幻想妖美伝   作:Lan9393

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十四話:目的の人を

ヴェルディはいつも通り部屋でのんびりとしている。

いつもとは少々違うかもしれないが、あれから数日が経ってしまっているのは事実だった。

なにもすることがない。そう思いながらカップをいじっていると、バーンと大きな音を立てて扉が開け放たれた。

誰が来たのだろう?とそちらを見やれば、どこか見覚えのある男と、それに引っ付く青い妖精がいた。

 

「緋乃!今日こそしょーぶだ!」

『嫌だって言ってんだろ!・・・ってかここどこだよ・・・?!』

「よう、久しぶりだな」

『ッ?!』

 

緋乃と呼ばれたその青年は、ヴェルディを認識すると、はぁ?というような表情をして絶句した。

そのまま、青い妖精をひっ付けたままヴェルディに近寄り、その肩をつかむ。

 

『お前、いつの間にここに・・・前俺が来た時はいなかったくせに!』

「いや・・・俺もお前が来てるの知らなかったんだが」

『それはそうだよな!レミリアの方行ってたし・・・霊夢はフランのところ行ってたし』

「ああ・・・あの時か・・・」

 

頬杖をつきながら、その時のことを思い起こせば、腹の底で煮えたぎる感情が湧き上がりそうになる。

それを表に出さないよう努めながら、ヴェルディは苦笑した。

その様子に首を傾げながら緋乃は音を出そうとしたのかもしれない。

しかし、少女がもたなかった。

 

「ちょっと!あたいを置いて話を進めるなぁ!緋乃!しょーぶ、しょーぶ!」

『だーうっせぇ!後でしてやるから待ってろ!』

「やった!絶対だよ!」

『はいはい』

 

まるで兄妹に見えるような。そう思ったヴェルディはクツクツと笑みをこぼす。

 

「大変だな、緋乃」

『まったくだ』

 

相変わらず口を開くことなく、緋乃は返事を返す。

その表情はその言葉の通りに変わるのだが、口だけがそれ通りに動かない。

いつも真一文字。

 

「・・・・・・なんでここがわかった?」

『咲夜に教えられたんだよ。チルノを撒くならここがいいんじゃないかって。ただ、捕まったけどな』

「・・・あいつか」

 

面白くなさそうにつぶやく。

と、緋乃が息を吐きながら音を放った。

 

『・・・お前、目的は果たせたのか?』

「さぁな?あいつが生きている・・・俺がここに居る。それを考えればすぐわかることだろうよ」

『それもそうだな。悔しかったりしないのか?』

「・・・・・・」

 

黙って緋乃を見返す。

緋乃は表情を変えずにこちらをじっと見ていた。

 

「悔しいに決まってるだろ」

 

「殺したいと強く恨んでいた奴を殺せず。その上殺すべき相手は違うと言われ。・・・・・・俺の生きる意味を奪われたも同然なんだぞ?」

 

あえて、伏せた一言。

 

(・・・次は、あいつを殺すけれど)

 

カップにひびが入る。

それに気づいたヴェルディはおっととカップを手放す。

 

『・・・なに壊してるんだよ』

「壊してない。まだ」

 

カップを突っつきながら、ヴェルディは少々困ったように言った。

これを見られたら、また咲夜に怒られてしまう。

もう『ナイフ三十本お仕置きタイム』はこりごりだというのに。

 

「・・・処分するか、これは」

「あら、ヴェルディ?」

 

ピシリ、とヴェルディが固まった。

緋乃はあーあーと呆れた表情でその様を見ている。

 

「・・・・・・何の用だ。何も言わず時を止めてここに入ってくるなと言っただろ」

「そうね。言われたわ・・・ただ、大事なカップを壊すなんて・・・・・・許されないことよね?」

「わ、悪かった!俺が悪かったから、ナイフはもう―――――――――ッッッッ?!?!」

 

ヴェルディが背後に立つメイド、咲夜のほうを向いて頭を下げるも、しかし彼女は非情だった。

スッと顔の横を通った銀の煌めき。

黒髪がはらはらと落ちる。

 

「・・・何十本だ?」

「そうね・・・百本言ってみましょうか。あなたも、この頃弾幕ごっこには慣れたほうでしょ?」

「勘弁してくれ・・・」

「緋乃、また後で改めておもてなしするわ。今は図書館で暇をつぶしてるといいんじゃないかしら」

『お、おう。じゃあ、楽しんでな』

「楽しめるかッッ!!!」

 

緋乃がそういい捨てたのにヴェルディが食い気味に反応するも、その首元に突き付けられた冷たい刃先に何も言えなくなる。

 

「・・・楽しみましょうか」

「・・・・・・ハハッ」

 

 

☆  ☆  ☆

 

「それで、ここに来たわけ?暇人なの?」

『暇人で悪かったな。少しばかり本見させてもらうぞ』

「ええ、どうぞ」

『・・・チルノ、なんでむくれてるんだよ』

「だって・・・緋乃が相手してくれないから」

 

パチュリーがそんな二人を見て、苦笑してから机の下のその人を見やる。

 

「・・・出てきにくくなったわよ?」

「しかたないわよ・・・。私が、選んだんだし」

「そう。まあ、後悔しないように頑張りなさい」

 

そして彼女は読書に戻る。

机の下に潜んでいたフランドールが、縮こまっている。

 

 

――――「お兄さんなんか、お兄さんなんか・・・」

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