クラスメイトはイタリアンマフィア!?   作:cibetkato

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1.発覚した秘密

 ボンゴレ10代目・沢田綱吉14歳。彼は非常にお疲れだった。

 

 それもこれも、最近身の回りで起こされるとんでもない事件に度々巻き込まれているからだった。

 

 先日など、リング争奪戦なんてものが開催され、散々な目に遭った。もういい加減、ボスになる覚悟もできたから、暫しの平穏を与えて欲しい。そう思っても仕方の無いことだろう。

 

「・・・10代目、お疲れですね」

 

 心配そうに声をかけてきたのは、自称10代目の右腕で嵐の守護者・獄寺隼人だった。

 

「うん・・・なんか、あと1回何かあったらキレそう」

 

「キレそうって・・・」

 

 綱吉のボヤキに獄寺の顔がさぁぁぁっと青くなった。

 

 リング争奪戦の際に、敵であるヴァリアーだけでなく、味方までもを恐怖の渦に叩き落とした綱吉の本性を思い出したのだ。

 

「・・・ツナがキレるのは勘弁なのなー・・・」

 

 綱吉と獄寺の後ろから、若干怯えの混じった声が聞こえる。

 

「あ、山本、おはよ」

 

「野球バカ・・・珍しく遅ぇじゃねぇか」

 

「イヤ・・・なんかよ、朝起きたら、うちに銀髪で、でけー声の鮫が来てて・・・」

 

 遠まわしな山本の言葉でも、十分にその正体は推測できた。

 

――― スクアーロか!!

 

 綱吉の眉がピクリと動き、そんな綱吉の様子を見た獄寺が更に青ざめる。

 

「スクアーロって、まだ、怪我が治ってないんじゃないの?」

 

 訊ねた綱吉に、山本は苦笑いをうかべる。

 

「あー、うん。・・・なんか、俺を剣の道に誘いに来たとかなんとか・・・」

 

「因みに、スクアーロだけ?」

 

「あー・・・、王子一匹と金の亡者一匹とオカマ一匹・・・かな?」

 

 綱吉の確認に、山本がへらりと笑って答える。

 

「オイオイ、ヴァリアーの幹部殆ど来てんじゃねぇか」

 

「・・・ペナルティーはどうしたんだろう?9代目に確認しないとかなぁ・・・それとも、父さん?」

 

 だんだんと綱吉の周りの温度が下がりだす。

 

「じゅっ・・・10代目っ、俺が確認しますっ!」

 

 疲労が溜まり、キレやすくなっている綱吉にやらせるわけにはいかないとばかりに、獄寺が携帯でボンゴレ本部と連絡をとりはじめた。

 

 教室内に獄寺の流暢なイタリア語が響く。元々、イタリア育ちなのだから当然と言えるのだが、クラスの女子は、そんな獄寺をうっとりと見つめている。

 

「なぁ、ツナ?・・・お前、イタリア語わかる?」

 

 何とはなしに山本が問う。

 

「何言ってんのよ、沢田にわかるわけないじゃない」

 

 綱吉が答える前に、山本の背後から呆れたような声が聞こえる。

 

「あ、黒川。・・・京子ちゃんも。お、おはよ」

 

 一瞬で“ダメツナモード”に切り替えた綱吉。そんな綱吉に、山本は苦笑いだ。

 

「おはよう。ツナ君」

 

「あぁ、おはよ、沢田。・・・で、アレはどーしたのよ?」

 

 それぞれに挨拶を返し、チラッ視線を向けたのは、電話口に向かいギャンギャンとイタリア語で早口に捲し立てている獄寺である。

 

「あ、あぁ、アレはちょっと、のっぴきならない事情があってな。な~?ツナ?」

 

 山本が言葉を濁し、綱吉に振る。

 

「あ、うん・・・」

 

 それに気付いた綱吉は、困ったように笑って、頷いた。

 

「のっぴきならない事情って、何よ?」

 

 とはいえ、深く突っ込んで欲しくない時に限って、突っ込まれるものである。

 

「えーと、それは・・・あ~」

 

 心底困ってしまって、思わず苦笑いをうかべた山本は、どうにかならないかと獄寺に視線を向けた。

 

 と、その時、急に獄寺がすっとんきょうな声をあげた。

 

「Huh!?L'ufficio di ramo giapponese di "VARIA"!?(はぁ!?ヴァリアーの日本支部ぅ!?)」

 

 その叫びに、綱吉がピクリと反応する。

 

「ヴァリアーの日本支部・・・?」

 

 ぽつりと呟いたその言葉に獄寺がハッとして振り返り、そんな獄寺に山本は綱吉がイタリア語を理解していたことに気付く。

 

「つ・・・ツナ、お前、イタリア語・・・」

 

「うん。まぁ、父さんもアレだし」

 

 綱吉はさらっと答えて、呆然とこちらを見ている獄寺から携帯を奪う。

 

「Ciao? Non e Lei....la storia.Sia sostituito per la nona generazione.(もしもし?お前達じゃ話にならない。9代目に変われ。)」

 

「さ、沢田が何かイタリア語っぽいのしゃべってる!」

 

 クラスメイト達がざわざわとざわめく。

 

 イタリア語っぽいのではなく、まんまイタリア語だ!と心の中で突っ込みながら、獄寺は綱吉からそろりそろりと距離を置く。

 

「おい、野球バカ。お前が何とかしろよ!・・・そもそも、お前が持ち込んだんだろうが!」

 

「アハハ。無理!・・・獄寺こそツナの右腕だろ?何とかしろな~?」

 

 コソコソと、互いに責任を擦り付けあう獄寺と山本。

 

 そんな2人に、クラスメイト達はますます混乱する。

 

「ちょっと、山本、獄寺。一体何なの?」

 

 訝しげに黒川が問う。

 

「あ~。皆は関わらない方が良いのな」

 

「世の中には知らなくて良いこともあるんだぜ」

 

 表情も硬くそう答える2人に、黒川は首を傾げ、京子と顔を見合わせる。

 

「はぁ?なにそれ・・・」

 

「いいから、関わるなって!というか、何聞いても記憶の彼方にぶっ飛ばせ!」

 

 獄寺が思わず逆ギレしかかった時だった。

 

「ヘェ・・・門外顧問も了承したんですか?・・・あぁ、1つだけ確認して良いですか?9代目」

 

 底冷えするような冷たい声に、獄寺と山本はビクッとする。

 

 怒りのあまり、日本語に切り替わったせいで、クラスメイト達も聞き耳をたて始める。

 

「俺は、ボンゴレ10代目なんですよね?」

 

――― ボンゴレって、貝ですか?沢田さん。

 

 クラスメイト達は内心(何故か敬語)で突っ込み、綱吉の更なる言葉を待つ。

 

「じゃあ、その俺に何の相談も無しに、何、イキナリ、ヴァリアー日本支部とか、10代目直属暗殺部隊とか言っちゃってるんです?」

 

――― 暗殺っ!?それって

 

「はぁ?・・・だもんって、良い大人がなに言ってんですか。・・・ッ・・・さっさとくたばれ狸ジジイ」

 

 ブチ。と通話を切った綱吉は持っていた携帯を獄寺に渡す。

 

「じ、10代目・・・」

 

 携帯を受け取った獄寺は、綱吉の表情を窺う。

 

「獄寺君」

 

「はっハイ!」

 

「山本」

 

「お、おう・・・」

 

「俺さぁ、あれだけマフィアのボスになるの嫌だったのに、ごり押しされて仕方無く諦めたんだよ?・・・なのに、ナニ?この仕打ち・・・俺、キレてもいかな?」

 

――― マフィアって、あの~沢田さん?今、マフィアって、仰いましたよね!?

 

 とんでもない言葉に大混乱するクラスメート達。

 

 そして、守護者である2人も大混乱中であった。

 

「10代目ッ!?一体、何があったんです!?」

 

「つ、ツナ、ちょっと待つのな!俺らは何がなんだか」

 

 綱吉の応答だけでは状況が掴みにくかった2人に、綱吉は盛大な溜め息をついた。

 

「なんかさぁ、ヴァリアーの再教育?を俺に任せて、ボンゴレ本部とは別に日本支部を作って、暫くは日本で働かせるって・・・」

 

「・・・あー・・・」

 

 そんなことを勝手に決められたら、綱吉でなくても怒るだろう。

 

「それにッ!」

 

 バンッ!!と机を叩き、殺気を駄々漏れさせたまま綱吉は呻くように言った。

 

「“ヴァリアーが君に心酔しちゃったんだもん”だと!?・・・何が“だもん”だッ!こっちの意思をないがしろにするのも大概にしやがれッ!」

 

 怒り心頭の我等がボスは、サクッとマフィアだと暴露してしまっていることに気付いているのだろうか?

 

「・・・おいたわしい、10代目。・・・任せてください、この獄寺隼人、10代目の心痛の種を見事、果たして参ります!(10代目をキレさせるわけにはいかねぇ!)」

 

「俺も手伝うのなー(ツナがキレたら、手がつけられないもんなぁ)」

 

 獄寺と山本の言葉にきょとりとし、次の瞬間、綱吉はニタリと笑った。

 

「うん。頑張ってね2人とも。“俺がキレたら、大変”だもんね~?」

 

「「(読まれてるーーーッッ!!!)」」

 

 顔を真っ青にさせた獄寺と山本は、バッと身を翻す。

 

「「行って来ます!!!」」

 

「行ってらっしゃーい」

 

 ヒラヒラと手を振って2人を見送った綱吉はとってもイイ笑顔をしていた。

 

「さ、沢田・・・あんた」

 

 黒川が話しかける。

 

 なんて命知らずな!とクラスメイト一同ハラハラする中で、綱吉は至って普通に“ダメツナモード”で対応した。

 

「どうしたの?黒川?」

 

 察しの良い人間でなくてもわかる。

 

――― この人、全部、無かったことにする気だ!!

 

 クラスメイト達が一斉にどん引いたのに気付いて、黒川は肩を竦めた。

 

「あんた、イイ性格してるわね。絶対に面白がってるでしょ」

 

「な、何のことだよー」

 

 焦ったようにしている綱吉だが、その目は強い光を宿したままだ。

 

「ハァ・・・いつから猫被ってたんだか・・・」

 

「ツナ君、イタリア語出来るんだね、凄いなぁ~」

 

 呆れた黒川の隣で、京子がホワホワと笑いながら突如そう言った。

 

――― 笹川京子、大物だ!!

 

 クラスメイト達がそう思う中で、綱吉は照れたように笑って、後頭部に手を回す。

 

「そ、そうかなぁ」

 

「うん。凄いよ。・・・今度、教えて欲しいなぁ」

 

「きょ、京子ちゃんがイイなら、いつでも教えるよ!」

 

 ご機嫌になったらしい綱吉を見て、クラスメイト達は心を決めた。

 

 沢田綱吉を絶対に怒らせてはならない。

 

 そして、ご機嫌ナナメの時には、笹川京子の後ろに隠れよう!・・・と。

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