クラスメイトはイタリアンマフィア!?   作:cibetkato

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2.腹黒が伝染しました

 と、いうわけで、ダメツナの意外な(?)一面を知ってしまったクラスメイト達。

 

 あれから数日がたったある日のこと。未だにダメツナっている綱吉だったが、一目見た瞬間に、いつもよりもかなり機嫌が悪いのだとわかった。

 

 なぜなら、いつも綱吉の傍らにいる獄寺と山本の顔色が悪かったからだ。

 

「や、山本っ・・・山本っ!」

 

 クラスメイトAに呼ばれた山本は首を傾げながら、その側に寄る。

 

「ん?・・・なんだ?」

 

「ダメ、じゃなくて、沢田さんは今日は機嫌が悪いのか?」

 

 その問いに、山本は苦笑いをうかべた。

 

「あ~・・・。お前らも知ってるようなもんだよな~。ほら、前に電話してただろ?その内容覚えてるか?」

 

「あ、暗殺部隊がどうこうってやつか?」

 

「そうそう。・・・結局、押しきられちまって、ツナの奴、相当機嫌が悪いのなー」

 

 山本の笑顔がひきつる。滅多にないその表情に、今日の綱吉はかなり危険だとクラスメイト達は判断した。

 

「ま、ツナは今の生活が気に入ってるみたいだし、余計なことをしなきゃ大丈夫だって」

 

 ニカッと笑う山本だが、その胸中は穏やかではない。

 

 余計なことをしてくれた9代目と、何でだか知らないが、ツナになついてしまったヴァリアーを、恨めしく思う。

 

 それは、獄寺も同じようで、いつも以上にイライラしている。

 

「俺ら守護者だけの問題なら、まだ、解決のしようもあるんだけどなー・・・」

 

 ハァ、と山本がため息をついた時だった。

 

 教室の後ろのドアがガラッと勢いよく開けられた。

 

「沢田ッ!」

 

「あれ、お兄ちゃん?」

 

 そう。入って来たのは、皆のアイドル笹川京子の兄、了平だった。

 

「お兄さん?どうかしたんですか?」

 

 キョトンとして首を傾げた綱吉の両腕をガシッと掴んだ了平は、ためらうように一度口をつぐみ、それから、意を決してその言葉を口にした。

 

「ルッスーリアが、」

 

 ピクッと綱吉の口許がひきつる。だが、了平は冷や汗を背中にかきながら、続ける。

 

「今朝、いつものようにロードワークしていたら、ルッスーリアに会ってな・・・奴が言うには、今日の昼の便で、9代目と門外顧問が日本に来るらしいのだ」

 

「・・・お兄さん?もう一度言ってもらってもイイですか?」

 

 にっこり。

 

 綱吉の笑顔に了平は動物的本能で、生命の危機を感じとった。

 

「す、すまん、沢田ッ!・・・お、俺には無理だぁぁああっ!」

 

 そう叫んで、了平は教室から走り去って行った。

 

 いくら、ファミリーの逆境を跳ね返す輝く日輪である晴の守護者といえど、大空が相手では分が悪過ぎる。

 

「・・・へぇ。9代目と父さんがねぇ」

 

 くつりと笑った綱吉は、獄寺に視線を向けた。

 

「ねぇ、どうやって、追い払おうか?」

 

「じゅ、10代目。そ、それは・・・」

 

 さぁぁぁと青ざめる獄寺に、綱吉は笑みを向ける。

 

「ふふふ。どうせだから、ヴァリアーも使っちゃおっか♪」

 

――― 殺す気ですかぁッ!?

 

 思わず心の中でツッコミを入れ、獄寺はあわあわと携帯を手にとった。

 

「も、もしもしっ!?」

 

 どうやら相手に繋がったらしく、獄寺は綱吉から離れて、何事かを叫んでいる。

 

「やだなぁ、獄寺君ってば、心配性なんだから。別に殺したりなんかしないよぅ」

 

 へらり、と笑った綱吉は、山本を振り返る。

 

「ね?山本?」

 

「・・・んー、だな」

 

 この場で、綱吉に正直な感想を言える者はいなかった。

 

 しばらくして、がっくりと肩を落とした獄寺が戻ってくる。

 

「・・・9代目と門外顧問は、もう、イタリアを発ったそうです」

 

「へぇー。・・・今、チェデフに連絡とったの?」

 

「あ、はい。バジルが出ました。・・・護衛はチェデフ側からはオレガノがついているようです」

 

「まぁ、父さんとオレガノがついてれば、9代目も安心だろうねぇ・・・まぁ、ヴァリアーに狙われたら、ひとたまりもないだろうけどねぇ。あはは」

 

――― あはは。じゃないです。10代目・・・。

 

 口に出せないツッコミが、綱吉にモロバレしているとわかってはいるが、思わずにはいられない獄寺である。

 

「あ、携帯、貸してくれる?」

 

 獄寺は嫌な予感をおぼえつつ、綱吉に携帯を貸す。

 

「どうぞ」

 

「ありがと。・・・えーと、鮫の番号はー・・・」

 

 思いっきり、ヴァリアーと連絡を取り合う気満々の綱吉に、獄寺と山本の顔が更に青くなった。

 

「あ、あったあった」

 

 ごそごそと鞄の中を探っていた綱吉が、メモを取り出す。

 

「いっそ、捨てようかとも思ったんだけど。まぁ、使えるもんなら何でも使えば良いしね」

 

 晴れやかな笑みをうかべる綱吉に、何とも言えない表情をするしかない獄寺と山本である。

 

 寧ろ、綱吉にヴァリアーなんて危険物を与えた、9代目と門外顧問が悪いのだと頭の中で完結させる。

 

 この本性をむき出しにした綱吉と付き合うにあたり、身に付けた自己防衛能力である。

 

「もしもーし。スクアーロ?」

 

『う゛お゛ぉ゛いッ!どうしたぁッ!』

 

 携帯電話から凄まじく大きな応答が聞こえ、全員がギョッとする。

 

 しっかり耳から携帯電話を離していた綱吉は、軽くため息をついた。

 

「スクアーロ、うっさいよー」

 

『お゛ぉ゛・・・すまねぇ』

 

 綱吉が不機嫌なことに気づいたらしいスクアーロ(既に調教済み)は条件反射で謝った。

 

「で、本題なんだけど、9代目と父さんの件は聞いてる?」

 

『おぅ・・・』

 

「じゃ、俺の言いたいこと、わかるよね?」

 

 ふふふ・・・。と意味深長な笑い声をたてる綱吉の様子に、周りのクラスメイトも電話先のスクアーロも、背筋がぞぉっとなるのを感じた。

 

『・・・丁重にご帰国願う、だろぉ』

 

 綱吉の言いたいことなんてそれしかないとスクアーロが言えば、満足気な声が返ってくる。

 

「そうそう。さっすが、スクアーロ。よくわかってるねぇ」

 

『ナリタに向かう。てめぇの元には行かせねぇよ』

 

「よろしくね。ヴァリアークオリティに期待してるよ」

 

 任せておけぇ、と低く答えたスクアーロが通話を切る。

 

「これで、50%かな?」

 

綱吉の呟きに、獄寺は首を傾げ訊ねる。

 

「何の確率ですか?10代目」

 

「んー、9代目達がおとなしく帰る確率」

 

「あ~。そんなアッサリ、ヴァリアーに追い返されるような人じゃ、ないのなー」

 

 山本が若干失礼な感想を放つが、綱吉も獄寺も全く気にしていない。

 

 当然といえば、当然。綱吉を怒らせた時点で、どんな立場の誰であろうと、敬意を払う必要などないのだ。

 

 綱吉の可愛らしい外見に騙されて痛い目をみるだろう、綱吉10代目就任反対派には、憐れみすら感じる。

 

「しかし、9代目は何をしにこちらに来るんでしょう?」

 

 獄寺が心底不思議そうに首を傾げれば、山本も同意するようにうんうんと頷く。

 

「さぁね~。・・・また、余計なことを企んでるのかなぁ」

 

「・・・リング争奪戦の時はまさか、こんな人とは思わなかったのな」

 

「あ、それは言えてるな」

 

「・・・もうちょっと普通の、常識のある人だと思ってたんだけどなぁ」

 

 マフィアのドンという時点で、明らかに普通の人ではないのだが、綱吉にしてみれば、ここまではっちゃけてるとは思わなかったというのが、正直な感想である。

 

「まぁ、父さんがあんなだし、ボンゴレ自体がそんな雰囲気なのかな」

 

「いやいやいやいや・・・そりゃ、どこのコント集団だって、聞かれるのな」

 

 あくまでも、ボンゴレはマフィアである。

 

 しかも、イタリアでは右に出るものはいないと言われる程の、歴史と勢力を誇っている。

 

「かといって、重鎮達が煩いのも嫌ですよね」

 

「そうだねぇ。でも、さすがに、殲滅はヤバいもんねぇ」

 

――― 危険な言葉をにこやかに言わないでほしい!!!

 

 クラスメイト達が心の中で叫んでいるのもお構い無しに、綱吉達の会話は続く。

 

「でもさ、やっぱり、トップはボンゴレボスなんだろ?」

 

「そりゃ、当たり前だろうが」

 

「じゃ、つまりは、ツナがトップなんだし、他の重鎮なんて気にしなきゃ良いんじゃね」

 

「この野球バカ!そこはいろいろオトナの事情ってもんがあるんだよ!」

 

 ガミガミと獄寺が言うのに、山本は首を傾げた。

 

「でもよ、俺ら守護者だって、立場的には、ボンゴレの最高幹部なんだろ?・・・エライ奴がたくさんいたって面倒じゃね?」

 

「そ、れは・・・」

 

 山本の言い分に、獄寺が言葉をつまらせる。

 

「同盟マフィアのボスなら、多少は敬意を払う必要はあるだろうけど、ボンゴレ内部だけだっていうなら、必要ないって」

 

「・・・確かに」

 

 納得してしまった獄寺から、綱吉に視線を移した山本は、ニカリと笑った。

 

「な?ツナ。・・・お前の邪魔するヤツは、みーんな、消しちまえば良いんだって」

 

――― 消すってナニ!?消すって!?山本さん!!以前の爽やか好青年の貴方はどこ行ったんですか!?

 

 綱吉どころか、山本まで過激な発言をしだして、クラスメイト達は静かに大混乱していた。

 

「さっすが山本~。生まれながらの“殺し屋(ヒットマン)”だよねー」

 

 ニコニコと綱吉が言えば、獄寺も納得した様子で頷く。

 

「リボーンさんのお墨付きですしね」

 

「そーそー。・・・まぁさ、煩い重鎮を山本がどうしようと、俺は何も言う気はないし、好きにしてイイけど」

 

―――イイのかよ!?

 

 一斉に心の中でツッコミを入れるクラスメイト達。

 

「・・・けど、何だ?」

 

 綱吉の含みを持たせた言い方に、山本は首を傾げる。

 

「うん・・・まぁ、煩く言われる前に、徹底的に“調教”するつもりだから、大丈夫かなぁ~って。ホラ、いざという時、手駒があると、何かと便利じゃん?」

 

 笑顔でのたまう綱吉に、山本は、ああ、と声をあげて破顔する。

 

「そーか。手駒はいくらあっても困らないのな~」

 

「でしょー?だって、山本や獄寺君達に、雑用なんてやらせたくないし」

 

「俺ら守護者は、最高幹部だもんなー。雑用なんてそこら辺に転がってる手駒にやらせちまった方が、ぜってーイイのなー♪」

 

 段々、2人の会話の内容がどす黒くなっていく。

 

――― ああ、山本・・・お前もなのか。

 

 クラスメイト達が思わず嘆く。が、次の瞬間、獄寺の放ったセリフに全員がどん引いた。

 

「たりめーだ、野球馬鹿。・・・10代目に逆らう連中は皆、優秀な手駒になるように俺が再教育すんだからな!・・・見ていてください、10代目!!10代目に逆らうことの愚かさを、心の奥底にまで刻み込んでやりますよ!!」

 

 ガッツポーズを決めた獄寺に、綱吉は手を叩いて喜んだ。

 

「わ~!楽しみだな~!期待してるね!獄寺君!!」

 

「ハイ!!貴方の右腕として、最高の結果をもって、お応えします!!」

 

――― 沢田さんの黒さに怯えていたお前らはどこに行った!?

 

 クラスメイトの心の叫びももっともだった。が、残念ながら、それを口に出せる勇者はここにはいなかった。

 

 綱吉の黒さに慣れたうえに、自身も黒くなってしまった山本と獄寺もまた、クラスメイト達の恐怖の対象となってしまったのだった。

 

「で、9代目はどうすんだ?」

 

 山本が思い出したように問う。

 

「ん~?とりあえず、ヴァリアーからの報告待ち?」

 

 綱吉が答えると、山本も納得したように頷く。

 

「だよな。それに、50%の確率で追い返してくれるかもだしな」

 

「うん。ヴァリアークオリティだもんね。本当なら、もっと成功率が高くないと、動かないんだけどねぇ・・・」

 

 綱吉が苦笑すると、獄寺が肩を竦めた。

 

「10代目の頼みを、奴等が断るわけがないですよ。心底、惚れ込んでるんですから」

 

「まぁ、そう言って無理矢理日本に支部を置いたわけだしねぇ」

 

 それが発端でクラスメイトの恐怖の日々が始まったわけだが、今はそれに対して文句は言えない。

 

 綱吉の機嫌と、自分達の精神安定のため、是非とも9代目とやらを追い返してもらわねばなるまい。

 

「・・・ねぇ、沢田」

 

 どす黒い会話のせいで綱吉達から距離をとっていたクラスメイトの輪から離れ、黒川が綱吉に話しかけた。

 

 そもそも彼女と笹川京子だけは、綱吉の本性を知っても怖がったりはしていなかったりするのだが、どういうことだろうか。

 

「ん?何?黒川」

 

 そして、その彼女達の前で、条件反射のように“ダメツナ”の仮面を被る綱吉。

 

 もう今更それにツッコミを入れる人間はここにはいない。

 

「あのさ、なんで、その9代目とやらが来たら、嫌なわけ?」

 

 誰もが問いたくても問えなかったことを、あっさりと彼女は訊く。

 

「ん~?・・・とりあえず、ウザいから?」

 

 そして綱吉もあっさりとその理由を答える。

 

「ウザいって、どの辺りが?」

 

「構ってオーラを発するトコかなぁ。一体幾つだよって感じ。ランボだって、もうちょっと空気読むっての」

 

「・・・じゃあ、適当に甘えたフリして、好きなものでも買って貰えば?相手は金持ちなんでしょ?」

 

――― 黒川ぁああああッッ!!??

 

 綱吉の黒さは、黒川にまで伝染したようだ。

 

 クラスメイトの心の叫びも虚しく、綱吉はポン、と手を打った。

 

「あ、その手があったか」

 

「あんたなら、そういうの得意でしょうが」

 

 呆れた様子の黒川に、綱吉はあはは、と笑った。

 

「そうだね。ちょっとウザくても、我慢しようかな?」

 

「じゃあ、ヴァリアーに追い返すのは止めろと言いますか?」

 

 綱吉の言葉に、獄寺が携帯を取り出す。

 

「んーん。わざわざ止めることもないでしょ。ヴァリアーが失敗したらってことで良いよ」

 

 綱吉の機嫌が良くなったらしいと悟った獄寺は、黒川をマジマジと見つめた。

 

「・・・恐るべし、黒川!」

 

「ははっ、黒川、マジですげーのな」

 

 山本までもが、賛辞を口にする。

 

「は?何、言ってんのよ。ただ単に思ったことを沢田に言っただけじゃない」

 

 そう答える黒川だったが、他のクラスメイトからも尊敬の眼差しを向けられ、居心地悪そうに肩を竦めて京子に視線を向けた。

 

「京子、アンタからもなんか言ってやってよ」

 

「うん?・・・花は、本当にすごいよね!」

 

「・・・・・・もう、いいわ」

 

 京子の天然発言に、がっくりと肩を落とす黒川。

 

―――最強はやはり、笹川京子かもしれない。

 

 今、ここに、笹川京子最強伝説が誕生したのだった。

 

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