幻想妖美伝   作:Lan9393

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十八話:博麗神社にいる『知人』

『博麗神社はこちら』

 

 そう書かれた看板の前で、僕は立ち尽くした。

なんだって、僕がこんなところに置き去りにされなきゃいけないんだ。

僕は溜息をつきながら鳥居を見上げる。

ここから魔法の森・・・それも魔理沙さんの家に帰るのは、とても難しそうだ。

 

 

 先ほど、一緒にいた魔理沙さんに『さあ乗れ!お前の求める緋乃の元へ送ってやるぜ!』と言われて箒で連れ去られて数分が経った。

博麗神社に着いた僕は、ここにいるという巫女さんと緋乃を探す。

いつもは縁側でお茶をしているらしい・・・なにをしているんだろう、緋乃ってば。

嘆息しながら、お邪魔しますと境内に足を踏み入れる。

ひらりと建物の方向から落ちてくる書き置きらしい紙きれ。

僕はそれを拾い上げて、それに目を通した。

 

『居候の狩りに付き合って留守にしています』

 

「・・・居候って、きっと・・・緋乃、だよね」

 

肩を落とした僕は、しばらくそこでぼんやりと待っていることとした。

 

 

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「・・・・・・誰よ、あんた」

 

それが、階段を上って来たらしい巫女服を着た少女の第一声だった。

そう言いたいのもわかる。

だって僕は彼女と初対面なのだ。

しかも話が通じそうな機嫌でもなさそう。

彼女はそのまま僕を一瞥して中へ入っていってしまった。

 

 そのあとから現れた男性の姿に、僕は目を丸くした。

特徴的な癖のある髪に、白いパーカー。

どこか呆れたような表情に真一文字に閉じられた口。

 

「・・・緋乃!」

 

僕は彼の名前を呼んで駆け寄った。

それを聞いたらしい彼が先ほどの僕のような素っ頓狂な顔をして『まさか・・・琴羽か?』と問う。

 

「そうだよ、僕。志賀琴羽。どうしてそっちから・・・」

『いや、色々あってな・・・そうだ。ここに居るってことは、住むところは・・・?』

 

どこか心配するように彼の(こえ)が聞こえてくる。

僕は笑みを浮かべながら「心配ないよ」と答える。

 

「魔理沙さんって知ってる?彼女の家に居候させてもらうことになったんだ」

『霧雨か・・・あいつ、良い奴だから安心だな』

「ははっ。そうだね」

 

苦笑しながら緋乃の言葉を肯定する。

 

(魔理沙さんはいい人―――そう言ってるのに、名字で呼んでいるのはなんでだい、緋乃?)

 

それを言葉にすることはなく、あkれの表情を盗み見ながら心の中で問う。

その問いに答えが返ってくるわけもなく、彼は何でもないような顔で話しを変えた。

 

『それはそうと。琴羽、今金は持っているか?』

「・・・?持っているけれど?」

 

懐をまさぐりながら、僕は首をかしげる。

緋乃は少々残念そうな顔をして、うなずいた。

 

『それなら千円でも五百円でも、賽銭箱に投資していくといい。霊夢――うちの巫女も喜ぶ』

「・・・貧乏なの?」

『まあ、それなりに。それで、結局何の用だったんだ?』

「いやぁ・・・それがね。部屋でゆっくりしてたら魔理沙さんに拉致されまして・・・」

『霧雨は相変わらず突然だな』

 

笑った緋乃の口は依然閉じたまま。

 僕は「そろそろ帰るかなぁ・・・」とつぶやくと、緋乃が『それじゃあちょっと待っててくれ』 そう言って建物の中へ入っていった。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

「・・・はぁ」

「申し訳ありません・・・」

 

ため息が聞こえると、僕は反射的に頭を下げてしまう。

 

「別に、いいわよ。緋乃がお願いしてきたんだし、あなたは大切な『友達』ってわけでしょ?なら―――」

「僕は友達じゃありませんよ。少なくとも、緋乃とは」

 

僕は巫女さんに手をつかまれて送ってもらうという贅沢をしていた。

先ほど千円を投資すると、巫女さんは(本当に希少らしい)笑顔を浮かべて快く引き受けて下さったのだ。

 

「・・・どういうこと?」

「どういうこともなにも。彼と僕は友達じゃない。それは周りの人もみんな同じです」

「・・・あんたら、緋乃が嫌いなの?」

「さあ、どうなんでしょう。緋乃は・・・・・・自分から話してくれますよ、きっと」

 

自分の唇に人差し指を添えて、そう言って笑ってやった。

巫女さんは僕の言葉としぐさに目を丸くして、「はぁ?」と首を傾げた。

僕のほうから言えることなんて一つ。

 

「彼は貴方のそばにいてくれる・・・僕はそう思います」

「ちょっと、何言って・・・」

「あっ、ここで降ろしていいですよ」

 

魔理沙さんに拉致されたときに見た景色。

そこで僕は巫女さんに声をかける。

 

「・・・わ、わかったわ」

「ではっ」

 

パッと離された手を自分の手でつかみながら、僕は素早く周りの空気を掻き抱いた(・・・・・)

足元に空気の抵抗を感じる。

落下する速度がだんだんゆっくりになってくる。

抱いた空気を思い切り解き放ち、僕は体勢を整え、着地にはそれほどの痛みは伴わなかった。

 頭上で呆然と見ていたらしい巫女さんに手を振って自分の家に戻ることとする。

 

 今の季節は、なんなのだろう。

さぁっと自分の頬をなでる風が、暖かいことは――――。

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