代表決定戦当日
セシリアさんとの対決する日でありクラスのものしか関係がないのだが
「…なんか人多くない?」
アリーナの観客席を見た私が最初に思ったことがそれだった。白野たちは知らなかったが代表候補生と唯一ISを動かせる男である織斑一夏の対決は学園中に広まっていた。1年だけでなく2・3年も少し混じっている。
「言われてみればそうだな」
「確かに」
篠ノ之さんとISスーツに着替えた織斑君はスクリーンに映るアリーナの光景を見ていた。そして、アリーナの中央にセシリアさんがすでに自身のISを展開して空中に待機している。
「あれがあいつのISか」
「蒼いな」
2人はセシリアさんのISをじっくりと見ていた。データはハッキングしたときに分かっているのだがもちろん私も彼女の機体を観察する。そしてふと思ったことを口にする。
「セシリアのISは射撃型だから止まっちゃだめだよ。常に動いて相手を混乱させないとただの的になるから」
「やはり弓道をしているから射撃の特性を理解しているんだな、岸波は」
「とりあえず理解したけどさ、昨日までの練習の成果は出るのか?」
一夏は疑問に思いそう言った。それに対し箒が食って掛かる。
「なに! 私の練習に文句があるのか!?」
「そうじゃないけど…ちゃんとその成果が出るのかが不安でさ」
「まぁ、できることはすべてやったんだし全力でぶつかればいいでしょ。それに私が考えたやつもやったんだし、どうにかなると思うし。それよりも――」
白野は会話を切り扉のほうを見る。
「ちょっと遅くない?」
「そうだな」
「どうすりゃいいんだ?」
織斑一夏の専用機がまだ来ていないのだ。予定よりもすでに10分は過ぎている。
「がんばりすぎてまだできていないのか?」
「それは…」
「わからない」
このままだと打鉄かラファール・リヴァイヴのどちらかに乗らなくてはいけないと思っているとき、足音が聞こえてきた。
「織斑君! 織斑君! ぜぇ…ぜぇ…来ました。織斑君専用のISが!」
山田先生が息をきらしながら走ってきた。たぶんISが来たのを伝えるために急いだのだろうが、何故通信か何かを伝えなかったのか。そうすればこんなに疲れることなかったのになと思う白野だった。
「それで山田先生、俺のISはどこですか?」
「はい、こちらです!」
ピット搬入口の扉が開く。そこにあったのは白い機体だった。
「これが織斑君専用機『白式』です!」
その機体の名前は機体の色と同じ名前をしていた。それにしても『白式』ですか…
(安易とはいえ開発チームが何故このISの名前に白という文字を入れたのか)
ISに関わる人にとって『白』という言葉には特別な意味がある。それは今から10年前に起こったある事件が関係している。
10年前、突如世界各国の軍事施設が何者かの同時ハッキングを受けて、長・中・近距離弾道ミサイルが日本に向けて発射された。その数、実に2000発以上。なんとかそれに対処しようと日本政府は周辺各国や同盟国、自衛隊の総力を注いだのだが撃ち落とした数は全体の3割だけ。当然と言えば当然だった。なにせ世界各国から放たれたミサイルが日本に向かって四方八方から飛んでくるのだ。だれもが諦めかけた時、それは現れた。白い装甲に身を包み西洋の剣のような武器を持つ顔を隠したISだった。そのISはその手に持つ剣だけで残りのミサイルを切り落としたのだ。その驚異的な性能に各国は我物にしようと軍隊を派遣したがそのISはそのすべてを無力化、消息を絶った。
その事件をきっかけにISは注目をあびるようになった。また、正体不明のISの外見と使用した武器から、『白騎士』と呼ばれこの事件は『白騎士事件』と呼ばれることになった。
まあ、そんなことは置いといて
≪織斑、アリーナの使用は限られているから早く準備をしろ。初期化と最適化はぶっつけ本番でものにしろ≫
織斑先生の声が通信越しに聞こえてくる。それに従い一夏は白式に乗った。通信室に移動した山田先生の声も聞こえてきた。
≪セシリアさんのISはブルー・ティアーズ、遠距離射撃型のISです≫
「遠距離射撃型、白野の情報どおりだな」
一夏の顔が少しだけにやける。知っていた情報が合っていたこともあるが相手の情報を知っているかどうかでは状況は変わっていく。
「箒」
「な、なんだ?」
「いってくる」
「あ、ああ。勝って来い」
一夏は箒に言うことを言った後白野のほうに顔を向ける。
「白野もサンキューな」
「ありがとう。じゃあ最後に言っておくね。前にも言ったように射撃武器の特性を理解すればなんとか立ち回れるとおもうよ。あと」
「なんだ?」
白野はセシリアの機体の特殊武装であるブルー・ティアーズについてそれとなく教えた。
「セシリアさんの機体だけど、うしろの翼みたいなやつが怪しいから気を付けて」
「うしろの翼? なんだか分からないけど気を付けるよ」
そして一夏はゲートから飛び立っていった。
「あ、織斑君出ましたね」
「そうだな」
場所は変わってアリーナ管制室では千冬と真耶がモニターを眺めていた。
「織斑先生はどうなると思いますか?」
「結果論で言うならセシリアが勝つだろうな。織斑は彼女と比べると経験値というものが圧倒的に足りなすぎる。この試合はセシリアの一方的な戦闘で終わるだろう。だが」
千冬は少しだけ笑みを浮かべて言った。
「今のセシリアは慢心している。そこに付け入る隙があるだろう。それに私の弟だ。無様に負けはしないさ」
「あれ? もしかして織斑君のことを応援しているんですか? ああ、やっぱり姉弟だから織斑君にがんばっt…いたたたたた! ほっへたとゅれまないでくらさい!(ほっぺた抓らないでください)」
「山田先生、私はからかわれるのが嫌いだ。二度とそんなことしないように」
はい! という真耶の頬から手を離したとき通信が入ってきた。
「織斑です。なんでしょうか?」
≪織斑先生。さきほど…≫
「………なに?」
別の教員からの報告を聞いた千冬は信じられないと言った顔をした。
「それで? 今はどうしているのですか?」
≪現在解析を行っているのですが、どうにも不明な点が多くて≫
「…分かりました。なにか分かり次第連絡をお願いします」
「なにかあったのですか?」
通信を切った千冬に真耶が話しかけてきた。先ほどの千冬の表情からして普通ではないことがあったと真耶は気づいていた。
「実は…」
千冬は真耶に先ほどの通信の内容を伝えた。そのあと管制室に「えええ!?」と真耶の驚きの声が響いた。
「あら、にげずにちゃんと来ましたのね」
セシリアと一夏が空中で対峙する。セシリアのほうが一夏より高い位置にいるので彼を見下すような感じだ。
「最後のチャンスをあげますわ」
「チャンス?」
「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、今、ここで謝罪すると言うのなら、許してあげないこともなくってよ?」
セシリアは自信あふれる顔で一夏にそう言った。セシリアは実戦経験はなくとも代表候補生として多くの訓練を受けている。それに対して一夏はIS操縦が今回で2回目のド素人だ。
そのことを織斑一夏は理解していないわけではない。普通に考えれば一夏がセシリアに負けることは必然である。
だが
「断る。それはチャンスと言わないぜ!」
「そう。なら…」
セシリアが主要武装であるレーザーライフル“スターライトMk.Ⅲ”を構える。次の言葉を言うのと引き金を引くタイミングは同じだった。
「お別れですわね!」
「くっ!」
セシリアのライフルから放たれるレーザーを左肩にかすめながら、一夏は右に移動して回避した。
「あら、よく避けましたね」
一夏の回避機動をセシリアは少しばかり褒めたが銃口を彼に向け撃ち続ける。
「さあ、踊りなさい! 私、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズが奏でる円舞曲で!」
セシリアの持つスターライトMr.Ⅲからレーザーが火を噴く。それは正確に一夏を狙っていた。一夏はそれをなんとか避け続ける。少しづつこちらのシールドエネルギーが減っているが、今のところは直撃を受けていないのでそんなに危機感を持つものでもない。だがこのままでは自分がやられる一方である。
「くそ、なにか武器は!?」
一夏は白式の武装リストを確認したがそこには近接用の日本刀のようなブレードのみだった。
「これだけか!? まぁ、素手で戦うよりはいいか!」
すぐさまそれを展開しセシリアに接近を試みる。
「中距離射撃型の私に、近距離格闘装備で挑もうだなんて…笑止ですわね!」
だがそれをセシリアが許すわけもなくライフルで彼の接近を妨害する。そのたびに一夏は横に回避するかあまりの弾幕に後退するかでセシリアに近づけないでいた。一夏の攻撃をセシリアに与えるには何としてでも彼女の懐に入らなければいけない。彼自身は全く理解していないが彼の機体はまだ初期設定で戦っているため十分な性能を出していない。だが、それがどうした。
「やってやるさ」
一夏は呟く。このままやられる気はない。なんとしてでもセシリアに当てて見せる!
一夏がいなくなったピットで白野と箒はモニターに映される戦闘の様子を観戦していた。
「一夏…」
箒が心配そうに見守っている。一夏はセシリアの銃撃のおかげで近づきたくとも近づけない状態だ。
「心配?」
「だっ、誰があいつのことなんか!」
箒は顔を赤らめながら言う。
「ま、今は織斑君を信じよう」
「…そうだな」
2人は静かにアリーナで繰り広げられる試合を見守り続けた。
始まってから10分くらいたっただろうか。セシリアはライフルを撃つがどれも決定打にはいたらなかった。スコープで一夏を捉えるとすぐに彼は移動して外れるため捉えにくいのだ。それに彼の動きは完全に対射撃を想定しての動きであることは、狙撃手でもある自分にはしっかりと理解した。だが彼はなんの訓練も受けていない一般人だ。ISの操縦は今回で2回目だということをセシリアは知っている。なのにここまで動けるのに一体この1週間でどんなことしたのだろうか疑問がわいてきた
「…驚きましたわ。初見でここまで持ちこたえたのはあなたが初めてです。一体どんな対策をしたのですか?」
「なにって…箒から剣道を、白野から射撃武器の対策を教わっただけだ」
一夏のいうことは本当だ。3時間の剣道の稽古を主にやったがそのなかでこんな練習を箒は思いついた。
簡単な話が一夏がただひたすら箒の突きを竹刀で弾く、または避けるを繰り返す練習だった。確かに銃とは違うが突きは予測が難しいため相手が動く前に回避運動をする必要がある。そしてそれがどこを狙っているかを相手の目と切っ先から読み取るという練習だった。このおかげで今この試合はセシリアの目線と銃口でどこを狙っているか大体だが分かるようになった。
さらに白野から射撃武器の特性を教えてもらった。そのとき弓道場に招かれたのを覚えている。
「織斑君、篠ノ之さん、弓矢と銃はまったく性質の異なる射撃武器だけど共通するものがあるけど分かる?」
「すまん…それに関しては私は分からない」
「えっと…単に遠くの相手に攻撃できることか?」
「違うよ。共通すること、それは動作だよ。ちょっと見てて」
そう言った白野は手にした弓矢を構えて弦を引く。的に狙いを定めて矢を放った。放たれた矢は中心から10cm外れて命中した。
「弓矢の場合、構える・狙う・矢を放つ。銃の場合、構える・狙う・引き金を引く。ほかの射撃武器や投擲武器はたくさんあるけどこの3つの動作が必要なんだ。生身の人間の時もISに乗っている時も射撃武器の動作は今も昔も変わらないんだよ」
「とにかく織斑君の専用機にどんな武器があるか分からないけど近接ではセシリアさんより上にならないとね。彼女はどうだか知らないけど、大抵銃が得意な人は接近戦が苦手なこともあるし。間合いにつめたらそのとき仕留めるようにしないと」
そのあとも白野から射撃武器の特性を教わった。特に止まらないこと、横に移動して相手に捉えられないことを重ね重ね言われた。
「ほんと、あの2人には感謝しないとな」
「そうですか、ならここから私も本気で行きます! フィナーレといきましょう!」
そう言い放ったセシリアがライフルを構えると同時に後ろにあった翼のようなものが4つ切り離された。それらは別々に動きながら一夏にレーザーを撃った。
「おい!? 白野の予想的中じゃないか!」
素早く移動して初撃を躱したがさらに攻撃の数が増えたことで対処が難しくなった。彼を取り囲むようにビットが展開し攻撃する。
ビットからの攻撃を回避しているときセシリアからも狙撃に注意していたが彼女からの攻撃はなかった。
(…? なんで撃たないんだ?)
今自分は必死になってビットからの攻撃を回避している。その隙に俺を攻撃すれば効率がいいのにセシリアは構えをといてこちらを見ている。
最初は高みの見物をしているのかと思ったが彼女の表情はなにかに集中している物だった。
(もしかして)
一夏は大胆にもセシリアに一直線に接近した。ビット攻撃が行く手を阻むがそれを回避する。ある程度接近するとセシリアは手に持つ銃を撃った。それを回避しセシリアにブレードを切りつけるがそれは虚空を切った。後方に退避したセシリアは再びビット攻撃を仕掛ける。ハイパーセンサーを拡大してそれを見ていた一夏はあることに気が付いた。
「…そうか。分かったぞ! お前の弱点!」
すぐさまセシリアに接近し彼女がライフルを構えた瞬間、一夏は突撃をやめてセシリアとは違う方向に移動した。そして、そこにあったビットの一つを破壊する。
「なっ…!?」
「思った通りだ。お前がこれを動かしているときお前自身は攻撃できない。逆にお前が攻撃しているときこれは攻撃できない。それに意識を集中しているから同時に動かせない。そうだろ!」
セシリアの攻撃パターンを把握した一夏は残りのビットを破壊して彼女に接近した。が――
「かかりましたね」
「…ッ?!」(まさか…罠?)
「ブルーティアーズは6機ありましてよ!」
そう言い放ったセシリアの腰にあったミサイルビットから2発のミサイルを発射した。それをなんと回避しようとしたがミサイルはしつこく一夏を追いまわし―――命中した。
仕留めた。セシリアは思ったが煙が晴れたそこにいたのは、純白の装甲を身に纏う一夏の姿だった。
「その姿…!? まさか初期設定で戦っていたのですか?!」
「そうだ。だがようやく俺の機体になったらしい」
一夏は手に持つブレード、雪平弐型を構え零落白夜を展開した。
「悪いが勝たせてもらうぜ!」
接近する一夏にミサイルを発射するがそれを切り落とした一夏はセシリアの目の前まで接近した。そして、そのまま彼女に斬りかかり―――
≪試合終了。勝者、セシリア・オルコット≫
「…へ?」
何が起こったか一夏には分からなかった。
ピットに戻った一夏は山田先生から自身のISについての説明を聞いていた。簡単に説明するなら、白式は近接戦特化型のISらしい。零落白夜はシールド無効化という攻撃が可能だがその分エネルギーを大量に消費する燃費が悪い機体だそうだ。
「それではこちらを必ず目を通してくださいね」
一夏は渡された分厚い本を見て深いため息をついた。
「そういえばだけど、なんで白野はセシリアの背中にあるものが怪しいって思ったんだ? 偶然か?」
「半分は偶然だけど、彼女の機体、見た目からあの翼みたいなものが怪しかったし。それにあれが飾りにしてはおかしいかなって思ったんだ」
「へ~」
一夏はすごいなと思うが白野からしてみればこれくらいはすぐに見破れるだろうと思っていた。今も昔も闘いとは自分の奥の手を隠すことが重要である。今回の場合は自分がハッキングして情報を得たが、仮にも軍の機体なのだから見た目でどんな武器か想像できてしまうものはどうかと思ってしまう。
「そろそろ白野の出番だな。セシリアのやつも出てるし。頑張れよ」
「私からも応援しているぞ白野」
「ありがとう。じゃあいくから」
そうして私は訓練機の一つであるラファール・リヴァイヴを装着しようとして
「待て、岸波」
それを織斑先生が止めた。
「え、なんでですか?」
「それについて今説明する。その前にこちらの質問に答えろ。岸波、”ムーンセル”という言葉に覚えはないか?」
ムーンセル? 初めて聞いた言葉なので当然知らない。
「? いえ、知らないです」
「…そうか。回りくどく言うのは性に合わないから単刀直入にいう。岸波、お前に専用機が届いた」
「…………………はい?」
間抜けな声を出してしまった。自分に専用機が来るとは思えなかったのだ。
「千冬姉 それは一体どういう」
「織斑先生だ馬鹿者。山田先生、開けてください」
千冬に言われて真耶は搬入口を開ける。そこにあるのは黒色をした”普通の打鉄”だった。
「打鉄?」
「見た目は打鉄だが中身が別物だ。織斑が試合を始めるときに届いた。もちろんそんな知らせは聞いていないから解析した。分かったことはこのISのコアは未登録だということ。さらに所持する武器らしきものが異常すぎるほど多いこと。さらにロックがかかっているせいか解析時に教師が装着したがまったく動かなかった」
「未登録のコア?! ということは姉さんが関係しているのか」
「そう思ったがその可能性は低い。その証拠がこれだ」
そう言いながら千冬は白野にある紙を渡した。
「これは?」
「解析したときに最初に出てきたものだ。読んでみろ」
言われた白野は渡された紙に書かれた文字を読む。横から一夏と箒がそれを覗いた。
※※※※※※※※※※※※※※※
そちらへ移す際、貴女に重大なエラーが発生しました。
よって欠損したデータを返却します。
また、お詫びとして『 』を貴女にお渡しします。
―――光あれ
ムーンセル
※※※※※※※※※※※※※※※
と書かれていた。『 』の部分はなぜか空欄だった。
「文章こそ短いが束のやつがそんな回りくどく畏まった言葉を書くと思うか?」
「「いや、無いです」」
千冬の疑問に即答で答える一夏と箒。篠ノ之束という人間性をよく知る者だからこそ理解した。これがもし篠ノ之束本人が書いたとしたら
※※※※※※※※※※※※※※※
ハローーーーー!
みんな元気? みんなのアイドル篠ノ之束だよ♪
IS学園の子に私特製のISをあげたけど
もしなにかちょっかい出したら潰すよ♪
※※※※※※※※※※※※※※※
みたいな文章になっていたはずだ。
「それと武器が異常に多いってどういうことだ? ちふ…織斑先生」
「分かったものは近接用短ブレード2つのみだ。それ以外は強力なロックがかかっているためどんなものか分からない。その数だが分かっているだけで200以上はある」
「200以上?! ナンダその量は!?」
武装量が多いラファール・リヴァイヴでもせいぜい10個が限界なのにそれを凌駕する数にそこにいる皆が驚いた。そして、同時に疑問が残る。なぜそれにロックがかかっているのか? それでは使用することができないので折角の武装の数を利用した戦いができない。
「それで織斑先生、このISの名前は?」
「それだが…ない」
「ない?」
「最初ロックがかかるから隠していると思ったのだがそうではない。このISには名前がなかったんだ」
「名前のないIS…」
そう白野は呟いた。
白野自身このISがなぜ私にとどけられたのか分からない。だが思ってしまったのだ。名前がないということにとても懐かしい感じがしたということに。
「織斑先生、このISにのっていいですか?」
「別にかまわないが…正体不明のISだぞ。いいのか?」
「すこしだけ興味がありますし」
そう言い白野は名前のないISに乗ろうした。
実をいうとこのISのことを疑っていたが『名前がない』ということになぜか懐かしさと、やっと会えた、という感情が湧きあがっていたのだ。さらにメッセージの最後にあった言葉…“光あれ”…それだけが気になった。
ただ一言、“君に期待する”という意味を込めて
そうして白野は正体不明のISを装着する。
その瞬間、白野の視界は暗転した。
アリーナで岸波を待つセシリアは織斑一夏の事ばかり考えていた。
セシリアの母親はとても優秀な方だった。オルコット家を発展させようと尽力した母はセシリアが尊敬する人だ。だがそれとは正反対の父親にセシリアは憤りを感じていた。婿養子という立場のせいか、いつも母に媚びへつらうような態度を見たせいでセシリアは男性に対して侮蔑の眼差しを向けるようになった。そんな父親に母は目もくれず父はそれでも母のサポートをする。セシリアから見れば2人の仲は良くないように見えた。
だからこそ分からなかった。何故2人は最後の時を一緒にいたのか。
セシリアの両親はもうこの世にいない。6年前の列車脱線事故で他界してしまった。
それから私はオルコット家を守るために多くのこと学んだ。ISの適性値が高いと分かると政府からの条件を飲み代表候補生となった。
そして出会った。彼、織斑一夏に。最初こそ高圧的に接していたが彼と闘ったことで分かった。彼の心の強さ、信念。そして織斑一夏という人間そのものを理解した。もうひとつ分かったことは彼の目が似ていたのだ。セシリアの父親がしていたものと同じ目を。いつも母親の態度ばかりを気にしていた父親は、その眼で母を見ていた。見守るような、そんな眼差しを。
父と同じ眼をしていた彼を見てセシリアは試合が終わった後に理解したのだ。セシリアは織斑一夏に今は亡き父親の影が重なって見え、そして今その彼に恋焦がれてしまった自分を。
織斑一夏のことをいろいろ思っていると通信が入った。
≪セシリア、岸波との試合は中止だ。ピットに戻ってこい≫
「…? 分かりました」
織斑先生に言われてピットに戻る。何故中止になったのか。もしかして彼女が逃げ出したのかと思ったがそれはないだろうと自分で否定した。岸波さんはそんなことで弱音を吐くような人ではないとセシリアは知っている。出なければ私にあんなことを言えるはずがない。
――紳士淑女の人ばかりだと思っていたけどそうでもないんですね――
セシリアは岸波に言われたことを思い出して顔をしかめた。あのときは私も非があると自覚していますが、それでもなんだか腹が立つ。彼女を見つけたら一言言ってやりますわ、と思いながらピットに帰還する。そこは騒然としていた。
「おい白野! しっかりしろ!」
「岸波! どうしたというんだ。目を覚ませ!」
打鉄に乗る岸波白野に一夏と箒は大声で彼女に呼びかけていた。そばにいる山田先生はどうしたらいいかと慌てふためいている。一体なにがあったのかを近づくとことの異常性をすぐに把握した。
岸波白野の眼は光を失い、無表情で、何の動きもせずに、虚空を見つめながら、泣いていた。
「い、一体何があったのですか?」
「セシリア、実は」
状況が分からないセシリアに一夏が説明する。岸波白野に出所不明のISが届いてそれを装着した瞬間いまの状態になったと説明した。
「とにかく岸波をこいつからはずさないと」
「……な…い」
「ん? 岸波、目を覚ましたのか?!」
「白野! 聞こえ「ゴメンナサイ」…え?」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ―――――」
白野は小さくその言葉を繰り返し呟いた。光を失った瞳から涙を流しながら言い続ける。その異常性にそこにいた誰もが言葉を失った。そして同時に疑問に思う。彼女は一体なにに、誰に対して、懺悔しているのか
そのあと彼女を保健室まで運んだ。とりあえず落ち着きはしたが目を覚まさず時折「ごめんなさい…」と呟いている。
そのころ真耶と千冬は例のISの解析をしていたが全くと言っていいほど進んでいなかった。
「なんなのでしょうかこのIS。名前はない。中身はロックがかかり見れない。だれにも動かせない。正体不明の贈り主…なんで岸波さんにこれをやったのでしょうか?」
「さあな。だが岸波が触れたとき、ほんの少しだけだが確かに動いた。間違いなくあいつのために調整されたISだろう。ただどんなにおかしな機体でもISはISだ。このことは外部に漏れないようにしないとな」
「そうですね。新しいコアが出てきたとなると政府が黙っていませんし」
目の前のことよりこれからのことに2人は頭を悩ませた。ISひとつあるだけで軍事力は大幅に変わる。一つでも多くのどから手に入れたいと思っている。このことが知られれば必ず無用な混乱が起きるに違いない。さらにいえば彼女は国にも企業にも所属していない一般人だ。ISを手に入れる手段として彼女に目を向けると考えられなくもない。
「これをどうするかは岸波の奴に任せるしかない」
「いいんですか? このISを彼女に渡すので?」
「理由はどうあれ、このISは岸波のものだ。あいつが使うのならそれでいい。もし使わないならここに隠しておく。外部からの圧力は私たちが何とかする。それだけだ」
そう言い千冬は待機状態となった名前のないIS、赤い宝石のペンダントを見つめていた。
型月10周年の記念イベントのブルーレイを見たとき私はすごく、ものすごく慟哭した。
だって型月のお祭りだよ?
なんで…なんで特典映像のカーニバルファンタズムスペシャルシーズンに空の境界のキャラを出さなかったんだよおおおおおおおお!
らっきょから型月の世界に入った身としてはぜひとも彼らが出たものを見たかったのに
(´;ω;`)ブワッ