艦隊これくしょん~鎮守府活動記録~《更新停止中》   作:鉄夜

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第四話 《幌筵》問題児だらけの鎮守府

幌筵第二鎮守府

 

鬼灯奈々(ほおずきなな)は自身の布団の中で寝息を立てていた。

 

「スゥー・・・スゥー・・・」

 

ワイシャツに短パンという、暖房が効いている室内だからといって女子力のかけらもない奈々を起こすために目覚まし時計がけたたましい音を上げる。

 

「うーん・・・」

 

呻きながら手探りで目覚ましを探しスイッチを押す。

 

そして体を起こして背伸びをする。

 

「・・・さてと。」

 

ベッドから降りると奈々は部屋の出入り口へと歩いていく。

 

なぜなら、いつもドアの前で待っている忠犬が居るからだ。

 

奈々がドアを開くとそこには

 

「おはようございます、提督。」

 

問題児その1。

陽炎型駆逐艦の二番艦、不知火が立っていた。

 

「おはよ、不知火。

で、いつものことだけどいつからそこに立ってたの?」

 

「五時半からですが?」

 

「・・・廊下は暖房効いてないってのに・・・」

 

彼女の問題点、それはこの異常なまでの忠誠心と言える。

 

提督となった人間はまず最初に、

5人の艦娘から一隻を選択するか、

一定の資材を渡され駆逐艦から軽空母までの戦艦と正規空母以外の艦娘を一人だけ建造するかを選ばされる。

 

奈々の場合後者を選んだ。

 

不知火はその時に建造し、以来今まで秘書艦として活躍してもらっているのだが。

 

奈々の命令を第一とし、その命令を遂行するためならどんなことでもするであろうその忠誠心はその時から一向に揺らぐ気配はない。

 

試しに「待て」と言って放置してみたところ、本当にその場から動かず奈々がもういいと言うまで数時間待ち続けた。

 

「いつも言ってるけど毎朝ドアの前で待ってなくてもいいんだぞ?」

 

「いえ、朝から提督にお供するのが秘書艦の役目ですから。」

 

「それならせめて起こすなりなんなりしろよ。」

 

「提督の眠りを妨げることはできませんから。」

 

「・・・さいですか」

 

奈々が諦めたようにため息をつく。

 

「とりあえずすぐ着替えるから中に入って待っといて。」

 

「失礼します。」

 

不知火を部屋の中にに入れて身支度を整える。

 

髪の毛を梳かしツインテールに結ぶ。

 

その上から海軍の制服を羽織る。

 

「さて行くか、まずは朝の最初の仕事だ。」

 

「はい。」

 

そう言って二人は部屋を出る。

 

二人がまず向かったのは艦娘達の憩いの場、

間宮食堂である。

 

食堂に入ると奈々は食堂の料理長、間宮に声を掛ける。

 

「おはよう御座います間宮さん。」

 

「あら、おはようございます。

提督さん。」

 

「あ!司令官!」

 

間宮が笑顔で返事をすると間宮のとなりで一緒に朝食の準備をする小さな影が声をあげ奈々に嬉しそうに近寄っていく

 

「雷もおはよ。

今日も間宮さんのお手伝い頑張ってるなぁ。

偉いぞ。」

 

そういって雷の頭を撫でる。

 

「えへへ。」

 

雷は嬉しそうに目を瞑って微笑む。

 

二人がそうしている間に不知火が間宮に尋ねる。

 

「間宮さん、今日はどうですか。」

 

「はい、いらっしゃってますよ。」

 

「そうですか。」

 

間宮とそこまで会話すると不知火は奈々とアイコンタクトを取る。

 

奈々はそれに応じて頷く。

 

「雷、ちょっと待ってな。」

 

「うん!」

 

奈々と不知火は二人で厨房へと入っていく。

 

奥にある食料庫の側にある大きなケージの中に、彼女はいた。

 

「ど・・・どうも。」

 

「おはようございます、赤城さん。」

 

ゲージの中から冷や汗をかきながら不知火を見上げているのは、

この鎮守府の問題児その2

正規空母の赤城である。

他の赤城の例に漏れず多ぐらいなのだが、

食に対する執念は他の追随を許さない。

今彼女がこうなっているのもその食い意地のせいである。

 

「赤城・・・お前なぁ・・・。」

 

奈々が呆れたように言う。

 

そう、赤城がこの罠に引っ掛かったのは初めてではない。

 

切っ掛けはまだ奈々が着任して間もない頃。

 

間宮から食料庫の食材がなくなっていると相談を受け、

何か生き物が紛れ込んでいるのではとゲージを使った罠を設置することにした。

 

よくある餌を取ればゲージの蓋が閉まるあれだ。

 

念のために大きめのゲージを設置し翌日の朝に確認してみると、掛かっていたのがこの赤城である。

 

散々説教をし、懲りたかと思いきや、

翌日も、そのまた翌日も同じように罠にかかり。

 

もはや罠を確認して中にいる赤城を説教(たまに物理)をするのは毎日の日課となっている。

 

「お前いつになったら学習するの!?

恥ずかしくないのか!こんなイノシシ捕まえる罠みたいなのに引っかかって!!」

 

「いやだって、そこに美味しそうな食べ物があったら飛びついちゃうじゃないですか。」

 

「動物でもあるめぇし普通飛びつかねぇよ!

ましてやお前一航戦だろ!誇りはないのか!?」

 

「誇りで飯は食えませんよ(ドヤァ」

 

「偉そうにドヤ顔で言うな馬鹿!」

 

散々怒鳴り散らしハァハァと息を吐く奈々。

 

その後ろから不知火が出てきて戦艦ばりの眼光で赤城を睨みながら言う。

 

「赤城さん、あまり提督に迷惑をかけると、

また吊るしますよ?」

 

そういった不知火に赤城はフッと笑い、

 

「甘く見られては困りますよ不知火、

木に吊るされるのはもう慣れましたよ!」

 

「それも自慢げに言うことじゃないだろ。」

 

奈々が頭を抱えてツッコンだ。

 

「それじゃあ(ピーッ!)を(バキュン!)して×××××しますよ?」

 

「待ってください不知火!死んじゃいます!

私死んじゃいますから!」

 

「それが嫌なら少しは反省してください。」

 

「ハイ、ワカリマシタ。」

 

赤城がプルプルと震えながら答える。

 

「不知火、わが秘書艦ながら恐ろしい子。」

 

奈々が苦笑いを浮かべて言う。

 

「提督、そろそろ時間では?」

 

不知火がそういうと奈々は腕時計を確認する。

 

「お、そうだな行くか。」

 

奈々と不知火が厨房を出て食堂に戻ると雷が駆け寄ってきた。

 

「司令官!今から暁姉ぇ達起こしに行くの?」

 

「そのつもりだけど?」

 

「ごめんね、ホントは私がやらなきゃいけないのに・・・」

 

そう言って俯く雷の頭に奈々はポンッと手を置いて言う。

 

「別にいいっての、あたしも好きでやってることだし。

あんたは自分のやりたいことやってな。」

 

「・・・うん!」

 

雷は微笑むと間宮の手伝いに戻っていった。

 

「じゃあアタシらも行くか。」

 

「・・・はい。」

 

#####

 

「提督は、本当にお優しいお方ですね。」

 

駆逐艦寮に向かう道中で不知火がそう言った。

 

「どうした?急に。」

 

「雷のことです。

やりたいことをやらせてあげているのがとてもお優しいと思いました。」

 

「そんなんじゃないって。」

 

奈々は歩きながら言葉を続ける。

 

「雷はいい子だからさ、あんましわがままとか言わないんだよ。

そんなあの子が初めて自分に必死にお願いしてきたんだ。

なんかしてやりたいって思うのは当然だろ?」

 

「まるで母親のようですね。」

 

「まぁな、あいつらまだ子供だし甘えられる親代わりがいるんだよ。

でも優しいって言うならお前だってそうだぞ?」

 

「不知火が?なぜですか?」

 

「教えなーい、そういうのは自分で気づけ。」

 

「・・・分かりました。」

 

二人は駆逐艦寮に入ると、その中にある第六駆逐隊の部屋へと入っていく。

 

部屋の中には3つの布団が敷かれており、右から二つ目と3つ目の間にもう一つ布団が入りそうなスペースがある。

 

そこにはいつも雷が眠っており起きると自分で布団をたたみ片付けているのだ。

 

それを確認すると奈々は声を上げる。

 

「ほらぁ、お前ら朝だぞー、起きろぉ」

 

その声が部屋に響くと室内に足る3つの布団がモゾモゾと動き出す。

 

そして、右端の布団以外から小さな影がゆっくりと起き上がった。

 

「ふわぁ・・・おはようございます、司令官さん。」

 

まず最初に挨拶をしたのは暁型四姉妹の末っ子暁型4番艦、電(いなづま)である。

 

「プリヴィエート(おはよう)司令官。」

 

そのとなりで目をこすっているのは、

暁型四姉妹の次女、

そして鎮守府の問題児その3、響(ひびき)である。

 

改装を済ませ正確にはヴェールヌイなのだが響本人の希望で皆彼女の事を響と呼んでいる。

 

理由を聞くと「こっちの名前の方が好きだから」と答えた。

 

さらにこの響、何をするかが毎回読めず、

フリーダムに行動するため、奈々も手を焼いている。

 

「はい、おはよ。

ほら、暁も起きろ。」

 

奈々がもう一つの布団をゆすると眠たそうな声が聞こえてくる。

 

「うーん、後五時間〜」

 

「結構がっつり寝る気だなこの野郎。

いいから起きろ。」

 

もう一度揺すると声の主がゆっくりと起き上がり背伸びをして元気に叫ぶ。

 

「おはよう!司令官!」

 

彼女は暁型四姉妹の長女、曉(自称レディ)である。

 

「おはよう暁、朝から元気だな。」

 

「当然よ!レディは早起きも得意なんだから。」

 

「姉さんさっき思いっきり後5時間とか言ってたけど?」

 

「う・・・うるさいわよ響!。」

 

「はいはい、とりあえずお前ら歯磨いて来い。そのあと髪梳かしてやるから。」

 

奈々がいうと3人は洗面台に行き歯を磨きに行く。

 

戻ってくると暁は奈々の前に陣取る。

 

「えへへ〜、私しれいかーん♪」

 

楽しそうにそう言って奈々の前にしゃがむ暁。

 

「はいはい。」

 

奈々はそう言って微笑むと櫛を手に取る。

 

「全く姉さんってば、それのどこがレディなんだか。」

 

「甘えん坊なのです。」

 

響と電がそう言うと暁は頬を膨らませて言う。

 

「いいの!司令官の前ではお子様になるって決めてるんだから!」

 

「いや、姉さんは普段からお子様だよ。」

 

「なんですって!?」

 

「朝から仲いいなお前ら。」

 

暁は気持ちよさそうに奈々に髪を梳かしてもらっている。

 

「では、二人の髪は不知火が梳かしましょう。」

 

「あぁ、私は自分で出来るから大丈夫だよ。」

 

「では、お願いするのです。」

 

電が不知火の前に座り、響は櫛を手に取り自分で髪を梳かし始める。

 

「司令官に髪を梳かしてもらうの気持ちいいから好き!」

 

「それはそれは、光栄でございますなぁ姫。」

 

そう言いながらナナは自分の隣で電の髪を梳かす不知火に目をやる。

 

「はわわ、くすぐったいのです、不知火さん。」

 

「フフフッ、ほら大人しくしてください。

ちゃんと出来ないじゃないですか。」

 

その様子を見て奈々が静かに微笑む。

 

(子供達と絡んでる時は自然と笑顔になってんのに・・・なんで気付かねぇかなぁ)

 

ナナは心の中でつぶやいた。

 

「どうしましたか?提督。」

 

「いや、なんでもない。」

 

3人の髪を梳かしたあと、不知火が電の髪の毛を結び五人は立ち上がった。

 

「さて、そろそろ行くか」

 

奈々がそういうと五人は部屋から出て出口に向かうために駆逐艦寮の廊下を進む。

 

しばらく進んでいると。

 

ドドドドドドド

 

奈々たちの背後から何かが物凄い勢いで走ってくる音が聞こえてきた。

 

「不知火、この音って。」

 

「えぇ、間違いなく彼女ですね。」

 

音がする方向から走ってきていたのは。

 

「うおおおおおおおお!」

 

鎮守府の問題児その4。

 

長門型戦艦1番艦、長門である。

 

彼女の説明は・・・しなくても分かるだろう。

 

「おはよう!我が天使達よ!

さぁ、私が優しく抱きしめてやろう!」

 

長門はそう言うと第六駆逐隊に飛びつこうどダイブする。

 

その長門の前に奈々は躍り出ると、

 

「天」

 

と言って拳を振り上げ、

 

「誅!」

 

と言って長門の脳天に拳を叩きつける。

 

「ぐはっ!」

 

長門は廊下に思いっきり叩きつけられる。

 

「長門・・・戦艦のお前がなんで駆逐艦寮にいるんだ?」

 

手をパンパンと払いながら奈々がいうと長門が頭だけを上げて言う。

 

「知れたこと!我が天使、第六駆逐隊を愛でに来たに決まっている!」

 

「堂々と言うな!このロリコン戦艦!」

 

「私が・・・ロリコンだと?」

 

長門はムクっと立ち上がり奈々を指さしていう。

 

「可愛いものを愛でて・・・何が悪い!」

 

「少なくとも愛でるだけのやつはそんなに息を荒らげて興奮してねぇよ!」

 

長門は腕を組んで仁王立ちしながらいう。

 

「それにしても、さすがに戦艦武蔵の血を引くだけあって流石だな奈々。」

 

「あんたが母さんと同じ戦艦だと思うと涙出てくるわ。

まさかそれが原因でリンガから飛ばされてきたんじゃないだろうな。」

 

「いや、それは違う。

確かにリンガにも駆逐艦はいたがとても強くてな、

何度も愛でようとしたが、その度に返り討ちにあった。」

 

「それでも愛でようとするあたり流石だわ。」

 

「フッ、そう褒めてくれるな。」

 

「いや、どっちかって言えば軽蔑してるんだけど。」

 

長門は拳をグッと握り声高らかに叫ぶ。

 

「だからここに来て私は誓った!

いつか必ず!この鎮守府中の駆逐艦を愛で回す!」

 

「あらあら〜、こんな所にいたの?」

 

背後から聞こえたその声に長門は露骨にビクッと体を震わせゆっくり振り返った。

 

「む・・・陸奥・・・」

 

声の主である陸奥はニコニコと何故か威圧感のある笑顔を長門に向けながらゆっくり近寄ってきた。

 

「戦艦寮にいないからまさかとは思ったけど、駆逐艦寮で何をしようとしてたのかしら?

ね え さ ん?」

 

そのあまりの威圧感に電と暁は体を抱き合って震えていた。

 

「まさか駆逐艦の子達におイタしようとしたわけじゃないわよねぇ。

もしそうなら飛鳥提督に命じられてお目付け役として一緒に異動させられた私の身にもなってほしいわぁ。」

 

あくまで笑顔を崩さずにそれでも威圧感を放ちながら長門に迫る陸奥。

 

「ま・・・待て陸奥!私がそんなことするわけ無いじゃないか!」

 

「そうなの?」

 

陸奥は暁達3人に聞く。

 

暁達はお互いに顔を見合わせて陸奥の方を向くと

 

「「「襲われそうになった(のです)」」」

 

と声を合わせて言った。

 

「そう・・・どういう事かしらぁ?姉さん?」

 

再び優しい笑顔(比喩)を長門に向ける陸奥。

 

「いや・・・これは・・・その・・・」

 

一瞬にして顔を青くする長門。

 

陸奥はその長門の襟首を掴み

 

「ちょっとこっちで お は な し しましょうか。」

 

そう言って引きずっていく。

 

「や・・・やめろ!死にたくない!死にたくなーい!」

 

長門の悲鳴を無視して引きずって行く陸奥は奈々の方を振り返って言う。

 

「そう言えばさっき天龍ちゃんが言ってたんだけど、龍田ちゃんがまた起きないらしいわよ。」

 

「・・・またか、あのゲーマー。」

 

「昨日も遅くまで起きてたみたいよ?

起こしてあげたほうがいいんじゃない?」

 

「・・・了解」

 

そのことを伝えると陸奥は叫ぶ長門を引きずっていった。

 

それを見送ると奈々は不知火達の方を向いて言った。

 

「悪い、用事できた。

先に食堂行って飯食っといてくれ。」

 

「了解しました。」

 

不知火達は奈々と離れ、食堂に歩いていった。

 

「さてと。」

 

四人を見送ると奈々は携帯を取り出してある人物にスマホで電話をかけた。

 

「もしもし金剛。」

 

『oh奈々!どうしましたか?』

 

「お前今皐月と一緒にいるか?」

 

『Yes!さっき迎えに行ったところデス!』

 

「そっか、じゃあごめんだけど皐月と一緒に

駆逐艦寮に来てくれないか?

頼みたいことがあるんだ。」

 

『OK!フルスピードで行くネ!』

 

金剛はそう言って電話を切った。

 

それからしばらくすると。

 

ドドドドドドド!

 

廊下の先から騒々しい音を立てて女が走りながら迫って来た。

 

良く見るとその女は小学生くらいの金髪ツインテールの少女を肩車しながら走っている。

 

「「イィィィィィィヤッホォォォォォォ!」」

 

二人は元気に叫びながら廊下を疾走し

 

ビュン!

 

奈々の横を通り過ぎた。

 

「・・・おい」

 

しばらくすると少し離れた場所から二人の話し声が聞こえてくる。

 

「What!?奈々はどこに行ったデス!?」

 

「金剛行き過ぎ!司令官の前通り過ぎちゃったよ」

 

「Oh!急いで戻りましょう皐月!」

 

二人は来た道を急いで引き返し、奈々の元へと来た。

 

「おはよう!司令官!」

 

「Good morningデス!奈々!」

 

問題児その4と5、戦艦金剛&駆逐艦皐月。

 

この二人は常にテンションマックスで、

常に二人で騒ぎ回ったり、遊びまくったりで、煩いことこの上ない・・・のだが。

 

「なんだろうなぁ、今日会った問題児の中でお前らが一番ましな気がする。」

 

「?、どういうことです?」

 

「いや、何でもない。」

 

と奈々は頭を振った。

 

「それで司令官、ボクたちになにか用?」

 

と皐月が首を傾げる。

 

「ああ、実はお前たちに起こしてもらいたいやつがいてな。」

 

奈々がそういうと二人は笑顔で答える。

 

「なーんだ、それなら僕たちに任せてよ!」

 

「エキサイティングに、そしてバイオレンスに起こしてあげるネ!」

 

「いや、エキサイティングはともかくバイオレンスはいらない」

 

奈々は二人を天龍と龍田の部屋へと連れていく。

 

部屋の前へと行くと奈々は扉を強めにノックして中にいるであろう人物に声をかける。

 

「おーい、龍田ァ!朝だぞぉ起きろ!」

 

それを何度も繰り返すが中からは返事がこない。

 

「・・・しょうがねぇか。」

 

そういうと奈々はポケットから鍵を取り出す。

 

鎮守府内の扉のマスターキーである。

 

奈々はその鍵で部屋の扉の鍵を開けると後ろにいる皐月と金剛に声を掛ける。

 

「二人とも、準備はいいか?」

 

皐月と金剛は軽く準備運動をしながらうなづいた。

 

「よし、じゃあ行ってこい!」

 

そう言うと奈々が部屋の扉を開けると、

ハイテンションコンビが勢い良くなかになだれ込む。

 

それを確認すると奈々は静かに扉を閉じた。

 

部屋の中から元気な声と激しい音が聞こえてくる。

 

「おっきろぉ!朝だぞぉ!」

 

「早く起きなきゃ、No!なんだならね!」

 

「あーたーらしーいー朝がきた♪」

 

「デースデース♪」

 

それを聞いていた奈々は

 

「ほんと元気だなぁ、あいつら」

 

苦笑いを浮かべながらそうつぶやいた。

 

しばらくすると音と声は止み扉があいて中から皐月と金剛が出てきた。

 

「終わったよ!司令官!」

 

元気にそう言った皐月の頭を優しく撫でて奈々はいう。

 

「ん、お疲れさん。

ここはもういいからお前らも飯食って来い。」

 

「了解デース!」

 

皐月と金剛はそう言って奈々に手を振りながら走り去っていった。

 

奈々は二人の姿が見えなくなるまで見送る。

 

「さてと。」

 

奈々が扉を開け部屋の中に入ると白地に『働いたら負け』と大きく書いたTシャツを着た少女がベッドの上で内股に座りながらぷくぅと頬をふくらませて待っていた。

 

「もう、ひどいわぁ奈々ったらぁ。

もうちょっと優しく起こしてくれてもいいじゃなぁい。」

 

問題児その6、天龍型軽巡洋艦、2番艦の龍田である。

 

まぁ見ての通りの引きこもり体質で出撃や遠征がない時は部屋でだらけのるのが日課のアニオタゲーマーである。

 

特にゲームに関しては筋金入りで三日連続徹夜も朝飯前と豪語している。

 

「ちゃんと起こそうとしたっての。

それでも起きないあんたが悪いんでしょうが。」

 

「あのね奈々、これには話せば長い訳があってね?。」

 

「・・・一応言ってみろ。」

 

「もうすぐで全キャラレベルMAXでスキルもコンプリートできるのよぉ。」

 

「短ぇし深くねぇしていうか結局ゲームじゃねぇか。」

 

そう言って奈々は龍田のデコに軽くチョップを食らわす。

 

「いいから着替えて準備しろ、お前今日は朝から天龍と一緒に遠征だろ。」

 

「はぁーい」

 

龍田は返事をするとベッドから降りて歯を磨き服を着替えて奈々と一緒に部屋を出る。

 

「ふわぁ〜、まだ眠いわぁ。」

 

「たく、ゲームが好きなのは分かるけど少しは自重しろよ。」

 

「はぁーい、分かったわよおかあさん。」

 

「誰がお母さんか。」

 

そう言って奈々は龍田のおデコをツンっと人差し指でつく。

 

そのあと奈々は、龍田と一緒に食堂に向かった。

 

#####

 

間宮食堂につくと一つのテーブルに先についていた不知火と曉、響、電、食堂の手伝いを終えた雷、龍田を待っていた天龍が座っていた。

 

不知火と暁型四姉妹の前には朝食が置かれているが手をつけた様子はない。

 

「もう、遅いわよ司令官!」

 

暁がぷくぅと頬をふくらませて言った。

 

「あんた達、先に食べててっていったでしょうに。」

 

「何言ってるのよ!ご飯は司令官と食べるって決めてるのよ!」

 

「・・・さいですか」

 

暁の言葉に奈々は微笑むと第六駆逐隊に挟まれる席に腰掛けた。

 

「おまたせぇ、天龍ちゃん。」

 

「ったく、おせぇぞ龍田。

揺すっても起きねぇしどんだけぐっすり寝てんだよ。」

 

「寝る子は育つっていうじゃない。

もしかしたら天龍ちゃんもたくさん寝れば頭良くなるかもしれないわよぉ。」

 

「それマジか!?

奈々!俺明日一日寝る!」

 

「簡単につられるなバカ。

それにあんたの頭はそれでどうにかできる域超えてるから諦めろ。」

 

奈々が天龍に突っ込んでいると不知火が奈々の朝食を運んできた。

 

「提督、お食事をお持ちしました。」

 

「お、ありがと、不知火。

さてと。」

 

奈々が両手を合わせると不知火と暁型四姉妹も一緒に手を合わせる。

 

「いただきまs」

 

ドォン!

 

奈々の言葉はドアが勢い良く開く音にかき消された。

 

「ハハハハハハ!待たせたな!我が天使たちよ!」

 

そこにはさきほど陸奥に連れていかれた長門がいた。

 

「お前、陸奥はどうしたんだよ。」

 

「ふん、陸奥など私の駆逐艦への愛の前には意味はない。

全力で逃げてきた!」

 

「逃げてきたのかよ。」

 

「さぁ!私と共に遊ぼうではないか!第六駆逐隊よ!」

 

奈々のツッコミをスルーして長門は暁たち四人に迫っていく。

 

「いやぁ!来ないでぇ!」

 

暁の叫びと共に四人は一斉に席から立ち上がり逃げ出した。

 

「ハハハハハハ!いいだろう!捕まえてお持ち帰りだぁ!」

 

長門がそれを追いかけだした!

 

と、そこに金剛と皐月がやってきた。

 

「Oh!追い駆けっこデスか!」

 

「僕たちも混ざるぅ! 」

 

そう言って一緒に走り出す二人。

 

「速さならまけないよぉ!」

 

なぜかそこに島風も加わり更に騒がしくなった。

 

「お前ら・・・・」

 

奈々はワナワナと震えて立ち上がり。

 

「いい加減にしろおおおおおおおお!」

 

そう叫んだ。

 

こうして、問題児だらけの鎮守府の朝は始まるのであった。

 

#####

 

「ふぅ、朝から疲れたぁ~」

 

奈々は執務室の提督の机の椅子に深く腰掛ける。

 

不知火は奈々に声をかける

 

「お疲れ様です提督」

 

「ホント疲れた。

退屈しないからいいけど、もう少し自重してくれんかねぇ。」

 

「・・・しないでしょうね」

 

「朝だけならいいんだけどアイツら1日中ああだろ?」

 

奈々がそういった瞬間。

 

バリィン!

 

横の窓が割れ野球のボールが奈々めがけて飛んでくる。

 

顔の側面に飛んできたそれを奈々はノールックでキャッチする。

 

「・・・こんなふうに。」

 

窓の外から金剛と皐月の声が聞こえてくる。

 

「あ!やっちゃったデス!」

 

「金剛なにやってんの!執務室だよあそこ!」

 

「と・・・とりあえず早く逃げルゥ!?」

 

逃げようとした途端、金剛の視界が一周する。

 

そして気がついた時には地面に背中から倒れていた。

 

「金剛!?」

 

皐月の目の前には、先ほどまで執務室にいたはずの不知火が金剛を投げ倒し、立っていた。

 

「皐月。」

 

不知火に声をかけられ皐月はビクッ!と肩を震わす。

 

「あなたは・・・逃げませんよね?」

 

不知火がそう言うと皐月は静かに正座をした。

 

金剛と皐月が不知火に説教されているのを奈々はガラスの破片を片付けながら見ていた。

 

「あっちは不知火に任せとけば良さそうだな。」

 

ガラスを片付け終え、椅子に腰掛けて一息つこうとした時。

 

バン!

 

「たのもう!」

 

ドアを強く開き、姉妹3人を引連れて響が入ってきた。

 

「・・・平穏が欲しい。」

 

奈々は顔を手で覆いそう呟いた。

 

#####

 

「司令官さん!バーベキューですよ!バーベキュー!」

 

「お引き取りください。」

 

机に体を乗り出して言う響に奈々はそう告げた。

 

「ノリが悪いなぁ、司令官は。」

 

「あのなぁ・・・」

 

奈々はため息を吐いて言う。

 

「何が悲しくてこの寒空の下バーベキューなんぞセにゃならんのだ。」

 

「紫苑提督たちはしょっちゅう表走り回って遊んでるよ?」

 

「アイツらは犬みたいなもんだから大丈夫なの。

それに肉焼いてもすぐ冷めて美味しくないだろ?」

 

「それもまた趣があっていいじゃない。」

 

「そんな趣クソくらえだっての。

とにかくバーベキューはなしだからな。」

 

それを響きの後で聞いていた暁が落ち込む。

 

「そっか・・・ダメなんだ・・・」

 

「えっ」

 

「大丈夫よ司令官、暁はレディだからワガママは言わないわ。」

 

そう言っているが明らかに表情は暗くなっている。

電と雷も暁を励ましながらも少し落ち込んでいる。

 

「・・・卑怯だぞ響」

 

「策士と言って欲しいね司令官。

それでどうする?」

 

奈々は頭をガシガシと掻きむしる。

 

「あぁもう!わかったよ!

外では無理だけど間宮食堂使ってやってやるよ。

間宮さんにはこっちから連絡しとく。」

 

「・・・バーベキューするの?」

 

「うん、だから元気出せ。」

 

「やったぁ!」

 

「うぉ!?」

 

暁、雷、電は奈々に飛びつく。

突然のことに奈々は後ろに倒れて尻餅をつく。

 

「ありがとう司令官!」

 

「司令官大好き!」

 

「なのです!」

 

「わかった!わかったから離れろ!

その代わり食料の調達とかいろいろ手伝ってもらうからな。」

 

「うん!暁たちに任せて!」

 

奈々は立ち上がって服の埃を払う。

 

「でもそうなると他にも人員がいるな。」

 

バン!

 

奈々がそう言うと同時に部屋の扉が勢い良く開く。

 

「肉が食えると聞いて!」

 

「幼女が集まっていると聞いて!」

 

「赤城はともかくロリコンメスゴリラは帰ってどうぞ。」

 

長門はフッフッフッと笑っていう。

 

「まぁそういうな、子供だけで買い物をさせるわけにもいくまい。

あとロリコンはともかくメスゴリラは流石にこたえるので勘弁してくれ。」

 

「そうですよ、ゴリラさんはともかく私は適任だと思います!」

 

「捻り潰すぞ赤城。」

 

二人がそういうと奈々は腕を組んで考える。

 

「ないわー。」

 

「提督!?」

 

「奈々!?」

 

二人は奈々に抗議する

 

「奈々!何故だ!?」

 

「そうですよ!私たちの何がいけないんですか!?」

 

「1人は下心丸見えでもう1人はデパ地下の試食コーナー目当てだからだよ!」

 

奈々がそう言うと、赤城と長門はギクッと体を震わせる。

 

「それにお前らには別の用事頼むつもりだから。」

 

「別の用事?」

 

「いったいなんだその用事というのは。」

 

「魚。」

 

「魚・・・ですか。」

 

「まぁそれぐらい構わんが。」

 

「そっか、じゃあ。」

 

奈々は机の下から銛を2本取り出し二人に放り投げる。

 

「行ってこい。」

 

「突けと!?潜水艦でもない私達に魚を突けというのか!?」

 

「鎮守府に何人いると思ってるんですか!?

一体何匹捕ればいいと!?」

 

「よく考えろ赤城。

店で買うと金銭的な問題で制限が付くが自分で捕れば捕った分だけたくさん食えるんだそ?」

 

「行ってきます!」

 

「暁たちも魚食べたいよな。」

 

「「「「食べたーい(のです)」」」」

 

「行ってくりゅ!」

 

赤城と長門は銛をを持って部屋からダッシュで出ていく。

 

それを見ていた響が奈々にいう。

 

「別に魚も買いに行けばいいんじゃないかな。」

 

「今は深海棲艦の影響で物価高いし、少しでも節約しないとな。

それにあいつらにはいい薬だ。」

 

「司令官ってなにげに鬼だよね。」

 

暁がはしゃぎながら奈々に話しかける。

 

「ねぇねぇ司令官!私たちは何を買ってくればいいの?」

 

「あぁごめんごめん、ちょっと待ってろ。」

 

奈々は、メモ帳に買う物のリストを書き暁に渡す。

 

「第六駆逐隊は肉類の調達を頼む。

おやつも一人二個ずつ買って良し。

付き添いは・・・そうだなぁ。」

 

と、そこで金剛と皐月の説教を終えた不知火が戻ってきた。

 

「不知火、ただ今戻りました。」

 

「お、丁度いいところに。

不知火、ちょっと第六駆逐隊の買い物に付き添ってやってくれ。」

 

「買い物ですか?」

 

「今日間宮食堂でバーベキューすることになってさ。

そのための買出し。」

 

「なるほど、畏まりました。」

 

奈々は、不知火にクレジットカードを渡す。

 

「あと響が余計なことしないか見張っておいてくれ。」

 

「はい、心得ています。」

 

「くそ、監視をつけられた!」

 

「お前を放っておいたら何するかわからないしなぁ。」

 

「ぐぬぬ。」

 

悔しそうにする響と楽しそうな暁達を連れて不知火は買出しに出かける。

 

執務室は誰も居なくなり、静かになった。

 

奈々は椅子に腰掛けると溜息を履いた。

 

「ふぅー、これで少しは落ち着けr」

 

バァン!

 

「提督!」

 

ドアを勢いよく開けて夕張が入ってきた。

 

奈々は目を手で覆って天を仰ぐ。

 

「さらば平穏。」

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんでもない。

で?何かあったのか?夕張。」

 

奈々が聞くと夕張がワクワクしながら言う。

 

「リンガの飛鳥さんの所から届いてるよ!提督専用の新しい装備!」

 

「あー、届いたか。

それじゃあ見に行きますか。

ていうか楽しそうだなお前。」

 

「だってリンガの!それも飛鳥さんのところで作られたんだよ!?

早くデータとりたいじゃん♪」

 

「はいはい。」

 

奈々は夕張と一緒に工廠へ向かう。

 

#####

 

奈々は工廠で艤装を付けて刀を振り回していた。

 

「よし、始めてくれ。」

 

「おっけー。」

 

夕張がスイッチを押すと、クレーンでコンクリートブロックが奈々の目の前に運ばれてくる。

 

奈々が刀を構えると刀がかすかに振動を始める。

 

「神経回路とのリンクも良好、いいよ、提督。やっちゃって。」

 

夕張がそう言うと奈々は刀を振るう。

 

コンクリートブロックが綺麗に両断されたのを確認すると奈々は刀の振動を止める。

 

「うん、いいな、これ。」

 

「この高周波ブレードは刀身が野太刀クラスの割りに軽量だからね、結構扱いやすいんじゃない?」

 

「うん、だいぶ。」

 

奈々の手から高周波ブレードが一瞬で消える。

 

「瞬時換装装置とのリンクも問題なし・・・と。

それにしても大変だねぇ、艦チルは。

普通の装備は使えないからオーダーメイドしなきゃいけないなんて。」

 

「まぁ前線に出る気はそうそうないけど、何かあった時のために準備しとかないとな。」

 

「ふーん、まぁ私はいろんな武装のデータが取れるから楽しいけどねぇ。」

 

「えーっと、ガトリング、ロケラン、ミサイルランチャーに高周波ブレード。

これで全部か?」

 

「あ、そうだ提督。

実は私も自作の武装作って見たんだ、ちょっと試していってよ!」

 

「すっごく嫌な予感するんだけど、大丈夫だよな?」

 

「うん、提督なら大丈夫!」

 

「・・・私なら?」

 

不安と疑問を残す中、夕張はその武装を持ってきた。

 

「なにこれ。」

 

「小型のパイルバンカー。

ちっちゃいけど威力は本物だよ。」

 

「へー、随分とコンパクトだな。」

 

「持ち運びやすさに重点を置いてみました。

さ、早く試して試して♪」

 

「不安だったけどこれなら大丈夫そうだな。」

 

再びコンクリートブロックが奈々の前に運ばれてくる。

 

「じゃあやるぞー。」

 

「オッケー。」

 

奈々はコンクリートブロックに向けてパイルバンカーを作動させる。

 

バァン!と大きな音とともにコンクリートブロックは跡形もなく爆散した。

 

だが、

 

「なぁ!?」

 

衝撃で奈々の体が後ろに吹き飛ぶ。

 

「ちょ!あぶ!」

 

奈々は壁に激突し、壁が音を立てて崩れる。

 

瓦礫の中から出てきた奈々は、

 

「死ぬわ!!」

 

開口一番そう叫んだ。

 

「あー、やっぱり衝撃の調節がイマイチねぇ・・・」

 

「腕ちぎれるかと思ったわ!

お前これちゃんと一回試したのか!?」

 

「したよ、今。」

 

「おい。」

 

「いやぁ、だって普通の艦娘が使ったらもっと悲惨なことになるかもと思ってさぁ。」

 

「だからって私を実験体に使うな!!」

 

「まぁまぁ、そんなに怒んないでよー、せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」

 

「誰のせいだ誰の!

あぁ!くそぉ!身体痛ぇ!」

 

「あぁ、これ大破してるねぇ。

すごい威力、さすが私。」

 

「ふざけんなぁぁぁぁ!」

 

奈々が叫ぶと工廠の扉を開けて買い物を終えた不知火と第六駆逐隊が入ってきた。

 

「何事ですか!?・・・って提督!?」

 

不知火達が奈々に駆け寄る。

 

「司令官大丈夫!?」

 

「ごめん暁、大破してて動けない。」

 

「ふむ、司令官が動けない・・・。

つまり今なら司令官にイタズラし放題ってことだね。」

 

「何言ってんの響姉!」

 

「ダメに決まってるのです!」

 

「提督、一体何があったんですか?。」

 

奈々はことの詳細を話した。

 

「なるほど、話はわかりました。

取り敢えず入渠しましょう。」

 

「電達が運ぶのです。」

 

電と雷が奈々の肩を担ぎ歩き出す。

 

「ねぇねぇ司令官、自分より小さい子供たちに担がれるってどんな気持ち?NDK?NDK?」

 

「よぉし、響は後でひっぱたーく。」

 

奈々たちが出ていくのを不知火は見送る。

 

「さてと、私は今日のデータをまとめないと。」

 

「お待ちなさい。」

 

どこかへ行こうとする夕張の肩を不知火が掴む。

 

「もう、なに?不知火。

私いまから・・・ひぃ!」

 

自分を睨む不知火の眼光に夕張は小さく声を上げる。

 

「夕張さん、提督に怪我を負わせておいて、まさかタダで済むなんて思っていませんよね?」

 

「ちょ・・・ちょっと待って不知火!話せばわかr。」

 

「問答無用。

さぁ、お仕置きの時間です。」

 

鎮守府中に夕張の悲鳴が響いたのは言うまでもない。

 

#####

 

間宮食堂。

 

第六駆逐隊が買ってきた肉類と長門と赤城が捕ってきた魚を使い皆でバーベキューを楽しんでいた。

 

はしゃいでいる仲間達を奈々は微笑みながら見ていた。

 

「お疲れ様です提督、体の方は大丈夫ですか?」

 

「お疲れ不知火。

もう大丈夫だ。

まさか陸で大破するとは思ってなかった。」

 

「ご無事で何よりです。」

 

「そんでさぁ不知火、アレ何があったの?」

 

奈々が指を指した先には夕張がいた。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」

 

夕張は膝を抱えて震えていた。

 

「すこし教育的指導をしたまでです。

不知火に落ち度はありません。」

 

「・・・さいですか」

 

奈々は再びはしゃいでいる皆の方を見る。

 

「・・・提督。」

 

「なんだ不知火。」

 

「今私は、すごく楽しいです。

問題児ばかりですが、それでもみんなといるととても楽しくて、みんながいるこの場所がとても大好きで・・・軍艦の頃とは違ってすごく幸せです。」

 

「そっか。」

 

珍しく素直な不知火を見て奈々は微笑む。

 

だが不知火は怖がるように自分の肩を抱きしめる。

 

「でも、同時に怖くもあるんです。

この平和が、日常が、なくなってしまったらって考えると、怖くて仕方ないんです。」

 

奈々は不知火の頭に手を置く。

 

「怖くて当然だ、人として生きてるならなおさらな。」

 

「提督・・・」

 

「でも大丈夫だ、絶対になくなったりしない。

お前らは私の家族だ、家族の居場所は絶対に守ってやるさ。

それが私の仕事だ。」

「・・・はい。」

 

不知火は安心したように微笑む。

 

「さて、私達もあいつらに混ざって楽しむか。」

 

「はい。」

 

奈々と不知火は盛り上がっているみんなに近づいていく。

 

「あれ?暁、響は。」

 

奈々が聞くと暁は周りを見渡す。

 

「そう言えばいないわね。

どこいったのかしら。」

 

「おーい、みんなー」

 

声が聞こえた方を見るとそこには響がいた。

 

「ちょっとこっちに来てくれー。」

 

響に呼ばれて食堂にいた者が全員外に出る。

 

「なにしてんだ?響。」

 

「実は倉庫漁ってたらこんなもの見つけてさ。」

 

そこには沢山の玩具の花火が置いてあった。

 

「せっかくだからこれで遊ぼうよ。」

 

「お、気が聞くじゃん響。

よし、パァとやるか。」

 

奈々たちは各々でいろんな花火を楽しんだ、

 

しばらくしてそろそろお開きというところで奈々が気付く。

 

「あれ?また響どっか行ったのか?」

 

奈々は周りを見渡して響を探し、そしてみつけた。

 

響は離れた場所で大量のロケット花火を設置していた。

 

・・・奈々たちへ向けて

 

「なーんかスゴく嫌な予感するんだけど。」

 

「私もです、提督。」

 

奈々と不知火が不安そうにしていると響の声が聞こえてくる。

 

「やぁやぁ司令官!そろそろ宴もたけなわだ!最後にひと盛り上がりしようじゃないか!」

 

チャッカマンか片手にそう言う響の顔はほんのり赤くなっている。

 

「アイツもしかして酔ってんのか!?」

 

「そういえばさっきお肉食べながらウォッカを飲んでたのです!」

 

「ちょっとやめなさいよ響!」

 

「そうよ響姉!よく考えて!

そこまで行くともうフリーダムじゃないから!ただのキチガイだから!」

 

奈々たちの説得もむなしく響はニィと怪しく笑むと。

 

「愛してるんだ!君たちを!ヒャハハハハハハハ!」

 

そう言っ手ロケット花火に点火していく。

 

「退避ぃぃぃぃ!」

 

奈々と叫びとともにその場にいる全員が走り出す。

 

ロケット花火が飛んでくる中みんなは必死に逃げ出す。

 

「きゃっ!」

 

「龍田!」

 

天龍の後ろを走っていた龍田がつまづいてこける。

 

龍田は前にいる天龍の足をガシッと掴む。

 

「天龍ちゃん!私の事はいいから早く逃げて!」

 

「龍田てめえええええ!」

 

長門は電と雷を抱えて走る奈々と、暁を抱えて走る不知火の盾になるように立つ。

 

「子供たちは私が守rグフぉ!」

 

「長門おおおおおおお!」

 

長門は額と鳩尾にロケット花火を喰らい倒れる。

 

「「イィィィィヤッホォォォォォ!」」

 

金剛と皐月は二人で楽しそうにはしゃぎながら逃げている。

 

「提督!どうしましょう!

このままじゃ家族の手によって居場所が破壊される勢いですが!」

 

「あいつの戦闘力は知ってるだろ!

しかも今は酔ってる状態だ!

止めんのも一苦労だしとりあえず逃げろ!」

 

響は歌を歌いながらロケット花火に点火をしていっている。

 

「暴虐の雲光をおおい!

敵の嵐は荒れくるう!

ひるまず進め我らが友よ!

敵の鉄鎖をうち砕け!

( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \!」

 

「なんか響姉がおっかない歌うたってるぅぅ!」

 

「おい響!お前の曲のチョイスどうなってんだよ!」

 

尚もロケット花火はこちらに向けて飛んでくる。

 

「あぁもう!今日は厄日だぁぁぁぁぁぁ!」

 

奈々の叫びが夜の空に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

響は奈々と不知火、そして第六駆逐隊にこってり絞られた。

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