IS -錬鉄の女騎士-   作:skyfish

2 / 29
第1話「入学」

3月、まだまだ寒気が残る今日この日、私こと岸波白野は月見ケ丘学園を卒業した。あと3週間もすれば4月に入るのにこの冬一番の寒さを更新していた。

 

「藤原先生、今までありがとうございます」

「あ、岸波さん。卒業おめでとう。ほんとあなたがいなくなるとさびしいわ~」

「夏休みとかにまた会えますよ」

 

藤原大河、月見ケ丘学園の教師で英語を担当している。弓道部の顧問をしているがそれは形だけ、本業は剣道である。その実力は剣道部の顧問を軽く凌駕している。学生のころはこの学園の生徒で当時の剣道部の主将を務めていたらしい。その腕前を発揮して、その強さから『月見ケ丘の虎』の異名を獲得するほどだったらしいが、全国大会個人戦の決勝で相手と10回以上の延長を繰り返し、あと少しのところで負けてしまったのだとか。

 

「それにしてもあの時がすぐこの間に感じるわ。あなたに剣道を教えてほしいって言われた時のこと」

「弓道部に入っていた私の我が儘を聞いてくれてありがとうございます。ですが先生、最初のころこてんぱんにされた記憶があるのですが」

「あはは、ごめんごめん。あの時は動きは荒かったけどスタミナはあったからもしかしたらと思ったのよ。私の早とちりだったけど」

 

まったくである。藤原先生のおかげでひどい目にあったが同時に避けることに関してはそれなりの自信ができた。

 

「そういえば岸波さんの行くところはIS学園でしたっけ?もう決まったのかしら」

「それは3日後に行われる実技試験をしてからです。まあ簡単な戦闘を行うだけで負けても大丈夫だそうです」

「それって意味あるの?まあ私の知ったことではないか。それじゃあ岸波さん、向こうに行っても元気にやってね」

「ありがとうございます先生。それでは失礼します」

 

職員室から出るとそこには長身できっちりとスーツを着こなした男性。目は少しだけ鋭いが生徒からの評判がいい、朽木宗一郎先生がいた。

 

朽木宗一郎、月見ケ丘学園の先生で社会を担当している。学園の柔道の顧問をしているが、柔道だけでなく合気道、空手にも精通している。小さいころは中国の体術を習っていたそうだ。八極拳も少しばかりかじっており、興味本位で習おうとしたが無理だった。すぐに諦めたが『身稽古も修行のひとつだ』と朽木先生はいい、本人が『未熟者の動きだが』といいながら八極拳を私に見せてくれたのを覚えている。そして、何故だかその後ろに赤い衣装をまとった武人が重なって見えたのは今でも謎である。

 

「岸波か。藤原先生にあいさつでもしに来たのか」

「朽木先生、今までありがとうございます」

「うむ、卒業おめでとう」

「先生こそ。ご結婚おめでとうございます」

 

朽木先生にお祝いの言葉を贈る。実をいうとつい一月前に朽木先生は結婚したのだ。それも外国の人、たしかグルジア人の女性だったはず。一時期は学園中がその話で持ちきりだった。一部の女性は悔し涙を流していたとかなんとか。

 

「新婚旅行とかは行かないのですか?」

「まだ予定が開かないのでな。今年の夏には行きたいものだ」

「そうですか。いけるといいですね。失礼しました」

「うむ」

 

短い会話をし、岸波は帰って行った。職員室のドアを開け朽木が入る。

 

「あ、朽木先生。岸波さんに会いました?」

「ああ、すぐそこで。ところで藤原先生、彼女がいく学校は」

「はい。IS学園です」

 

IS学園・・・その言葉が出ると藤原大河の表情は心配そうな顔になった。

 

「やはり心配ですか」

「当然です。彼女今の社会が気に入らないことは知っていますし」

 

今の社会。10年前に篠ノ之束によって開発されたインフィニット・ストラトス通称《IS》同年に起こった白騎士事件によりISの重要性が急激に上がり、また女性にしか動かせないことのせいで女尊男卑の社会となり男女のパワーバランスは逆転してしまった。ほとんどの女性はそんな世の中をよく思ってはいないのだが、一部ではそれを利用して男に何かしらを強制し優越感に浸っている。それに一番嫌悪感を抱いている人は先生たちが知る中では岸波白野一人だった。

 

彼女が嫌う女尊男卑の象徴ともいえるのがISだった。それに彼女はISのすべてとは言わないが少なくとも軍用・試合として使われるISのことを嫌っている。そんな彼女がIS学園に行くと聞いたときは教師だけでなく彼女を知る生徒も驚いた。しかし、それには理由があった。それは

 

「月に行きたい、だったか」

「そうよ。ISの本来の使用目的である宇宙服として使うためにですって」

 

それを聞いたとき私は彼女を諦めさせようとした。IS学園とはISを学ぶ学校であるが、あそこはIS所有国の思惑が混ざり合う場所だ。彼女の願いが叶うかどうかわからない。それにIS学園のほうが女尊男卑の風潮が濃いはずなのでは、そう彼女に言ったのだが彼女はこう返した。

 

『月に行くことが私の夢ですから、それにこれは避けては通れない道です』

 

そうまっすぐな視線で言われたため私のほうが白旗を上げてしまった。

 

「まあ、彼女が決めたことです。私たちは見守りましょう。藤原先生」

「そうですね。朽木先生。それが教師としての務めですから」

 

そういい岸波白野のこれからを陰ながら応援しようと心に決めた。そんなこの学園にいたときの彼女の顔を思い出してふと疑問が生まれた。

 

彼女の学生生活は特に問題は無く(女尊男卑に染まった女学生との口論はあったが)いたって普通の生活をしていた。だがときどき彼女は“心ここに非ず”のような感じになるのだ。それに晴れた日は夕方になると屋上に出て夕日を眺めている姿を確認できる。ある意味では不思議な女の子のように見える。

 

「そういえばIS学園と言えばあの“男の子”も今年入りますね」

「そういえばニュースで話題になってましたね。名前は確か」

「織斑一夏」

「そう!それよ!てあれ?織斑?」

 

ニュースに出ていた男の子の名前を思いだいた藤原先生だったが、何か引っかかったのか考え込む。

 

「どうしました?」

「え、いや!なんでもありません」(織斑先生と同じ苗字ね。あとで聞いてみよう)

 

心の中でそう思い、藤原大河は教師としての仕事を始めた。

 

 

 

その日の夜、自分以外いない家の中で私、岸波白野は夜空に浮かぶ月を眺めていた。月と地球の間の距離は38万4,400km離れている。記録に残っている中で最後に人類が月にいったのは1972年。その時私はこの世に生まれていないのに私は月にいたように感じる。だがそこで何をしていたのか、何のために月にいたのかなど肝心な部分がすっぽり抜け落ちている。

 

とても大切な何か

託された何か

いつも私を支えてくれた誰か

 

・・・思い出せない。忘れられないモノのはずなのに忘れてしまっている。でもこれだけは理解できる。おそらくこの曖昧な記憶の舞台はあの月だ。もしかしたらあそこに答えがあるのかもしれない。きっとそうに違いないと思いながら私は月を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

「私は副担任の山田真耶です。皆さんこれから一年間よろしくお願いします」

 

4月。IS学園に入学して初日のSHRが始まった。緑髪のメガネをかけた女性が教壇に立って話している。

 

(これは・・・正直・・・きつい)

 

教壇で話す先生の話など聞く余裕もないくらい俺こと織斑一夏は身も心もガチゴチに固まっていた。なんでかって?それはお前周り見てみろよ。この教室にいる、いやこの学校にいる人間は俺を除いて全員女子なんだぜ。

 

「それでは出席番号順に自己紹介をしてください」

 

周りからの視線が痛い。パンダとかコアラとか珍動物を見るような目で見られているから落ち着かない。人の字を書いて飲み込むという一般的で超迷信的な精神統一を何回やっても意味ないんじゃ・・・

 

「織斑一夏くん?・・・織斑一夏くん!」

「え?はっ、はい!」

 

自分の名前が呼ばれていることに遅れて気づき思わず立ち上がってしまう。緊張のあまり背筋をビンッ!と伸ばす。

 

「だ、大丈夫? び、びっくりさせてごめんね。お、怒ってる? 怒ってるのかな? ゴメンね、ゴメンね! でもね、あのね自己紹介『あ』から始まって今『お』なんだよね。だからね、ご、ゴメンね? 自己紹介してくれるかな?」

「い、いえ、山田先生、大丈夫ですから頭を上げてください。ちゃんとしますから」

 

山田先生のあまりの恐縮ぶりに若干引きながら自己紹介を始める。

 

「えーと・・・織斑一夏です。一年間よろしくお願いします」

 

しばしの静寂が周りを包んだ後

 

「・・・以上です!」

 

ガッシャーン!

 

女子の何人かがずっこけた。いや、確かに俺の自己紹介はあれだったけどいくらなんでも大げさでしょ。と思った瞬間

 

バシーン!

 

後頭部にものすごい衝撃が襲ってきた。頭を押さえながら顔をあげるとそこには

 

「げぇ!関羽!じゃなくて呂布?!」

 

バシーン!!

 

再度黒い板状のものが俺の頭に振り下ろされた。

 

「だれが三国志の英雄と最強の武人だ、馬鹿者。貴様は自己紹介すらまともにできんのか」

 

黒いスーツにタイトスカート、すらっとした長身に、鋭い吊り目をした女性。その人のことを俺は知っていた。何せその人は俺の

 

「千冬姉!?どうしてこk」

 

バシーン!!

 

本日3回目の出席簿アタックが俺に襲い掛かった。いてぇ。あんな力で叩いているのになんであの出席簿は全然凹んでないんだ?逆に俺の頭が凹んでいるのか?

 

「織斑先生と呼べ」

「・・・はい。織斑先生」

 

この女性は最近ほとんど家に帰ってこない一夏の姉、織斑千冬だった。

 

「織斑先生、会議のほうは終わったのですか」

「ああ、ひとりでまかせてすまなかった。山田先生」

 

そう言い織斑先生は教壇に立ち生徒たちに言い放った。

 

「諸君、私が織斑千冬だ。お前たち新人をこれから三年で使い物になる操縦者に育てる為の基礎を、徹底的に叩き込むのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。分からないことがあれば遠慮なく質問しろ、分からないのに黙っていれば力ずくで聞き出す。

 私の役目は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、それ相応の理由と実力、そして覚悟が要ることを理解しておけ。いいな」

 

まるで逆らったら殺すというような独裁者じみた発言をした後、教室中に叫び声が響いた。

 

「キャアアアアアアアアアアア!!!」

「千冬様!本物の千冬様よ!!」

「ずっと前からファンなんですっ!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて幸せです!」

「千冬様のためなら死ねます!!」

 

独裁者のような暴言に対し歓喜の返事が殺到した。私の前に座っている織斑一夏は耐えられないとばかりに両手で耳を塞いでいる。それに対して私はこの叫び声のことをうるさいと思わなかった。まだ巨体で全身を赤い鎧で身にまとった男の雄叫びに比べれば、彼女たちの黄色い声など小鳥の鳴き声である。

 

・・・しかし、さっきから私が思っている男とはいったい誰のことなのだろうか?

 

「まったく去年よりも増している感じがするな。私のクラスにだけ馬鹿を集めているのか?」

 

生徒たちの返事を聞いた織斑先生がダメだしを言ったにも関わらず帰ってくる言葉はヒートアップするばかりだ。

 

「きゃあああああっ!お姉様、もっと叱って!罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように躾をして~!」

「静かにしろ!さっさとあいさつを終わらせないか!!」

「「「「「はい!お姉さま!!!」」」」」

 

半分諦めきった溜め息を漏らしながら、織斑先生は目で私に早くしろと語ってきた。それに応えるよう私は立ち上がり自己紹介を始めた。

 

「岸波白野です。趣味は料理と過去の英雄や神話の本を読むこと。特技は自分でも分からないですが情報を集めることだけは自信があります。よろしくお願いします」

 

可もなく不可もない自己紹介を終わらし私は席に着いた。今日から私はこのIS学園に入学した。

 

自身の夢を叶える為に

 

 

 

忘れてしまった何かを取り戻すために

 




今更なんだけど、きのこ文章作るのむずかしくね?

あの人の文章難しい表現・漢字が多くて分かりにくいけど奥が深いから面白いけど、いざそれを真似て書くとなると頭がパンクする
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。