東方剣舞録 〜希望と絶望〜   作:カルート

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基本前書きに何も書いてないのは、思いつかないならくだらない事書くより良いか、という謎の結論に至ったためです(目逸らし




四話 剣の道とは

「……ん……朝か」

 

 結局昨夜見た夢は再び見る事はなく、朝日を顔に浴び目を覚ます

 今の時刻は明け方だとは思うが、普段時間に縛られて生活していたからか、時計がないと不便だと感じてしまう

 

 軽く身支度を整え水場、井戸へと向かう、そこで顔を洗い完全に意識を覚醒させると、庭の方から何やら風切りの音が聞こえてきた

 

「ふっ……せい……!」

 

 どうやら妖夢が背中に差していた刀で素振りをしているようだ

素振りと言ってもただの素振りではなく実戦を想定しているのか、相手がいるかのように空を斬っている

 こんな朝早くから鍛練をしているのか、その姿に感服してしまう

 

 構えから初動、振り切るまでの動作を流れるかのように鮮やかにまるで舞うかのように一心に振るっている

 剣術など知る訳もないのだが、その剣舞に見惚れ、時間の経過を忘れてしまう程であった

 

「こんな朝から精が出るな妖夢」

 

「あれ、零一さんおはようございます」

 

「ん、おはよう。それ、いつもやっているのか?」

 

 素振りがひと段落終えた所で俺は声をかける

 邪魔しては悪いと思いそうしたのであるが実の所、魅入り過ぎ気付いたら終わっていたという感じである

 

「はい、朝の鍛錬は欠かさず毎日やっています」

 

「毎日、か……。それにしてもその刀、長さ違うみたいだが……銘とかはあるのか?」

 

「あ、はい。此方の長いのが楼観剣(ろうかんけん)、そしてこっちが白楼剣(はくろうけん)です」

 

「随分と仰々しい名前だな……。まぁ名前からして業物なんだろうけど」

 

「楼観剣は妖怪が鍛えた名のある名刀なので、幽霊十匹程度なら簡単に消滅させる事が出来るんですよ」

 

 幽霊十匹と聞き素直に驚いてしまう

 本来ならば幽霊という時点で鼻で笑って終わるのだろうが半人半霊の彼女が言うのだ、間違いはないのだろう

 

 それにしても楼観剣なのだが……長い、女の子が扱うにしては少々持ち辛いように感じるのだ

 逆に白楼剣は脇差のように一般的な刀よりも短く、持ち易い形状となっている

 ただ鍔がない、脇差には必要の無いものなのだろうか、本などで見るものとはまた違った刀のようである

 この二本を二刀流として使っているようなのだが、無理して使う必要があるのだろうか

 もしかしたら何か特別な理由があるのかもしれない

 

「そっちの白楼剣の方は?」

 

「此方は魂魄家が代々受け継いでいる物で、魂魄家の物にしか扱えない刀と言われているんです」

 

「扱えないって……刀が重くなったりでもするのか?」

 

 まさか妖刀の類じゃないだろうかと疑いが浮上するがまずは本人に聞いた方が早いであろうと問う

 

「いえ、そういうわけではなく、斬るだけなら出来ますが本当の真価を発揮出来ないと言った所ですね」

 

「真価?」

 

「この刀は『人間の迷いを断ち切る事の出来る短刀』と呼ばれているのですが、まだまだ未熟で私には扱い切れてないんです」

 

「あれほど綺麗だったのに、あれで未熟なのか……」

 

「綺麗、ですか……?」

 

「あぁ、さっきから見させてもらったんだが、正直見惚れていたな。いつの間にか終わってて自分でも驚いた」

 

「えぇ……!?そ、そんな私なんてまだまだで綺麗なんて……」

 

 後半、何やらごにょごにょと言っていたのだが上手く聞き取れなかった

 此処で会ったのもついでだと思い、霊力弾、剣術の件を伝える

 

「あ、妖夢。それで頼みがあるんだけど良いか?」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「その剣術なんだけど俺に教えてくれないか?弾幕の方もだけど時間が空いたらで良いからさ」

 

「そういえば、弾幕の方は昨日も言ってましたね。でも何故剣術も?」

 

「何というか身近にせっかく剣士が居るんだから教えてもらっても損はないと思った、からだな。あとはやっぱり自衛の手段としてないと困るだろうし」

 

「……確かにそうですが、別に此処にいればそのような必要はないのでは?」

 

「いや、何時迄も居る訳じゃないだろ?それにもしもの時守られているってのは格好付かないしさ」

 

「……分かりました。なら、とことんお付き合いします」

 

 どうやら俺の真意は伝わったようである

 妖夢は俺に待つように告げ一度屋敷の方へと戻って行く、何かを取りに行くようだ

 

 再び現れた妖夢の手には、木を加工したであろう茶色の木刀が握られていた

 

「とりあえず、これで素振り五百回してください」

 

「え、五百……?」

 

 唐突に凄い数を言われ動揺を隠せないでいる俺へ妖夢は木刀を渡す

 ずしりとした質量を感じつつ受け取ると、その木刀は訓練用なのか年季が入り、所々に傷がついているのが見て取れる

 

「……本気なのでしょう?ちなみにそれは私が以前使っていたものなのでご自由にお使い下さい」

 

「……あぁ分かった。やってやるよ、五百だな」

 

 妖夢は俺を試すつもりでいるのだろう、きっと今はくだらない気持ちでやろうとしているのだと、ならば俺は熱意を見せなければならない

 やってやる、とぎゅっと木刀を握り締め心の中で気合いを入れる

 

「では、私は朝食の用意があるので失礼します」

 

 そう言い残し、妖夢は去って行った

 久々に木刀などという物を持つが何処まで出来るのかは不明だ

 

 すっ、と木刀を上段へ構え縦に一閃、振り下ろす

 

「っ……」

 

 普段運動をしていなかった事からか、真っ直ぐに振り下ろす事は出来ず、ぶれた軌道を描き、木刀を支えきれる事なく、地面へと刃先の部分をぶつけ、ガッ、と音を鳴らしてしまう

 

「……運動不足がここで祟るとは。これは真面目に取り組まないと駄目かもしれないな」

 

 当時はこんな重い物ではなくもっと軽い初心者が使うような木刀を使っていたため、先ずは重さに慣れないといけないようである

 色々と無駄に思考を張り巡らせながら素振りを再開し始める

 とそこで俺は自分の失敗に気づいたのだった

 

「……あ、しまった。数えてない……」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 〜妖夢side〜

 

 

 二人分が三人分へとなった朝食を用意し始める、と言っても主人が食べる量は一人分なんて越えていて、実際はもっと量が多いと思う

 私の頭の中ではさっきまで話していた人の事を思い浮かべていた、白玉楼の前で倒れていて、それで主人である幽々子様がここに置く事を決めた人間、零一さん

 先程の話では剣術を習いたいと言っていたけど、正直なところ私は、本気にはしていなかった

 どうせすぐに根を上げるに決まっている、だからこそ少し無理なメニューをやらせ諦めさせるつもりであった

 祖父から教わった剣術を中途半端な気持ちで進んで欲しくなかったからである

 

「そろそろ投げ出してる頃、でしょうか」

 

 朝食の準備を終え、諸々の朝の仕事を片付けた私は、先程まで自分が剣を振るっていた庭へと向かう

 そこには今だに剣を振るう青年の姿があった、見るに構えはそれなりに出来ているものの木刀の重さに振られているのか、軌道は滅茶苦茶であるのが見て取れる

 流石に口で言うだけあって簡単には投げ出さないようだ

 

 青年、もとい零一さんが此方に気づき声をかけてきた

 

「はぁ……はぁ……。ん……?妖夢、もう終わったのか?」

 

 息も切れ切れで、額には玉のような汗をかいている

 実際には一時間ほど掛かっていた事からもう、というのは少しおかしいがきっとそれほど集中していたという事なのだろう

 

「はい、朝食の準備が出来ましたので呼びに」

 

「……まだ二百しか終わってないから終わらせてから行く。もし遅かったら先に食べててくれ」

 

「……辛くないのですか?」

 

 私はそう問う、真意が分からない、先程の言葉なんて唯の建前に決まっているのに

 

「いやまぁ……辛いと言ったらそりゃ辛いのかもしれないが、それ以上に楽しい、かな」

 

「……楽しい、ですか?」

 

 見当違いの事を言われ私は戸惑う、辛いのに楽しいとはどういうことなのだろうか

 

「うーん……こう上手く説明出来ないんだけどな。振るう度にここがおかしいとか、ここを直せばいいのかとか、色々と改善点が見つかるんだ。それを直して行くのが楽しい、ほら成長してるって感じがするだろ?」

 

 こういう人なのだろうか、直情型とかそういうのとはかけ離れているのかもしれない

 きっと考えてから行動をするタイプなのだろう、私も少し見習わなくては

 

「……確かにそれなら向上心が湧きますね。零一さんはそういうのを糧に剣を振るっているというわけですか」

 

「まぁ、今のところ全くもって駄目だけどな」

 

 彼は苦笑いをしながら答える

 駄目と分かるだけマシだと思うものだ、分からずに振り続けた方が変な癖がつき、色々と支障が出てしまい我流という訳ではないが、真面な筋で振れなくなるであろう

 

「駄目、と分かるだけ良いと私は思います。多分、零一さんは振るうという事だけを、考え過ぎているだけです。刀の重さにも頼って断ち切る瞬間の力を込めるだけで十分なはずです」

 

「断ち切る……瞬間……なるほど」

 

 彼は再び構える、構えだけは雰囲気があるが何故だろうか

 上段に構えそのまま振り抜く、今度は無駄な力も入っておらず自然に木刀が振り抜かれる

 

「お、おおっ……?何か、それっぽくなったんじゃないか?」

 

 少し興奮気味に彼が話しかけてくる

 確かに初めて振るったにしては及第点なのかもしれないがまだまだだ

 

「今のは無駄な力が入っていなかったので、さっきより良かったです」

 

「とりあえず……何か掴めた気がする。妖夢、後から行くから先に食べていてくれないか?」

 

「分かりました。では失礼します」

 

 再び木刀を振るい始めた彼を背にし私は立ち去った

 少しだけ認めても良いのかしれないと思い直し、何処から教えていこうか考え始め、仲間が出来たかのように心を躍らせてしまうのであった

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「っ……ッ……!」

 

 俺は軽く掛け声を出しつつ木刀を振り続けていた

 先程、妖夢が来た時にもらったアドバイスのおかげで大分様になってきたはずである、まだブレてはいるがしっかりと振れるようにはなってきているはずだ

 そう思いつつ、先程の感覚を忘れまいと一心不乱に振るい続ける

 

「お、終わった……」

 

 漸く五百というノルマを終えその場にドサリと倒れこむ、汗で服が張り付き気持ち悪いことこの上ない

 息を整えゆっくりと立ち上がり、先に汗でも流そうかと思い、水場へと向かうために歩を進める

 

「……うっ……腕が重い」

 

 流石に運動不足の状態から振ったからか、腕の筋肉が張って熱を持っているのが分かる

 

 ちなみに木刀は俺の使っている部屋に置いてきた、自由に使っても良いとの事なので存分に振ろうと思っている

 

 汗を流し終えた俺は、その足で居間へと向かった

 ……余談であるが春とはいえまだ冬も明けたばかりに冷水を浴びるのはオススメしない、死ぬ可能性がある

 

「あら、零一素振りは終わったのかしら?」

 

「ん、あぁ終わったぞ。ただ、まだまだだな。もっと振るわないと物に出来ないぐらいの駄目っぷりだった」

 

 居間に入ると妖夢の姿はなく幽々子さんだけがおり、声をかけてきた

 

「最初は誰でも出来るわけじゃないと思うわよ?」

 

「まぁ……そうだよな。それよりも運動不足のせいで腕がパンパンだ……」

 

「それは大変ね。私が食べさせてあげましょうか?」

 

「……揶揄うつもりだろ。それよりも俺の朝飯は?」

 

 イタズラな笑みを浮かべながら幽々子さんが問いかけてくる、だが思わぬ朝練により俺の腹は先程から食物を求めているのだ

 今は幽々子さんの相手をしている場合ではない

 

「あ、ごめんなさい。貴方の分食べてしまったの」

 

「……………」

 

 舌を出し謝罪をしてくる幽々子さん、まさしくその姿はテヘペロとやらなのだが許される事ではないだろう

 むしろ返して欲しいものである、だからと言って食べた物を出されても困るが

 

 こうして俺は昨日の昼飯に続き、朝飯も此処の主である幽々子さんのブラックホールに飲み込まれてしまうのであった

 

 

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