「誰かいないかー? いたら返事をしてくれーっ!」
私はそう叫びながら、ヒビと雑草だらけの舗装路を歩いている。返事は…さっきからずっと、ない。
上を――空を見上げる。
私の真上、20メートルくらいの空中に人影が浮かんでいる。杖に乗って飛行するココアだ。
ココアには上空から、近くに人がいないか探してもらっているが……見つからないようだ。
道路沿いのボロボロの民家を見て、つぶやく。
「ここでも、サバイバル生活か…」
ココアが開いたゲートの先は――私たちの世界と同じ、廃墟の街並みだった。あちこちにある住居表示によれば、東京の国分寺市。
最初はココアが転移に失敗したかと思ったが、よく見ると立ち並ぶ住宅が全体的に古い。
ほとんどの建物で外装は剥げているし、瓦が落ちて屋根に穴が開いたり、壁が崩れている家もある。放置されてから、少なくとも十年は経っている。
そしてなにより――"かれら"がいない。
普通に歩いても全く見かけないし、大声で叫んでも現れないことが、ここが
「ココアー! いったん降りてきてくれー!」
私の歩く速度に合わせて、ゆっくり飛行しているココアを呼び戻す。
着地したココアに成果を聞いてみる。
「どうだ? 上からなにか見つけられたか?」
「うーん…… 少し遠くにビルが立ち並んでるのは見えるけど、蔦だらけで窓も割れてるし、誰もいないんじゃないかな?」
「…そうか」
ココアによると、北と南にビル街が見えて、ここからだと北のビル街が近いらしい。たぶん国分寺の中心街だ。
(地図がほしいな…)
歩いている間に、スマートフォンとラジオで何か受信できないか試してみたけど、放送は全滅。GPSだけは生きていたが、圏外で地図データがないから使えない。
「ねえ、リゼちゃんはなにか見つけた?」
「見つけたというか、気になるものがあるんだが……」
道路脇にある、新しめの標識を指さす。黄色い
☢
「これ、レントゲンするときのマーク?」
「正確には放射能の警告マークだけど…なんでここにあるんだ?」
この標識を見るのはもう3回目。
病院や研究施設の近くならともかく、無人の住宅街にある理由がわからない。
「レントゲン…小さいころは怖かったなぁ。撮る部屋にもこのマークがたくさんあって、不気味だったから」
ココアの言葉で気づく。放射線マークは、危険な場所の入り口だけでなく、区域内にも設置されるものだということに。
――まさか。
「ココア、この世界に来てから、体調悪かったりしないか?」
「え? 別に悪くないけど――そういえばここに来てから、シャードからのマナがかなり少ないかも」
「………。」
シャードからのマナ供給は、ブレイク時でなければほぼ一定のはずだ。
それが少ないということは、シャードのリソースが別のこと、例えば環境からの防護に割かれているわけで…。
改めて"放射能の標識"を見る。…間違いない。
「…リゼちゃん?」
「ココア――この街、放射能で汚染されてる。」
「ええっ!? じゃあ、誰も人がいないのって…」
「避難してるんだろうな。原因はわからないけど、相当ひどい汚染だと思う。」
ココアに、シャードの防護効果と、そのせいで供給マナが減っていることを話す。
「…そういうことだったんだ。リゼちゃんは大丈夫なの?」
「私はこの身体だからな、問題ないみたいだ」
制服の袖をめくって、
今の私は義手義足と皮下装甲、加えてカバラ機器のインプラントで半分機械のような身体だ。
防護の必要がないと判断したのか、私のシャードのマナ供給は全く減っていない。
「私はともかく、ココアは回復魔法以外は使わない方がいいな。魔力を節約しとかないと」
「うん。でも、危ないことがあったら使うからね!」
ココアに詳しく聞いてみると、マナ供給量は普段の十分の一くらい。魔力の自然回復も十分の一ペースだろう。
誰もいない街で、
(…私が守ってやらないとな)
魔力が枯渇したら、シャードはその解消にリソースを再配分するはず。そうなれば、防護効果が弱まって、ココアの体調に影響が出かねない。
何かあったら、私が率先して前に出よう――そう決めた。
「リゼちゃん、これからどうしよう?」
「まずは情報が欲しいな。ここがどうして汚染されているか知りたいし」
「私、お台場の原発のせいだと思うんだけど…」
新都電力・台場原子力発電所。
私たちの世界でも動いていたソレがこちらの世界にもあって、大事故を起こしたのなら説明がつくが……まだ、想像でしかない。
「私もそうだと思うけど、経緯が知りたくてな。…南の、府中の市街地に向かおう。そこでコンビニを漁れば、街の放棄前の新聞や地図はあるだろ」
「いきなり泥棒前提!?」
ココアの常識的なツッコミ。
そのブレのなさは、少し羨ましい。
「もちろん店員がいたらお金は払うよ。さあ、行くぞココア」
「…うん! 府中目指して、レッツゴー!」
ココアの掛け声を合図に、南の方角――府中に向けて、雑草だらけの道路を歩き出した。
腕時計は
トラブルがなければ、日没前には府中市街地に着くはず。
その後は、適当な民家かビルで夜を明かすことになる。食料と水は、時空マントに収納してある分で数日は持つけど――
(ココアは本当に大丈夫なのか?)
街の汚染度、つまり線量が均一なわけがない。今、こうして移動しているだけでも、高線量の場所に突入するリスクがある。
寝泊りに選んだ建物が偶然、ココアのシャード防護を超えるほどに汚染されていても、症状が出るまで気づけない……それも、寝てる間だったら――
「リゼちゃん、怖い顔してる」
「うわっ!?」
前を歩いていたココアが、いつの間にか私の顔を覗き込んでいた。驚いて立ち止まる。
「どうしたの? なにか悩み事?」
「……お前のことで悩んでたんだ」
ココアに、この街にいるだけで危険なことを話す。
「もし、この汚染が台場原発のせいなら、東京から離れれば――そうだな、関東から出れば安全だと思う。ココアには、そこで情報収集してほしいんだ。」
ココアが開いた世界間ゲートは、
それでも、まずはココアの安全を確保したかった。
「…リゼちゃんは、どうするの?」
「ここで
「ダメだよ!」
私の言葉をさえぎって、ココアが叫んだ。
「リゼちゃん、回復魔法つかえないよね? 一緒にいないと、リゼちゃんのほうが危ないよ!」
「いや、でも、この身体は頑丈だからめったな事じゃ――」
「ダメったらダメ! いくら強くても、一人じゃ出来ないこともあるし――寂しいよ」
「わかった、わかったよ!」
手を握って訴えるココアに、私は折れる。
自分を回復できないのは事実だし、こうなったココアは、カレンのような押しの強い人じゃないと説得できない。
「一緒に
「うん、わかったよ! …ありがと、リゼちゃん」
そう言って、ココアは左腕に抱き着いてくる。
今のカバラ義手は、
それでも、柔らかい感覚は伝わってくる。
まったく、甘えんぼな奴だ――上目遣いのココアから、思わず目をそらす。
…別に、照れている訳じゃない。
私の腕から離れたココアが、時空鞘から魔法杖を取り出して、頭上に掲げる。
「それじゃ、改めて……府中に向かって、出発進行ー! ついてきて、リゼちゃん!」
…ツアーガイドの旗のつもりだろうか? ココアは杖を振り回しながら道路を走り出す。
「ちょっ…待て! 走ったら体力持たないぞーっ! それに道わかるのか!?」
駆けていくココアを追いかける。
ココアはいつもこんな調子だ、先が思いやられるが――その明るさに、今まで何回も助けられたのも確かだった。
●クエスター
・
◆データ
種別:人間 レベル:28 サイズ:M
クラス:ガンスリンガー20/キャスター1/ゾルダート7
体力:13/+4 反射:13/+4 知覚:14/+4
理知:12/+4 意志:14/+4 幸運:12/+4
命中:24 回避:22 魔導:16 抗魔:19
行動:33 HP:236 MP:169
攻撃1:<殴>+65/射撃(銃/カバラ) クリティカル値:12
対象:単体 射程:50m 代償:なし
攻撃2:<殴>+45/射撃(銃) クリティカル値:12
対象:単体 射程:50m 代償:なし
攻撃3:<炎>+35/魔法 クリティカル値:11
対象:単体 射程:15m 代償:28MP
戦闘移動:20m 全力移動:66m
防御修正:斬34/刺31/殴28/炎4/氷2/雷4
加護:《Ad.ヘイムダル》《Ad.ヘイムダル》《Ad.オーディン》《Ad.ヘイムダル》
特技:《鋼の肉体》《情報:軍事》《ガンアーム》《ガンフー》《タンブルシュート》《片手射撃》《カスタマイズドガン》《ホットショット》《ダブルガンスタイル》《ガンアームⅡ》《ロックオン》《カスタマイズドガンⅡ》《フェイバリットスタイル》《ラストバレット》《ダブルアクション》《ダブルアクションⅡ》《カスタマイズドガンⅢ》《カウンターショット》《ラピッドショット》《ラストアクション》《ピンホールショット》《ピンホールショットⅡ》《エングレイブドガン》《コンバットセンス》《リードマジック》《シールエリア》《マジックガード》《魔術適正》《機械化軍装》《射撃管制機構》《ブーストリアクター》《反動防御機構》《専用カバラ兵装》《ブーストリアクターⅡ》《機甲猟兵》《リアクターバースト》《戦場の異名》《ヘヴィウェポン》《耐久力UP》《ヘヴィアーマー》《剛力》《剛力Ⅱ》《ヘヴィウェポンⅡ》《ヘヴィアーマーⅡ》《ウェポンチェンジ》《反射拡張》《ヴィークルガード》《反射拡張Ⅱ》《旅の極意》《情報:学問》
装備品:対装甲狙撃ライフル/バスターライフル/強襲用戦闘装甲服/ファルターオービット/強化人工神経/装甲義手/装甲義足/皮下装甲
所持品:コミュニティ施設/小型施設+廃屋/衣服/携帯電話/時空鞘/時空マント/サジッタドリンクG×2/メガHPポーション×3/ハイHPポーション/HPポーション/メガMPポーション/MPポーション/耐性薬Ⅱ<殴>/耐性薬Ⅱ<炎>/耐性薬<斬>/マジックポーション/疾風弾×3/聖銀弾×3/装飾品/MG64突撃機関銃/フランメンヴェルファー/拳銃×2/精神防壁/動力甲冑/大型バイク
◆解説
"木組みの街"に住んでいた、ミリタリー好きの女子高生。クエスターで、
銃を使った戦闘に特化し、近接格闘も交えたオールレンジの物理戦闘を得意とする。装甲による高い防御力も併せ持ち、敵陣に飛び込んで乱戦に持ち込む戦闘スタイルを取る。魔法は炎魔法を習得しているが、ほとんど使っていない。