじゃないんだから。」

 

「いやいや、どっからどう見ても悪意100%やろ!」

 

「俺はただ・・・龍驤に楽しんで欲しくて・・・」

 

「おい、嘘泣きやめぇや。」

 

龍驤は隼人に詰め寄りながらいう。

 

「とにかく!もう絶叫系は無しやで!行くならウチ抜きで行き!」

 

「はいはい、次は絶叫系じゃないから。

それならいいでしょ?」

 

「まぁ、それならええけど。」

 

そうして四人はしばらく歩き、

 

「よし着いた。」

 

着いた場所は病院を模したお化け屋敷だった

 

「帰る」

 

Uターンして帰ろうとする龍驤の襟首を隼人は掴む。

 

「絶叫系じゃなきゃいいんでしょ?」

 

「ウチがこういうの苦手って知っとるやろ!」

 

「秘書艦たる者一度言ったことは曲げない。」

 

「そういう問題やないやろ!」

 

その様子を見て天龍が鼻で笑う。

 

「情ねぇな龍驤さんは。」

 

「でも天龍ちゃんも怖い話とか苦手でしょ?」

 

「あのなぁ龍田、中にいるのは本物じゃなくて生きてる人間なんだから怖がる必要はねぇだろ。」

 

「頼もしいわねぇ天龍ちゃん。」

 

「まぁ何かあったら俺にしがみついていいぞ。」

 

#####

 

「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ」」

 

天龍と龍驤が叫びながら隼人の腕にしがみつく。

 

「首!首が!生首が!」

 

「やめろ!来んな!こっち来んな!来んな言うとるやろ!」

 

「うわぁ!今手になんか当たった!ヌメっとしたもんが当たった!」

 

龍田は、

 

「賑やかねぇ。」

 

そう言ってその様子を見て微笑ましそうに笑った。

 

一方隼人は、

 

「へぇ、良く出来てるねぇ。」

 

「何を作り物のグロ死体まじまじと見とんねん!」

 

「提督!止まってないで動けよ!出来るだけ早く!」

 

「はいはい、ていうかこの状態すごく動きにくいんだけど。」

 

その様子を見ていた龍田は、

 

「きゃー、こわーい」

 

棒読みでそういうと隼人の腰にしがみつく。

 

「龍田まで何やってんの?」

 

「背中ががら空きよ、提督。」

 

「怖いからそういう言い方はやめなさい。」

 

「君ら!だべっとらんではよ行くで!」

 

隼人達は出口に向かって歩いていくが、その途中でも様々な仕掛けが天龍と龍驤を襲い、

その度に2人は悲鳴を上げていた。

 

「もういややぁ・・・はよ出たいぃ・・・グスッ」

 

「うぅ・・・提督ぅ・・・出口はまだなのかよぉ・・・」

 

天龍と龍驤は隼人にしがみつき離れようとしない。

 

「動きづらいって言ってんでしょ。

ほら、もうすぐ出口だよ。」

 

隼人たちが出口から出ようとするとその道を一人の男が露骨に塞ぐ。

 

この遊園地のスタッフの様だ。

 

「こっちにも出口があるぞ!」

 

どうやら、廃病院に肝試しに来た人物という設定らしい

 

男が指し示す方向には確かに別の部屋がある。

 

四人は促されるままその部屋に入る。

 

部屋には赤い扉とEXITと書かれた扉があるが扉があるがしまっていて開いていない。

 

すると、隼人たちが入ってきた扉が閉められた。

 

「な・・・なんだよぉ・・・」

 

そして照明が落ち、部屋が真っ暗になる。

 

「なに!?なんなん!?」

 

次の瞬間赤いライトが部屋中を照らし、赤い扉から血だらけの幽霊たちが雄叫びを上げながら隼人たちの方へ走って来た!

 

「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ」」

 

龍驤と天龍の悲鳴がお化け屋敷中に響き渡った

 

#####

 

お化け屋敷を出た後、天龍はベンチに座って放心し、龍驤はベンチの上で隼人に膝枕されていた。

 

「あかん・・・あれはアカン・・・」

 

「舐めてたぜ・・・まさかあそこまでクオリティーが高いなんて思わなかった・・・」

 

隼人と龍田はそんなふたりを見て微笑んでいる。

 

「二人とも尋常じゃないほど怖がってたねぇ。」

 

「ほんとねぇ。」

 

龍驤が今にも消えてしまいそうな声で言う。

 

「もういやや・・・絶叫系もホラー系もホンマに勘弁して」

 

「うーん、そうだねぇ・・・」

 

隼人は少し考えて手をぽんと打ち、遊園地の地図を指差す。

 

「それじゃあ次、ここ行こうか」

 

#####

 

隼人達は、『ワンワンふれあい広場』と書かれた場所に来た。

 

入口から中に入ると、沢山の犬がいた。

 

「うわぁ、めっちゃかわええやん!」

 

龍驤が目を輝かせてはしゃぐ。

 

「ほんとねぇ。」

 

そう言って龍田は近づいてきた子犬の頭をなでる。

 

「・・・」

 

天龍は黙ってその様子を見ている。

 

すると、天龍の足元に子犬が寄ってきて天竜を見上げて、ワンと鳴いた。

 

「ん?なんだ?」

 

天龍がしゃがむと子犬は前足を天龍の膝にかけて顔をぺろぺろと舐めだした。

 

「あ、こら何すんだ、くすぐってぇだろ。」

 

そう言って天龍は微笑む。

 

パシャッ

 

隼人はその様子を携帯のカメラで撮影した。

 

そして、微笑みながら天龍を見ている。

 

そして龍驤は、

 

「ちょっ!やめ!やめて!うわぁぁぁぁ!」

 

大型犬数体に押し倒されて舐め回されていた。

 

「ほんとに龍驤は期待を裏切らないねぇ。」

 

「見てんと助けてぇぇ!」

 

#####

 

夕方

 

隼人と天龍は観覧車に二人で乗っていた。

 

龍田と龍驤はすぐ後ろの別のゴンドラに乗っている。

 

ゴンドラの窓から天龍は外を眺めている。

 

「どう?天龍。

ここからの眺めは最高でしょ。」

 

「・・・あぁ、最高だな・・・本当に。」

 

天龍は微笑むが、すぐに笑顔を消して隼人に言う。

 

「・・・最初からこれが目的だったのか?」

 

「・・・なにが?」

 

「とぼけんなよ、分かってんだろ?」

 

「・・・さぁ、どうだろうね」

 

天龍は小さく笑うとまた真剣な顔に戻って言う。

 

「俺達は戦うために生まれた兵器だ、それは今も昔も変わらねぇ。」

 

「ふーん、ただの兵器がこんな顔するかねぇ。」

 

そう言って隼人は、犬に顔を舐められて微笑む天龍の写真を本人に見せる。

 

「な!いつの間に撮ったんだそんなもん!////」

 

「よく撮れてるでしょ?

どうよ、この楽しそうな笑顔。 」

 

「・・・あぁ、本当に楽しかった。」

 

天龍はゴンドラの窓から景色を眺めて言う。

 

「知らなかった、鎮守府の外の世界がこんなに広くて楽しかったなんて。」

 

「そりゃあ君はいつも訓練場に篭もりっきりだからねぇ。」

 

「・・・俺が艦だった頃はさ、正直人間が羨ましかった。

自由に動いて、自由に考えて・・・それができる人間が羨ましくて仕方なかった。」

 

天龍は悲しそうな顔をする。

 

「でも、艦娘になって・・・望んでたはずの人間の体を手に入れた時思ったんだ、

散々人を殺してきた俺が、人並みの幸せを望んでもいいのかって。

だから俺は、戦い続けることでその罪を償おうと思ったんだ。」

 

「君は・・・君達は悪くないさ。

悪いのは時代と人間だよ。」

 

「深海棲艦は、あの頃の戦争で沈んだ艦の怨念が具現化したものだ。

あの頃の俺達の行いのせいで今こうなってんだよ。」

 

「それでも、君たちだけが悪いわけじゃない。これは、全人類への罰なんだよ。

だから・・・。」

 

隼人は天龍に微笑みかける。

 

「君は幸せになってもいいんだよ、天龍。

君の過去も今も全部一緒に背負ってやるからさ。

それが提督の仕事だよ。」

 

天龍は窓の外を眺めて呟く。

 

「そっか・・・なら、信じてみるかな」

 

天龍は隼人の方を向き直いて言う。

 

「提督、俺もうちょっと自分のために生きてみるよ。

だから提督も俺のことちゃんと面倒みてくれよ。」

 

「当たり前でしょ。

君みたいなじゃじゃ馬、ほっとけるわけないでしょ?」

 

隼人がそういうと、天龍は花のような笑顔を咲かせた。

 

#####

 

天龍と隼人の様子を龍驤と龍田はゴンドラの窓から覗いていた。

 

龍驤は安心したように微笑んでいる。

 

「なんとかなったみたいやな。」

 

その龍驤を龍田はニコニコと微笑みながら見ていた。

 

「何や龍田、その顔。」

 

「ずいぶんと余裕なのねぇ、龍驤さん。

旦那さんがよその女の子と一緒にいるのに危機感感じないの?」

 

「・・・あんなぁ、龍田。」

 

龍驤は余裕の表情で龍田に言う。

 

「アイツがウチ以外の女に手ぇ出すわけないやろ?」

 

「フフ、正妻の余裕ってやつね。

でも龍驤さん。」

 

龍田は龍驤に微笑んで言う。

 

「あれだけ叫んだり、怖がったりした後にそんな事言っても締まらないわよ?」

 

「ちょ、やめてやぁ、せっかくかっこええ事言うたのに。」

 

そう言って2人は笑いあった。

 

#####

 

「ただいまー」

 

鎮守府に帰ってきた隼人と龍驤は執務室に足を運ぶ。

 

そして隼人はソファーに腰掛ける。

 

「フーッ、疲れたぁ。」

 

「ほんまやねぇ。」

 

龍驤は隼人の膝を枕にしてソファーに横になる。

 

「あら、今日は随分と甘えんぼうじゃない。」

 

「そりゃあ誰かさんのせいでめちゃくちゃ叫んだからなぁ。」

 

龍驤は寝転びながらムスッとした顔で隼人の額をペチペチと叩く。

 

「そりゃあお気の毒。」

 

そう言って隼人は龍驤の手を取り手の甲にキスをすると愛おしそうに頭を優しくなでる。

 

「ねぇ龍驤、君は幸せ?」

 

「なんやねん急に。」

 

「 ほら、艦娘なる女の子って適性があれば半強制的に艦娘にされるじゃん。

やりたいことや将来の夢とかあった筈なのに、昔沈んだ軍艦の記憶を植え付けられて武器持たされて戦って、 君たちは幸せなのかなって。」

 

「よう分からんよ、人間やった頃の記憶なんてほとんど残ってないもん。」

 

「それもそうか。」

 

「君はどうなん?」

 

「うーん・・・そうだねぇ。」

 

隼人は微笑むと龍驤の頭をなでながら言う。

 

「可愛い娘達もできたし、同期からロリコン扱いされるけど嫁さんもできた。

・・・うん、幸せかな。」

 

「そっか・・・それならうちも幸せかな。」

 

「なにそれ。」

 

「だって、うちも同じやもん。

艦娘になって、みんなと家族になれて君に会えた。

この7年間。楽しいことだけやなかったけど。

 

それでも昔やったら考えられへんくらい楽しくて、だから今、うちは幸せや。

せやから。」

 

龍驤は起き上がり、隼人の腕に抱きついて満面の笑みで言う。

 

「これからもよろしゅうな、旦那様。」

 

隼人はフッと笑う。

 

「どうしたん?」

 

「いや、いい女だと思ってさ。」

 

「・・・ロリコン。」

 

「今だけはその汚名受け入れてもいいや。」

 

隼人は龍驤を抱き寄せると優しく口づけをした。

 

#####

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

鎮守府の運動場、皐月達駆逐艦は疲れ果て仰向けに寝転がっていた。

 

「おい皐月、誰が寝転がっていいって言った。」

 

「待ってよ天龍さん・・・少し休ませてよ。」

 

「何言ってんだ!こんなことでへばってたらすぐ沈んじまうぞ!

言っとくがウチには死にたがりにくれてやる資材なんてねぇからな!

おら、分かったらあと10周!」

 

「ヒィー!鬼教官!」

 

そこにもう1人近づいてくる人影があった。

 

摩耶である。

 

「摩耶さん!助けて!」

 

摩耶は笑顔で皐月に言う。

 

「皐月、今死ぬような思いしとけば実践で死ななくなるから頑張れ。」

 

「こっちも鬼教官っぽい!?」

 

駆逐艦達は半泣きになりながら走り出した。

 

その様子を、隼人と龍驤は執務室の窓から見ていた。

 

「やっぱり、あの2人が適任だったみたいだね。」

 

「駆逐艦の教官、確かにあの2人なら上手くやってくれるやろしね。」

 

天龍と摩耶は、二人で笑い合うと、拳を合わせた。

 

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