七つの丘の救世者   作:TISS

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機械仕掛けと操り人形 01

「誰かいないかー? いたら返事をしてくれーっ!」

私はそう叫びながら、ヒビと雑草だらけの舗装路を歩いている。返事は…さっきからずっと、ない。

上を――空を見上げる。

私の真上、20メートルくらいの空中に人影が浮かんでいる。杖に乗って飛行するココアだ。

ココアには上空から、近くに人がいないか探してもらっているが……見つからないようだ。

道路沿いのボロボロの民家を見て、つぶやく。

「ここでも、サバイバル生活か…」

 

ココアが開いたゲートの先は――私たちの世界と同じ、廃墟の街並みだった。あちこちにある住居表示によれば、東京の国分寺市。

最初はココアが転移に失敗したかと思ったが、よく見ると立ち並ぶ住宅が全体的に古い。

ほとんどの建物で外装は剥げているし、瓦が落ちて屋根に穴が開いたり、壁が崩れている家もある。放置されてから、少なくとも十年は経っている。

そしてなにより――"かれら"がいない。

普通に歩いても全く見かけないし、大声で叫んでも現れないことが、ここが元の世界(ライブスフィア)でない証明だった。

 

「ココアー! いったん降りてきてくれー!」

私の歩く速度に合わせて、ゆっくり飛行しているココアを呼び戻す。

着地したココアに成果を聞いてみる。

「どうだ? 上からなにか見つけられたか?」

「うーん…… 少し遠くにビルが立ち並んでるのは見えるけど、蔦だらけで窓も割れてるし、誰もいないんじゃないかな?」

「…そうか」

ココアによると、北と南にビル街が見えて、ここからだと北のビル街が近いらしい。たぶん国分寺の中心街だ。

(地図がほしいな…)

歩いている間に、スマートフォンとラジオで何か受信できないか試してみたけど、放送は全滅。GPSだけは生きていたが、圏外で地図データがないから使えない。

「ねえ、リゼちゃんはなにか見つけた?」

「見つけたというか、気になるものがあるんだが……」

道路脇にある、新しめの標識を指さす。黄色い(三角形)を背景に、こんな図形が書かれている。

 

      ☢

 

「これ、レントゲンするときのマーク?」

「正確には放射能の警告マークだけど…なんでここにあるんだ?」

この標識を見るのはもう3回目。

病院や研究施設の近くならともかく、無人の住宅街にある理由がわからない。

「レントゲン…小さいころは怖かったなぁ。撮る部屋にもこのマークがたくさんあって、不気味だったから」

ココアの言葉で気づく。放射線マークは、危険な場所の入り口だけでなく、区域内にも設置されるものだということに。

――まさか。

「ココア、この世界に来てから、体調悪かったりしないか?」

「え? 別に悪くないけど――そういえばここに来てから、シャードからのマナがかなり少ないかも」

「………。」

シャードからのマナ供給は、ブレイク時でなければほぼ一定のはずだ。

それが少ないということは、シャードのリソースが別のこと、例えば環境からの防護に割かれているわけで…。

改めて"放射能の標識"を見る。…間違いない。

「…リゼちゃん?」

「ココア――この街、放射能で汚染されてる。」

「ええっ!? じゃあ、誰も人がいないのって…」

「避難してるんだろうな。原因はわからないけど、相当ひどい汚染だと思う。」

ココアに、シャードの防護効果と、そのせいで供給マナが減っていることを話す。

「…そういうことだったんだ。リゼちゃんは大丈夫なの?」

「私はこの身体だからな、問題ないみたいだ」

制服の袖をめくって、装甲義手(カバラアーム)を見せる。

今の私は義手義足と皮下装甲、加えてカバラ機器のインプラントで半分機械のような身体だ。

防護の必要がないと判断したのか、私のシャードのマナ供給は全く減っていない。

「私はともかく、ココアは回復魔法以外は使わない方がいいな。魔力を節約しとかないと」

「うん。でも、危ないことがあったら使うからね!」

ココアに詳しく聞いてみると、マナ供給量は普段の十分の一くらい。魔力の自然回復も十分の一ペースだろう。

誰もいない街で、門扉欠片(ゲートフラグメ)の回収以外で危険はないと思いたいが、狂暴な野生動物はいるかもしれない。

(…私が守ってやらないとな)

魔力が枯渇したら、シャードはその解消にリソースを再配分するはず。そうなれば、防護効果が弱まって、ココアの体調に影響が出かねない。

何かあったら、私が率先して前に出よう――そう決めた。

 

「リゼちゃん、これからどうしよう?」

「まずは情報が欲しいな。ここがどうして汚染されているか知りたいし」

「私、お台場の原発のせいだと思うんだけど…」

新都電力・台場原子力発電所。

私たちの世界でも動いていたソレがこちらの世界にもあって、大事故を起こしたのなら説明がつくが……まだ、想像でしかない。

「私もそうだと思うけど、経緯が知りたくてな。…南の、府中の市街地に向かおう。そこでコンビニを漁れば、街の放棄前の新聞や地図はあるだろ」

「いきなり泥棒前提!?」

ココアの常識的なツッコミ。私たちの世界(ライブスフィア)で生き抜いてきたはずなのに、ココアはこういう所は変わらない。

そのブレのなさは、少し羨ましい。

「もちろん店員がいたらお金は払うよ。さあ、行くぞココア」

「…うん! 府中目指して、レッツゴー!」

ココアの掛け声を合図に、南の方角――府中に向けて、雑草だらけの道路を歩き出した。

 

腕時計は元の世界(ライブスフィア)の時刻を指しているから正確な時間がわからないけど、太陽の傾きからして昼過ぎくらいだろう。

トラブルがなければ、日没前には府中市街地に着くはず。

その後は、適当な民家かビルで夜を明かすことになる。食料と水は、時空マントに収納してある分で数日は持つけど――

(ココアは本当に大丈夫なのか?)

街の汚染度、つまり線量が均一なわけがない。今、こうして移動しているだけでも、高線量の場所に突入するリスクがある。

寝泊りに選んだ建物が偶然、ココアのシャード防護を超えるほどに汚染されていても、症状が出るまで気づけない……それも、寝てる間だったら――

「リゼちゃん、怖い顔してる」

「うわっ!?」

前を歩いていたココアが、いつの間にか私の顔を覗き込んでいた。驚いて立ち止まる。

「どうしたの? なにか悩み事?」

「……お前のことで悩んでたんだ」

ココアに、この街にいるだけで危険なことを話す。

「もし、この汚染が台場原発のせいなら、東京から離れれば――そうだな、関東から出れば安全だと思う。ココアには、そこで情報収集してほしいんだ。」

ココアが開いた世界間ゲートは、門扉欠片(ゲートフラグメ)の反応を目標に座標指定しているから、転移場所から大きく離れた――地方単位で離れた場所に門扉欠片(ゲートフラグメ)はない。それは私もわかっている。

それでも、まずはココアの安全を確保したかった。

「…リゼちゃんは、どうするの?」

「ここで欠片(フラグメ)を探すよ。さっきも言ったけど、私は耐性があるみたいだし――」

「ダメだよ!」

私の言葉をさえぎって、ココアが叫んだ。

「リゼちゃん、回復魔法つかえないよね? 一緒にいないと、リゼちゃんのほうが危ないよ!」

「いや、でも、この身体は頑丈だからめったな事じゃ――」

「ダメったらダメ! いくら強くても、一人じゃ出来ないこともあるし――寂しいよ」

「わかった、わかったよ!」

手を握って訴えるココアに、私は折れる。

自分を回復できないのは事実だし、こうなったココアは、カレンのような押しの強い人じゃないと説得できない。

「一緒に東京(ここ)を探そう、ココア。ただ、魔力の使い方――回復魔法以外を使わないことだけは約束してくれ」

「うん、わかったよ! …ありがと、リゼちゃん」

そう言って、ココアは左腕に抱き着いてくる。

今のカバラ義手は、火炎放射器(フランメンヴェルファー)を扱えるように、温度感覚は省略(オミット)してある。

それでも、柔らかい感覚は伝わってくる。

まったく、甘えんぼな奴だ――上目遣いのココアから、思わず目をそらす。

…別に、照れている訳じゃない。

私の腕から離れたココアが、時空鞘から魔法杖を取り出して、頭上に掲げる。

「それじゃ、改めて……府中に向かって、出発進行ー! ついてきて、リゼちゃん!」

…ツアーガイドの旗のつもりだろうか? ココアは杖を振り回しながら道路を走り出す。

「ちょっ…待て! 走ったら体力持たないぞーっ! それに道わかるのか!?」

駆けていくココアを追いかける。

ココアはいつもこんな調子だ、先が思いやられるが――その明るさに、今まで何回も助けられたのも確かだった。




●クエスター

 ・天々座(てでざ) 理世(りぜ)
  ◆データ
   種別:人間  レベル:28  サイズ:M
   クラス:ガンスリンガー20/キャスター1/ゾルダート7
   体力:13/+4  反射:13/+4  知覚:14/+4
   理知:12/+4  意志:14/+4  幸運:12/+4
   命中:24  回避:22  魔導:16  抗魔:19
   行動:33  HP:236  MP:169
   攻撃1:<殴>+65/射撃(銃/カバラ)  クリティカル値:12
    対象:単体  射程:50m  代償:なし
   攻撃2:<殴>+45/射撃(銃)  クリティカル値:12
    対象:単体  射程:50m  代償:なし
   攻撃3:<炎>+35/魔法  クリティカル値:11
    対象:単体  射程:15m  代償:28MP
   戦闘移動:20m  全力移動:66m
   防御修正:斬34/刺31/殴28/炎4/氷2/雷4
   加護:《Ad.ヘイムダル》《Ad.ヘイムダル》《Ad.オーディン》《Ad.ヘイムダル》
   特技:《鋼の肉体》《情報:軍事》《ガンアーム》《ガンフー》《タンブルシュート》《片手射撃》《カスタマイズドガン》《ホットショット》《ダブルガンスタイル》《ガンアームⅡ》《ロックオン》《カスタマイズドガンⅡ》《フェイバリットスタイル》《ラストバレット》《ダブルアクション》《ダブルアクションⅡ》《カスタマイズドガンⅢ》《カウンターショット》《ラピッドショット》《ラストアクション》《ピンホールショット》《ピンホールショットⅡ》《エングレイブドガン》《コンバットセンス》《リードマジック》《シールエリア》《マジックガード》《魔術適正》《機械化軍装》《射撃管制機構》《ブーストリアクター》《反動防御機構》《専用カバラ兵装》《ブーストリアクターⅡ》《機甲猟兵》《リアクターバースト》《戦場の異名》《ヘヴィウェポン》《耐久力UP》《ヘヴィアーマー》《剛力》《剛力Ⅱ》《ヘヴィウェポンⅡ》《ヘヴィアーマーⅡ》《ウェポンチェンジ》《反射拡張》《ヴィークルガード》《反射拡張Ⅱ》《旅の極意》《情報:学問》
   装備品:対装甲狙撃ライフル/バスターライフル/強襲用戦闘装甲服/ファルターオービット/強化人工神経/装甲義手/装甲義足/皮下装甲
   所持品:コミュニティ施設/小型施設+廃屋/衣服/携帯電話/時空鞘/時空マント/サジッタドリンクG×2/メガHPポーション×3/ハイHPポーション/HPポーション/メガMPポーション/MPポーション/耐性薬Ⅱ<殴>/耐性薬Ⅱ<炎>/耐性薬<斬>/マジックポーション/疾風弾×3/聖銀弾×3/装飾品/MG64突撃機関銃/フランメンヴェルファー/拳銃×2/精神防壁/動力甲冑/大型バイク
  ◆解説
   "木組みの街"に住んでいた、ミリタリー好きの女子高生。クエスターで、門扉欠片回収隊(GFRF)の副隊長。最近、父親からカバラ兵装一式を譲り受けた。
   銃を使った戦闘に特化し、近接格闘も交えたオールレンジの物理戦闘を得意とする。装甲による高い防御力も併せ持ち、敵陣に飛び込んで乱戦に持ち込む戦闘スタイルを取る。魔法は炎魔法を習得しているが、ほとんど使っていない。
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