東方剣舞録 〜希望と絶望〜   作:カルート

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episode1 〜紅霧異変〜
一話 刀持ちの少女との出会い


「………あ、れ……此処は」

 

 目が覚めると目の前には知らない天井が、とテンプレは止しておいて此処は何処なのだろうか

 確か俺はあの妖怪の賢者と言っていた八雲さんとの会話後……とまだ覚束ない脳内を回転させ記憶を振り返る

 

「もしかして八雲さんが何かしたのか……!?」

 

 妖怪、と過程すればの話だがあの謎の無数の目が此方を見ているかのような穴、そして胡散臭さ満載の雰囲気を纏った人物、これしか原因はいないであろうと状況が物語っている

 

「ん?」

 

 違和感を覚え目線を下へと向ける、ふわふわとした感触を感じ確かめるように触ると其処は布団の中であった

 何故俺は布団で寝かされていたのだろうか、流れで言うのならばきっと此処は幻想郷という場所であり八雲さんの家であるはずだ

 ……妖怪が家に住んでいるのかは謎なのだが

 

 辺りを見渡すと其処は和室のようであり障子、畳などと和の物が並んでいるのが分かる

 障子の奥に何があるのか、と立ち上がり開けようかと思案しているとスッと横に開かれた

 

「あ、良かった。お目覚めになられたのですね」

 

「……え、誰だ?」

 

 てっきり八雲さんが出迎えるものだと思っていたのだが違うようである

 開かれた障子の先には銀の髪色、ボブカットの頭に黒いリボンを付け、青緑色のベストとスカートの中に白いシャツを着た可愛らしい少女が立っていた

 更に極め付けに背中には二本の刀が背負われているのだ

 隣に何か白いふわふわした物が浮いているがきっと風船か何かだと自己完結する形で解決させた

 

「あ、自己紹介がまだでしたね。私の名前は魂魄(こんぱく) 妖夢(ようむ)、この白玉楼の剣術指南役兼庭師です」

 

「え、あぁ鈴白 零一、です。いや、それよりも……白玉楼?」

 

「はい。ここ冥界での唯一の建物です」

 

「め、冥界……!?」

 

 異世界と言ったらそうだと思うのだが幻想郷ではなく冥界へ飛ばされたのだろうか

 全く傍迷惑な話である

 

「まさか白玉楼の前で倒れているとは思わなかったです。しかも見たところ……人間、ですよね?」

 

「何で疑問形なんだよ……。見た目通りの普通の人間だ」

 

「でも普通の人間が来られるような所ではないはずなんですが……」

 

「あー……多分八雲さんのせいだな。何か急に穴に落とされた」

 

「紫様に……だからそのような見ない格好をしているんですか」

 

「見ない格好って、普通にジーパンにTシャツ……ってあれ俺のジャンバーは?」

 

 先程までは神社、つまり外にいたため防寒具のジャンバーを着ていたはずである

 おそらく室内であるから邪魔になるため脱がせてくれたのだろうという考えに至ったが一応確認のため問う

 

「じゃんばー……?あぁ、それでしたら少し汚れていたので洗濯しました」

 

「洗濯?……わざわざ悪いな」

 

「いえ、仕事のついでにだったので、それに外来人の服は珍しいので詳しく見てみたかったんです」

 

「外来人?」

 

 聞き慣れない単語に思わず聞き返してしまう

 外国人の事であろうか、しかし言葉は通じているため判断が出来ないでいた

 

「あ、外来人というのはこの幻想郷の外の世界から来た人の事を総称して外来人と呼んでいるんです」

 

「幻想郷……?ここって冥界じゃなかったのか……?」

 

「……幻想郷の中に冥界という地名があると考えてもらえれば分かりやすいと思いますよ」

 

 つまり俺の世界にも冥界というものが存在し、この世界……幻想郷にも冥界というものが存在しているという事であろうか、と一人で勝手な解釈をし納得していると

 

「白玉楼の主である幽々子様に顔を合わせておきたんですが……もう歩けますか?」

 

「主……?とりあえず、問題なさそうだ」

 

 特に何処かを痛めた訳でもないので難なく立ち上がり銀の髪色の少女、魂魄の後を追う

 

 主、というからには威厳があり強面な人なのだろうか

 ただ世話になったからには挨拶をしない訳にもいかないため会わなくてはならない

 

 魂魄と共に少し長過ぎる廊下を歩き、ある一室の前で止まる

 

「幽々子様、先ほどの外来人の方がお見えになりました」

 

「あら、入って良いわよ」

 

 魂魄が障子を開け俺を中へと招き入れる

 どんな人なのだろうかと少々緊張しながら中へと入ると

 

「初めまして、ここ白玉楼の主?西行寺(さいぎょうじ) 幽々子(ゆゆこ)よ。よろしくね」

 

「何で疑問形……?あ、えーと鈴白 零一です」

 

「ゆ、幽々子様!何故疑問形なのです!?」

 

「え〜だってこう茶目っ気があった方が良いじゃない?」

 

「そんなの無くて良いですよ!!」

 

 全体的にふわふわとした青のような水色の服に白いレースのようなものがついている

 頭にはこれまたふわふわした帽子を桃色の髪に被り、よくお化け屋敷などで見られる三角巾が付いているのが確認出来た

 

「ま、まぁ……とりあえず倒れているところを介抱していただきありがとうございます」

 

「そんな敬語なんてしなくていいわよ。それに見つけたのも介抱したのも妖夢だから」

 

「あー……なら魂魄、ありがとな」

 

「えっ、い、いえ……私は当たり前の事をしたと言うか……」

 

「あら〜?妖夢もしかして?」

 

「もしかしてって何です!?」

 

 もうっ、と魂魄が頬を膨らませながら西行寺さんへと抗議をする

 おそらくこういう主従関係なのだろうと、その様子を眺めながら思う

 

「えーとそれで西行寺さん。ここが幻想郷という話は聞いたんだが、元の世界に帰る方法はないのか?」

 

「幽々子」

 

「え?」

 

「堅苦しいのは嫌なの幽々子って呼んでちょうだい」

 

「え、いやまぁ良いけど……じゃあ幽々子さん」

 

「さん付けじゃなくてもいいのよ?」

 

「いや目上の人に対してだし……とりあえず教えてもらえると助かる」

 

 そこで妥協して貰わなければ逆に困ってしまう、流石に会って間もない人を名前で呼び捨てにするのは少し抵抗あるものだ

 

「そうね〜ないわけではないのだけれど……教えないっ」

 

「……は?」

 

「幽々子様!?」

 

「だって〜せっかく妖夢が男性に興味持ったようだしここにしばらく置こうかと思って」

 

「なっ……別にそういうわけではありません!」

 

 どうやら俺の意思など無関係のようである

 

 しかし今現在いるであろう幻想郷と言うところには興味がないという訳ではない

 忘れられたものが集う世界、まさにファンタジーなどゲームにありそうな展開であり、一度は行ってみたいと思っていたものである

 しかも好都合な事に幽々子さんの口振りで察するに帰る方法がない訳ではないと判断しても良さそうなのだ

 

「というわけで零一良いかしら?」

 

「良くないです!私一人でも十分ですよ!はっ、もしかしてダメダメな私一人じゃ心許ないって事ですか!!」

 

「……って魂魄は言ってるが?」

 

「決定権は私にあるわ」

 

「みょん!?」

 

 まさに権力の乱用であった

 今し方見ても良いなと思い始めていた俺としては好都合であるのだが少し魂魄に悪い事をしたな、と思う

 

「なら妖夢、零一を存分にこき使って良いわ。ほら、好きにしていいのよ?」

 

「……そこに俺が異議を申し立てる事は」

 

「決定権は私にあるわ」

 

 どうやら俺も此処のルールに従わなくてはならないようである

 と言っても手伝い程度なら一人暮らしを続けてきた俺には容易い事であるためあまり気にならないのだが

 

「うぐぐ……仕方ないです。すみませんが零一さんよろしくお願いします」

 

「ん、あぁ此方こそよろしく頼む、魂魄」

 

「とりあえず妖夢」

 

「どうなさいましたか幽々子様?」

 

「お腹すいた」

 

「……そうですね、そろそろお昼でした。準備して来ます」

 

 そう言い残し魂魄は部屋から去って行った

 おそらく先程話にあった昼飯を作りに行くのであろう

 

 俺はどうするか、と辺りを見渡しつつ思考し始めると幽々子さんから声がかけられる

 

「零一、ちょっと良いかしら」

 

「ん?どうしたんだ幽々子さん」

 

「貴方、本当に人間なの?」

 

「……八雲さんと同じ事を言うんだな」

 

「八雲……紫の事かしら?」

 

「……え?あぁそう、八雲 紫さん、だな」

 

 八雲という苗字は他にもいるのだろうか

 詳しくは知らないが家族と言うものがあるのかもしれない

 だがしかし今はそんな事よりも八雲さんに幽々子さん、二人から言われた言葉が気になる

 

「紫も同じ事を…………そう」

 

「俺は人間だ。普通の間違えるはずもなく生まれた時から変わらない……はずだぞ?」

 

 俺は人間、変わるはずもない

 これ以上この事を考えても無駄だと思い、思考から外す

 

「分かったわ。もう追求するのはやめにしましょ。さて今日のお昼は何かしら〜」

 

 先程とは打って変わってのんびりとした口調で言うと幽々子さんは俺をその場へ残し去って行ってしまった

 ぽつんと残された俺はその態度の変化に呆気に取られ気づくと、しんと静まり返った部屋に取り残されるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 結局その場に残っていても仕方ないので、白玉楼内を散策する事にした

 その最中に気づいたのだが、持ち物が変わっている

 おそらく八雲さんが何かしたのだろう、しかし勝手に人の物を弄らないで欲しいものだ

 

 まず被害にあったのがケータイと財布の二つだ

 あの時、持っていた物はその二つなので実質全て没収された事となるのだが、新たにポケットの中に数枚の白紙のカードのような物が追加されていた

 

 ケータイと財布については万が一、魂魄が持っている事もあるため後で詳細を聞くつもりであるが、おそらく持っていないであろう

 白紙のカードについてもこの時に聞けば問題ないだろう

 

「さて……そろそろ迷子と言っても良いんじゃないかこれ」

 

 持ち物について再確認しながら五分ほど歩いていたが、二人を見つける事が困難であることが徐々に理解出来た

 逆にそれほど広いと言えば分かるだろうか

 

「これはもう屋敷ってレベルだな……」

 

 これは早く合流しなくては、と焦り歩く速さをあげ物音がしないか白玉楼内を歩き回る

 

 時間はおそらくお腹の空き具合からして昼時であろう

 身体が食物を求めているのが分かる、人間何かに巻き込まれている時だろうとお腹は空くものである

 こういう時蓮子が居れば正確な時間が分かるのだが居ないのなら仕方がない、というよりも居ても仕方がない

 むしろ居なくて良かったのかもしれない

 

 昼、と言えば蓮子達はどうしたのだろう、と一瞬思い浮かんだのだが、今思い出しても何も出来ないだろうと光の速さでその考えを頭から追い出す

 くだらない事を考えているところへいつの間にいたのか前方から声が掛けられた

 

「あ、いたいた零一さん」

 

「あぁ、良かった。魂魄の事を探してたんだ」

 

「私の事を?」

 

「……絶賛遭難中だったからな俺。広過ぎだろ、この屋敷……」

 

「あはは……広いですからね白玉楼は。とりあえずお昼の仕度が出来たので呼びに来たんです」

 

「ん、わざわざありがとな魂魄」

 

「いえ……ただ早くしないとなくなる可能性が……」

 

「……?」

 

 この時、魂魄の言葉の意味が理解出来なかった俺は後悔する事となるのだった

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

「ふぅ……ご馳走様。妖夢」

 

「は、はい……お粗末様です」

 

「この量を一人で食べたのか……?」

 

 魂魄と居間に向かうとそこには幽々子さんが座り食事をしていた

 食事をしているのはおかしくないのだが、その目の前におかれた皿の数を見れば分かるだろう、数が尋常ではないのである

 既に空となった皿が積み重なり山を作っているのだ

 

「魂魄……あれって俺らの分も含まれてるんだよな?」

 

「まぁ一応……はい」

 

「……見た感じ何も残っていないようなんだが。テーブルの上がまさにすっからかん状態だぞ」

 

「すいませんがお昼はなしで……。夜はちゃんと用意しますので……」

 

「なん……だと……」

 

「妖夢〜食後のおやつは?」

 

「まだ食べるのか!?」

 

 あれだけの量を食べるだけじゃ飽き足らず更に追加のデザートを注文している、まさにブラックホールと言うべきであろうか

 

「ダメです。先ほど出したので最後です」

 

「え〜……」

 

「え〜、じゃないです。もう少し控えてくださいよ」

 

「酷いわ妖夢……私から楽しみを奪うのかしら」

 

 よよよと悲しむ、フリをする幽々子さん、もとい大食らい

 これは幾ら何でも食べ過ぎである、見てる此方が気持ち悪くなるほどであるのだからその量も分かるだろう

 その量の食物が何処へいくのだろうと考えたのだがその答えは勝手な解釈で導き出せた

 言うならば上半身、それも中心よりやや上の部分へと目が向いてしまう

 

「あら零一、どうしかしたのかしら?」

 

「えっ、あ、いやなんでもないぞ……」

 

 慌てて目を逸らすが幽々子さんは何かを察したかのようにニヤニヤし、もう全て分かっているとでも言うかのような顔をしている

 

 俺だって男なのだ、少しだけ……本当に少しだけ興味がない訳ではない

 

「そんなに私の胸が気になる?」

 

「えっ」

 

 魂魄が此方を向く、困惑したような羞恥を含んだよう顔で、だ

 

「あ、あー!そうだ、魂魄。色々と教えてもらいたい事があるんだった。この白玉楼の案内してくれないか?」

 

 わざとらしく大きな声で話題を逸らしながら魂魄を無理やり連れ出そうとする、これ以上俺のガラスのハートにダメージを喰らってはブレイクしてしまう

 

「あらあら……ふふふ」

 

 後ろで幽々子さんが笑っていたが、気にせず魂魄の背中を無理やり押し居間を後にする

 

 もしかすると今回の一件でからかいの対象に入れられたかもしれない

 此れからの事を考えるとこの先まさに前途多難、である

 

 

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