IS 幼馴染は用務員   作:唯野歩風呂

25 / 25
二十四

 

 

 

 一夏視点

 

 

 

 

 

 

 「あばばばばば――――あ?」

 

 身体中に走った衝撃が収まったと思うと、身体が前よりも軽く感じた。

 腕をぐるりと廻してみると――――。

 

 「え、動いた」

 

 立ち上がって足を大きく動かしてみると、これも軽々と動かすことができる。

 ついさっきまで筋肉痛でソロソロとしか動かせなかったのに……。

 

 「す、進!俺に何したんだよ!」

 「うむ。旅の途中で、険しい渓谷があってな。その奥地で修行しているかんふー使いの老人がいたのだ」

 「お、渓谷の奥地で修行って……今時そんな人が」

 「いやぁ、なかなか強かったぞ、奴の弟子は。ついに決着がつかなかった」

 「っ、ま、まさか、進のような超人と渡り合える奴がこの世にいるとは――――世界はやっぱりすごいんだな」

 「また戦ってみたいのぉ…………あの熊猫(ぱんだ)

 「カン○ーパンダかよ!」

 

 まじでいるのか!?ちょっと会ってみたいんだが!

 

 それにしても進は旅を満喫しているみたいだな。いつもお土産話を暁院の子ども達に聞かせている横で俺も聞いているのだが、いつもハラハラさせられる内容ばかりだ。

 さらっと言った『渓谷』だって、恐らく人間が入れるようなものではないのだろう。なんで自ら道なき道を行こうとするのか………………迷ったからか。

 

 「あー、そこで今の技を教えてもらったのか?」

 「いや、今のはまんがのまねじゃ」

 「ウソォ!!??」

 「冗談じゃ」

 「冗談かよ!今のカン○ーパンダの話はなんだったんだよ!」

 「奴らに学んだのは人のつぼじゃ」

 「つぼ?」

 

 進は俺の体のいたるところを指でさした。そこはたしか、衝撃がきた場所だ。

 

 「うむ。人体の色々なつぼを教えてもらってな。身体に良いつぼも悪いつぼも実践つきで教えてもらったのだ。結構やくにたつぞぉ?将棋仲間からは大絶賛だ!」

 

 将棋仲間とは恐らく同年代ではなくシニアの方々だろう。

 進が大抵『~仲間』と呼ぶのはシニア世代が多い。

 しかもどこかのお偉いさんだったりするから、迂闊な事は聞けない(いや、聞いたらいけないような気がする……本能が警鐘を鳴らしている)。

 

 「――――ふむ、それより、動けるようになったんなら飯を食え。折角の料理が冷めるぞ」

 「あ、あぁ。そうだな」

 

 進の左手に持った料理を受け取り店の方を伺ったが、生憎満席。

 

 「……俺、ここで食っていいか?」

 「ん?邪魔じゃなければいいんじゃないのか?しかし一坊は変わっているのぉ。そんな端で食うくらいなら、弾坊の部屋に戻って食べればよかろうに」

 

 それは俺も考えた。が、進も弾も蘭も忙しく働いているのに、一人寂しくご飯を食べるのはちょっと寂しい。

 

 ここ最近……というより、IS学園に来てから一人で食べるっていうことがなくなったからな。

 

 以前は、千冬姉が仕事で帰ってこない日を一人で過ごし、もちろん一人でご飯を食べた。

 暁院には、いつでもご飯食べにおいでと言われているが、ご飯もただではないので、一週間に一回程度にすませていた。

 

 だから、集団でご飯を食べることに慣れた俺は、今更一人の食事はちょっと……。

 

 「ん?なんだ、もしかして一人の食事は寂しいのか?」

 「!?なっ」

 「ははっ!寂しがり屋め!よしよし、私が一緒に食べようではないか」

 

 そういって笑うと進は俺の頭をポンポンと撫でて厨房へと向かった。

 

 俺は進が撫でた頭に触れた。

 

 昔から、進に頭を撫でられると不思議な感じかする。

 何だろう……ほっとする、というか、嬉しくなる、というか……。

 

 あぁ、そういえば、中学校に上がる少し前だっただろうか。進にそれを言った気がする。そしたらたしか進は――――。

 

 『頭というのはだな、人間の一番大事なものがつまっとる。じゃから人は無意識に頭や顔を守ろうとするんじゃ。それを、『撫でる』という無防備極まりない行為で安心感を得られるというのは、その者を信頼している証拠じゃ。つまり一坊はわしを信頼しとるということじゃな!』

 『進は?撫でられるの嫌い?』

 『わしがこの世で頭に触れることを許しているのは、父様と一坊だけじゃ(一坊の頭皮まっさーじとやらはものすごく気持ちいいからのぅ)』

 『進……』

 

 ――――と言っていた。

 

 「ん?何を惚けているんだ?」

 「……」

 「一坊?」

 

 進が俺の顔を覗き込んでくる。すると、ポニーレールに結んだ綺麗な赤い髪がさらりと肩から前へ流れた。

 

 俺が進の頭に触れるのは髪を整えているときだけ。

 

 もし、そんなことではなく、ただ、頭に触れるだけなら、進はどんな反応するだろう。

 

 避けるだろうか。それとも――――。

 

 

 俺は進の頭へと手を伸ばし、そして、

 

 

 

 「……む。何してるんだ?」

 

 

 垂れていた髪の毛を掴んだ。

 髪の毛を引っ張られ、進は眉をひそめた。

 

 「ん?」

 「ん?」

 

 「……む、もしやまた髪をいじりたいのか?それなら帰ってからにしろ。お主の手入れは長すぎる」

 「進が手入れしなさすぎなんだよ。せっかく綺麗な髪なんだから、大事にしなきゃ」

 「それはお主じゃろう。……大丈夫か?」

 「いや、どこみてんだよ。何の心配してんの!?俺まだ十代だからな!」

 「いやいや、早めに対処しておかないと後悔すると、囲碁仲間が言っておった。奴はとても遠い目をしておったよ」

 「何だろう。すごい説得力なんだが」

 「ちなみにそいつは二十代じゃ」

 「注意します!!」

 

 

 

 あれ、 俺は、いったい何をしようとしてたんだっけ?

 

 

 まぁ、いいや。

 

 

 

 

 

 

 




なんでも早めがいいよね!


えー、お知らせ。
お仕事が忙しくなってきてしまい、次回更新のお約束が難しくなりました。
なので、世間様が夏休みの間は、予告をしません。なので、いつもの時間に更新できず一週間のびることがでてくるとおもいます。(更新は、いつもの曜日と時間に行います)
そのさいには活動報告でお知らせします。

では、いつになるかわかりませんが。次回!



あー、休みほしいよ~~~~。


11月25日 改稿

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。