七つの丘の救世者   作:TISS

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旧世界より 02

カレンちゃんに話を聞くと、ここは東京の湾岸エリアのどこか。高高度に転移して降下している間、眼下に雲がほとんどないタイミングがあって、海岸線の形から関東地方だと判別できたらしい。スマートフォンで写真も撮ってくれていたので見てみると、確かに関東が画角いっぱいに映っていた。…転移直後からしばらく目をつぶっていたわたしには、全くわからなかった事だった。

 

岩の上で、カレンちゃんとこれからの方針を話し合う。カレンちゃんの端末からわたしのタブレットに、空中写真を移して拡大表示。一目見てわかったのは、東京23区とその周辺部が広範囲にわたって抹茶色で、砂漠化している事実だった。さいたま市などの衛星都市より外側は、逆に濃淡織り交ぜた緑色になっていて、市街地は見当たらない。

スマートフォンのコンパス機能で方位はわかるので、海の見える方向と写真から自分たちの位置を推測する。

「わたしたちは…たぶん、この辺かなぁ」

本来なら羽田空港がある辺りを指さす。海岸に上陸してから陸に向かって右に歩いていたから、歩いた距離的に上陸地点は川崎周辺。でも、わたしたちはあるべきはずの地形に出会っていない。

「ホノカ、この辺、大きい川があったハズなんデスけど~」

わたしたちの知っている地図だと、県境を流れている一級河川・多摩川。写真では、奥多摩方面から川面のラインが伸びてきているけど、砂漠化エリアに入るとぼやけて消えている。大量の水がどこに消えたのか謎だった。

「ここからだと巡ヶ丘が一番近いけど、位置的に砂漠の中だよね…」

「私たちの街はどうデショウ?」

「写真だと緑色だから、全部草原か森になってるかも」

「なら、カントーから大脱出デス!」

「……うーん……」

話し合っても、なかなか行き先は決まらない。空中写真は位置把握には役立ったけど、大都市が形成されていなければ人の住んでいる場所はわからない。門扉欠片(ゲートフラグメ)は強力な意志に引き寄せられるから、人のいる場所を目指したかったけど、情報が不足していた。

「このままお台場に進んで、都心に向かってみよう。少しでも人工物があれば、このリーフワールドのことがわかるから」

この葉世界(リーフワールド)で、東京周辺がもともと砂漠なのか、それともなにかがあって砂漠化したのか。その手がかりがほしい。後者なら、お台場原発や都心の超高層ビルなら、数百年経っていても痕跡くらいは残っていると思った。そのことを話すと、カレンちゃんも賛成してくれた。

「OKデース! 一緒にトーキョー観光しマショウ!」

「観光、なのかなぁ…?」

観光というより、探検とか冒険が合っている気がする。今日は野宿になるだろうし、サバイバルやキャンプかもしれない。

「観光よりデートが良かったデスかー?」

「デート…!?」

カレンちゃんの突拍子もない提案。最後にデートしたのは、たしか、元の世界(ライブスフィア)でパンデミックが起こる前。二人で某テーマパークに遊びに行ったときだ。

(デート、かぁ)

あのテーマパークはギリギリ東京じゃなかった。二人だけで東京へ行くのは初めてで、東京デートと言うのも間違ってはいないと思った。

「うん。カレンちゃん、久しぶりにデートしてみよっか」

「オダイバ目指してLet's Goデース!」

わたしたちは大岩から降りて、都心方向に向けて歩き出す。最初の目的地はお台場原発…正式名称、新都電力台場原子力発電所。マグニチュード8の直下型地震にも耐えるという触れ込みの施設がどうなっているのか、カレンちゃんも気になるようで、全体的に歩くペースが上がっていた。陽の高さから時間はまだ昼過ぎぐらいで、順調に進めば日が沈むより前にはお台場か、もう少し先まで行けると思った。

 

――30分後。

「つ、疲れマシタ…ホノカ、休憩したいデス~」

わたしとの体力差が出てカレンちゃんがバテる。そこからはカレンちゃんのペースに合わせて、時々休憩をとりながら進むことにした。カレンちゃんは戦闘スタイルからして瞬発型、無理はさせられない。

 

「…なんか大岩が多くなってる気がしマス」

「これ、もしかして岩じゃなくてビル?」

やたらと数が増えてきた大岩に上がって休憩中、足元の"大岩"がコンクリート製の建物の成れの果てだったことに気付く。岩の表面が滑らかだと思っていたけど、一度コンクリートが溶けて固まったならこうなりそうだった。面積的に、足元のビル?は5階建て以上はあったはず。

「どれだけ時間がたてばこうなるの…?」

建築関係は詳しくないけど、100年くらいでは鉄筋コンクリの建物はここまで崩れないと思う。ここが未来世界、かつて私たちが知っている"東京"があった世界なのはわかったけど、ここに住んでいた人がどうなったのか気になってくる。

「ホノカ、ビルの中にお邪魔してみマショウ!」

「わたしも中は見てみたいけど……どうしよう?」

元・ビルなら、外側が溶けていても中に空洞はありそうだった。でも、浮遊盾(ドローンシールド)で少しずつ崩して掘り進んでいたら日が暮れるし、広域破壊の加護(<<ヨルムンガルド>>)を使っても大岩が瓦礫の山に変わるだけだ。

「んー……」

カレンちゃんが立ち上がって、時空鞘から日本刀(雷切)を抜刀。刀の先端で足元…"大岩"の表面をつつきながら、歩き回る。しばらく歩き回ったカレンちゃんは、"大岩"の中腹あたり、表面が少しくぼんでいる斜面で足を止めた。

「このあたりなら斬れマスねー」

「き、斬れるの?」

カレンちゃんが言うには、この斜面の裏に空洞があって、溶けたコンクリも薄いらしい。わたしも時空鞘から念動銃を出して、斜面と、少し離れた場所の"大岩"表面を叩いてみる。でも叩いた音の違いはわからなくて、カレンちゃんの直感を信じてみることにした。

「がんばって、カレンちゃん!」

「応援サンキューデース!」

カレンちゃんが斜面の前で、刀を腰だめに構える。やや前傾したこの体勢は、草薙流抜刀術の――

「――五ノ型、ヤマオロシ(<<剣舞繚乱>>)!!」

キンキンキン!と鋭い音が三連続。斜面に一辺1メートルくらいの、三角形の切れ込みが入る。

「ホノカ、少し引っ張ってみて下サイ!」

「うん!」

念動力(<<インビジブルハンド>>)で切れ込みが入った斜面に干渉して、手前に引っ張ってみる。その手ごたえから今引っ張っているのは、切断面が裏の空洞に達している、三角柱状のコンクリートだとわかる。球体じゃないから集中力が必要で、数分間かけてやっと手前に引き抜くことができた。

「ふーっ……」

「お疲れさまデス、ホノカ!」

"球体制御"、正確にはそのベースとなる念動力の連続行使で疲れたけど、まだまだ体力は余裕がある。

斜面にできた、ほぼ正三角形の穴。体格の大きい人だと確実に詰まる大きさだけど、わたしたちならギリギリ入れそうだった。

「先に入ってみるよ、わたしが入れればカレンちゃんも入ってこれるから」

「それがいいと思いマス」

わたしよりカレンちゃんのほうが少し小柄。カレンちゃんが先に入ってわたしが入口で詰まったら、厄介な事になりそうだった。

穴の中を覗き込むと、中はかなり暗い。垂直な壁に囲まれた空間が、縦坑のように5メートルくらい下まで続いている。

(…エレベーターがあった場所なのかな?)

わたしたちなら普通に着地できる高さ。そう思って足から穴に入る。だけど、腰上まで入ったところで詰まって、どう角度を変えても身体のある部分がつっかえる。具体的には、胸の部分が。

カレンちゃんがぼそっとつぶやく。

「なんだか敗北した気分デース」

「あんまりこの格好じっと見ないで~!」

カレンちゃんに手を貸してもらって穴から這い出る。とにかく、この穴は崩して広げる必要がありそうだった。




●オリジナルアイテム

 ・イメージの翼
  種別:魔法(付呪/境外)
  必要レベル:1  魔導:0
  魔法攻撃力:-  射程:なし
  装備部位:魔法片  代償:4HP
  購入難易度:-/-
  タイミング:オートアクション
  効果:「対象:自身」。門扉欠片の効果中、以下の効果をそれぞれ1シナリオに1回使用可能。使用時に7点以上の任意の点、【精神力】を消費すること。"九条 可憐"のみ装備できる。
     ①《なぎ払い》の直後に使用する。あなたは飛行状態となり、行なう攻撃が「対象:場面(選択)」「射程:15m」となる。
     ②《ブーストマジック》と同時に使用する。その《ブーストマジック》は物理攻撃にも効果を発揮する。さらにその効果に+[消費した【精神力】÷2]する。
     ③ ??????
  解説:翼状に発現する可憐の固有魔法。破格の攻撃力で誰かのヒーローとなれる代わりに、魂が削られていく。

 ・カレンアイマスク
  種別:その他(境外)
  購入難易度:-/-
  タイミング:オートアクション
  効果:住宅、または舞台裏の処理によるHPかMP回復と同時に使用する。その効果に+2Dする。1シナリオに1回、「髪の色:金」のキャラクターに「慕情」のコネクションを持つ場合に使用可能。
  解説:特徴的な目玉が描かれたアイマスク。つけると自分の寝顔を気にせず眠れる…人もいる。


●キーワード

 ・新都電力台場原子力発電所
  穂乃花たちの知る東京の、お台場地区で稼働している原発。建設前後には激しい政治的混乱があった。公表情報によれば、M8クラスの地震でも耐える設計。

 ・草薙流抜刀術
  北海道にある居合い道場に相伝で伝わる剣術。北海道旅行で道場破りを敢行した可憐は、いくつかの技を師範代の孫から盗んでいる。

 ・"球体制御(ボールハンド)"
  穂乃花が使える、念動力の一種。呪力の一種とも言う。元々は"丸い物体"を扱いやすくするだけの微弱な能力だったが、クエスターとなり戦闘で使える域まで昇華した。
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