幻想妖美伝   作:Lan9393

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設定がところどころ変わりましたので、プロローグも少々変わりました!
三つほど場面が切り替わりますので、ご注意くださいませ~。


プロローグ

 うすら寒い世界。

少年は桜の木を見上げた。

 

「はぁ・・・」

 

ため息が出る。

もうすでに慣れた世界。彼は、今さら何を感じているのだろうか?

 

「あら、あなた、・・・ここにいたの?」

「あ、姉さん。おはよ」

「おはよう。・・・ここにきて、あなたも十年目なのね」

「そうだね。十年がたった。僕がここにきて、君に拾われて、・・・ここで生活して、僕も変わったよ」

「そう?そうなのね・・・ねえ、お茶をくれないかしら?」

 

姉と呼んだ女性は、自然に茶を所望する。

それを聞いていた少女が「はい、かしこまりました」と準備しに行く。

 

「・・・彼女も来て、ここはにぎやかになったね」

「私もあなたも、彼女をいじるからね。・・・それを嫌がりもしない。彼女もまんざらでもないのよ」

「そうらしいね」

「もう、お二人とも、何を言ってらっしゃるんですか」

「わお。早いね」

 

にこにこと少年は少女の姿に驚く。

少女ははぁとため息をついて、二人のそばにお茶を置き、その場で感慨深いように「ふむ」とうなった。

 

「・・・あなた様は、既にこっちの世界の住民・・・なんですよね?」

「そんな不安げな顔をしないでよ。僕はもうこっちの住民。あっちにはもう戻らない。・・・あんなに醜い世界には」

「そう、でしゅか・・・あうっ」

「ははっ、噛んだ噛んだ。大丈夫?」

「大丈夫ですけど・・・うう」

「ふふ、仲がよさそうでよかったわ」

 

女性は二人の様子に苦笑する。

少女は「もう!」とそれこそ怒ったように頬を膨らませた。

少年と女性がその頬を突っつきながら笑いを零す。

 

 

―――――「彼らに会うことはもうないんだよな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い、いびつな雰囲気であるその空間、彼らはいた。

 

『・・・ここは、どこだ?』

「さあ・・・」

「待って。向うから誰か来るよ」

「!」

 

 

―――こんにちは。

 

「・・・ども」

「何の用だ」

「ってかさ、それ以前にここはどこ?」

 

 

―――もう。質問するのはこっちなんだから静かにして頂戴。

 

『「「「さーせん』」」」

 

その人(おんな)』は溜息をついて、質問を始める。

 

―――あなたたちは、この『幻想郷』で、何を望むの?

問うたものに答えが四つ。

 

銃を抱え口を閉ざす青年は、『不自由ない平等な生活』と。

うつろな目をした青年は「拒絶されない空間と自由」と。

フードをかぶった青年は「壊れないもの」と。

細身の傘を持った青年は「決して変わることのない平和」と。

 

質問した女は満足気味に笑う。

彼らのその答えは、女にとっては予想通りで、そして面白いほど期待通りの答えであったから。

そうでないと、彼らを呼んだ意味はないのだから。

そして、彼らのその望むものに応えられる人材も備わっている。

『どこ』に、『だれ』を預けるのも、もう決まっていた。

 

猟銃を抱える青年は、紅白の巫女に。

紅白の巫女ならば、その境遇故誰かを特別ひいきすることもないだろう――――金がらみでなければ。

うつろな目をした青年は、白黒の魔法使いに。

白黒の魔法使いは誰とでもすぐ打ち解けられる持ち前の明るさがある。拒絶するなんてことはないし、縛りもしないだろう。

フードをかぶった青年は、瀟洒なメイドに。

瀟洒なメイドは、望みとは程遠いかもしれない。しかし、その精神の強さといったら、壊れることはないのではないだろうか。

細身の傘を持った青年は、七色の人形師に。

七色の人形師は平穏を望む。そう言った意味で彼にはぴったりなのではないだろうか。

 

ほうら、狙い通り。

期待してた答えと同じだったからか、予想も狙いも彼女が思った通りであることに、彼女は満足した。

金の髪を揺らしつつ、彼女は聞く。

―――あなたたちの名前を、一応教えてもらえる?

 

聞く必要はないことだ。ないことなのだが、念のためという意味を込めて。

 

猟銃を抱える青年は、『篠崎(しのざき)緋乃(ひの)』と名乗り、

うつろな目をした青年は、「志賀(しが)琴羽(ことは)」と名乗り、

フードをかぶった青年は、「神居(かむい)秋兎(ときと)」と名乗り、

細身の傘を持った青年は、「天寺(あまでら)詩季(しき)」と名乗った。

 

知ってるわよ、そんな言葉を飲み込んだ女はまた問いを投げかける。

 

―――あなたたちは、これから出会う存在になにを求む?

 

緋乃は、『平等であること』と。

琴羽は、「信じてくれること」と。

秋兎は、「ただそっと言葉をかけてくれること」と。

詩季は、「何も起こらない生活をさせてくれること」と。

 

やっぱり。

ここまで予想通りであると、もう自らが恐ろしいと感じてしまう。

女は笑んだ。このありさまに。

―――あなたたちには、異能がある。それはわかるわね?

彼らはそっと頷いて見せた。

―――言える?

 

首を振った。皆が皆、顔を青ざめて。

そして、琴羽が口を開く。

 

「言えるわけないですよ。僕らは『それ』のせいで苦しんだんだから」

 

―――素直ね。その力で何をするの?

 

緋乃は、『ただ一人で戦おうとする人のそばについて音声を聞かせてあげること』と。

琴羽は、「わからない・・・。同じことを聞かれたら、答えられるようにはしておくね」と。

秋兎は、「守ることは不可能だ。だから、仇なすものをすべて壊すだけだ」と。

詩季は、「遠くにいたとしても、誰かが天気を見て思い出してもらえるようにするんだ」と。

 

目的は違っていて、明確だった。

この先、彼らはどこまでの人を救えるのか。

彼女は、それが楽しみでならなかった。

―――あなた方が望む場所へ・・・いずれ送ってあげる。ただ、望んだものを掴み取りなさい。

四人の青年はこくりと頷く。

 

そして、運命は狂って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――あなたは、どうするの?

 

 その声に、暗闇から姿を現した黒ずくめの男。

 

「なんだ、バレてたのかよ」

 

軽い口調で彼は言う。

 

 

―――バレるにきまってるじゃない。ここをどこだと思ってるのよ。

 

「お前の住む家だろ?」

 

―――ふぅん、そう。それで、よ。

 

「?」

 

―――ヴェルディ・シャルフリヒター。

 

「なんだよ」

 

―――この世界にとどまった、あのスカーレット姉妹にちょっかい出すのをやめなさい。

 

「へっ、やなこった」

 

―――なぜ?なぜ、彼女らに固執するの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女()じゃない。彼女(・・)に用があるんだ」

 

 

 

極めて笑顔。

男、ヴェルディはいぶかしげな顔をする女をよそに、どこかへと姿を消してしまった。

 

 

―――まったく、命を軽く思ってる男なのね、本当に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「夢、だったのかな」

 

目を覚ました琴羽は、学校の屋上で息を吐きながら座り込んだ。

その隣に立つ秋兎が琴羽の問いのようなつぶやきに対して肩をすくめて言い放った。

 

「それにしちゃ、生々しいけどな」

「どうするの?って、緋乃は・・・?」

 

琴羽が周りを見渡しながら首を傾げた。

 

「緋乃?・・・そういや、見ねぇな」

「・・・ど、どうしよう!?もしかしてさっきの人に―――」

 

ガシガシと頭を掻く秋兎に、琴羽は心底心配といった様子であわあわとせわしなく腕を動かし、困惑してるようだ。

 

「まァ――さっきのやつが原因だったら、きっと大丈夫だ。たぶん」

「どこにそんな証拠があるんだ?」

「さあな?なんとなく。彼を信じるしかない。あの、狩人をな」

 

琴羽は、彼の言葉に言葉を失うしかなかった。

 

「でも、秋兎の言うとおりだよ。今俺らがここにいる、ってことは緋乃さんが最初の人なんだ。きっと迎えにいける」

「そうだといいけど・・・」

「琴羽も、そんなに焦ることはない。もとより、『四人』がここにいるのがおかしいんだ」

「そんな言い方ッ!」

「だってそうだろう?」

 

笑ったまま、秋兎は続けた。

 

「・・・『異端者(・・・)』。人には普通にはないモノを持った、異物」

「・・・ッ」

「おかしいだろ?」

 

何一つ困ったようなそぶりも何もない。

ただ無表情でいるだけ。

琴羽は言葉を詰まらせ、何も言えなくなった。

 

「・・・今更、それをとやかく言うことはないだろう。あの女が迎えに来るまで・・・自分たちで生きていこうじゃないか」

「そうだね・・・うん・・・」

「とにかく、このままここにいると鬼教師来ちゃうよ。さて、今日は想鵐くんかな、センセイかな?・・・それとも信くんかな?」

「琴羽さん・・・俺的には想鵐がいいな」

「信もやさしいだろ。嘘上手だし、鬼教師を口で任せられるのはあいつだけだ」

「じゃ、帰ろっか!」

 

軽く談笑し、その後屋上を後にする面々。

 

――――――もう、君たちは幻想の一部になりつつあるのよ。

 

そんな声も、聞こえなかったようだ。

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