つーかタイトルがもうネタバレっていうか。これしか思いつかなかった。
試合開始のブザーが鳴ると鈴はすぐさま行動に出た。
「喰らいなさい!」
甲龍の衝撃砲が最大出力で放たれる。その威力は並みのISがまともに当たるとただじゃすまないダメージだ。それに対し、ラウラは右手を前に突き出す。その手前で爆発した。
「ちっ。本当に厄介なもの積んでるわね」
「ですが、これで作戦通りにやれますわ」
爆煙が晴れる。そこには無傷のラウラの姿が。
≪その程度の攻撃。このシュバルツア・レーゲンの敵ではない≫
「それはどうかしらね? セシリア援護頼んだよ!」
「お任せください」
鈴はそれだけいうとラウラへと向かっていった。
≪バカの一つ覚えだな≫
ラウラがレールカノンを撃つ。撃ちだされた砲弾を双天牙月の刀身で受け流す。振り上げた牙月をラウラへと振り下ろす。が、その前で止まってしまった。
≪貴様などこの停止結界の前では無力だ≫
ガコン。と砲弾が装填される音が聞こえてくる。
≪消えろ≫
「セシリア!」
「はいですわ」
ビット4基による援護方位攻撃。鈴が受ける結界を解除させようとでたらめな方向からレーザーが放たれる。
≪邪魔を!≫
セシリアの攻撃を躱そうとラウラはAICを解除。ビットによるオールレンジ攻撃をすべて躱していく。そこへ再度鈴が突撃を仕掛ける。
「私がいること忘れんな!」
≪はんっ。猪女が。無駄だ≫
ラウラが停止結界を発動させようとする。と鈴は地面を蹴り跳躍。ラウラの頭上を抜けながら衝撃砲を数発撃ちこんだ。即席の衝撃砲だったため威力は小さいが、ラウラのシールドエネルギーを削る。
ラウラは今の鈴の動きに驚いていた。同時に何故こちらのやることに彼女が気付いたのか分からなかった。
≪なんだと? なぜ避けることができた!?≫
「そんなの自分で考えてみなさい!」
≪おのれぇ!≫
ラウラは両腕に装備されているプラズマ手刀を出し鈴に襲い掛かった。
【放送席】
「今イベントの趣向とは違い1対2の試合になりましたが、やはりセシリア・鈴ペアが優勢に進んでいます。ところでラウラ選手前で鈴選手が止まりましたが一体何が起きたのですか織斑先生?」
「ラウラのISに搭載されている兵器
黛の質問に千冬が観客席にいる生徒たちにも分かりやすい説明をする。
アクティブ・イナーシャル・キャンセラー 通称:慣性停止結界
ISに搭載されているPICを発展させたものであり、対象を任意に停止させることができる機能だ。1対1では反則的な効果を発揮できる代物である。
「ということは、今の状況はラウラにとって不利という事ですね」
「デュノアの言う通りだ。予想以上に鈴たちがAICを見破ったおかげで2人はそれを考慮した作戦を組んでいる」
中近接戦闘向きの甲龍と中遠距離戦闘向きのブルー・ティアーズ。接近戦を鈴が担当し、AICの妨害に遠距離からの支援狙撃をセシリアが行う。また、鈴の甲龍は衝撃砲による中距離砲撃もできるから引き撃ちも可能。さながらシャルルが得意とする「ミラージュ・デ・デザート」(砂漠に逃げ水戦法)をやっているようなものだ。違いがあるとすればラファールの場合 高速切替(ラピット・スイッチ)で近接と射撃武器を交換する。高速切替で武器展開が速いと言ってもやはりタイムラグは個人差で発生する。対し甲龍は近接は双天牙月、中距離は龍砲と常に展開している。よってすぐにでも戦闘スタイルの切替が可能。押したり引いたりのミラージュ・デ・デザートもどき戦法でラウラを圧倒とはいかないものの優勢に立っている。
「AICが実用レベルになっているとは驚きました。ですがここだと有効に使えてないですね?」
「そうだな。まだまだ欠陥の域から出れていない代物だ」
千冬の言う通り。AICはまだ欠陥兵器だ。実用レベルになったと言うも1人しか拘束できない。戦場で必ず1対1の状況になるとはまずありえない。今も昔も兵器は一度にどれだけの対象を破壊できるかに留まる。AICもそれに然り、最終的には複数の敵を同時補足&停止を目標としている。が、作動させるのに多大な集中力を必要としさらに自身も集中するため動作が鈍くなる欠点を抱えている。それを解消させるため今でもドイツの技術部は改良を施している。
また、先ほど以外にもAIC現段階の欠点は存在する。といっても一部は搭乗者の問題になるのだが。
(しかし、鈴がAICを避けれるとは思わなかった。いつものあいつらしくない気がするが……)
いつもの彼女ならAICに少しは動揺すると思ったのだが。いろいろ詮索しても分からない。今は自分の役割に徹しようと千冬は思った。
【ラウラ視点】
(クソ! 何故だ。何故こうも簡単に停止結界が見破られる?)
両手にプラズマ手刀で鈴との剣戟を繰り広げながら何度目か分からない自問を繰り返した。この試合まで温存してきた切り札である停止結界が最初の2回だけでその後まったく捕まらないのだ。
何度目かの思考で、疑問は確信へと変わった。
(間違いない。こいつらはこちらの弱点を把握している!)
「貴様どうやってこれを知った!?」
≪さあ? 何のことですか、ね!≫
「ほざけ……っ!」
確かに今の停止結界は複数相手に対応できない。そのことは十分に分かっている。だからこれが対策されるのは予測していた。
だが、AICの発動タイミングまでばれているのだ。接近戦の合間AICを発動しようとするとすぐさま逃げる。また接近に合わせると横に飛んで逃れる。明らかにこちらの手の内を向こうは知っていた。しかも敵後方からの援護射撃は盛んではないが正確に狙ってくる。
「ええい! これでは埒が明かない。どけ!」
≪きゃあ!?≫
状況を打開しようと、ワイヤー・ブレードで鈴を放り投げ後方にいるセシリアを仕留めようとスラスターをふかした。
セシリアも接近させまいとスターライトMk.Ⅲとレーザービットを駆使し攻撃する。がそのすべてを躱しセシリアに肉薄する。
「丸見えのスナイパーの攻撃など、恐れる必要はない」
奴は接近戦が苦手だ。過去のデータからも素人に懐に入られているし、近接武器の展開も不得意をなっている。ならこちらのものだ。
「墜ちろ!」
≪そうはいきませんわ!≫
振り下ろされるプラズマ手刀。それをセシリアはあるもので切り払った。セシリアの右手には接近戦用ショートブレード「インターセプター」が握られていた。
「なんだと。そんなのデータには無かった」
≪弱点をそのままにしておく愚か者ではありませんわ≫
「ふん。スナイパー風情が剣士の真似事など!」
二刀のプラズマ手刀による斬撃をセシリアは一刀のショートブレードで受け流す。さながらフェンシングのような立振る舞いだ。しかし、どうしても実力差でラウラに負ける。少しづつセシリアを追い詰めていた。
≪くっ。やはりもっと精進すれば≫
「これで終わりだ!」
インターセプターを弾き飛ばす。がら空きになったそこに斬りかかろうとする。
≪私を忘れんなってぇ、言ってんでしょうがあーーー!≫
聴こえてくる大声。2人はすぐさま間を開けるとそこを衝撃砲が通り抜けた。
≪鈴さん! 危ないじゃありませんの!?≫
≪いいじゃんいいじゃん。当たんなかったし。セシリアのピンチも無くなったし、終わりよければすべて良しってね≫
≪それはうまくいった場合の話ですわ。だいだい貴女は―――≫
途端に始まる2人の口喧嘩。それを眺めながらラウラは考察する。
(何故奴らがAICの弱点の全てを知っている。少なくともこの戦闘で分かることなど限られている。だとするなら、最初から把握していたと考えるべきか。だが、どうやって入手した……?)
国の諜報機関が調べた?
その可能性は低いな。AICの機密レベルは最高レベル。徹底した情報統制で外部に漏れることなどありえない。
ハッキングした?
それも同じだ。それにハッキングされたなら私の方に連絡が来るはずだ。気付かれないハッキングなどあるわけが―――
そのとき、私は視線に気が付く。それは遥か下、ピットに座りこちらを見ている岸波白野の姿。その口元はほんの少しだけにやけていた。
「そういえばクラリッサの報告は……」
クラリッサに命令した岸波白野の調査。その報告では彼女は白だと書かれていた。そんなはずはないと再度調査を命令したが返ってくるのは同じく白。おかしい。奴は何か裏が絶対あるとラウラの軍人としての直感が囁いていた。
(まさか……?)
一瞬抱いた可能性。普段の私なら馬鹿馬鹿しいと一蹴するそれが、妙に引っ掛かった。
「……………」
口喧嘩を続けている2人を残して、ラウラは高度を下げた。向かうはピット、岸波白野がいる場所。
「あんたは少しくらい感謝の気持ちを――――てあれ? あいつは?」
「あ、あら? どこでしょうか……?」
しかし、口喧嘩で相手を見失った彼女たちは優秀なのか、馬鹿なのか、ただの天然なのか。
ピットに座り観戦していたが、鈴たちがなにやら喧嘩をしている。と2人の目を盗んで、ラウラが私のところへ降りてきた。目的は、まあ、分からなくもないけど。
≪貴様に問う≫
「なに?」
≪何故こんな真似をした≫
薄々感づいているのだろう。しかしラウラは一度も決定的な言葉を口にしていない。こちらが墓穴を掘るために誘導して言っているのだ。だったらこちらも同じことをするだけ。それにこちらも彼女に聞きたいことがある。
「それが貴女のためを思ったから。答えたから私も聞くよ。ラウラ、貴女にとって『織斑千冬』は何なの?」
改めて問う。ラウラ・ボーデヴィッヒにとって織斑千冬がどういう存在なのか。彼女のデータをハッキングしてからずっと考えていた。
ラウラのなかの織斑千冬がどういう存在か学園の者にすでに知れ渡っている。こんな質問は今更かもしれない。でも、これははっきりとすべきと根拠のない確信があった。
≪私にとって教官は尊敬値する人だ。こんなところで、ISをファッションか何かと勘違いしている連中にいるのは教官のためにならない。むしろ腐ってしまう。あの人がいるべき場所はここではない。もっとふさわしい場所が存在する。そこが教官がいるべき場所だ≫
「その本人は現状に満足しているようだけど?」
≪だからこうして説得しているのだ。教官はこんなくだらないところで終わる人ではない≫
それがラウラの主張。かつての教官、織斑千冬のことを思って言っている。傍から見たら不快に思う彼女の言い分と彼女の過去を合わせる。私が立てた仮説にはっきりとした結論という形になっていく。
「ラウラ。違っていたら謝るけど、本当は別の理由があるんじゃなの?」
【放送席】
「おやぁ? なんだかおもしろい展開になっています」
先ほどの戦闘は止み、何やらラウラと白野が話している。内容はラウラの織斑先生に対する意識についてだが。
「織斑先生。どうお「黛。少し黙っていろ」お、織斑先生……?」
千冬は黛を黙らせる。その姿を見たシャルルは少し縮こまった。
(織斑先生の真剣な表情を見せるなんて)
その表情から、今の2人の会話に興味があることを無言で周りに発していた。
≪軍人としてのラウラ・ボーデヴィッヒの考えとラウラ・ボーデヴィッヒ個人の考えの二つがあるけど、後者はあとで話すよ。プライベートな話になるからね≫
≪まず軍人としてのラウラ。“ブリュンヒルデ”の功績を持つ織斑先生のもと教わった貴女にとって確かに尊敬に値する人でしょう。その敬愛する人のことを思うのも分からなくはない≫
≪そうだ。だから≫
≪けどラウラのは度が過ぎている≫
≪何…?≫
≪あなたのそれは尊敬を通り越して崇拝の域に入っている。カルト宗教の信者みたいにね≫
≪あんな奴ら一緒にするな! 私は教官のためを思って!≫
≪人間の“他人を尊敬する”という感情は、その人を羨むという思いの表れでもある……………ラウラ。貴女は“織斑千冬”になりたいと思っているんじゃないの?≫
≪っ!!!≫
岸波の言葉に、ラウラの表情が変わった。
(あの時のラウラから見れば、そのような感情を持つのも分からなくない)
ラウラの事情を知る千冬は彼女に出会った時のことを思い出す。あのころのラウラは本当に暗闇の中を彷徨っていた。そんな彼女にとって私という存在は一筋の光に違いない。それをずっと追いかけてきたのだ。日の当たる場所に出ても飽きたらず、さらに近づこうとして。
≪だから。私から言ってあげる≫
≪…………………黙れ≫
≪あなたは、“織斑千冬”にはなれないわ≫
≪黙れぇぇぇえええ!!≫
ラウラは叫びながら、岸波白野に斬りかかった。
(まったく。あれをいうとどうなるか分かっていただろう!?)
(分かってるよ! 説教はあとで!)
「待て岸波白野!」
「今試合中だから後にしてくれないかなぁ? それにまだ半分しか言ってないけど」
「こんなくだらん遊びなど知ったことか! この場で貴様を殺す!」
さきほど言ったことがラウラの逆鱗に触れたのだろう。試合なんかそっちのけでパートナーである私に襲い掛かっている。
「ラウラ。貴女は織斑先生になることはできない」
≪うるさい!≫
「けど、目標にすることはできる!」
≪!≫
「例え創り物の命だとしても、貴女は貴女自身よ! 織斑千冬のものじゃない。いつまでも赤ん坊のままでいないで、さっさと自立しなさいよ!」
レールカノンの砲弾をガマリエルで受け流しながら、黒鍵を投擲する。
≪うるさい。貴様に私の何が分かる! それにさっきから何だ。貴様は私の保護者か何かか? 余計なお世話だ!≫
黒鍵を叩き落とし、ワイヤーブレードを射出。白野を捕えんと追ってくる。
「あなたを見てると、昔の親友を思い出して心配なのよ!」
≪ふん。貴様の友人の面影が見えると? くだらんジョークだ。なら私が直々に殺しに行こうか?≫
その時の憎悪に歪む貴様の顔を楽しむか、とかなんとか言っている。
その時の私の心はとても冷え込んた。今の自分を理解する。嗚呼。今私はキレてるし、泣きそうなほど……悲しいんだ。
「ラウラじゃ殺せない。いえ、貴女程度じゃ殺せないよ。だって―――」
私が、殺したから
≪な、に……?≫
プライベート・チャンネルでそこだけを伝える。それを聞いたラウラが一瞬だけ止まった。
その隙を見逃さない。
「喰らいなさい―――
放たれる黒い矢。ラウラがそれに気づき回避行動をするも時すでに遅し。AICを発動する時間はないと判断したラウラは右肩のレールガンを犠牲に防いだ。そういえば今回初めて赤原猟犬《矢》を使ったかな。
≪ちぃっ。予想してはいたが、この
「ありがとね。でもそれだけじゃないよ」
≪なに?―――ぐぅぅうううっ!!? こ、こいつは!?≫
苦しむように動きを止めるラウラ。それもそのはず。その矢。橙子さんの改良が加えられたものだ。中にバッテリーが仕込んであり、当たると電流が流れる仕組みになっている。それほど強くはないが相手の動きを止めることはできる。
電撃に苦しみラウラは自然と前かがみになる。その懐にすばやく入り込む。
≪きしなみ、はくのぉおッ!!≫
「言いたいことはあとで聞く。だから今は寝てなさい!」
勢いに問題なし。軸足を固定。大丈夫、朽木先生も体のバネを活かしてやれば問題ないと教わった。
「せいっ、やっ!」
≪グハあっ!!≫
回転を加えた蹴り上げ。ラウラのお腹に思いっきりやった。その威力は凄まじく、地面に足をつけていたラウラをほんの少し宙に浮かばせる。ラウラはそのまま倒れ込んだ。
【亡国機業のみなさま】
「Oh…………」
≪いい蹴りが決まったわね≫
≪そうだな≫
≪なあ。ホワイトの反応が若干引いてるように感じんだが≫
≪あの時を思い出しているんじゃない?≫
≪ああ。前にエムにやられてたな。確か顎やられたんだったか?≫
「止メロ。アレヲ思イ出サセルナ」
≪別に減るもんじゃないだろ。エムのまな板―――≫
≪いいだろう。そこになおれオータム。介錯してやる≫
≪「…………はあ」≫
蹴り飛ばしたあとのラウラが動かないのを見て私は彼女に背を向ける。まだ試合が終わったわけではない。
≪あんた。一体どこでそんなの習ったのよ≫
先ほどの光景を目にして鈴が引き攣った顔で聞いてきた。その質問に答える、名前は伏せるけど。
「母校の先生とバイト先の店長から教わった」
≪え。専門家ではなく?≫
「いや、先生のほうはそうだけど。店長はー……親から教わった? らしい」
≪らしいってなによ。らしいって。つーか何で疑問形なの≫
「いや普段優しい顔してるし、神父さんだから実感わかないっていうか」
体術に精通している神父て何よそれ。と鈴が言う。まあ分からなくもないが。アーチャーもそう思うでしょ?
(……………え? ああ、うん。そう、だな)
…………何か思い当たることでもあったのかな? まあいいや。疲れるけど今度はセシリアたちの相手を
≪……ッ。ま、まてっ!≫
後ろからの呼びかけに振り返る。よろめきながらもなんとか立つラウラの姿があった。
【ラウラ視点】
蹴り上げを受けて意識を失いかけたが、気力で持ち直した。
「まだだ………まだ終わっていない……!」
≪ラウラ。シールドエネルギーにまだ余裕があっても体のほうがもたないわ≫
「うるさいっ! 私は、こんなところで敗けるわけには―――!」
こんなところで立ち止まることなどできない。教官の目の前でただの一般人に負ける醜態など―――!
あ~あぁ。ゆっくり待つのいいかと思ったけど、面倒臭い
「? なんだ? 誰だ貴様は!?」
機体の損害がレベルDと最大限に達した負の感情ね~……。そんなの関係ないし。
高みに近づくため、私の糧になれ。人形。
〔VTシステム 発動〕
「あああああアアアアアアアア!!!!」
アリーナにラウラの絶叫が響き渡った。
書き終わったらラウラふるぼっこ回になっていた件(汗)
それと無理やり白野とラウラを戦わせました。もうこれしか思いつかなくて……
違和感感じたらもうしわけありません
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回
第21話「錬鉄の女騎士」
「噂に違わぬと言ったところか……いいだろう。似た者同士、付き合ってもらう!」