僕が来て何日経ったろうか?
すっかりそこが僕のスペース、といえるような空間ができて僕的には少々嬉しかったりする。
先ほどまで目を通していた書物を一度腹部に置いて伸びをする。
伸びをし終わるとまた再び書物に視線を落とす。
『――俺らはある森に訪れた。ここにはどうやら例の『奴ら』がいるようで、俺は――――』
書物に視線を落としたまま、僕はぽつりとつぶやいた。
「・・・そういえば。この森広いんだよなぁ」
先日、博麗神社に訪れた帰り、巫女さんに送ってもらった時に見た景色。
思い起こしながら『会話』を思い出す。
・・・緋乃が僕らと距離をとっているってことくらい知ってる。
ぽすっと読んでいた書物を開いたまま顔に乗せる。
外に出たい。
そんな思いが僕を突き動かした。
ガバァッと起き上がった僕は本を乱暴に閉じてベッドに放る。
そのまま僕は部屋を後にする。
☆ ☆ ☆
僕は部屋を出た後、まっすぐ魔理沙さんがいるであろう(ちょっと汚くなった)リビングのソファに向かった。
案の定彼女はソファに寝そべって実験のための下準備をしていたようだ。今は知識を集めているところだろうか?
邪魔してはいけないと思いながらもどうしても行いたいことの許可を得ようと話しかけようとする。
彼女はどこか真剣そうな表情を作り、書物に目を通している。そんな様子を見てなんだか話しかけるのが躊躇われるが、しかし――――彼女がこちらを見上げてきた。
「・・・ん?なんだ琴羽。そんなワクワクしたような顔して・・・」
「あはは、僕はワクワクしてるんですよ」
「何にワクワクしてるんだ?」
「森を探検したいんです」
ちょっと興奮気味にそういえば、魔理沙さんは少々困ったように「そうかぁ」とつぶやく。
なにか困るようなことがあったのか?僕は首をかしげて見せると、彼女は「特に何もないんだけどな、」と話し始める。
「最近妖怪が活発になってきてさ。ちょっと前にあった『紅霧異変』――騒動のせいなんじゃないかとは言われてるんだが・・・まあそれは置いておいて。そのせいでちょいと強い妖怪までもが近くに降りてきてるから危ないんだよ」
頬を掻きながら「でも私は手が離せないしなぁ」と机の上を見やる。
そこにはフラスコやらが散乱している。
・・・実験の手順を確認していただけの様だ。
それだけなら僕は全く問題ないといえるだろう。
「僕は別に妖怪に会いたいんじゃないんですよ。魔理沙さんみたいな人がいるんじゃないかって思ったんです」
こんなとこに住みたがるような物好き、そうそういないと思うけれど。
魔理沙さんの手を煩わせないよう、極力『妖怪と出会わないようなこと』を述べる。
そうであれば外出許可は得られるだろうからね。
「・・・???つまり、この森に住んでるやつに会いに行きたいってか?」
「はい」
「それだったら、ちょっと奥にいる『アリス』ってやつがそうかもな。知ってるか?」
「知りませんね・・・どんなお方なんです?」
名前を脳内メモに書き留めて、また質問を投げかける。
魔理沙さんはその『アリス』さんを思い出しながら話しているようで、どこか考えるようなそぶりを見せながら返してくれた。
「よくクッキーとかを差し入れしてくれる人形遣いなんだよ。きれいな奴だからお前も気にいると思うぞ」
「人形・・・そうですか。どの方向に行けば?」
「家を出たらまっすぐ裏手!ただ迷うなよ?あいつ優しいけど、・・・妖怪に襲われたらひとたまりもないからな?お前みたいな一般人は特に」
「妖怪はどうにかならないんですか?」
「携帯用火薬が手元にないんだよなぁ・・・アリスに回収されちまってさ。とりあえず霊夢が手を打っているそうだから安心して出かけてくれ」
霊夢?おそらくあの巫女さんのことだろうか。
というより携帯用火薬ってここ森なんですが魔理沙さん。
とりあえず許可をもらったということで僕は「いってきます」と言い残して家を出た。
いつもよりちょっと重い空気。
僕は吸ってはいて「よし」と意気込んで歩き出した。
☆ ☆ ☆
はい、僕です。
もういっそのことすべての木々を切り落として進みたいところです。
「・・・えーっと、向こうから来た?んだよね?」
頭をひねって考えてみてもまるでわからない。
僕は迷子というものになってしまったらしい、これは大変だ。
さすがに飛べるのは楽でいいなぁ、なんて考えていたけれども、その能力が今ではとてもうらやましい。
もっとも僕も風を使って飛べるのだが
体を動かしながら調節、が一番めんどうだ。
と、脱線したが要するに『迷子になってしまったので飛んで場所を確認して帰るかアリスさんという方の家を見つけたい』。
裏手をまっすぐ進んできた。なのに家は一向に見つからないし、なんでかわからないが視線が気になってきてしまう。
妖怪のものか、とも思ったがなんだか気の抜けた鳴き声ばかり聞こえてくるし、まがまがしい感じもしない。
まさか―――まさかとは思うのだが。
魔理沙さんに騙されて妖怪の巣に誘導させられたとか、知らず知らずのうちに道を間違えて変なところを進んでしまったとか、そもそも『アリス』さんなんていないのでは―――?
とりあえずそんな心配は杞憂に終わると信じて、僕は改めて前へ歩いていった。
木漏れ日が目に入り、つい目を細めて手で覆ってしまう。
まだ森の中も明るい。昼頃だろうか?
そう言えば昼食を作った記憶がない。ああなった魔理沙さんはしばらく飲まず食わずで気が済むまで実験をやっているので作り置きしておくのだが、興奮していたせいかそこをすっぽりと忘れてしまっていた。
数日しかまだ過ごしていないからか、習慣として身についていないのか・・・。
僕は帰ったら謝ろうと心に決めてあたりを見渡した。
小さな影に風が当たる。
誰かいるのは確かだし、それが思っているほど凶悪そうじゃないともわかっている。
ただ、その子らは出てこないのだ。
ずっと風を撫でつけているのだが、そこで鳴くだけ。
(・・・?何かを待っている、わけでもなさそうだしなぁ・・・)
首を傾げながら僕は考え、足を止めた。
―――気が緩んでいた。
右から迫ってくる『それ』。
僕はそれに気づくことはなかった。
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私は手を止め、立ち上がった。
近くに迷子がいると彼女たちが教えてくれたから、私は様子を見に行かなければならない。
彼女たちの話によると、少々ひ弱そうな少年とのことだ。
魔理沙の話にもあった『彼』のことも気になる。
―――