幻想妖美伝   作:Lan9393

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五話:私怨

「お前は働かねえのか?」

 

そう俺に問いかけたのは、現在博麗神社で休んでいる堕天使、ヴェルディ・シャルフリヒター。

よく見たら傷だらけで、右腕が包帯でぐるぐる巻きになった彼は、どこか親友を思い出すような無表情で俺に問うたのだ。

 

『・・・狩りには行ってた。一回でやめさせられたけどな』

 

へぇ、と声を漏らしたヴェルディに、なぜか嫌な予感しかせず、俺はついとっさに声を作った。

 

『まあ、別に、俺はまた怒られるくらいなら神社にいるくらいでいいんだけどな?!』

「そんな遠慮するなよ。俺も体がなまっちまう。狩りなら俺が付き合うぜ?」

『遠慮するぞ。お前は一応けが人なんだからな?』

 

俺はのんびりと楽な体勢を作った俺は、あきれた声でヴェルディを諭そうとする。

―――失敗に、終わるわけなのだが。

 

「関係ない。こんなに面白そうなこと・・・もとい、俺に都合のいい事をほっといてたまるか」

『どっちにしてもお前ひどいな』

「褒めるな」

『褒めてねぇ!』

 

ヴェルディは左手で俺の腕をつかんで飛び上がった。

神社内から障子を突き破って境内へと飛び出る。

掃除中だった霊夢と俺の目が合い、霊夢が口を開け竹ぼうきを取り落した。

楽し気に鼻歌を歌うヴェルディは霊夢に気づいておらず、そのまま山の方向へと飛んでいった。

これは・・・俺もヴェルディも外出禁止を言い渡されるな・・・。

 

 

☆  ☆  ☆

 

「ここは妖怪の山というらしい。天狗たちがいるところらしいが、・・・まあ、気にしないで狩りをしていこう」

『本当に大丈夫か?!霊夢にも見られていたぞ?!』

「俺の単独行動だ、気にするな」

『それに俺を巻き込むな!』

 

俺は着地したヴェルディに文句を言って、持っていた銃やら罠やらを準備する。

ノリノリじゃないか、と苦笑したヴェルディにうるさいと怒ってやる。

 

「・・・ふむ。どうだ?」

『ここに罠はしかけた。ほかの場所に行くぞ』

「ああ、了解だ」

 

ヴェルディに手を引かれ、山の上へと飛び上がった。

刹那、「いったぁあああああああ!!!!」という悲鳴が聞こえてくる。

は?!何事だ?

 

「・・・お前の罠は、人をひっかけるのか?」

『誤作動だ、たぶん』

「誤作動か・・・見に行こう」

『そうだな・・・』

 

俺は手を放され、空中に投げ出されるも、疎い枝につかまって降りていく。

と、先ほど設置した罠には白髪の犬耳の少女が引っ掛かっていた。

 

『・・・わんわん?』

「あなたですか、妖怪の山にこんなものを設置したのは!」

『・・・どうしようヴェルディ、ケモ耳少女って本当にいたんだな・・・!』

「お前、そんな趣味か」

「何をおっしゃっているのかは知りませんけど、早く解放してください~!!」

 

近くに剣やら盾やらが散乱している。

解放した瞬間、バッサリいかれることはないか・・・?

恐る恐る彼女に問う

 

『・・・斬らない?』

「今すぐ助けてくだされば斬りません」

『そうか、じゃあ待ってろ』

 

俺は手際よく罠を解除する。

痛むらしい足を抑える彼女に、すまないと謝って、応急手当てを施した。

 

「・・・なんでここに罠なんかを?」

『こいつがここに連れてきた。天狗がいるとは聞いたが、食える生き物がいないとは聞いてないので、狩りを行おうとした。罠を設置して様子を見ようとしたらあんたが引っ掛かった。なんで引っかかったんだ?』

「・・・侵入者が来た、と思ったらうっかりして・・・」

「・・・間抜けか」

「言わないでください」

 

彼女は恥ずかしそうに身を縮こまらせる。

俺は頬を掻きながら頭を下げた。

 

『すまない・・・』

「いえ、大丈夫です。・・・ところで、自己紹介がまだでしたね」

 

ほほえみながら彼女は言葉をつづけた。

 

「私は犬走椛と申します。白狼天狗で、哨戒の真っ最中でした。あなた方は?」

『あーっと、俺は篠崎緋乃。んで、此奴は』

「ヴェルディ・シャルフリヒター」

『・・・だ。まあ、よろしく頼む。ってか、一つ聞いて良いか?』

「はい、なんでしょう?」

 

自己紹介を済ませ、俺は一つ質問をするべく声を上げる。

先ほどのことを忘れてしまったかのように、彼女は何もなかったような笑顔で首を傾げた。

 

『白狼天狗ってどんなのだ?天狗って言ったら、なんとなく鴉天狗が真っ先に出てくるんだが』

「鴉天狗より身分が低かったりしますね。ほかの言い方では、木の葉天狗とも呼ばれています・・・たしか!」

『へぇ・・・』

 

俺は犬走の言ったことを頭にいれ、相槌を打つ。

ヴェルディは周りをきょろきょろしていた。

 

「そろそろ、妖怪の山から出てください。先輩に見つかると、ちょっとめんどくさいことになりますので」

『ん?・・・そうか。まあ、神社に戻るのも怖いが・・・いいよな、ヴェルディ』

「ああ、そうだな。そろそろ飽きたし」

『・・・テメェ』

「ふふっ。また次に来たら、その時は落ち着いてる時だと思いますので。では!」

 

犬走は茂みの中に身を投じた。

俺はヴェルディに声をかけて、彼によって神社へと連れ帰ってもらった。

 

☆  ☆  ☆

 

 

「んで、ノコノコ帰ってこられたわけね・・・?」

「いやあれは、俺が悪かったんだ。俺が勝手に連れてった。緋乃は怒るな」

「そんな動きたいなら、弾幕ごっこでもすりゃあいいのに・・・何で山までいってるのかしら・・・?」

「俺の気分」

「・・・」

 

霊夢の説教を半ば聞き流すヴェルディ。

俺あその様子を見て、ふと疑問を抱く。

 

 

―――弾幕ごっことは?

 

 

俺には聞きなれない単語だった。

なんでそんなもんを霊夢は進めるのだろう?

考えていると、ヴェルディの顔がこちらを向く。

 

「おい、緋乃。お前弾幕放てるか?」

『弾幕ってなんだ?銃でも撃てばいいのか?』

 

二人はがっくりと肩を落とした。

なんだなんだ、俺が何かしたって言うのか?

 

「弾幕ごっこって言うのは、まあ・・・妖怪と人間が均等に戦えるように私が編み出した、一つの決闘の方法なの。自分の力を弾にして放つ。これだけの話なの」

『だけといってもなぁ・・・』

「空に飛んだ方がいろいろ楽だったりとかはあるけどね」

『それだ!!!!』

「え?」

 

俺が声を作ると、霊夢はびっくりしたように目を丸くした。

 

『なんでお前ら飛べるの?!』

「羽」

「能力」

『じゃあなんで霧雨は飛べたんだ?』

 

全然縁のない単語が返ってきて、俺はがっかりした。

それじゃあ、参考になることすらないじゃねえか。

 

「あいつは・・・まあ、箒があるし。っていっても、この世界の住民はほとんど飛べて当然よ?」

『理不尽極まりない!』

「だって常識から外れた世界だもの」

 

そうあっさりと言い捨てられる。

え?!なに?!俺の疑問これで終わり?!

 

『・・・とりあえず、弾幕を撃つ方法と飛ぶ方法を教えてくれ』

「そうねぇ・・・」

 

と、霊夢はスッと右手を差し出してくる。

畜生!この手には逆らえねえ!

俺は財布からまた千円を出して彼女の手に乗せた。

 

「♪・・・わかったわ、教えてあげる。まあ、感覚的なのしか教えられないから、そこからは自力でやんなさい」

『ああ、それだけでも十分だ。ありがとな』

「ヴェルディは?」

「いや、俺はいい。そろそろ行く」

「そう、わかったわ」

 

ヴェルディが飛び上がり、どこかへ去っていくのを、俺は横目に見て、霊夢に教えを乞う。

 

☆  ☆  ☆

 

 結局できたのは、弾幕を放つことだけだった。

飛ぶことができなかったのだ。

 

「なんでかしらね・・・」

『まあいいさ・・・弾幕ごっこはできるんだ、それで満足しとく』

「そう。・・・あなたも努力しなさいよ?」

『そうだな。善処はする』

「・・・」

 

俺の発言に眉をひそめた霊夢は、嘆息して神社の中へ入っていく。

 

 

(親友は自由に飛べるだろう。そんな能力だから)

 

(俺の能力は、俺のコミュニケーションにしか役に立ってないじゃないか)

 

(どうして?どうしてだ?・・・求めすぎるな、というのか?)

 

イライラを吐き出すように、弾幕を空へ放ち、俺はその場にへたり込んだ。

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