インフィニット・ストラトス その選択の果てに 作:ウォーリー
継続して書くことの難しいこと。
リハビリも兼ねて徐々に投稿していこうと思います。
その日の日本は快晴だった。
7月に入ってから、30度を軽く超える猛暑日が続き、今年も厳しい夏がきた。それ以外は何事もない、平穏な一日になるはずだった。
それは、突然に起こった。
───日本、某所。
システムの警告音と人の声が部屋中を埋め尽くしていた。
「──クラッキングです。こちらのシステムに侵入中」
「すでに一部のデータが流出しています!」
「システムの改竄も行ってるぞ」
「一体どうなっているんだ!」
情報化社会において重要視するべき要所の一つ。ここは急増するネット被害やサイバーテロに対し創設された部署であった。さらには政府関係を中心に国の根幹を担うデータを流出させないために、この国の最高の技術と人材がつぎ込まれていた。しかし、それをあざ笑うかのごとく最悪の状況であった。
「何、これ。人間業じゃない」
「何重にも防壁を掛けてるんだぞ。それをこんな…」
抵抗を試みているがそれを気にも留めないほどに汚染されていくシステム。だがやらないよりましだと職員たちは抵抗を続けるしかなかった。
───日本、某空港管制塔
「管制システムに侵入を確認。」
「空港各所に至急連絡、飛行機の誘導を頼め!」
空の安全を担う管制所でも異変は起きていた。管制システムにアクセスができない状況。さらに外部から勝手に操作され始めていた。大惨事に繋がりかねないことは、その場にいた誰もが容易に想像できた。だが──
「各機の自動操縦システムが勝手に起動しているとの事です」
「各空港に着陸準備を行っている機体もあります」
「何なんだ、一体」
さらに日本上空を飛んでいる機体も各地の空港に着陸しつつあるという。その場にいた者達たちは困惑するしかなかった。
そのほか市ヶ谷の統合幕僚監部、永田町の首相官邸、各交通機関といった場は大混乱に陥っていた。
突如として起きた大規模な電子的攻撃。
何処かの国々が一斉に攻撃をしてきたといってもいいほどだった。
これによって日本の防衛、交通は混乱状態に陥っていた。
──同時刻、某国軍司令部。
日本同様に世界各地でもこの現象が起きていた。
「早く、システムをスタンドアローンに切り替えろ。クソ、侵攻速度が速すぎる」
「防壁が役に立たない、掌握されるぞ。今すぐ切断しろ!」
「間に合いません。管制システムが書き換えられています」
「我が国の軍事衛星のミサイルが起動しています」
「何が起こっているんだ」
──同刻。ユーラシア大陸。某国軍事施設。
「ミサイルが発射準備に移行してます」
「なんだと、今すぐ止めろ!」
「武器管制システムが汚染されています。止められません」
「何としても止めろ!国際問題になるぞ」
──同刻。欧州方面。ミサイル基地
「……ミサイル発射されました」
「何ということだ」
その場にいた者たちは頭を押さえて事態を嘆き、あるいは神に祈ることしかできなかった。各国の管制室ではミサイルの目標地点がむなしく表示されている。そして皆同じような言葉を口にする。
「ミサイルの到達目標地点は何処だ?」
「「「──日本です」」」
──日本。
「各地で電子的攻撃の報告が入っています」
「交通網の影響が深刻です。陸海空全てで混乱が出ています」
「各国からの緊急の連絡で、ミサイルが我が国に向けて発射されたと。その数は確認されているだけで2000発を越えています」
「何ということだ」
報告を聞いた幕僚長は信じられないと考えながらも、冷静に命令を下す。
「何としても全て撃ち落とせ。総理から緊急事態宣言を受けている。陸、海、空の持てる全戦力でこれに対処しろ!」
──日本海。
「何をやっている。迎撃態勢急げ」
ミサイルが日本に向け発射された報告を受け、海上自衛隊イージス艦内は緊迫した状況になっていた。
「各兵装照準システムが汚染されています。誘導兵器が使い物になりません」
近年導入された武器管制システム、それが電子的汚染を受けていた。
「なっ!馬鹿なこんな時に」
「全稼働中のイージス艦も同様の汚染を受けています」
──駐屯地。
「レーダーが使い物にならないだと!」
「こちらで標準することは不可能です」
陸地でも迎撃の準備がされていたが、突如としてレーダーなどの電子機器が使用不可能になる事態に陥っていた。そのため地上の迎撃措置を無力化されたに等しい。
この状況を打破するための術を日本は封じられていた。
世界各地のミサイル発射から数時間後。日本全土が混乱状態の中にあった。しかし逃げ場など限られた状況で冷静な人がほとんどであった。むしろ諦めの境地に入っていたのかもしれない。
しかし、テレビやネットを通じて一つの映像が流れていた。
そして、多くの人がテレビやスマホ、パソコンを通してその映像をみることとなった。
映し出されたのはどこまでも広がる大空。
そこに浮かぶ純白の人型。全身を鎧で包み、その姿は中世の騎士を彷彿させる。全身のあちこちからスパークを放ち、ただ上空に立ちつくす。
騎士が顔を向ける先にはミサイルの一群。
まるで映画のワンシーンとも見える映像に、人々の目は釘付けになった。
浮遊していた白き騎士は手に剣を携え、鋼鉄の翼を広げ飛び立つ。その速さは見る限りでも音速の域を超えているだろうか。ミサイルの一群へ瞬く間に接近していく。
映像を見ていた人びとは容易に次の展開を予想できた。
ミサイルを叩き斬る。ただ、それを簡単にやってのけた。いとも簡単にミサイルは両断され、爆発していく。まるで使い古されたSFのワンシーン。だがそれ故にその姿は勇ましく、人びとを魅了する。
だがミサイルの数が減る様子はない。
白き騎士は臆することなく、次の一手をうつ。エネルギーを帯び、数キロにまで伸びた光の剣と化す。それを振り払い、ミサイルを切り崩していく。僅かな間にミサイルの一群は消失していた。
だが容赦なくミサイルは飛来する。超高速で騎士が移動しても日本全土を守り切れないだろう。だが移動している騎士からは何を考えているのかを読み取ることは出来ない。
「──────────」
騎士の周囲の空間が歪む。
現れたのは巨大な砲─荷電粒子砲─それを上空に向け解き放つ。
放たれた光の粒子は線を引きながら遥か遠くのミサイルを消し去っていく。
地上からもその光の線は確認できるほどであった。
──同時刻、日本。
「──ミサイル、全てロストしました」
「……馬鹿な、夢でも見ているのか」
絶望的な事態に為す術がなく、見ることしかできなかった者たち。彼らは今しがた起こった出来事に対して放心し立ちつくすか、夢か何かだと言い聞かせることぐらいしかできなかった。
その後、白き騎士は各国の監視網を掻い潜り、姿を消した。これで一旦は事態が収束するかに思えた。
しかし、数刻も経たずに再び軍事施設からのミサイルが発射された。世界各地の軍事施設などに着弾した。今回のミサイルがハッキングによる発射なのかどうか定かでないまま、各地で戦闘が没発。瞬く間に戦火は広がり、世界大戦間際までに達したと後の学者たちは分析している。
そして、この戦火に再び白き騎士は姿を現した。
今回は一体だけではなく複数体確認された。
陸地で。
海で。
空で。
あるいは宇宙で。
世界各地に現れた彼らは圧倒的な力をもって戦場の兵器群を無力化していった。
戦闘機、戦車、戦闘艦といった現代科学技術は全く歯が立たなかった。
彼ら役目が終えたのか姿を消した。各地にその力の爪痕を残して。
後に「白騎士事件」と呼ばれ、ISと呼称される存在とその能力が世界に示されたのであった。
「うんうん、予定通りです。篠ノ之束もいい仕事をしてくれました」
モニターに埋め尽くされた部屋。その異様な空間に青年が一人。
青年は白騎士事件とよばれる一連の出来事を、全てモニターを通して観ていた。
「篠ノ之束、織斑千冬、亡霊、インフィニット・ストラトス、そして……。これで全てが動き始める。はてさて、どうなることやら。ねぇ?」
話しかけた先には黒い画面しか表示されていない、いくつかのモニター。
「──────────。」
「そうですか。では私は自分の役割に専念するとしましょう。皆さんも頼みますね」
その言葉を皮切りにモニター越しに接触が切れる音。
「さて、どんな結果を生むことになるのか楽しみです」
軽い笑みを浮かべ彼がその場を離れる。
後には闇と静寂だけが残った。
人には越えてはいけない、手を出してはいけない領域がある。
そこに至った時に起こるのは悲劇と破滅。
多くの人がそれに気付く頃には手遅れである。
その日を境に世界はゆっくりと壊れ始めた。