東方剣舞録 〜希望と絶望〜   作:カルート

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七話 人里の道具屋

 妖夢との模擬戦から一週間が経ったある日、朝の素振りを終え皆で朝飯を食べていた時の事だった

 

「人里へ?」

 

「はい。色々と買い足さないといけないので、と言っても半分以上は食材ですが」

 

 内容は人里への買い物に一緒に行かないか、というものである

 一ヶ月以上妖夢が外へ出ていた所を見ていないのだが、その間保つ食料品を何処に保存していたのだろうか

 

 普段は妖夢が料理をしているため気にならなかった、しかし今になり疑問が浮かぶ

 そんな疑問など知らない内に人里へ行っていたなどと解決する答えは色々とあるのだが、その場合であると一ヶ月分の食料品をどう運んだが問題である

 しかも普通に三人分では無く、ブラックホール(幽々子さん)により倍以上の量なのだ

 

「前に零一さんが行ってみたいと言ってたのでどうです?」

 

「お、勿論行く行く。ここに来てから幽霊ばかりしか見てないし、どういう感じなのか気になるからな」

 

「でしたら、この後直ぐに出るので門で再度集合としましょう」

 

 何やら視線を感じ其の方を向くとニヤニヤと何が面白いのか笑う幽々子さんがいた

 何時もの揶揄いが飛んでくるのだろうと呆れつつ待ったのだが、ただニヤニヤとするだけで何も話しかけて来ない

 

「……幽々子さん。何でニヤニヤとしているんだ?」

 

「別に〜?それよりも妖夢、妖夢」

 

 ちょいちょいと妖夢を近くへと呼ぶと幽々子さんが耳元で小さな声で語るような形となり内緒話を始めてしまう

 気になる事は気になるが盗み聞きする訳にもいかず、味噌汁を啜りながらその姿を眺めていた

 

 すると妖夢の顔が慌てたような顔になり、次に真っ赤になりとまるで信号機の様に顔色が変わっていく

 きっとまた揶揄いの言葉をかけ遊んでいるのだろう

 此方に矛先が向かないだけまだ良いが、脳の処理が追いつかなくなってきたのか妖夢がショートしかけている

 

「幽々子さん。妖夢が処理しきれないで爆発するぞ」

 

「あら?むぅ……此処からが良い所だったのに、残念」

 

 巻き込まれたくはないのだが見ていられなくなり仕方なく庇う、幽々子さんはそれを分かっててやっているような気がしてならない

 

 最早機能していない妖夢を放置し再び食事を再開する

 声を掛けても反応しないのだから放置する他ない、何を考えているのか茶碗を持ったまま固まっている

 

「何してんだか……」

 

 小さく呟き、溜息をつく

 この状態で出掛ける事など出来るのだろうか、心配になりながら食事を終えるのだった

 

 

 朝食後、一度部屋へと戻り元々来ていた服へと着替えた

 普段は妖夢が用意をしてくれた紺色の着物を着用しているのだが、慣れない物である為か運動する時などは着用せずこの格好だ

 

 身支度を整え、準備を完了する

 持ち物、と言っても一応白紙のスペルカードをポケットに突っ込んでいるだけである

 それ以外の持ち物は妖夢から渡された木刀しかない為持って行く事は辞めた、普通に邪魔になるだけなのだから必要無いだろう

 

 玄関、つまり白玉楼の門へと向かうと既に妖夢が待機しているようであった

 

「おっと、悪い。遅くなった」

 

「い、いえいえ。私も今来たところですから」

 

 如何やら正常な状態に戻ったようだ、唯まだぎこちない喋り方にみえるが先程から大して時間も経っていないため仕方ないだろう

 

「そ、それでは行きましょうか」

 

「……大丈夫か?」

 

「大丈夫です!さぁ、遅くならない内に!」

 

 慌てた様子でサッと飛び立ち行ってしまう

 

 待った、遅くなるとかは兎も角飛べるとは何事だ

 元の世界では道具がないと飛べないような世界だった、つまり俺は飛べない

 此の世界では俺の常識と言うものは働かないのだろうか

 

「あ、あれ。どうしたんですか?」

 

「俺の世界では道具や乗り物がないと空に飛べる事出来ないんだが……」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

 其処で不思議そうな顔をされても此方が困ってしまう

 幻想郷の人々は皆飛べるものだろうか、だとすると此処はビックリ人間の集まりで超人しかいないで急に異世界に送り込まれた一般人の気分になってきた

 実際にそうなのであるから文句など言ってられないが

 

「どうする?どうせなら留守番でも良いぞ?」

 

「えーと……背負いましょうか?」

 

 女の子に背負われ空を飛ぶ図を思い浮かべ、其れは流石にないなと(かぶり)を振る

 

「……流石に其れは」

 

「で、ですよね……」

 

 

『お困りのようですわね』

 

 

 二人のものではない声が響く

 何事かと辺りを見渡すが誰いない

 

 突然、目の前の空間が割れ目玉の覗く穴が現れた

 

 

「ハーイ、皆大好きゆかりんよ♪」

 

 

「「………」」

 

「コホン、お困りのようね零一」

 

 無かった事にするかのように一つ咳払いをすると言葉を紡ぎ始める

 急に現れたのはまだ良い、しかしそのギョロギョロとした目玉達が覗く気持ち悪い穴はどうにかならないのだろうか

 

「気持ち悪いなんて失礼ね」

 

「……だから心読むなよ。それで何の用だ?」

 

「人里に行きたいのでしょう?なら私のスキマを通って行けば良いわ」

 

「スキマ、ってなんだ?」

 

「今、貴方が気持ち悪いと罵倒した空間の事よ。詳しい説明が欲しいのならしましょうか?」

 

「……いや、良い。やめておく」

 

 説明されてもこの世界のルールを知らな過ぎる俺には理解出来ないだろうと断る

 どうせ聞いてもちんぷんかんぷんになり時間を取るだけだろう

 

「それで、送ってくれるんだよな?」

 

「えぇ、勿論。自衛程度なら出来るのであれば出ても問題ないわ。妖夢もいるのなら安全でしょう」

 

「何か企んでいる可能性は?」

 

「あら、そう見えるのかしら?別に良いのよ。送らなくても。決めるのは貴方なのだから」

 

 にこりと笑い扇子で口元を隠すかのように広げた

 怪しいのは確かだが他に方法がないのならば仕方あるまい、腹をくくり答えを決める

 

「なら頼む。人里に行くだけだから危険も何も無いだろ」

 

「宜しい。では妖夢、先に行って来なさい。スキマならば一瞬で送れるからすれ違いしないように、ね」

 

「はい。分かりました」

 

 八雲さんに言われ妖夢は門の先にある長い階段を降りるように飛び去って行った

 しかし妖夢も一緒に送れば良いのでは、という疑問が浮かび上がる

 

「……八雲さん、何か俺に話したい事でもあるのか?」

 

「変に勘が良いわね。貴方、妖怪と会っても決して戦ってはいけないわ」

 

「妖怪と……?でも弾幕ごっこがあるんだろ?聞いた限りだと遊びみたいな感じだと思ってたんだけど」

 

「はぁ……理解しきってなかったようね。確かにごっこと言っているけれど当たり所が悪ければ『死ぬ』わよ?普通の人間なら尚更、ね」

 

「え、死ぬって……。すでに俺、冥界にいるんだが。冥界って死後の霊とかが来る場所だろ?」

 

「そういう意味じゃないわ。これを受け取りなさい零一」

 

「此れはなんだ?」

 

 何処から取り出したのかその手には白を基調とし、赤で模様が描かれたお札が握られていた

 其処には『博麗神社』と書かれている

 オカルトや霊媒師などで使いそうな見た目……博麗神社?

 

「貴方を守る御守りとでも言うべきかしら。肌身離さず持ち歩いて入れば貴方を危険から助けてくれるはずよ」

 

「……此れ本当に効くのか?」

 

 何かを思い出せそうなタイミングで声を掛けられたからか一旦思案をやめ、胡散臭い物を見る目で視線を向ける事で言葉を返す

 本来なら信じるべきなのかも知れないがスキマに落としたと言う前科がある為全面的に信用は出来ない

 

「有名な巫女、博麗 霊夢(はくれい れいむ)が霊力を込めた有難いお札なのよ?これ一枚で妖怪なんて近づく事すら出来ない。一家に一枚、さぁ貴方もどうかしら?」

 

「更に胡散臭い。というか何で何処ぞのテレビショッピングみたいになってるんだ」

 

「零一、効力を試すために妖怪の溜まり場に落としてもいいのよ?」

 

「横暴過ぎるだろ!?」

 

 こんなの脅しみたいなものである

 信じてないからと言って無理矢理確かめさせるとはどういう事なのだろうか

 

「……まぁ、妖怪と遭遇しなければ良い話か」

 

「そうよ。あくまで其れは保険なのだから使わない事に越した事はないわ」

 

「そうならない事を願うよ。じゃあ八雲さん頼む」

 

「では行ってらっしゃい零一」

 

 

「……なっ────何で下ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

 いつの間にか足元に開かれていたスキマへと落とされる

 何で普通に送ってくれないんだ、と思いながらあの気持ち悪い空間へと飲み込まれて行くのであった

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「あぐっ……いたた……何で落とすんだ」

 

 急に落とされたと思うと直ぐに地面と顔面だけで無く全身でキスをする

 着地など出来るはずも無く全身から落ちた為か鈍い痛みが襲う

 

 気を取り直し埃を払いつつ起き上がり辺りを見渡す、視線の先に簡易的な柵に囲まれた家々が見えた

 如何やらしっかりと人里へ送ってくれたようだ

 

「ん?おっと、手に握ったままだったか」

 

 軽く握り締めてしまったのか少しクシャクシャになってしまっているお札をポケットへ突っ込む

 妖夢を探すべく辺りを見渡すと

 

「あ、零一さん。こっちです」

 

「お、良かった。すぐに合流出来たな」

 

「ふふ、(はぐ)れなくて良かったです。では、行きましょうか」

 

 二人並ぶようにして人里へと入る

 妖夢は二本の刀を背負ったまま入っているのだが周りから特に目も向けられていない、むしろ此方の方を見ている気がするのは気の所為では無いだろう

 

「……何か見られてるような」

 

「多分、その服が珍しいのだと思います。零一さん外来人ですし」

 

 そう言われ改め周りを行き交う人々を見る

 皆、着物など和服に身を包んでいるのだ

 ジーパンにTシャツという格好の此方が浮くのは仕方ない事だろう

 

「そんなにキョロキョロして気になりますか?」

 

「いやほら、俺からしたら色々と新しいからさ。珍しい物を見ているような感じになってる」

 

「やはり外の世界とは違いますか?」

 

「全く違うな。まず着物なんて着てる人はあまりいない。基本的に俺が着ているような洋物の服、洋服を着ているんだ」

 

「へぇ……少しだけ興味ありますね」

 

 思うのだが、妖夢の服も洋服ではないのだろうか

 何故かは分からないが色々と混ざっている辺り日本ではないと言う事だろう

 

「妖夢も俺の世界に来れれば良いのにな」

 

「確かにそれは面白そうです。でも幽々子様がいるから無理かも……」

 

「なら幽々子さんも一緒に来れれば問題無いんじゃないか?もし、来れるようなら事があったら俺が色々と案内するぞ」

 

「本当ですか?約束ですよ!」

 

「あ、あぁ。約束だ」

 

 身を乗り出すような勢いと共に目を輝かせる妖夢

 そんなに楽しみなのだろうか

 そうとなると回る場所を考えなくてはならないな、と少し思案する

 

「あ、此処です。着きましたよ」

 

 話している内に目的の店へ到着したようだ

 

 顔を向けると其処は雑貨屋だろうか、看板に『道具屋霧雨店』と書かれている

 外から見える品物は見るからに様々な物があるようだ

 風呂で使うような桶から(くし)まで取り扱う物も多いように見える

 

「あれ、此処に用があるのか?」

 

「いえ、先に零一さんの言っていたお土産から買おうかと。後からですと嵩張ると思うので」

 

 確かに荷物の多い状態ではゆっくりと見て回る事は難しいかもしれない

 その多い原因は家にいる大食らいのせいであるのだが本人がいない為とやかく言えない

 

「なら、良さそうな物あるか探してみるとするか」

 

 と言いつつ開けられた戸を潜る

 

 中へ入ると金の髪を後ろに乱雑に束ね、無精髭を生やした男性がエプロンの様な物を身に付けカウンターらしき場所の奥に座っているのが見えた

 見る人によっては怖がられるのではないかと思うぐらいの人相をしている

 

 男性は此方に気付くと一言、低い声でお馴染みの掛け声を掛けてきた

 

「らっしゃい」

 

 客を迎えてるとは思えない無愛想な顔をしているのだが、此の人は雇われの店員なのだろうか

 流石に店長などでは無いだろうと思考をしている所へ妖夢が挨拶を返す

 

「こんにちは」

 

「あぁ、嬢ちゃんか。今日は何の用だ?」

 

「実は此の方がお土産が欲しいと言ってまして。店長さん、何か良いのありますか?」

 

 店長という言葉を聞き驚きが隠せないでいると、店長と呼ばれた男性から声が掛けられる

 

「ふーん、お前さん外来人か。道理で見ない顔をしていると思った。んで、何でそんな顔してやがる。まさかこんな顔の野郎が店長で驚いたと言う顔だな?」

 

「い、いや。そういう訳じゃ……」

 

 図星を突かれ、言葉を濁してしまった

 

 そんなに顔に出ていただろうか?

 今度から気を付けなくては失礼になってしまうな、と思い直す

 

「あっはっは。皆、最初はそう思って来る輩ばかりだから気にする事ない」

 

「あぁ、やっぱり」

 

「れ、零一さんっ」

 

 つい口に出てしまった言葉に妖夢が慌てた様子で制す

 もう出てしまった為遅いのだが、男性は気にも留めない様子で

 

「ほう。面白い奴だなお前さんは。お土産というからにはオススメ聞くよりも先ず自分で選ぶと良い。もし選べないのならオススメとやらを教えてやるからよ」

 

 ま、この店にある物全部なんだけどな、と冗談なのか笑うとカウンターに置いてあった新聞に目を落とし始めてしまった

 

 此処からは自分で決めろという事なのだろう

 店内を物色するため棚を見て回る

 

「……お、此れで良いか」

 

 綺麗な琥珀色をした首飾りが目に付いた

 形は勾玉のようで穴に紐を通してあるようだ

 お洒落という訳ではないが此れならば身に付けられる範囲内だろう

 

「決まりましたか?えーと此れは首飾り、ですか」

 

「此れなら普段から身に付ける事が出来て良いと思ってな。……なぁ、妖夢。今気付いたんたが、俺金持ってないぞ?」

 

「あぁ、そんなの気にしないで大丈夫ですよ。幽々子様から出すように言われてますので」

 

 如何やら幽々子さんはこうなる事も分かっていたようである

 心の中で一応感謝をしつつ男性を呼んだ

 

「お、決まったか。どれどれ、へぇ……お前さん面白い物を選んだな」

 

「…………?」

 

「すまんすまん。気にすんな。其れは記念だ、取って置きな」

 

「え、良いのか?」

 

 其れでは店として機能しない気がするのだが良いのだろうか

 見た目の割に優しい人なのかもしれない

 

「また来てくれれば構わねぇよ。今後共ご贔屓にってな」

 

 ニカっと豪快な笑みを浮かべる男性、話してみないと分からないが人は見た目にはよらないという事だろう

 

「なら有難う。早速身に付けさせて貰うか」

 

 手にした勾玉の首飾りを首から下げる

 首飾りなどした事ないが如何なのだろうか、視線を妖夢へと向けると

 

「零一さん。其れ似合ってますよ」

 

 笑顔でそう女の子に言われて悪い気分をする男などいるのだろうか

 嬉しくなりつい口元が緩んでしまう

 

「おー、熱いね。お二人さん」

 

「……茶化すなよ。全く」

 

「そ、そうですよ!私達はそんなのじゃないです!」

 

 言いたい事は大体分かるがそんなのって何なんのだろうか

 

 如何やら妖夢は何処に言っても揶揄われる運命にあるらしい、見ていて可愛いので特に止めるつもりもないが

 

「妖夢、買う物沢山あるんだろ?遅くならない内に行こう」

 

「そうですね。では、店長さん。有難う御座いました」

 

「おう、また来てくれ」

 

 ぺこりと妖夢がお辞儀をし、店を出るのに続き俺も出る

 此処はまたゆっくりとまた来ても良いかもしれないな、と思いつつ本来の目的であった買い物を再開するのであった

 

 

 




どうもカルートなる者です。
今気付いたのですが零一の服装しか表現してなかった……(汗
何処かで入れます多分……恐らく……きっと……


今の零一の持ち物(装備品)

頭:なし
首:E 琥珀色の勾玉
体(上):E Tシャツ(長袖)
体(下):E ジーパン(青)
右手:なし
左手:なし
装飾品1:E 白紙のスペルカード
装飾品2:E 博麗のお札
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