秋兎side
図書館でうろうろしている。
何をしているかというと、パチュリーの手伝いで図書館の整理をしているのだ。
「その本はそっちにやって」
「了解」
「そっちの本の山はまだ読んでないから放っておいて」
「わかった」
「そしたらあとはここで待機してもらおうかしら」
「ああ」
パチュリーの指示通りに仕事をこなす。
自分はこんな作業はあまり得意ではないのだけれど、・・・でも、まあぼうっとしてるわけにはいかない。
何か仕事をしないと申し訳ないと思う。
「・・・それで、ここを防衛って行ったって、何が来るんだ?」
「白黒の泥棒猫よ。箒にまたがって本を奪って去っていくの」
自分の脳内では、どうしても白黒の猫が箒を巧みに操って本を奪って逃げていく姿しか浮かばない。
・・・想像力が足りない証だな。
「・・・・・・・・・飛んでるんです?」
「まあ、飛んでるわね」
「さて・・・どう捕まえようか」
あいにくと自分の跳躍力に自信はない。
高いところに逃げられたらどうしようもないぞ、なんて思いながら片づけをしていく。
背の高い本棚――――そうか。
一つ、アイデアが浮かんだその時、
ガッシャンッ!!!!
「今日も本をもらいに来たぜ、パチュリーっ!」
窓を割る音ともに、快活な少女の声が高らかに宣言する。
図書館の窓を壊して侵入してきたその少女の衣服は一見白と黒を基調としたワンピースで。
ああ、あいつが泥棒猫かと把握した時、後ろに人影があったのに気づく。
――どこか、見たことあるような顔で。
「ま、魔理沙さん!また窓壊して・・・ッ、どうして真っ正面から入らないんですかッ!」
(ん・・・?この声は)
それはおそらく彼女の後ろにいる人の声で。
「ははは、今さらだぜ~。ほら、さっさと本を―――わぁっ?!」
本棚を蹴り、高く跳躍する。
あまり高く飛んでいないのでその箒を易々とつかむ。
その上にいる二人を引きずり下ろす。
自分も床に着地すると、改めて後ろにいた人の顔を見る。
「んだよ~。急になにするんだよ!っつか誰だよ!」
「泥棒猫、と・・・・・・琴羽・・・?!」
「あれ、秋兎くん。ここでなにやってるの?」
文句を言う魔理沙と呼ばれた泥棒猫を放っておくことにした。
魔理沙の後ろにいた黒髪緑眼の男――琴羽は首をかしげてこちらに問いかけてきた。
自分はその問いに関して、「ここで働くことになった」と答える。
「え?琴羽、知り合いか?」
「あっちの世界での友人ですよ。幼いころから仲良くさせてもらってたんです」
ニコニコと笑顔でそう自分を紹介する琴羽。
魔理沙がこっちをじぃっと見つめて、
「へぇ。私は霧雨魔理沙っていうんだ。お前は――誰だ?」
「は?・・・・・・ああ、俺は神居秋兎だ。・・・パチュリー、こいつどうすればいい?」
・・・今更な問いに、ついあきれたような声を出してしまった。
とりあえず魔理沙のことについて、パチュリーに指示を仰ぐ。
パチュリーはきょとんとしてから「ああ」と声を上げる。
「そうね・・・まあ、後で本をちゃんと返してもらうように言うから、そのまま捕まえていて頂戴。・・・話したいこともあるようだしね」
「わかった。・・・じゃあ、魔理沙だけはこのまま捕縛だな」
「なんでだよー!琴羽だけ捕まらないのはどうしてだっ」
「パチュリーがいった『泥棒猫』は二人ではないからな」
「むー」
頬を膨らませて暴れることをやめた魔理沙の両手をつかんだまま、自分は琴羽のほうを見やる。
とても楽しそうに笑っていた彼は、自分の視線に気づくと、「どうしたの?」と質問してきた。
「いや・・・元気そうだなと思って」
「まあ、魔理沙さんのおかげでね。秋兎くんも元気みたいで安心したよ」
言葉通り、安心しきったように緊張して強張った表情はしていないようだった。
琴羽は表情に出やすいところがあるから、わかりやすい。
「この館で働いてるし、不自由はないしな」
「すごく目がいたくなりそうな色以外はここはいいところだと思うよ」
「そう思う。それで、琴羽は泥棒の真似事か?」
「まさか!魔理沙さんのお出かけに付き合ってるだけだよ。僕が本当に来たかったのはここじゃないんだけど・・・でも会えてよかった!」
どこに行くつもりだったのだろう。
その質問をすることはなく、自分は「自分もだ」とうなずいてから、別の質問を投げかけることにした。
「あいつは今どこにいるんだ?」
「彼だったら、今は博麗神社―――巫女さんの住んでるところでお手伝いをしてるんだって。余裕があったら行ってみるといいよ」
「そうする」
一言つぶやいてうなずく。
おとなしくなったはずの魔理沙が再び暴れだして、つい手を離してしまう。
「ああもう、どいつもこいつもうるさいなっ、わかったよ!次来るときは本を返しに来るさっ!」
「あら、言う前に折れてくれたのね、良いことだわ。できることならそのまま借りることがないように」
「それはできないお約束だね。ほら琴羽、アリスのとこにさっさと行っちまおうぜ!」
「え?あ、はい」
箒を握って、そのまま飛び上がる魔理沙が通りざまに琴羽の手をつかんだ。
最初はバランスをとれなかった琴羽だったが、しかしすぐバランスをとって浮き上がった。
魔理沙の手が離れても、彼女のスピードについていく琴羽を見て、自分は笑った。
「貴方にとって、あの少年はどう映ってるのかしらね」
「・・・さあ?自分でも、よくわからないところがあるからな」
パチュリーのその問いかけに肩をすくめて、おどけて見せた。
自分もパチュリーも苦笑して、やがてそれぞれのしたいことをし始める。
今日の仕事はこれでおしまいなのだろうか。
一日一回、魔理沙たちが窓を壊して入ってくる以外にこの図書館は何も起こらないのだろうか。
風が入ってきて寒い窓を見やって、直そうかどうか思案した。
☆ ☆ ☆
side out
「なあ琴羽」
「?なんでしょう」
アリスのいる家に向かっていると、魔理沙が声をかけてきた。
琴羽は横目で魔理沙を見やる。
「あいつって、お前らの友達か?」
「ええ、僕の友達ですよ」
友達だなんて改めて口にするのは少し恥ずかしいですね、なんて笑って。
魔理沙は複雑そうに眉を寄せた。
(・・・・・・名前は出なかったけれど、あいつっていうのきっと―――――あいつ、一体何者なんだ?)
自分で思い描く、彼らの言う『あいつ』のことを思って、そっとため息をついた。