東方剣舞録 〜希望と絶望〜   作:カルート

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二話 呪われた大木

「……どうしてこうなった」

 

 目の前で真っ赤な顔になりながら怒る妖夢と、ニコニコとまるで罪悪感の欠片もない顔をしている幽々子さん

 

 何故このような状況になってしまったかと言うと数分前に戻るのだが───

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 魂魄と共に逃げ出したのは良かったが、昼に幽々子さんが食べた皿を片付けないといけないとのことで結局居間に戻ってきていた

 

「あれ、幽々子様もう戻られたのでしょうか?」

 

 ただ積み重なった皿が置かれているテーブルがぽつんとあるだけで桃色の髪の人物は影も形もなかった、正確には嵐が通ったかのように空っぽの皿の山があるのだが人の影はない

 

揶揄(からか)うだけ揶揄って……話しやすい点で言ったら良いのかもしれないが、魂魄も大変じゃないか?」

 

「あはは……まぁいつものことですから」

 

 苦笑いをしながらも片付けに取り掛かる魂魄

 先程の話もあり俺も手伝わなくてはと、皿を盆へと移し始める

 

「あっ、ありがとうございます」

 

「いや、世話になるんだしこのくらい当然だろ?ついでに色々と教えてもらいたいしな」

 

「……急に幽々子様はどうされたのでしょう……」

 

ポツリと魂魄が呟く

 あの見た感じからして突発的に思いついたのかもしれないが……あの時の言葉が引っかかる

 ……もしかして監視の意もあるのではないのか、だとすれば俺は監視されるような何かがある存在だという事であるだろう

 

「………」

 

「零一さん?」

 

「……ん?」

 

「あ、いえ。何だかぼんやりとしていたので……大丈夫ですか?」

 

「あぁいや、なんでもない。少し考え事をしていただけだから気にしないでくれ」

 

 今この事について考えてもおそらく解る事はないであろうといつの間にか下がっていた顔を上げ片付けを再開する

 

「そういえば魂魄、この白紙のカードなんだけどこれ何か分かるか?」

 

「白紙のカード?……えーと、これは弾幕ごっこで使うスペルカードですね。ただこれには何の力も込められていないそのままの白紙ですが」

 

「……弾幕ごっこ?」

 

 ポケットから取り出した白紙のカードを妖夢に見せると初めて聞くであろう単語が返ってきた

 銃等を使って遊ぶ射的みたいなものだろうか、名称だけではどうとも言えないため勝手な予想しか出来ないのであるが

 

「はい、えーとこの幻想郷独自のルールだと思ってください。それに私の事は妖夢で良いですよ」

 

 呼ばれ慣れていないので、と言い魂魄、改め妖夢が説明に入る

 見た目からして年下だろう、と思い特に突っ掛かりもなく名前で呼ぶ事とし、妖夢の説明に聞き入るのだった

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「つまり妖怪と人間とで均衡を保つために定められたルールという事、か?」

 

「大体あってます。ただ詳しい事は作った本人、紫様に聞いた方が良いと思いますよ。それにまだ発案されて間も無いですし」

 

「作ったの八雲さんかよ……」

 

 妖怪の賢者と言っていただけはあるようだ、ただ発案して間も無いのならルールに穴がありそうである

 勿論、その内容が詳しく分からないため見つける事は出来ない、ゲーム脳となるとすぐに攻略などの方向に向いてしまうのだ

 

「うーん……ただ零一さんには扱えないかもしれないです」

 

「ん?何でだ?あ、もしかして外来人には出来ないで、幻想郷の人達が出来る特別な事か?」

 

「そうではなく。零一さん、霊力弾……つまり弾幕撃てますか?」

 

「普通の人間である俺に撃てるとお思いか」

 

「……ですよね。基本である弾幕が撃てないとなるとやらない方が良いと思いますよ。まず勝負になりませんから」

 

 勝負にならない、その一言だけで今の俺には事足りる言葉であろう

 何故なら普通でただの人間である俺に比べ相手は妖怪や特別な力を持った人間達だと言うのだ

 

 しかし、妖夢の言った言葉に引っかかりを感じその答えを聞き得るために問う

 

「やらない方が良いって、出来ない訳じゃないのか?」

 

「外来人の方が出来るかは分かりませんが、人や生き物には必ずといって何かしらの力が宿っているので絶対に出来ないというわけではないんですよ」

 

 聞いた話によるともしかしたら撃てる可能性があるかもしれない、しかし可能性は才能によって左右されるらしい

勿論、努力によってその力とやらを引き出す事も可能であると思うがやはりこういうものは才能が一番尾を引くものだろう

 だがそれならば希望が見えてきたというものだ、こんなチャンス滅多に、いや、来る事ないのだから物にしたい

 

「妖怪には妖力、神様には神力というように色々と分類されるんですけど人や幽霊……私みたいな半人半霊は基本霊力という力を使っているんです」

 

「……半人半霊ってなんだ?」

 

「あ、まだ言ってませんでした。私は半人半霊……人間と幽霊のハーフなんです。ほら、私の隣に浮いているのが半霊です。ちなみに幽々子様は亡霊という分類となります」

 

「えーと、幽霊と亡霊って何が違うんだ?」

 

「えーと、ですね。本来亡霊も幽霊なんですが亡霊は実体があるという点で幽霊とは違うんです」

 

「あー……確かに普通に飯食べてたな。という事は人間と同じく食べたりして栄養を摂らないといけないって事か」

 

「そう言う事です。……もう少し控えて欲しいですけどね」

 

 妖夢が遠い目をしている、確かに皿の量からして尋常じゃない量だったからであろう

 

 ついでに(くだん)の人はチラチラと桃色の髪を妖夢の背後にある襖から覗かせているのだが、何をしているのだろうか

 

「その話は分かったんだが、俺がその弾幕ってやつを撃つ事は可能って事だよな?」

 

「多分出来ると思います。ただそれには素質など色々な事が絡みますが」

 

「お、じゃあ俺に教え──「妖夢〜」んなっ」

 

「えっ!?」

 

 俺が妖夢に頼もうとした時、後ろから幽々子さんが現れた

 さっきから居たのは気づいていたが放置しておいた、までは良かったのだが、何故か幽々子さんは手を上にあげている、そして妖夢のスカートが舞い上がっているのだ

 いわゆるスカートめくりと言われるものである

 

 思わず目を逸らそうとする、しかし此れが男の(さが)というものであろう

 ばっちりと、しっかりと、目の前でひらひらと舞う青緑色のスカートからちらりと覗かせた白い布地を記憶に焼き付けてしまった

 

「……零一さん?」

 

「あ、あれちょ、妖夢何故に俺?どう考えても俺が原因じゃないよな!?」

 

 怒気の入り混じった声で妖夢が此方を見ている、何もしてないのであるが、妖夢も女の子という訳で……つまりは俺が悪いのである

 その本人は真っ赤にした顔で威嚇している、正直可愛いと思ったのは本人に秘密であるが

 そして元凶である幽々子さんは面白がるように口に手を当て笑っているのが見える

 

「……どうしてこうなった。俺がやった訳じゃ──」

 

「問・答・無・用!!」

 

「がふっ!?」

 

 妖夢は隣に浮いていた半霊を飛ばし、俺の顔面にクリーンヒット、急な予測不可能な攻撃に避けられる訳もなく半ば吹き飛ぶ形で倒れ、後頭部を強打……そして意識を手放した

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 ぼんやりとした意識の中、目を覚ます

 視界に映るは天井、つまり此処に来た時に寝ていた部屋である

 

 何故気絶していたのか、まだ回りきっていない思考を回転させ思い出そうと奮闘する

 

「………そうか。妖夢を怒らせて、それで……。───ッ」

 

 先程あった出来事を思い出しつつ、起き上がると後頭部から鈍い痛みを感じたが、動く分には問題なさそうだと自己完結し痛みを押さえ付ける

 

 改めこんなに自分は脆いのかと再認識してしまう、元々率先して運動をしていた訳ではないためか体力、筋力など優れた部分がないのだ

 これを機に鍛えてみても良いのかもしれない、弾幕ごっことやらも体力使うスポーツだと思われるので損はないはずだ

 

 さて、自分自身の事は置いておき妖夢の方をどうにかしなければならない

 相手は女の子、見た感じこの屋敷には男性は愚か他に人がいないようなので、慣れない事から切羽詰まってしまったのだろう

 謝らなくては、そうと決まれば早い方が良いだろうと立ち上がる

 

 障子の奥からは既に日が傾き始めているのか朱色の光が差し込んできていた

 

「……もしかして日中ずっと気絶してたのか」

 

 色々と教えて貰うつもりだったのだが仕方ない、今日一日で全てが終わる訳ではないのだからまた明日教えてもらえば良いだろう

 

 障子に手を掛け横に引き部屋を出る、もしかしたら此処は客間なのかもしれない

 此処が先程の部屋であるのなら道順は覚えている、居間と思われる幽々子さんが大食らいを見せた部屋に向かおうと廊下を歩き始めた

 

「…………ん?」

 

 向かう途中、廊下は外に面してるため庭が見えるのだが、齢で言うと結構な歳であろう大きな木が見える

 

「さっきは通った時には気づかなかったな……こんなに馬鹿でかいのに。でも葉が一つも付いてない。まさか枯れているのか?」

 

「西行妖に興味があるのかしら?」

 

「……うおっ!?」

 

 いつの間にか隣に俺をここへと連れてきた張本人であろう人物が隣に現れていた

 その人物とは勿論八雲 紫、相変わらずの雰囲気を纏っている

 

「……西行妖?」

 

「そう西行妖、もう決して咲くことの許されない呪われた桜の木」

 

「あれは桜の木だったのか。咲くことの許されないって……どういう意味何だ?」

 

「……昔ある歌人があの桜の木を愛し生涯を桜の下で終えた。でもその歌人を敬う人々が同じ事を繰り返した結果生気を吸う呪われた木へと変貌したのよ」

 

「え、ならあれ危ないんじゃないのか?あんな近くにあったら皆……」

 

「今は封印を施してあるの。だから生気を吸うことはないわ」

 

「封印って……だから咲かないのか」

 

「……えぇ、そう言う事ね」

 

 それを話す八雲さんはなんとなく哀愁を纏った顔をしているような気がしたが、胡散臭さで覆うように消え去ってしまった

 

「それよりも零一。この世界に興味を持ったかしら?」

 

「……まぁ少しだけ、な。しばらくはここで世話になることになったから何かしら学べる事もあるだろ」

 

「ふふ、良かったわ」

 

「だけど八雲さん、無理やり連れ立った事忘れた訳じゃないからな」

 

 半目で目を細め睨み、軽い恨みを込めて見る

 ただ全部が悪い事ではなかったので強くは言えないのであるが

 

「結果オーライ、でしょう?」

 

「何が結果オーライだ……。急に落とすとかジェットコースターに乗るよりも怖いだろ……」

 

 幽々子さんのようにマイペースとはまた別の読めない、言い換えるなら謎の人物である

 普段からというのは分からないのだが、表情を扇子で隠しているため更に読めないのだ

 

「それじゃあ私は行くわ。この世界……幻想郷を謳歌しなさい零一」

 

「言われなくても楽しんでやるよ。日常だけじゃ少しだけ飽きてきたからな」

 

「ふふ、それがいつまで持つか楽しみね」

 

「それはどういう───」

 

 事なんだ、と言い終わる前に八雲さんは手を振ると目の前に、俺が落とされた穴が現れ、そのまま中へと消えて行った

 やはりあの時落としたのは八雲さんで間違いないようだ

 

 惚けつつぼんやりと八雲さん消えていった虚空見つめる、かと言って見つめていても何かが起こる訳ではないのだが、先程聞いてしまった西行妖について思考が傾いていたからかぼんやりと考え込んでしまった

 

 封印された咲く事の許されない桜の木、当時何があり、どういう経緯でそうなったかは分からない

 だがその桜の木に同情のような感情が生まれていたのだ

 あの規模の桜である、おそらく満開となった時華やかに咲き誇るのだろう

 それがもう咲く事が許されないなど、可哀想ではないか

 

「……でも、俺にはどうする事も何かをする事も出来ない。きっと俺は満開を見る事はないんだろうな。……っと、余計な事は考えずに向かうとするか」

 

 一度だけちらりと西行妖に目を向ける、ただの枯れた木ではなくそこに桜が咲く姿を想像してしまった

 

 再び廊下を歩き出す、のだが此処で気づいてしまった

 

「あれ……ここ何処だ」

 

 此れが運命か、道順を覚えたと思っていた俺は見事に道、ではなく屋敷で迷うのであった

 

 

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