幻想妖美伝   作:Lan9393

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どうでもいいと感じる方はいらっしゃるかもしれません。
「序幕にいれる内容か?」と私も思いましたが、リメイクに当たりまして、色々増やしてみよう!ということでこのタイミングでヴェルディについてです。
あまり長くないし、ちょっと雑な感じですが、どうぞ。


十五話:ノアとヴェルディ

咲夜が紅茶をいれると、傷だらけのヴェルディが一息ついた。

先ほどまで絶賛お仕置き中だったのだ、ヴェルディの眼尻には痛みから来た涙が浮かんでいる。

 

「もう、そこまで痛くなかったでしょう?」

「いてぇよ」

「それほどだったかしら・・・?」

「まったく・・・。血の提供者ってことだろ?堕天使の血なんかでいいのか?」

「いえ、お嬢様でなく、妹様だから」

 

パンッ

 

机が破壊された。

ちょうど椅子に座っていたヴェルディの手には光があふれ、机の木くずがその手に握られている。

 

「・・・あなた、これ以上私に怒られたいのかしr―――ッ?」

「俺の前で、アイツ(・・・)の話題を出すな」

 

鋭い眼光が、咲夜を硬直させた。

レミリアを殺すと言い放ち、襲い掛かったあの時とは比べ物にならないような恐怖。否、あの時は恐怖すらなかったのかもしれない。

蒼眼が咲夜をにらみつける。

 

―――あら?こんな瞳の色だったかしら?

 

首をかしげる間もなく、咲夜の胸ぐらがつかまれた。

 

「お前は、ノアを知ってるのか?」

「・・・お嬢様から聞いて、名前と性格だけ。あなたにとってのノアさんと一致するかはわからないけれど」

「ノア・ヴェヒターだ。女の、お人好しの・・・」

「・・・ふふ、レミリアお嬢様がおっしゃってたノアさんと同じ風な言われ方。多分、同じ方ね」

「そうか」

「ほかにはないの?」

「・・・俺のお目付け役みたいな立ち位置で、仕事中も俺を連れまわしてくれた。おかげで、世の中を渡るのもそう難しくはなかった・・・だが――ッ!!――と、」

 

咲夜を離したヴェルディは「すまない、取り乱した」と頭を下げ、机の残骸を一つにまとめた。

椅子を退かし、部屋に備え付けられていた箒で掃き始める。

 

「いいわ。私がやる。あなたは――――そうね。ノアさんが死んだ日(・・・・・・・・・)のこと。できれば、教えてくれない?」

「・・・ッ。お前は中々酷なことを言うな」

「あなたは私にとって敬い、肯定し、仕え、守るべきお方ではないもの」

「それもそうだな。お前が俺を様づけで呼んだ日にゃ、俺は気持ち悪くって吐き気がするだろうさ」

「あら、そこまで言わなくたっていいじゃない」

 

肩をすくめて、やれやれといったヴェルディに苦笑しながら、咲夜はいつの間にか掃気終わっていたのか、箒を片付け、もう一度紅茶を淹れなおした。

 

「・・・・・・それで、教えてくれるかしら?」

「仕方ないな・・・まあ、お前には知っておいたほうがいいことか」

「そうね。できれば知っておいた方が、お嬢様たちの苦しみも少しはわかることができるだろうから―――いえ、私がわかったところで何も変わらないわね。気を遣う事柄が変わることだけ」

「ハハッ、優秀なメイドを持つと、色々と身の回りが楽だな」

「私が優秀でいられるのも、この能力のおかげ。これに私はすがってるだけよ」

「しかし、持っている力を存分に主―――大切な存在のために揮えるのも、その環境が良いからなんだろうな・・・」

「・・・話がそれたわね。私の話をしなくともいいのよ。ほら、ほら」

「急かすなっての・・・」

 

ヴェルディはどこか言いづらそうにしてから、「そうだな」と話し始める。

 

天使(おれら)の常識で言う、神の日。・・・つまり、神への信仰が報われる日なんだが・・・その日に、吸血鬼が天界に侵入してきたんだ。まあその吸血鬼が、この世界のスカーレット姉妹であると後にわかったんだけどな」

「・・・」

「・・・ノアは最初その吸血鬼たちを匿った。『姉は妹のためにここに来ただけだ』『害はないから、満足させたらすぐ帰すよ』・・・ノアの親戚だった俺に、そうやって言い聞かせて。俺は最初面白くなかった」

 

そこで彼は言葉を切った。

言葉を選んでいるような間。

少しして、彼はまた話し始めた。

自嘲気味に、己を語り始めた。

 

「自分がノアの愛情を受けてる気分だったから。それから、俺は吸血鬼・・・いや、悪魔という存在が憎くなった。俺の大好きな人を奪ったってな。・・・それがただの嫉妬ならよかった。俺のただの妄想染みたそれが、実現しなければよかった。俺はつい、悪魔に出くわしてしまったんだ。吸血鬼の仲間かはしらない。でも、それは明らかにさみしそうで、俺は声をかけたかった―――しなかったけどな。そしたらあっちから話しかけてきたから、返したんだよ」

 

『――寄るな、神の加護を受けない汚らわしい悪魔め』

 

咲夜が嫌な顔をする。

それを見たヴェルディが、苦笑しながら「お前が怒る気持ちはわかる」といった。

 

「その後、その吸血鬼は泣きそうな顔をして・・・あれは、怒っていたのだろうか?そのまま去っていってしまったんだ。そのあと、ノアが死んだ」

「・・・・・・」

「『あの吸血鬼にとっての満足って言うのは、ノアの血肉が欲しいとか言うことだったのか―――』。ノアの遺体はなかった・・・そう思っていた俺は、すぐに強くなって殺しに行こうとしたよ。・・・無理だったさ。『吸血鬼』がいるとわかった世界に足を運んだ。どいつもこいつも外れ。ノアを知らないし、俺も顔を知らないやつばかり」

 

具現化させた斧を手に取り、その刃に触れる。

つつ・・・と刃先に触れるだけでヴェルディの指から血があふれる。

無表情な彼が不敵に笑む。

 

「・・・」

「だけど、ここは違った。ノアを知っていた。俺を知っていた。殺す、殺さないといけないんだよ」

「・・・ヴェルデイ」

「聞いても面白く無い話だろ?ただの俺の身の上話だ・・・俺の事情だ」

 

笑みを浮かべた彼が咲夜のほうを見やってそう言う。

咲夜は彼が飲み切っていたらしいカップを片付けて、苦笑する。

 

「あなたにどんな理由があれど、お嬢様たちを殺させるわけにはいかないわ・・・いいわね?」

「そういう時は今度こそお前を殺してでもあいつらを殺すさ」

「そうしたらパチュリー様が出るかも」

「・・・すまない」

「ああ、そうだったわね。あなた、パチュリー様を知らなかったわね」

 

今度紹介するわ、と咲夜は告げて去っていった。

 彼以外誰もいなくなった彼の部屋に、嗚咽交じりの声が響いた。

 

 

 

「ノア・・・・・・っく・・・俺は殺して見せる、絶対殺す、殺してやる・・・・・・そうすれば、お前は報われるか・・・?」

 

 

天井に手を伸ばし、彼はそう問うた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ』

 

『その答えはきみが見つけるものだよ』

 

『答え合わせは、そのうち・・・・・・ね』

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