「序幕にいれる内容か?」と私も思いましたが、リメイクに当たりまして、色々増やしてみよう!ということでこのタイミングでヴェルディについてです。
あまり長くないし、ちょっと雑な感じですが、どうぞ。
咲夜が紅茶をいれると、傷だらけのヴェルディが一息ついた。
先ほどまで絶賛お仕置き中だったのだ、ヴェルディの眼尻には痛みから来た涙が浮かんでいる。
「もう、そこまで痛くなかったでしょう?」
「いてぇよ」
「それほどだったかしら・・・?」
「まったく・・・。血の提供者ってことだろ?堕天使の血なんかでいいのか?」
「いえ、お嬢様でなく、妹様だから」
パンッ
机が破壊された。
ちょうど椅子に座っていたヴェルディの手には光があふれ、机の木くずがその手に握られている。
「・・・あなた、これ以上私に怒られたいのかしr―――ッ?」
「俺の前で、
鋭い眼光が、咲夜を硬直させた。
レミリアを殺すと言い放ち、襲い掛かったあの時とは比べ物にならないような恐怖。否、あの時は恐怖すらなかったのかもしれない。
蒼眼が咲夜をにらみつける。
―――あら?こんな瞳の色だったかしら?
首をかしげる間もなく、咲夜の胸ぐらがつかまれた。
「お前は、ノアを知ってるのか?」
「・・・お嬢様から聞いて、名前と性格だけ。あなたにとってのノアさんと一致するかはわからないけれど」
「ノア・ヴェヒターだ。女の、お人好しの・・・」
「・・・ふふ、レミリアお嬢様がおっしゃってたノアさんと同じ風な言われ方。多分、同じ方ね」
「そうか」
「ほかにはないの?」
「・・・俺のお目付け役みたいな立ち位置で、仕事中も俺を連れまわしてくれた。おかげで、世の中を渡るのもそう難しくはなかった・・・だが――ッ!!――と、」
咲夜を離したヴェルディは「すまない、取り乱した」と頭を下げ、机の残骸を一つにまとめた。
椅子を退かし、部屋に備え付けられていた箒で掃き始める。
「いいわ。私がやる。あなたは――――そうね。
「・・・ッ。お前は中々酷なことを言うな」
「あなたは私にとって敬い、肯定し、仕え、守るべきお方ではないもの」
「それもそうだな。お前が俺を様づけで呼んだ日にゃ、俺は気持ち悪くって吐き気がするだろうさ」
「あら、そこまで言わなくたっていいじゃない」
肩をすくめて、やれやれといったヴェルディに苦笑しながら、咲夜はいつの間にか掃気終わっていたのか、箒を片付け、もう一度紅茶を淹れなおした。
「・・・・・・それで、教えてくれるかしら?」
「仕方ないな・・・まあ、お前には知っておいたほうがいいことか」
「そうね。できれば知っておいた方が、お嬢様たちの苦しみも少しはわかることができるだろうから―――いえ、私がわかったところで何も変わらないわね。気を遣う事柄が変わることだけ」
「ハハッ、優秀なメイドを持つと、色々と身の回りが楽だな」
「私が優秀でいられるのも、この能力のおかげ。これに私はすがってるだけよ」
「しかし、持っている力を存分に主―――大切な存在のために揮えるのも、その環境が良いからなんだろうな・・・」
「・・・話がそれたわね。私の話をしなくともいいのよ。ほら、ほら」
「急かすなっての・・・」
ヴェルディはどこか言いづらそうにしてから、「そうだな」と話し始める。
「
「・・・」
「・・・ノアは最初その吸血鬼たちを匿った。『姉は妹のためにここに来ただけだ』『害はないから、満足させたらすぐ帰すよ』・・・ノアの親戚だった俺に、そうやって言い聞かせて。俺は最初面白くなかった」
そこで彼は言葉を切った。
言葉を選んでいるような間。
少しして、彼はまた話し始めた。
自嘲気味に、己を語り始めた。
「自分がノアの愛情を受けてる気分だったから。それから、俺は吸血鬼・・・いや、悪魔という存在が憎くなった。俺の大好きな人を奪ったってな。・・・それがただの嫉妬ならよかった。俺のただの妄想染みたそれが、実現しなければよかった。俺はつい、悪魔に出くわしてしまったんだ。吸血鬼の仲間かはしらない。でも、それは明らかにさみしそうで、俺は声をかけたかった―――しなかったけどな。そしたらあっちから話しかけてきたから、返したんだよ」
『――寄るな、神の加護を受けない汚らわしい悪魔め』
咲夜が嫌な顔をする。
それを見たヴェルディが、苦笑しながら「お前が怒る気持ちはわかる」といった。
「その後、その吸血鬼は泣きそうな顔をして・・・あれは、怒っていたのだろうか?そのまま去っていってしまったんだ。そのあと、ノアが死んだ」
「・・・・・・」
「『あの吸血鬼にとっての満足って言うのは、ノアの血肉が欲しいとか言うことだったのか―――』。ノアの遺体はなかった・・・そう思っていた俺は、すぐに強くなって殺しに行こうとしたよ。・・・無理だったさ。『吸血鬼』がいるとわかった世界に足を運んだ。どいつもこいつも外れ。ノアを知らないし、俺も顔を知らないやつばかり」
具現化させた斧を手に取り、その刃に触れる。
つつ・・・と刃先に触れるだけでヴェルディの指から血があふれる。
無表情な彼が不敵に笑む。
「・・・」
「だけど、ここは違った。ノアを知っていた。俺を知っていた。殺す、殺さないといけないんだよ」
「・・・ヴェルデイ」
「聞いても面白く無い話だろ?ただの俺の身の上話だ・・・俺の事情だ」
笑みを浮かべた彼が咲夜のほうを見やってそう言う。
咲夜は彼が飲み切っていたらしいカップを片付けて、苦笑する。
「あなたにどんな理由があれど、お嬢様たちを殺させるわけにはいかないわ・・・いいわね?」
「そういう時は今度こそお前を殺してでもあいつらを殺すさ」
「そうしたらパチュリー様が出るかも」
「・・・すまない」
「ああ、そうだったわね。あなた、パチュリー様を知らなかったわね」
今度紹介するわ、と咲夜は告げて去っていった。
彼以外誰もいなくなった彼の部屋に、嗚咽交じりの声が響いた。
「ノア・・・・・・っく・・・俺は殺して見せる、絶対殺す、殺してやる・・・・・・そうすれば、お前は報われるか・・・?」
天井に手を伸ばし、彼はそう問うた。
『さあ』
『その答えはきみが見つけるものだよ』
『答え合わせは、そのうち・・・・・・ね』