そして今回も短めですね・・・。
「くそ!忌々しい!」
ガンッと壁を蹴りつける。
蹴りつけた当人、ヴェルディは壁がヒビわれるのをいとわず、その近くに置かれていた椅子に腰かけ、イライラを隠すことなく叫んでいた。
「ノアを殺したくせして俺は殺さないのか!そもそもノアを忘れるのか!!これほどひどい話はないだろう!?」
頭を掻きむしり、ドンと強くテーブルをたたきつける。
しばらくそういった行為を続けたヴェルディは気が済んだか、はぁと息を吐いて椅子の背もたれによりかかる。
「・・・大人げないな。素直に認めよう」
負けたと。
今自分は最悪の立場にいるのだと。
思うだけでも気持ちが悪く、この館を全壊してやりたくなるが、今度こそ生かされないのでそれは自粛する。
「・・・どうするか。寝るに寝れないし・・・」
と、ヴェルディが思案し始めると、コンコンと扉がノックされる。
「誰だ」
扉の向こうに声をかけると、キィと音を立てて扉が開いた。
そこには美鈴と金髪の少女の姿があった。
「わあ、荒れてますね、ヴェルディさん」
「美鈴か。何の用だ」
「いえ、フランドール様がお会いしたいとおっしゃったので」
「・・・フランドール?レミリアの妹か?」
「ええ・・・ほら、フラン様!」
美鈴の後ろに隠れてしまっていたフランと呼ばれた金髪の少女は、ちらっとヴェルディを見上げた。
「・・・俺は、ヴェルディ。堕天使だ」
「天使さん・・・なんだね」
「ああ、まあな」
フランドールは、こちらと会話しながらも不安なのか美鈴の服の裾を離さない。
困ったようにしながら、美鈴は苦笑した。
「お姉様を殺そうとしたの?」
「ああ」
「なんで?」
「恨んでるから」
静かに、冷たく彼は言い放った。
少女の表情は無表情であるが、それでも好奇心があるのが見て取れた。
「それにしたって、なんでここに来た?」
「会いたかったから。話してみたかったから」
「そうか。話し相手なら、美鈴でちょうどいいんじゃないか?」
「いつもは会ってくれないもん。だから、あなたが良い」
「・・・おい」
お前のせいで俺が巻き込まれたぞ、と視線で訴えると、美鈴は泣きそうになる。
表情から察するに、なんでこんなことに、といった感じだろうか?
「まあ、話は分かった。俺と話しに来たんだろ?」
「うん、そうなの」
「・・・そんな時間をつぶせるような話題をもってないんだよ、あいにくな」
「ノア」
時間が止まるかのように、静かになった。
ヴェルディは目を丸くして、彼女を見下ろした。
「美鈴、ちょっとお話したいから出てってもらっていいかな?」
「ハイわかりました~。では、ごゆっくり~」
「・・・・・・」
パタン、と美鈴が扉を閉めて去っていくと、フランドールが口を開いた。
「お兄さん、フラン知ってる」
「・・・どういうことだ」
「あそこで、お兄さんと会ったもん」
あそことはどこだろうか?
ノアの話題から、なぜヴェルディの話になったかはともかく、ヴェルディは記憶を順繰り思い出し、フランドールと会った記憶を探す。
「・・・残念だが、俺はあんたに覚えはない」
「そっか。わかってたけどね」
「わかってたのなら言うなよ」
「でもね」
文句を言おうとしたヴェルディの言葉を、フランドールはさえぎった。
「お兄さんがお姉さまを恨むのはおかしいよ」
「・・・俺があんたを覚えてる覚えてないって言うことと、俺があいつを恨むということ。関連性が全くないんだが」
「いいよ、今はそれで。フランは、全部知ってるから」
にっこりと少女らしい笑顔を浮かべたフランドール。
ヴェルディは首をかしげて、笑う少女に問いかけた。
「なんで、そこまで言った?」
「・・・うーん。お兄さんのこと、気に入っちゃったのかなぁ」
「気に入った?何故だ?」
「何でもかんでも理由を求めてたらウザったく思われちゃうよ?まあいいけど」
「・・・こっちは聞いているんだが」
「うん、知ってる。理由としては、話してて楽しいからかなっ」
ヴェルディと距離を詰めるフランドール。
椅子に腰かけていたヴェルディは、つい上半身をのけぞらせる。
「お兄さんが変なことしないって約束してくれたら、壊さないで上げる」
「・・・ほう、取引か?あいにく、壊されるほど軟な鍛え方してないんだが・・・まあいい、お前のいう変なことをお前らにするなど、到底ありえない話だからな」
呆れながらヴェルディはそう言った。
フランドールは満足げにうなずくと、「約束だよ!」と快活に言う。
毒気を抜かれたようなヴェルディは嘆息し、目の前の少女を見やった。
(・・・コレがあのレミリアの妹ねぇ・・・)
時折不穏な言葉が見られるが、まあ気にしないでいい発言だろう。
ヴェルディはそう思うこととした。
「お話中失礼します。・・・妹様、お食事の時間です」
「あ、うんわかった」
「・・・」
「あなたには後でご飯を運んであげる。お嬢様に感謝なさい」
「はいはい」
扉を開けて現れた咲夜の言葉に、フランドールは彼女の方へ走り、ヴェルディは嘆息した。
「・・・まったく、悪魔ってやつは・・・」
首を振ったヴェルディは咲夜たちがいなくなった扉のほうを見やり、また嘆息した。
「あー、腹減った・・・」
ぐうとなる腹を押え、小さくつぶやいた。