IS -錬鉄の女騎士-   作:skyfish

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第5話「悪夢」

建物は崩れている

 

道は途絶えている

 

人は潰れている

 

悲鳴が聞こえる

 

周りから炎があがっている

 

いろいろなものが焼け焦げたニオイがする

 

この世に実現したような地獄絵図。その中では老若男女、身分の違い、善人悪人関係なく、人があっけなく死んだ

 

忘れるな、わすれるな、ワスレルナ

 

忘却は自分自身を守るための手段であり、最大の罪である

 

なぜこんなものを私に見せるのか

 

なぜこの地獄を自分は知っていると思うのか

 

なぜこんな…理不尽な死を世界は許すのか

 

 

周りの風景が変わる。まるでテレビのチャンネルを適当に押しているように場面が変わる。

 

そこは周りをステンドガラスに囲まれた不思議な場所。光が満ち、神聖で、荘厳な雰囲気を出している。だが足元を見て言葉を失った。

 

死体、死体、死体…………自分と同じ、学生服を着た生徒が何人も重なり合い山のようになっていた。

 

心臓を一突きされている者。お腹を切られ中身が漏れている者、体の一部がない者…

 

そして、ただの肉塊と化したもののそばに立つ人影

 

それは人ではなかった。すらりとした体、細い手足、明らかに作り物だと分かる顔。それは人形と呼ぶのに相応しい姿だった

 

人形の手は…赤い液体が滴り落ちている

 

それを見て確信する。こいつが彼らを殺した張本人だと

 

一瞬だけ人形の動きが止まる。こちらを見られているような悪寒が走る

 

人形が体を震わせる。新しい獲物が見つかったと歓喜する獣の様にカタカタと動く

 

そして、一瞬の跳躍。その動きにまったくついていけない自分

 

刹那の瞬間に間合いに詰められ、誰のものか分からない血に濡れた爪が私に振り下ろされ―――

 

 

 

「いやああああああああああああ!!」

「ふわ!?」

 

岸波白野は悲鳴をあげながらガバッと起きた。寝汗がひどく背中に服がぴったりくっついている。顔の汗もひどいものだった。

 

「白野さん、大丈夫? というかまた?」

「……ごめんなさい」

 

同居人に心配され謝る白野。

 

「…汗ひどいから…シャワー、浴びてくる」

「そう分かった~お休み~」

 

そう言い同居人は再び深い眠りに堕ちていった。それを見ながら白野は服を脱いで浴室に入りシャワーを浴びる。

 

あの日から毎日のように白野は夢を見ていた。

 

ただ、最初のころは中学のころに通っていた月見ヶ原学園に似たような場所だった。見慣れない制服だったが、そこでの学園生活はそれなりにいいものだった。

 

しかし、今回は夢に見る学校の風景ではなかった。どこかであった、どこかで起きた、地獄の再現。

 

初めて見る(と記憶している)と思うのに何故か自分はあの地獄をこの目で見てきた(と記憶している)ように思えるのだ。

 

知らないはずなのに知っている。覚えがないのに覚えている。完全に矛盾したことと思いながら私は夢の内容を思い出す。

 

毎日見る夢は毎回変化しているがなぜか、最後は同じ夢を見る。人形に殺されそうになる最後を見る直前で目が覚めるのだ。

 

なぜこのような悪夢を毎日見るのか。そのせいで毎回悲鳴をあげて起き上がるので同居人の睡眠を邪魔する形になってしまっている。

 

このままでは迷惑がかかるからどうにかしないと思いながら、白野はシャワーを浴びた。

 

一体、この悪夢は私に何を語りかけているのか――

 

 

 

翌日になって朝のSHRを待っている時間帯。今日は、いや今日も私は寝不足の状態だった。眠ると必ずあの夢を見てしまう。だからもう眠らないようにした。だがやはり寝ないのはきつい。朝食のときブラックコーヒーを飲んだがそれでも睡魔のほうが上のようだ。だが1時間目から外でISを使っての授業だ。SHRが終わり更衣室に足をふらつかせながらも向かった。

 

 

 

グランドに全員集まる。正直なこと言うともう立つことが精一杯だった。

 

「では、これよりISの基本的な操作を実践して貰う。織斑・オルコット・岸波、ためしに飛んでみろ」

 

突然の指名。専用機持ちに手本を見せる為であろう。とりあえず自身のIS――待機状態になっている赤いペンダントに念を送り展開した。

 

「遅い。もう少し早くできるようにしろ」

「…はい。先生」

「え、岸波さん専用機持ちだったの?」

「いいな、いいなぁ」

 

セシリアはすぐにできたが岸波は3秒かかった。それと同時に周りから好機の眼で見られる。IS学園に通っている生徒たちはそのほとんどがIS関係の将来を持っているが、その中でもIS操縦者になりたいと思っている人が断然多い。そんな彼女たちからして見れば突然所有者となった私のことを羨ましがる人が出てくるのは当然だった。そして織斑君は………まだ展開していない。

 

「なにちんたらしている。岸波より乗っているのなら1秒未満でできるようにしろ」

 

姉である織斑先生にこっぴどく言われていた。

 

話を聞くと織斑君はクラス代表となりその特訓として箒さんとセシリアさんから教わっているようだ。その彼よりも速いのはただの偶然なのだろうか。

 

それとは別だがこのISのことがとても懐かしく感じるのだ。

 

「よし、飛べ」

 

織斑先生に言われ3人は同時に飛び立つ。次第に順番がセシリア、一夏、岸波になる。

 

≪何している。機体性能なら白式のほうが上だぞ≫

「そんなこと言われても、前方に三角錐を想像するようにって分からないんだけど」

 

なにかぶつぶつと独り言を言っている。どうやら飛び方のイメージができていないようだ。

 

「一夏さん。イメージは所詮イメージ、自分のやりやすい方法でやればいいんですのよ」

「そうはいってもなぁ。岸波はどんなふうにやってるんだ?」

「……別に、なんとなく…」

 

つい返答が不親切になってしまう。だが自分はなんとか眠気と死闘を繰り広げていた。それでもアドバイスになるかは分からないが答えた。

 

「……後ろから戦闘機を操っているのを想像すれば?」

「おお! そうか! 戦闘機ゲームのイメージでやれば―――」

≪お前たち、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10cmだ≫

 

織斑先生からの通信が入る。

 

「それでは、お先に」

 

セシリアが先に動き始める。それを最後まで見ていたが難なくこなしたようだ。

 

「じゃあ次私」

 

そう織斑君に伝えて岸波は急降下を開始した。地面が迫る。それを見ながら瞬きをする。

 

その一瞬のうちに、何かが頭の中に流れてくる。

 

―――蜂の巣にしちゃってよ。遠慮なくさぁ!―――

―――さぁて、おっぱじめるかねぇ!―――

 

―――覚悟はできているな―――

―――シャーウッドの森の殺戮技巧、存分に味わっていけ!―――

 

―――お願いだからすぐに消えないでね―――

―――消えないで、お姉ちゃん。…フフフ―――

 

―――美味しそうだねぇ―――

―――妻よ! 晩餐の時間だ!―――

 

―――目障りだ。犬のように死ね―――

―――さて、どこを壊していいものやら―――

 

―――いいでしょう。このまま終わらせます―――

―――■■■■■■■■■■■■!!!―――

 

―――その剣のすべてを、僕のために―――

―――どうあれ、道を譲るわけにはいきません―――

 

 

「―――あ…」

 

誰かが話す。誰かが告げる。どこかで合ったことのある人たち

 

そして、自分に向けられる、明確な殺意。

 

それに飲み込まれそうになり―――

 

 

 

 

 

 

 

(さっさと目覚めたらどうだ、マスター?)

 

 

 

 

 

 

「……ッ!」

 

誰かに囁かれて目を見開く。もうすぐそこまで地面が迫っていた。すぐさま身を翻して脚部スラスターを最大出力で噴射。1mくらいの高さで停止した。だが人為的に砂嵐が発生して

 

「え? きゃあああああ!」

 

セシリアが巻き込まれた。

 

「初めてにしてはまあまあだな。もう少し周りに迷惑の掛けない降り方をしろ」

「はい…」

「岸波さん。私になにか恨みでもありますの!?」

「…ごめんなさい」

 

若干砂にまみれた姿のセシリアに謝った。それよりも先ほど私に語りかけたのは誰だったのだろう。直接脳に語りかけられるような感じだった。それに何故か安心する。いろいろ考察していたがそれを中断するかの様に衝突音が響く。振り返ると織斑君が地面に大穴を作っていた。授業後、一人せっせと穴を埋めることになったそうな。

 

 

 

 

そして放課後。食堂では織斑一夏クラス代表記念パーティーが開かれているのを余所に岸波白野は織斑先生のところを訪れていた。

 

「別の部屋に移してほしいだと?」

「はい」

 

1年生の学生寮の寮長でもある織斑先生に部屋の変更をお願いした。代表決定戦の日からの悪夢でずっとうなされ、このままでは同居人に迷惑がかかる。だから別の部屋に変更を申請した。もし無理なら保健室でもいいと伝える。

 

「分かった。荷物をまとめたら寮の出入り口に来い」

 

どうやら許可が下りたらしく岸波は部屋に戻り荷物の整理を始める。同居人にあいさつをして織斑先生に言われた場所に向かった。到着するとそこにはすでに織斑先生が待っていた。

 

「来たか。ついてこい」

 

言われて織斑先生の後をついていく。そしてある部屋に着いたのだが確かここは…

 

「先生、ここって…」

「ああそうだ。私の部屋だ。部屋が決まるまでここを利用して構わない」

 

織斑先生の部屋だった。織斑先生は鍵を開けて部屋の中に入る。

 

「これは………」

 

部屋の中に入った瞬間、岸波白野は絶句した。

 

床に散らばった紙屑

洗えてないまま山になった食器

テーブルの上を埋め尽くす缶ビール

いつ倒れてもおかしくない書類の山

あと部屋中に漂うお酒のニオイ

 

あまりの惨状にある種の魔窟を思わせた。

 

「掃除しましょう」

「いや、そんなに汚くは」

「そ・う・じ・し・ま・しょ・う」

「…分かった」

 

岸波の暗い笑顔に千冬は同意せざる負えなくなり2人は魔窟の浄化に動き出した。

 

 

 

―――1時間後―――

 

「その、すまなかった岸波。来て早々部屋の掃除をしてしまって」

「別にいいですよこれくらい。でもさすがにどうやったらあの状態になるのですか?」

「私は普通に暮らしているのだが」

 

普通に暮らしてどうやったらあそこまでなるのですか、と思ったが心の中で思いとどまった。部屋を掃除して燃えるごみ、燃えないゴミ、資源ゴミに分けられたゴミ袋が5袋ほど満タンの状態で置かれている。本当はこれらを共有のごみ置き場に運びたいのだが、ここにきて強烈な睡魔に襲われた。もう我慢できない。

 

「先生。すいません…寝ます…」

 

少ない言葉だけをいい、岸波白野はそばにあるソファーに横になり眠り始めた。

 

 

 

…またか

 

夢の中。暗闇から抜け出すと目の前に広がる海の中。その中を泳いでいるわけでもなくちゃんと足をついている。周り一体を青色に覆われていると思われる。

 

「――!……――――!!」

 

なにか、誰かの声が聞こえる。それは後ろから聞こえた。後ろを振り返ると

 

そこは青とは真逆の赤い光景だった。

 

透明の壁を隔てて、血のような赤色の場所にいる1人の生徒。

 

「おい! 助けろよ、お前のせいでこうなったんだぞ!」

 

涙を流しながら顔をゆがめて私に大声で叫んでいる。そして彼の体は所々黒く、そこから崩れ落ちている。

 

それを見て私は一歩後ずさった。あまりにも普通でない異常な光景に。そして、彼が言った言葉が離れなかった。

 

私のせい? 理由は分からないが私のせいで目の前の人が死にかけているのか?

 

「くそ、死ぬ、死んじまう! 助けろよぉ! 僕はまだ八歳なんだぞ!」

 

体の4割が消え、彼はとうとうおかしくなったのか。意味不明な言葉を叫ぶ。

 

「僕はまだ死にたくな―――」

 

最後の言葉を言い切ることなく。彼は消滅した。

 

なんなんだこれは。何故こんな夢を見るのか。何故こんな夢を見せるのか。何故彼は死ななくてはならなかったのか。何故……私は彼を殺したのか。

 

私の頭の中は混乱する。一体これに何の意味があるのかと…

 

 

 

ゴミを捨て終えた千冬は部屋に戻った。ソファーに制服姿のまま寝ている白野を見る。

 

「やれやれ、なにもかぶらずに寝るとは」

 

そう言いながら千冬は白野に毛布を被せる。そのあと、冷蔵庫にある缶ビールを取りだし開ける。そしてそれを飲もうとして

 

「………ごめん………」

 

その手が止まった。ふとソファーに寝ている白野のほうを見る。

 

「ごめん……ごめんね………」

 

あの時と同じようなことになっている。あれと比べれば随分とマシだが、彼女の話によると代表決定戦の日から、正確には岸波が専用機を受け取ってからずっとうなされているらしい。

 

(岸波白野…お前は一体何を見ているんだ?)

 

千冬は白野に心の中で問いかける。あれからも白野が首から下げている待機状態のISを調べているが芳しい情報が出てこない。それに登録されていないISコア。現段階でISコアが作れるのは親友の篠ノ之束だけだ。だが、あいつは重度の人間嫌悪だ。私と弟の一夏、そして束の妹である箒の3人以外の人間と関わろうとしない。そんなあいつが赤の他人にISコアをやるとも考えにくい。そして、岸波白野彼女にISを提供した謎の組織名

 

「ムーンセル…一体何者なんだ?」

 

千冬は無意識に問いかけるが答えは出なかった。

 




ブランク状態。う~んなかなか書き進まないのが悩みです。

CCC発売前に切のいいところまで書き終わしたい。

読んでいただきありがとうございます。
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