幻想妖美伝   作:Lan9393

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七話:『死にかけてたまるかっての』(怒

「そうだ、あんた・・・紅魔館にでも行ってみる?」

 

 そう、霊夢にお誘いをされたのは、確か朝方だった。

俺は何故誘われたのかが未だに不明だった。

いつも(数か月の間に、霊夢は仕事とは関係ない外出をしていることがあった)だったら、「ちょっと『あいつら』と茶会」だとか、「ちょっと『あいつら』しばいてくる」とか・・・。

いや、あの、『あいつら』って誰ですか?

この一言を何度、音にして聞かせてやろうかと思ったことか。

今朝それを問えば、どうやらそれはヴェルディの探し人のお屋敷じゃないですか。

弾幕ごっこ初心者の俺がほいほい行っていい場所なんだろうか?

 しばし考えるも、その時間は無駄で。

しびれを切らした霊夢が、俺の腕をつかんで「行くわよ、遅い」と文句をつぶやいて境内へ連れ出し、そのまま飛び上がってしまった時には、何をしているんだこいつはという気分で見ていましたよ。

 

『霊夢・・・さんや・・・』

「なによ、今さら嫌なんて言っても・・・」

『優しく・・・してくだs』

「はいはい」

『聞くことすらもしてくれないとはこれはひどい!』

 

それほどまで、霊夢を怒らせてしまったか?と俺は少々首をかしげるも、もうその行動すらも手遅れだろう。

ゆっくりと加速を始める霊夢に為す術もなく俺は運ばれることを決意したのだった。

 

☆  ☆  ☆

 

 そして、そんなこんなでついたのが紅魔館。

目に痛いほど真っ赤なお屋敷だなぁおい。

 

『・・・へえ、ここが、ふぅん・・・』

美鈴(めいりん)、ちょっといいかしら?」

「くかぁ・・・」

「・・・」

『・・・』

 

髪の色が鮮やかな赤の女性が、門の前で眠っていた。

立ったまま・・・門を離れず・・・寝る。

この人は、ちょっとすごい人なのではないか?と俺は思ってしまった。

どうやら、この人は美鈴というらしい。

なんとなく中国っぽいな。

 

「起きなさいよアホ」

「んがぁっ・・・あ、霊夢さん。おはようございます」

「はいはいおはよ。それで、ちょっと聞きたいんだけどいいかしら?」

「はい?」

 

(あの巫女、安眠中の女性を大幣で殴りおったぞ・・・)

 

俺は霊夢が恐ろしいなんて思いながらも、美鈴への問いに耳を傾けた。

 

「ここに、真っ黒い格好をした男はこなかった?」

「真っ黒・・・いえ、そこまで奇抜な格好をされたお方はいらっしゃいませんでしたよ」

「そう、ありがと。それじゃあ咲夜かレミリアに会わせてくれない?」

「ええ・・・ところで、そちらの方は?」

 

ひょい、とこちらを霊夢の肩越しに見てくる。

俺のことを言っているのか、とわかったらとりあえず名を名乗ることにしよう。

 

『俺は、篠崎緋乃だ。よろしく、美鈴・・・で、いいんだよな?』

「はい!緋乃さんですね、よろしくお願いします。それでは、中へどうぞ~」

『・・・いいのか』

 

手合せに弾幕勝負!・・・とかにならなくって助かった。

まだ弾幕の腕は自信がないからな、少々焦りもしたが、こんなもんなのか、ここの住民って。

 

「とりあえず、・・・いるんでしょ、咲夜」

「はぁ・・・美鈴も、お客様がいるのなら私を呼んでほしいわね」

 

霊夢の隣にスッと現れた美人。

何もの?と俺がじろっと見ていると、美人――メイド――はスカートを持ちあげ、仰々しく会釈してくれた。

 

「私はこの紅魔館のメイド長、十六夜咲夜と申します。以後、お見知りおきを、緋乃様」

『あー・・・えーっと・・・言いたいことはいろいろあるけれど、よろしく・・・お願いします』

 

固い挨拶に、俺はつい敬語で返してしまう。

クスッと笑んだ咲夜に、(これはちょいと振り回されそうだな)と思いながらも、俺は言いたいことを飲み込んだ。

 

「それで、咲夜」

「なにかしら?」

「こいつに、レミリアを紹介してやろうと思ってたのよ。案内してやんなさい」

「あなたはどうするの?」

「どうせフランが暇してるでしょ。レミリアとこいつの用が済んだら、私を呼んで」

 

そう言い捨てると、霊夢は適当に俺らと違う方向へ歩き始めた。

それでいいのかよ、メイド長・・・俺が視線をやると、しかたないと嘆息した咲夜が、「行きますか」と俺を促した。

とりあえずうなずき、彼女が歩き始めるのを追いかけた。

 

☆  ☆  ☆

 

 少々、豪華すぎやしないか?

そう思うような装飾の施された扉。

咲夜が、「こちらがお嬢様のいらっしゃるお部屋でございます」と丁寧に案内してくれた。

 

(思ってたより・・・すごい奴そうだなァ・・・)

 

霊夢が普通に話せていたことから、気軽な奴なのかな、と思っていたけれどそうでもなさそうだ。

咲夜のこの態度から扉の装飾。

ちょっと館の趣味は悪いけれど、十分すごそうなやつであろうという期待を抱かせるには十分だった。

ヴェルディが恨みを抱くほどのやつ・・・そう思うと、自然と緊張してくる。

扉をノックし、部屋の主の了承を待つ。

 

「・・・・・・・・・いいわよ」

 

少し高めの女の声。

俺は、それに違和感を覚えることなく、扉を押し入った。

 

 俺が真っ先に確認して、目を疑ったものは、部屋の主の格好。

どう見ても少女のそれだ。

ふわふわした生地であろうドレスと、青い髪。

小さめの体躯に、それに見合ったサイズの蝙蝠っぽい羽。

 

―――ちょっと、予想を上回っている。

 

「あなたが、霊夢のもとに来たという外来人ね?ようこそ、紅魔館へ」

『・・・貴女がレミリアさんか。お初にお目にかかる、篠崎緋乃だ』

「ふふ、礼儀はわきまえてるのね。ならば、私も名乗らなければなるまい」

 

座っていた椅子から立ち上がると、その体躯の小ささが見てわかった。

・・・ふむ、小学生か。

冷静に分析していると、やや興奮したようにレミリアさんが宣言(?)して見せた。

 

「私は、紅き館の主、レミリア・スカーレット!!高貴なる吸血鬼であり、やがて貴様ら人間をゴミのように扱おうとたくらむ幻想郷の力よ!」

『・・・ゴミのように扱われるのか、俺は』

「ええ、そうね。ふふ・・・楽しみにしてなさい、人間どもよ」

『・・・ふむ、まあ、信じてないのだけれども』

「・・・」

 

レミリアさんは俺が言い捨てたことをきっかけに、黙りこくってしまった。

いや、何がしたかったんだよ。

 

「も、もっと他にはないのか?!恐怖にへたり込むとか、なんとかは!?」

『悪いが、死にかけるってことなら今までだって何度かあったしな。ちょっと言葉で言われても実感がわかないだけだ』

 

そう言ってしまった時、ふと嫌な予感がした。

しまった、というような後悔。

気づいたらレミリアの目の色が変わっていたのだ。

 

「・・・要は、あなたを殺しかければ実感がわくのね」

『その恐怖・・・殺し方にもよるけどな』

「ふぅん・・・そうねぇ」

 

刹那、レミリアの姿が椅子の前からなくなっていた。

なんだ、と声を作るよりも先に、ひやりとした何かが首元に突き付けられている、そう感じた。

 

 すさまじい嘔吐感。

 

 これでもかというほど突き付けられた、『あの時植えつけられた恐怖』が、脳裏をめぐる。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――お前なんか、お前なんか――――――

 

フラッシュバックした『その光景』に、俺はとっさに口元を押えた。

 

『――――――ッ!』

「ふふ、見苦しいわね、人間」

『厭な真似をするものだな、レミリア・スカーレット。高貴なる吸血鬼とやらが、本当にイラッときて殺しかけるのか?』

「私の気分だもの」

 

話すうちに、幾分か落ち着いてきた。

してやったりというような顔をしたレミリアは、これでもかとドヤ顔を披露してくれる。

 

『・・・はぁ。やめだやめ、こんなん。咲夜さん、いるんだろ?』

「ええ、いますが」

『霊夢を呼んできてくれ、もう帰りたい』

「わかりました、少々お待ちを」

 

瞬時に現れた咲夜さんは頭を下げ、すぐに呼びに行こうと謎の所作をする。

それを俺は止めた。

 

『あ、あと』

「・・・?」

『敬語やめてくれ、霊夢としゃべるように、気楽にしゃべっていいから』

「・・・わかったわ。ちょっと待ってて」

 

オンオフはきちんとできる人なんだな、尊敬する。

俺は後ろでふんぞり返る吸血鬼をスルーし、現れた霊夢の手を引いてその部屋から出た。

というか、咲夜さんはどうやって瞬間移動してるんだ?

 

 門の前まで、咲夜さんは見送ってくれた。

いやあ、あのふんぞり返った吸血鬼とは違うな。

 

「・・・まあ、また来なさいよ、緋乃。次はおもてなししてあげるわ」

『それは楽しみですなァ・・・。ほら、霊夢、帰ろうぜ』

「ええ、まあ・・・疲れたし。じゃあね、咲夜。レミリアによろしく、って言っておいて」

「ふふ・・・お嬢様が拗ねるさまが目に浮かぶようだわ」

 

おっと、それはぜひとも拝見したい。

その言葉を作るのは押しとどめ、無言で咲夜に手を振る。

霊夢に連れられて、俺は紅魔館を後にした。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「どうでしたか?お嬢様」

「どうもこうもないわ、運命がグッチャグチャ。見えたもんじゃないわ、あの男のは」

「グッチャグチャ・・・ですか。なにかあったのでしょうか?」

「誰かにいじくられた痕なのね、これは・・・忌々しいったらありゃしない!」

「ものに当たっても、現実は変わりませんよ?」

「そうなのよねぇ・・・まあ、あいつとはまた会うだろうし、その時に聞きますか」

「承知いたしました。・・・して、フラン様が―――」

「・・・またかぁ」

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