幌筵第二鎮守府
「不知火、ちょっと留守頼めるか。」
奈々は不知火に声をかける。
「お出かけですか?提督。」
「あぁ、書類仕事終わって今日は特にやることもないし紫苑のところに顔見せに行こうと思ってな。」
「なるほど、畏まりました。
お気を付けて。」
奈々は不知火に留守を頼むと車で幌筵第三鎮守府へと向かった。
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奈々は車を近くの駐車場に止め、幌筵第三鎮守府の正門の前に歩いてきた。
「さぁて、アイツは真面目に仕事してるかなぁ。」
門から中に入り奈々が歩いていこうとするとどこからか砲撃音が聞こえて来る。
「なんだ?」
奈々が音の聞こえた方に歩いていくと演習場で1人の艦娘が訓練をしていた。
「おーい、朝潮ー。」
声が聞こえたのか、少女は奈々の方を向く。
「あれ?奈々さん?」
ここの秘書艦の一人、朝潮である。
朝潮は陸に上がると奈々のところに駆け寄る。
「おいっす朝潮。
今日も訓練頑張ってるな。」
「はい、強くなるには日々鍛錬ですから。
奈々さんは提督にご用事ですか?」
「あぁ、ちょっとからかいにな」
「そうですか、ではご一緒します。
艤装を片付けてくるので少し待っていてください。」
少しして艤装を片付けた朝潮と執務室へと向かって歩いていく。
「最近どうだ?紫苑のやつは。」
「相変わらずです。
毎日楽しそうでとても元気ですよ。」
「大変だろ、アイツの秘書艦は。」
「そうですね、でも一緒にいて飽きませんしそれに・・・」
「・・・アイツの趣味に染まってきてる?」
「は・・・はい、少し////」
「まぁここにいる奴らほとんど染まってるしな。」
話している間に鎮守府の建物の中に入っていく。
奈々は遊戯室という部屋の扉が空いていることに気づき中を覗く。
中には様々な種類のアーケードゲームがある。
「・・・なぁ朝潮」
「なんですか?」
「ゲーム、また増えた?」
「あぁ・・・はい。」
「そろそろ、部屋いっぱいになるだろこれ。」
「はい、ですから増築をする計画を立てているらしいです。」
「これ以上増やさないという選択肢はないのか・・・。」
そして奈々は朝潮と共に執務室の前まで歩いてきた。
朝潮が扉を開ける。
「司令官、奈々さんをお連れしました。」
「ぎゃああ!ピターさん本気モードキタァァァァァァ!」
奈々が中に入ると提督の桐生紫苑、そして秘書艦の電、荒潮、満潮の4人がPSV○TAで遊んでいた。
「大丈夫よ司令官!私に任せなさい!」
「任せなさいって満潮姉さん、その装備神耐性ないでしょ〜?」
「それどころか無属性なのです。」
「ピターさん相手に耐性0の無属性とか何考えてんですかねぇ・・・」
「耐性で武器選んでたらキャラの見た目悪くなるでしょ?」
「いやいやみちしー、気持ちはわかるけどここは衣装だけで妥協しようよ。」
「衣装に武器の色合わせたいの!
大丈夫よ攻撃力と防御力はスキルインストールでガン上げしてるからってぎゃああああ!」
「さっそく、吹っ飛ばされてるのです。」
「誰か助けてぇぇぇぇ!死んじゃう!死んじゃうううう!」
「満潮姉さ〜ん、こっちに柱立てたわよ〜。」
「ありがとう荒潮!」
「あ、アモル出てきた。」
「司令官さん!後ろなのです!」
「え?ぎゃああああ!」
「何やってんのよ司令官!」
「チケット欲しかったんだもん!チケット欲しかったんだもん!」
「ちょっと荒潮ちゃん!誤射しないで欲しいのです!」
「あら〜、射線上に立つなって私言わなかったっけー。」
「あらしー、それどこの誤射姫?」
その様子を奈々は呆れたように見つめる。
「こいつら・・・。」
奈々は、一段落つくまで待つことにした。
しばらくすると、紫苑が背伸びをする。
「いやー、なんとか勝てたねぇ。」
「そうね〜。」
「全く、満潮のせいで酷い目にあったのです。」
「なによ!私が何したって言うのよ!」
「ピターさん相手に無属性の耐性なしとか地雷なのです。」
「OK電、リアルファイトがお望みならやってやろうじゃない・・・」
「ハッ、返り討ちにしてやるのです。」
「二人共、喧嘩するならゲーム取り上げるよ?」
「「ごめんなさい!」」
「あの・・・司令官。」
朝潮が紫苑に声をかける。
「ん?どったのあさしー。
あ、奈々タソ来てたんだぁ。」
「ああ、結構前からな。」
奈々がそういうと、紫苑は後頭部を掻きながら笑う。
「にゃはは、ごめんごめん皆で神喰やってたら盛り上がっちゃってさぁ。」
紫苑がそう言うと、朝潮はキリッとして叱るように言う。
「いいですか?司令官、
貴方はここの提督なんですよ?
もっと自覚をもっt」
「あ、そういえばあさしー、
最近好みのアーケードシューティングゲームがないって言ってたよね。」
「はい、それがどうかしましたか?」
「良さそうなのあったけどどうする?注文しようか?」
「本当ですか!?」
朝潮は目を輝かせて話に食いついた。
「うん、これなんだけどどうかな。」
紫苑がノートパソコンを開き、朝潮に見せる。
「こ・・・これです!こういうのがやりたかったんです!
でもいいんですか?司令官。」
「いいのいいの、金ならある!
それに私も遊んでみたいしね。
そんじゃ注文しとくね〜。」
「ありがとうございます!・・・あ。」
朝潮はこちらを見る奈々の視線に気づくと顔を真っ赤にする。
「ち・・・違うんです奈々さん!
このあたりにもゲームセンターはあるんですけど、
アーケードシューティングゲームが新しいのしかなくて!
いや、確かに最新のゲームも面白いんですが!私としてはレトロなものが好きでして!
ていうかそういう話ではなくてですね!」
「朝潮、お前少しどころかだいぶ染まってんじゃねぇか。」
必死に弁解しようとする朝潮を荒潮は後ろから抱きしめる。
「はいはい朝潮姉さん、それ以上墓穴掘らない方がいいわよ〜。」
「うぅ・・・」
荒潮がそう言うと朝潮は大人しくなる。
「ったく、お前は相変わらずだな紫苑。
よくもまぁ株でこれだけ儲けるなぁ」
「いやぁ////」
「いや、褒めてねぇから
つうかちゃんと仕事してんのか?」
「何を言うかね奈々タソは、書類仕事が終わって特にやることないから遊んでるんでしょうが、ていうか君もそのクチでしょ?」
「まぁな。
今日は出撃とかもないしなぁ。」
「平和なのはいいことだよー。」
「電はもっと暴れたいのです。」
不満そうに言う電に奈々が呆れてため息を履く。
「ホントにお前はウチのと違って電っぽくないっていうか可愛げがないよなぁ。」
「おや?今軽く喧嘩売られたのです?」
「はーい電ちゃんストーップ、ファイティングポーズ取らなーい。」
向かっていきそうのな電を紫苑はなだめる。
「ていうかあとの二人はどうしたよ、望月と加賀。」
「もっちーはぬいぬいと部屋で格ゲーしてる。」
「秘書艦自由だなおい。
で?加賀は?」
「今日も弓道場。」
「・・・そっか。」
奈々はソファーに座って紫苑にいう。
「実は加賀について話があってな。」
「・・・ほう。」
楽しい予感がしたのか紫苑は楽しそうに微笑んだ。
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第三鎮守の弓道場。
そこに彼女の姿はあった。
正規空母、加賀。
彼女は弓矢を構え、的に狙いを定める。
そして弓を引き矢を放つ。
飛んでいった矢は吸い込まれるように的の真ん中に当たる。
続いて加賀は6本の矢を目にも止まらず早業で放つ。
6本の矢は先に刺さった矢を囲うように円の形に刺さる。
「ブラボー!おお・・・ブラボー!!」
声がした方を加賀が向くと紫苑が拍手をしていた。
「・・・提督。」
「ドーモ。カガ=サン。シオンです。」
「ど・・・ドーモ。シオン=サン。カガです。」
加賀が戸惑いながら返すと、紫苑はニッコリ笑う。
「いやー、加賀さんもウチのノリが分かってきたねー。」
「はい、不本意ながら。」
「なぬぅ!?」
紫苑の反応に加賀は笑い、紫苑もそれにつられて笑う。
「それにしても相変わらずすごい腕だねぇ。
サーヴァントなら絶対にアーチャーだよ。」
「そうですね。
ずっとやっている間に上手くなってしまいました。
・・・戦えない私には、これしかやることがないですから・・・。」
そう言った加賀の少し悲しそうな横顔を紫苑は無言で見つめる。
建造は何億分の1の確率で失敗することがある。
加賀の場合、一緒に建造されるはずの艤装が建造されず、裏方に徹するしかなくなっていた。
「加賀さん、飛鳥さんのところから返事があったよ。」
「・・・そうですか。
それで、飛鳥さんはなんと?」
「やっぱり艤装だけを建造する、なんてことは飛鳥さんのところでもできないって。」
「・・・そうですか。」
「ねぇ、なんでそんなに戦いたいの?
裏方の方が安全じゃん。」
紫苑がそう言うと、加賀は語り出す。
「私は、秘書艦としてみんなの戦いを見てきました。
電達第一艦隊は駆逐艦だけなのに戦艦級を圧倒するくらい強くて、いつもいつも驚かされます。
・・・だからこそ思うんです、私はここにいていいのだろうかって。」
紫苑は加賀の言葉を黙って聞いている。
「私も共に戦いたい、そしてこの鎮守府の艦娘の1人だって胸を張りたいんです。」
「・・・うん、分かった。」
紫苑は加賀の話に満足したように笑う。
「工廠に行こう加賀さん。
飛鳥さんから贈り物が届いてるよ。」
「え?でも艤装は建造できなかったって。」
「あの変態技術者がそんなんで諦めるわけないでしょうが。
か・・・勘違いしないでよね!
第一艦隊の残り1枠、早く埋めたいだけなんだからね!。」
何故かツンデレ風に言った紫苑とともに、加賀は工廠に向かった。
工廠につき、しばらく待っていると、奈々が両手に大きなトランクを持って入ってきた。
「おいーっす。
お待たせー。」
奈々はトランクを地面に置く。
「でもなんで奈々タソのところにこれが?」
「あっちの電が届け先を間違えて書いたらしい。
そんで私にお前のところに持ってけって。」
「あー、なるほど。」
奈々はトランクを開ける。
「これは!」
中を見た加賀が驚きの声を上げる。
中には海に浮かぶための脚部装備と、弓と矢のような物が入っていた。
「あの人すごいよねぇ、建造できないなら作っちまえってんだから。」
「これが・・・私の艤装・・・」
と、そこで紫苑の携帯に電話が入る。
「おや、みちしーからだ。
もしもし、どったの?みちしー。」
紫苑は電話の内容を聞くとニィと笑う。
「オーケー、それくらいなら第一艦隊フルメンで行かなくてもいいでしょ。
あらしーとあさしーに準備させといて。
んじゃ。」
紫苑は電話を切る。
「さて加賀さん、ものは試しだ。
早速使ってみようか。」
その言葉ですべてを察した加賀は、
「・・・はい!」
紫苑の目をまっすぐ見て返事をした。
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加賀は朝潮と荒潮と共に出撃していた。
紫苑が通信で呼びかける。
「敵の編成は駆逐イ級5体と戦艦ル級1体。
加賀さんは初めての出撃だから他の2人はフォローしてあげてねー。」
「はい!」
「分かったわ〜」
「それと青葉、撮影よろしく!」
「お任せ下さい!」
加賀達から少し離れた場所でカメラを構えた青葉が返事をする。
「紫苑、なんで撮影させてんの?」
「加賀さんの初陣だからねぇ。
しっかりこの目で見ないと。」
そう言って、目の前のモニターを見ながら紫苑はニコニコと笑う。
「司令官!どうして電は留守番なのです!?」
「君に行かせたら空気読まずに全滅させちゃうでしょうが。
今回の主役は加賀さんなの。」
「解せぬのです。」
電が不貞腐れていると加賀の声が聞こえてきた。
「提督、前方に敵影を発見しました。」
「え!?私達にはまだ見えませんが。」
「加賀さん目がいいのね〜。」
それを聞いて紫苑が指示を出す。
「じゃあせっかくだしそこらへんで分散して、三方向から囲んじゃおうか。」
「了解しました。」
「司令官、青葉はどうしましょう。」
「君は加賀さんについてて。」
「了解です!」
朝潮と荒潮は指示どうり分散する。
加賀は少し近づくと止まり矢を装填し弓を構える。
「え?加賀さん、ここから撃つ気ですか?」
「ええ、敵からこちらは見えていないだろうし
ここから撃てば敵を混乱させられるわ。」
「でも敵がまだ全然見えないんですが。
当たるんですか?」
「大丈夫、私には見える。」
そう言って、加賀は弓を放つ。
放たれた弓は駆逐イ級の方向へまっすぐ飛んでいき、大きな音を立て直撃する。
攻撃されたイ級は煙を上げて沈んでいく。
「すごい威力だな、砲弾並みだぞ。」
「ホントにとんでも兵器作ったなあの人。」
「でもそれと同じくらいとんでもないのは加賀さんの弓の腕なのです。」
加賀は2体目、3体目と順調にイ級を沈めていく。
見えない敵からの攻撃に敵は混乱していた。
「あら〜、どこを見てるの〜?。」
荒潮はイ級を空中に蹴飛ばし、そこに砲弾を浴びせる。
空中で攻撃を食らったイ級は爆散し沈んでいく。
「はぁ! 」
朝潮も別方向から近づき、イ級を仕留める。
これで敵は戦艦ル級一体のみとなった。
ル級は朝潮と荒潮に主砲で攻撃するが二人は簡単に避ける。
「当たらないわよ〜」
二人はル級めがけて砲撃をするが持っている盾で防がれてしまう。
「相変わらず鬱陶しいわね〜。
朝潮姉さん、いつもどうり叩き壊しちゃいましょうか。」
「そうね。」
そういった2人に加賀から通信が入る。
「朝潮、荒潮、横に避けて。」
2人が言われた通り横に避けると弓矢が飛んでくる。
だが当然のように防がれてしまう。
しかし、矢は先が吸盤のようになっていて盾にくっついている。
そしてピピピッという機械音の後に、
ドカァン!と大きな音を立てて爆発し、ル級の盾を破壊する。
「二人共、今よ。」
「加賀さんナーイス。」
そう言って荒潮はル級の顎を蹴り上げ空中高く飛ばす。
「姉さ〜ん。」
朝潮は荒潮の肩を使い高く飛び上がる。
そして、
「はぁ!」
空中でル級に踵落としを食らわした。
そして、ル級が海面に叩きつけられたと同時に。
ドォォォン。
荒潮の魚雷が直撃する。
ボロボロになりながらも、立ち上がろうとするル級を荒潮は、足で押さえつける。
そして三連装砲の砲塔をル級の頭に突きつけると。
「はい、おしま〜い。」
そう言って、引き金を引く。
激しい爆音と水しぶきが上がり、ル級は完全に動きを止めた。
「しれいか〜ん、終ったわよ〜。」
「はいおつかれー、気をつけて帰ってきてねー。」
紫苑はそう言って一息つく。
「爆発する矢か、なんでもありだな。」
「説明書読んだけど他にもいろんな矢があるみたいだよ?」
「でもさぁ、紫苑。
もうこれ、空母じゃなくね?」
「それな。」
「最早戦艦なのです。」
電がそう言うと紫苑は楽しそうに笑う。
「戦艦加賀・・・か。
いいねぇ、そういうの大好き!」
一方荒潮と朝潮は加賀と合流していた。
「お疲れ様です、加賀さん。」
「大活躍だったわね〜。
・・・加賀さん?」
加賀は目から涙を流していた。
「ど・・・どうしたんですか!?もしかして被弾を!?」
「すいません・・・違うの・・・。」
加賀は流れる涙を拭いながら言う。
「やっと一緒に戦えたのが・・・嬉しくて・・・。」
「加賀さん・・・」
「よしよし。」
荒潮に頭をなでられている加賀を青葉は写真に収める。
「とりあえず明日の号外の内容は決まりましたね。
《失意の空母、取り戻した誇り。》」
そういうと青葉は嬉しそうに笑った。
#####
「ちょっ、ちょっと加賀さん!!
なんでこんなに強いのよ!」
「すっごいコンボつないでます!」
「伊達に1年間非戦闘員やってたわけじゃないわよ。」
満潮と加賀がアーケードの格闘ゲームで対戦している。
それを奈々と電と紫苑の3人は少し離れた場所で見ていた。
「嬉しそうだな、紫苑。」
「まぁね、やっと空席埋まったし。
加賀さんも元気になったし。
万々歳だよ。」
「すごく楽しそうなのです。」
「もちろん、私はいつでと楽しいよー。
人生をENJOY&EXCITING!
・・・母さんの口癖だったからね。」
紫苑はそう言うと窓の外を寂しげに眺める。
「おい、自分の母親を勝手に殺すな。」
「ここ間も『バァァァニング!ラァァァブ!』とか言って散々騒いでいったのです。」
「あれは電ちゃんが母さんにお酒渡したのがいけなかったんでしょ?」
「記憶にないのです。」
奈々は呆れたようにため息を吐いた。
「で、だ紫苑。
お前が食いつきそうな楽しい内容の手紙が届かなかったか?」
奈々が言うと紫苑はニィと笑う。
「あれの事でしょ。
分かってる分かってる。」
「なら話が早い、
今度それについてチビ虎も混ぜて三人で話し合いするぞ。」
「OK、了解。」
紫苑はそう言うと。
「いやぁ、面白くなってきたねぇ。」
そう言って楽しそうに笑うのだった。