幻想妖美伝   作:Lan9393

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三話:狩人と魔法使いと

唐突に幻想郷へと訪れた――。

それからもう早いもので、三日は過ぎただろうか?もしかしたら、一週間は経っているかもしれない。

それくらい充実した日々で、時の流れが早く感じられたのだ。

未だに霊夢以外の人に会うことがない緋乃。

 そんな緋乃は今、縁側で霊夢と並んで茶を啜っていた。

すると、悪寒を感じて、警戒心を持って空を見つめてる。

 

『・・・誰か来てるぞ?』

 

緋乃は、空から降りてくる魔法使いのような格好をした少女を指差し、霊夢に問う。

 

「・・・ああ、魔理沙ね」

『マリサ?・・・ああ、お前の友達か?』

「友達・・・友達・・・まあ、一般的に言っちゃえばそうなるのかしら」

「おいおい、霊夢ってばひどいなぁ。私とお前は『親友』じゃないか!」

 

霊夢に問うていると、いつの間にか降りてきていた魔法使いの少女―――魔理沙が「やれやれ」と呆れたようにしながら二人に近寄ってくる。

箒を片手に霊夢が飲んでいた湯呑を奪い、それを飲み下した。

 

「あのねえ・・・突然やってきて人が飲んでたものを飲むなんて失礼すぎるとは思わないわけ?」

 

霊夢が湯呑を奪い返し、お茶をまた淹れに行ったようで、部屋の中へ向かった。

魔理沙が霊夢の座っていた場所に座り、「はーっ」とリラックスし始めた。

お茶を淹れに行った彼女は文句を言い、それをからからと笑った魔理沙が返す。

 

「残念だな、目の前においしそうなお茶があるんだ。客人にもてなすのは当然のことだろ?」

「・・・あんたは客じゃない。ただ勝手にやってきて勝手にくつろいで帰っていくだけのバカよ」

「なにおう!?」

「なによ」

 

二人分の湯呑を持って戻ってきた霊夢が魔理沙を蹴り、「どけ」と指示する。

痛いと体を退かす彼女が、呆然と二人のやり取りを聞いて、湯呑を傾けていた緋乃に気づいたのはその時だった。

 

「・・・こいつ、だれだ?」

「外来人よ」

『え?ああ、・・・俺?』

「他に誰がいるんだよ」

 

魔理沙が緋乃を指さし、霊夢がただ一言で片づけようとすると、緋乃が自分を指さして聞き返した。

その緋乃のセリフに苦笑しながら、魔理沙は湯呑をもって緋乃の肩をたたいた。

 

『おっと!茶がこぼれる!』

「そんなんいいから!名前教えろよ」

『・・・篠崎緋乃だ。・・・えっと、お前は?』

「私は霧雨魔理沙だぜ。普通の魔法使いをやっている。用事があったら私の家に来いよ」

『家の場所が、な』

 

お互いがお互いの名前を把握すると、魔理沙が緋乃に近づいてニヤニヤと意地悪を言う。

それに対して、平然と返す緋乃に魔理沙はつまらなさそうに眉を寄せた。

 

「ふむ・・・ふむふむ・・・」

『なんだ?』

「どうしたのよ。これから仕事があるからゆっくりさせてほしいのだけれど」

 

霊夢は顔をしかめながら考え込んでいる様子の魔理沙に声をかけた。

 

「ああ、ちょっとそいつ借りていいか、霊夢」

 

緋乃のパーカーをつかみ、魔理沙はそんなことを言いだした。

再び湯呑を傾けていた緋乃は突然の発言に驚き、茶を飲み込んだはいいもののむせてしまった。

 

『おいっ!?』

「わかったわ。・・・この時間帯は・・・じゃあ、私は仕事行ってくるから。適当に家の中に帰しといて」

 

完全にペットの扱いである。

霊夢はいそいそと縁側から上がる。

 

『お、俺の意志・・・』

 

ボソリとつぶやいた緋乃に、

 

「「関係ない(のぜ)」」

 

二人でそろって返された。

 

『そうですか・・・』

 

がっくりと肩を落とし、緋乃は「こっちだ」と言う魔理沙についていった。

 

 

 

~~~緋乃side

 

こうして二人にひどい扱いを受けた俺は霧雨につられるまま、神社前の階段を下りてその真っ正面にあった茂みに連れてこられた。

なんでここまで来るんだ・・・いや、あの階段上るのめんどくさいんだけどなぁ・・・。

文句を言おうかと俺が霧雨のほうを向くと、俺は目を見開いた。

とても真剣な表情だった。

俺は、これから何を言われるんだろう、何の用なのだろう、と口を閉じ、ごくりと息をのんだ。

 

「・・・なあ、出会ったばっかのお前にこんなことを言うのも、あれなんだが・・・いいか?」

『いろいろと端折っている気もしないでもないが、どうして俺なんだ?』

「お前と霊夢を見てさ、思ったんだよ。大丈夫だって」

『・・・大丈夫?』

「ああ」

 

霧雨はぎゅっと裾をつかんで、俺のほうを見て、口を開いた。

 

「お願いなんだけど・・・あいつ、寂しがりやだからさ。一緒にいてやってくれないか?」

 

どこか不安げな表情でそう言われ、俺はやや拍子抜けしながら、苦笑して返す。

 

『ん?ああ、神社に居候させてもらうことにはなったから。誠心誠意務めさせてもらうよ』

 

それを聞いた霧雨は、何か違うとでも言いたげな顔をして、うなりだす。

 

「ああー・・・そういうのじゃなくて、そのー・・・」

 

どこか落ち着かない様子で、霧雨が素直に言葉にすることにしたようで、深呼吸してつづけた。

 

「ずっと。な。私は、キノコとかの研究で空けること多いし、必ず一緒にいれるわけじゃない。だから―――」

『だから、ずっと霊夢のそばで支えてやってくれないか?―――かな。言いたいこと』

 

途中で俺は察し、悪いが言葉を遮って述べる。

霧雨は少々目を丸くしてから、こくりとうなずいた。

 

「・・・・・・そうだ。すまない・・・」

 

うつむいて拳を作り、それを握りしめる霧雨。

俺は霧雨にそっと首を振って答える。

 

『謝ることじゃないさ。俺も忙しいわけじゃないし、居候として神社に住まわせてもらっている以上、俺も霊夢に返さなきゃならないからな』

 

霧雨の表情は今だ晴れない。

―――それほどまで、あいつを気遣ってやってるんだ。

なんかすごいな・・・。

幼稚な感想でしかないが、俺はそう思った。

 

 

「・・・本当にすまない。本来、ならば・・・私が、ずっと一緒であればいいのに・・・親友だって、大好きなんだって言っても、言葉だけなんじゃないか」

 

「一緒にいないと、忘れられるんじゃないかって。・・・たまに、思うんだ。思ってしまうんだ。でも、寂しがりやで、不器用で、鈍感なあいつだ」

 

「きっと、自分の気持ちにも気づかず、気づいても辛いだけだからと目を逸らす・・・だから、心配なんだよ」

 

 

どこかつらそうに、霧雨はためていた感情を吐き出すように、ポツリポツリと言葉にしていった。

俺はそれをただ黙って聞く。

 

泣かない霧雨の強さは、どこから来ているんだろうか?

おそらく、彼女は自分の無力さに怒りを感じているんだろう。

彼女がつぶやく間に、強く握られた拳は白くなり、痕がつくんじゃないかと少し不安になってしまう。

彼女の怒りももっともだろう。俺だって考えたことがある。

ただ、それを他人に話した彼女・・・俺よりも強いんだとわかる。

そんなこと、俺にできるわけないじゃないか。

彼女のその握りしめたこぶしを見て、―――霊夢を大切に思っているからこそ、自分を罰しなければならない―――そう思っているのだろうか?俺はそう考える。

誰かほかの人を自分勝手に巻き込んでいない彼女の思いは、同じようなことを思った俺からすれば、とても立派なものだと思う。

ただ、自分を傷つけるのはいただけない。

確かに彼女の行動は、怒りにこぶしを震わせているだけかもしれない。

その拳は―――手のひらは、傷つくのだ。

少なくとも感受性があるやつの心は揺さぶれるような行動だ。

俺はどうかはわからない。

ふるふると震える握りしめた手にそっと触れてやる。

俺は、霧雨を安心させるためにぽん、と頭を撫でてやる。

妹にするように、優しく。

でも、どこか違う何かを抱きつつも、手は休まない。

ゆっくりと、落ち着くように、ちょっとした願いを込めて。

 

「へへ、慰めてくれてありがとなっ」

『おう。ま、それほど大したことはしてないし、お礼を言われるほどじゃねーさ』

「そうか・・・まあまた機会があったらなでてくれよ!」

『バッ?!・・・覚えてたらな!』

 

霧雨はそのまま手を振って箒に乗って去っていった

撫でなければよかった・・・なんて思いながら、俺は神社の方向に進んでいく。

そんな時、頭上に影が落ちる。

上を見上げると、赤いスカート・・・俺はつい声を出した。

 

『・・・見えるぞ』

「賽銭箱に全財産入れなさい」

 

おいおい、見えるって忠告しただけなのにこの罰とは中々にひどくないですか巫女さん。

それでいいのか、それでいいのか巫女よ。

俺は納得できず声を荒げる。

 

『不可抗力!!不可抗力なんですが!!!』

「どうでもいいわ。まったく、馬鹿みたい。外来人の男ってこんなんばっかなの?」

『いや俺に言うな』

「まあいいわ。私はこれで。・・・おとなしく待ってなさいよ」

『あーはいはい』

 

そう言って飛んで行った霊夢。

俺は神社へ続く階段を上がりながら、彼女が飛び去った方角を見やる。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺、どうしよ』

 

なにが悲しくって女性がスカート翻してふんわりと浮き上がるその様をそれこそ八本線が背中に描かれるくらいに虚しく見てなければならないのだ?

この世界には、人知を超えた超次元の何かがあるようで、理解するのには時間を要する。

あと、この世界の住人についても知っておきたい部分がある。

必死になって食らいつこうとも、そんなの気に留めないですんなりと避けられる。

そんなこの世界であるが、ただ、一つわかったことがある。

空気が澄んでいることだ。

それは同時に人の心も澄んでいることを指すのだがーーー馴染むには、まだ早い。

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