幻想妖美伝   作:Lan9393

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十一話:仇の正体は?

 机の上のそれらが片付いた後。

ヴェルディは、椅子に深く腰掛け、ふぅとリラックスした。

敵の住む館でリラックスするというのも変な話だが、飯を出してもらったのだ。それなりに感謝はせねばならない。と、ヴェルディの中で割り切ることとした。

コンコン、と扉がノックされる音がする。

 

「・・・誰だ」

 

問いかければ、キィとそれは開く。

その向こうから姿を現したのは幼い吸血鬼。

恨んでいた相手が、笑みを浮かべながら部屋の中へ入ってきた。

 

「・・・・・・あら、不服そうな顔ね」

「嫌いな奴が無断で部屋に入ってくるんだ。嫌に決まっているだろう」

「私はこの紅魔館の主よ?この館は私の物。好き勝手していいじゃない・・・・・・主に、客とも呼べないような不届きもの相手には」

 

ピクリ、とヴェルディの眉が動く。

 

「ほう?ここでお前自ら俺を殺すと?」

「極端な思考ね。嫌いじゃないわ。今にも殺されそうなエサが、自分の立ち位置を把握したときみたいな・・貴方には、いまいち恐怖が足りないけれど」

 

口元を隠し、くすりと笑んだレミリアは、ヴェルディの不快感をあおるだけだった。

椅子に腰かけながら、呆れたように言い放つ。

 

「恨む相手に恐怖など抱いていたら、殺すものも殺せないだろう」

「ノアがそんなに愛おしかったの?」

 

笑みを浮かべたままのレミリアのセリフ。

それは、ヴェルディの表情を消した。

 

次の瞬間、

 

ドンッ「テメェッ!!!」

 

机をたたき、ヴェルディの顔が怒りの色に染まる。

 

「忘れたフリだったのか?!それとも、ただの好奇心?!舐めてんじゃねえぞ!」

「さっき、咲夜にしてやられたただの天使風情が私を相手にできるとでも?」

「・・・チッ」

 

とても愉快そうにレミリアは、舌打ちするヴェルディを見やった。

 

「・・・・・・ここに俺を置いといていいのかよ?」

「なぜいけないの?」

「・・・いや、一応命を狙った身としては、情けで生かされるのは」

「情け?そうじゃないわ」

 

ヴェルディが睨むと、それを見返すレミリアが言葉をつづけた。

 

「あなたに興味が出たの。ノアのことは差し引いてでも、あなたの運命を見てみたいの思ったのよ」

「・・・運命を?」

「ええ。運命を、ね」

「・・・趣味ワリィな」

「そうかしら?」

 

くすくすと笑みをこぼすレミリアに、ヴェルディは一層表情をゆがめた。

 

「・・・まあいい。今回はそれを言うために来たのか?」

「それもあるけど、ちがうわね」

「違うのかよ・・・」

「まあね。・・・一つ、忠告しに来ただけよ」

 

首を傾げ、ヴェルディはレミリアの言葉に耳を傾けた。

その際、寄りかかっていた椅子がキィときしむのが聞こえてくる。

 

「ノアのことは知ってる」

「・・・」

「ただ、ノアを殺した人物が誰なのかは知らない。だから、私を殺すというのは無駄な行為よ、諦めなさい」

「なっ!?」

 

ヴェルディは目を丸くして、レミリアの言葉を聞いた。

レミリアはそれだけ言うと、「じゃあね」と部屋を出ていく。

 

「お前に――――、仇に言われて、素直に信じることができるというのか、お前は!!!!」

「私はただ、私が仇ではないといいたいだけよ」

「・・・チッ・・・」

「わからないようならただのバカ。わかるのならまあ偉い方ね」

「テメェ、何様だ・・・!」

「レミリア・スカーレット。高貴なる吸血鬼にして、この紅魔館の主様よ」

「・・・そうか」

 

忌々し気にしながらも、そう絞るように吐いたヴェルディは椅子から立ち上がり、レミリアに近づく。

胸ぐらをつかみ上げ、ギロリとにらみつけながら彼はつぶやく。

 

「ノアを殺した相手がわかるまで、テメェを敵視することは変わらない。テメェがいつまで俺をここに置いておくかは知らんが、覚えておけ」

 

仇が違う存在だったら、そいつを殺すからな。そう早口で付け加える。

その言葉は本心の様でどこにも冗談めいた空気はない。

 

「・・・そう」

 

それでいいんじゃない?とどうでもいいようにその手を払ったレミリアは、スタスタと扉のほうへ走っていく。

 

 

――――――ガンッ

 

「「!?」」

 

扉が何かに打ち付けられたような音を発する。

その音を聞きとったヴェルディとレミリアは同時に扉を見やる。

二人は呆然としつつ、扉の向こうにいた『何か』について会話を始めた。

 

「・・・誰だ?」

「・・・・・・さあ」

「ただの通行人か」

「いえ・・・聞かれてたのかしら?」

「ふぅん・・・」

 

興味が失せたか、ヴェルディはそっぽを向いてベッドのほうへ歩いていった。

レミリアはそのまま扉を開け、外へ出ていった。

 

 

 

「・・・ノア・・・お前の仇は、絶対」

 

幼い頃優しく接してくれた『彼女』の姿を思い浮かべながら、ヴェルディはベッドへ身を投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

???side

 

 

  どうしよう、どうしよう。

さっきから、そんな言葉だけが頭の中をめぐっている。

 

「はぁ、はぁ…ッ」

 

息も荒くなり、そろそろ体力が限界だと脳が体に伝達する。

せめて、せめて『あの部屋』に!

そう思って速度を速める。

 

 彼の部屋は、少々離れにあるらしく、日は当たらないものの、紅魔館より少し距離のあるところにまた小屋のようなものを作り、渡り廊下でそこをつなげた。

小屋は本当に一部屋しかないと思うほど小さく、いかにも「閉じ込めておくには都合のいい」建物であると思える。

 

 さて、なぜ私が必死に走っているかというと。

先ほど彼と姉の会話を聞いてしまったからだ。

 

「・・・はぁっ」

 

バンッ!

音を立て、扉をあけ放つ。

私はそのまま歩いていくと、近くの机の下に身を縮こまらせて忍び込んだ。

かぶった帽子をつかみ、顔を隠すようにうつ向いて。

静かに息を整え、自然と息が口からこぼれる。

 

 

「フラン」

 

私を呼ぶ声。

いつもこの部屋で過ごしている魔法使い、パチュリーが、机の下を覗き込んでこちらをうかがっていた。

 

「・・・また、何かあったの?」

「・・・・・・ちょっと」

「そう」

「・・・今日も、ここに居させて」

「わかったわ。静かにしなさいね。あ、魔理沙が来たら遠慮なくやっちゃっていいわよ」

「うんっ・・・」

 

私はパチュリーの声にうなずいて、机の下で楽な体勢を作った。

静かな時間が過ぎるうちに、私はだんだん瞼が落ちていくのがわかった。

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