オーバーロード ~王と共に最後まで~ 〈凍結〉   作:能都

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第12話

 カルネ村に向かう途中で一泊、薬草採集を終えてカルネ村で一泊の計二泊三日の任務は無地に終わりを告げようとしていた。エ・ランテルに到着する頃には、すでに日が暮れかかっており大通りでは『永続光』式街頭に明かりが灯り街の人々の雰囲気を変えていた。左右に並ぶ店を眺めていると酒場の中からは賑やかな声が聞こえてくる。

 

 そんな中大通りを歩いていると、私達を見るなり道行く人々は立ち止り、酒場で陽気に飲んでいた者達も手を止めて信じられない様な物を見る目でこちらを見始める。それは私を直視しており、近くの者とひそひそと話している。耳に聞こえてくるざわめき。笑われてる気もしなくはないが、その者達の目を見れば畏敬と賞賛、そして若干の恐怖を含んだ目をしていた。

 

「と、殿~…恥しいでござるよ。そろそろ降ろしては貰えないでござるか?」

 

「うん?あぁそうだな…名残惜しいが仕方ないか。」

 

 そう言って私は後ろに担いでいた森の賢王を降ろしてやった。全身でモフモフを味わえないならせめて頭だけでも、と思い兜を取って森の賢王の柔らかい腹に頭を埋めながら帰路についていた。どうやらそれが人目を集めてしまったらしい。

 

「人に注目されるのはいいでござるが、流石に恥しいでござるよ…」

 

「まぁ、今後は控えるとしよう。」

 

 改めてまわりを見るとやはり通行人の殆どがこちらを見ては驚いている。多分全員が全員森の賢王の事を恐ろしくも威厳ある魔獣という風に見ているのだろう。これが私とモモさんのセンスがおかしいのか、この世界のセンスがおかしいのかは分からないが出来れば後者であってほしい。

 

「街についた事だ、これで依頼は完了だな。」

 

「はい。おっしゃるとおり、これで依頼完了ですね。それで…既定の報酬はすでに用意してありますが、森でお約束した追加報酬をお渡ししたいのでこのままお店まで来てもらえますか?」

 

「あぁだが、こいつを組合で登録しないとなんだが…師匠、先に行っててくれないか?」

 

 一応街に魔獣を連れ込むには組合で森の賢王を登録しなければならない。一応これの飼い主は私なので私だけでもいいんだが、登録するとなると字を書く事になった時などに私一人じゃ多分対応出来ない。なのでモモさんの同行は確定事項だ。なのでついていくとしたら師匠しか居ない。

 

「分かった、荷物を降ろして待っているさ。」

 

 そう言って二人と別れて、森の賢王を連れて組合に向かう。

 

「んでモモさん。名前決まった?」

 

 帰り道の途中で名前を決めようと思ったのだが、あまり良い名前が思い浮かばなかったのでいつもの様にモモさんに丸投げしていた。あれから結構たったのだが。

 

「う~ん大福、とか?」

 

「却下。」

 

 代案を出す訳でもないがこれはない。流石に大福という食べ物はこの世界にはないだろうが色々と可哀想だ。

 

「え~…それじゃあ、ハムスケ、とかどうです?」

 

「…まぁハムスターの見た目に話し方が侍みたいだしそれでいいかな。今からお前はハムスケだ。モモさんがつけた名前に何か言いたい事はあるか?」

 

「ハムスケ!良い響きでござる!それがしにこの様な素晴らしき名前をつけて下さるとは、このハムスケ、モモ殿に深く感謝するでござるよ!」

 

 予想以上の喜び様に二人して若干驚いたが、本人が喜んでいるのならそれが一番だろう。

 

「あれ?モモンさんにアロンさんってなんだそいつ!」

 

 声の方を見るとそこには、紙袋を持ったルクルットの姿があった。恐る恐るといった感じでこちらに近づいてくる。

 

「おいおいあんたら一体何連れてきたんだ?」

 

「こいつは森の賢王で、今さっきハムスケと名付けた。森で薬草採集をしている時に襲ってきてな、返り討ちにして手懐けた。」

 

「それがしはハムスケ、以後よろしくでござるよ。」

 

「これがあの伝説の魔獣!?…ただもんじゃねぇと思ってたけどここまでとは恐れ入ったよ。流石はクラナちゃんを連れまわしてるだけの事はあるぜ。」

 

 やはりルクルットの目にもこれが精強な魔獣に見える様だ。やっぱりこの世界変だ。

 

「あれ、そういえばクラナちゃんは?」

 

「クラナは今、薬草を運ぶのを手伝うのにンフィーレアの店に行っている。私達は組合でハムスケの登録だ。」

 

「成程ねぇ。んじゃ、クラナちゃんのお手伝いに行くとするかねぇ。こういう所で好感度を上げてかないと。それじゃあお二人さん、また後でな。」

 

 ハムスケの事も驚きはしたが大して気にもしないとは、どんだけあいつ師匠の事好きなんだ。早々に別れを告げて、師匠の後を追って行くルクルットを眺めながらそんな事を考えながら、組合に向かった。

 

 

 

 

 

 

 大通りと違い静かな道を、クラナとンフィーレアは会話も無く進んでいると突然後ろから声が掛けられた。

 

「お~いクラナちゃん!」

 

「なんだ、ルクルットか。どうしたんだ、こんな所で?」

 

 クラナが尋ねると、横に並びながらルクルットが答える。

 

「ンフィーレアさんもどうも。いやさっきモモンさん達にばったり会ってさ。そしたらクラナちゃんが荷物運びするって聞いたから手伝おうと思ってね。」

 

 かっこいいだろ、と言わんばかりな顔でクラナを見つめるルクルット。

 

「まぁ、手伝うというんなら止めはしないさ。」

 

 苦笑しながらそう答えるクラナ。彼女はルクルットが自身に好意を抱いている事は知っているが、それに応えるつもりもなければそれを意識する事も無い。

 

「良いんですか、ルクルットさん。手伝って貰っても?」

 

「あぁ全然いいよ。どうせ暇だしさ。」

 

「ありがとうございます。量が多かったので二人じゃ大変だと思ってたんです。」

 

 そうして、賑やかな男を加えた三人はそのままンフィーレアの店に向かった。

 

 家の裏手にそのまま馬車を入れて、裏口の前で止める。魔法の明かりが灯ったランタンを手に馬車から降りると、ンフィーレアは扉の鍵を開けドアを開いた。手に持ったランタンを壁にかけて室内を明るくする。

 

 その中からは感想させた草の匂いが漂い、その部屋が薬草の保管庫であることを語っている。

 

「じゃあ申し訳ないですけど、薬草を運んで貰えますか。」

 

「分かった。」 

 

「了解っと。」

 

 クラナとルクルットの快い返事が聞こえ、二人は馬車から薬草の束を下ろし部屋の中に入れていく。

 

 やがて全ての薬草の束が、ンフィーレアの指示の元最適な場所に置かれる。わずかに息を切らしたルクルットに対して、クラナはそうでも無い様だ。

 

「お疲れ様です!果実水が母屋に冷やしてある筈ですから飲んでいってください。」

 

「そいつはいいねぇ。」

 

「私は…そうだな。二人が来てから貰うとしようか。」

 

「あ、そうですね。お二人の分も用意した方がいいですよね。」

 

 額に汗を滲ませたルクルットが嬉しそうに声を上げる。クラナの言葉にンフィーレアは頷き、母屋に案内しようとした時向こう側から扉が開かれた。

 

「はーい。お帰りなさい。」

 

 そこに立っていたのは、可愛さと同時に何故か不安を感じさせる女が立っていた。短めの金髪が動きに合わせて揺れ動く。艶めかしい体は必要最低限の部分しか鎧で覆われていなく、それ以外にはローブしか身に纏っていない。

 

「いやー心配しちゃったんだよ?いつ戻ってくるんだろうって、ずっと待ってたんだよ?」

 

「…あ、あの。どなたなんでしょうか?」

 

「おいおい、知り合いじゃねぇのかよ。」

 

 レンジャーとしての彼の勘が言っていた、ここにいるのは不味いと。護身用に腰に差していた短刀に手を掛ける。

 

「それで、他人の家に忍び込んで一体何の用だ。」

 

 殺気を込めた目で現れた女を睨みつけるクラナ。だが、それに怯む事も無く女は口を開く。アンデットを大量召喚する魔法、『不死の軍勢(アンデス・アーミー)』を使う為に、ンフィーレアを攫いに来た事。そして、召喚したアンデットを使ってこの街に死を振りまこうとしている事。

 

 全てを包み隠さず話す女。それは、ここから誰も逃がす気がない事を意味している。そして、それを示す様に背後から病的に白く細い体を持つ男が姿を見せた。それを理解したクラナは焦っていた。

 

(私だけなら問題無いが、この二人を守りながらは…いや、やるしかないな。)

 

 普段の彼女なら問題無かっただろうが、今この場は薬草の大量に置かれた保管庫。そして彼女が使う剣や呪術は殆どにおいて火を扱うものだ。どんなに上手く立ち回ってもまわりに引火してしまえば二人を巻き込んでしまう。

 

 そして、彼女は覚悟を決めて声を上げた。

 

「ルクルット!ンフィーレアを連れて走れ!」

 

 この状況で、どうして、どちらに、何て聞くほどにルクルットは馬鹿ではなかった。声を聞くなりンフィーレアを担ぎ、病弱そうな男の方へ走りだす。だが、それを許す二人では無かった。

 

「『酸の投げ槍(アシッド・ジャベリン)』!」

 

 緑色の槍状のものが、男からルクルットに向かって放たれる。それは相手に酸の飛沫によってダメージを与えるもので、軽装のルクルットが喰らえばひとたまりも無い。だが、それは超人の速度でルクルットの前に立ちふさがったクラナによって阻まれる。

 

 口の端をつり上げる男。だが、男が思い浮かんだ光景とは裏腹にクラナは酸の飛沫をもろともしていなかった。

 

「何だと!」

 

 そのまま男に殴りかかるクラナだったが、背後から感じる気配に振り向かざるを得なかった。壁によりかかって軽口を叩いていた女の手にはスティレットが握られ、こちらに向かって一気に距離を詰めていた。そのスティレットの刃先は正確にルクルットの背中を貫こうとしていた。

 

(この男に死なれる訳には!)

 

 彼女の主は言った。何かあった時漆黒の剣達の命は助けるようにと。目の前の男を蹴り飛ばし無理やりに向きを変え、女に飛びかかる。

 

「邪魔なんだよぉおおお!」

 

 先程までの飄々とした雰囲気から一変し、苛立ちを隠せない様子で目標をクラナに変える女。そして彼女のスティレットはクラナの肩を貫く。

 

「クラナちゃん!」

 

「この程度問題無い!いいから早く行け!」

 

 だが、ルクルットの立ち止った一瞬の隙を女は許さなかった。猫の様な動きでルクルットに飛びかかる。咄嗟の事で反応できなかったルクルットはそのまま顔面を殴られ倒れ込む。そして担いでいたンフィーレアも地面に倒れ込んだ。

 

「っち。面倒をかけおって。それにしても貴様、何故『酸の投げ槍』を喰らって平気でいられる。」

 

 蹴り飛ばされていた男が立ちあがる。質問に答える事無くクラナは考えを巡らせる。

 

(私はともかくンフィーレアを攫いに来たという事はあいつが一先ず死ぬ事は無い。だが、問題はルクルット。どうにかしてあいつをここから…)

 

 優先順位を全員の離脱からルクルットの身の安全に切り替える。そうして、彼女は左手に光を発し、それをルクルットに向けて放つ。

 

 揺らめく小さな火は燃える事無く、光を放ちルクルットを優しく包み込む。見た事もない術を目にした二人は一層の警戒をクラナに向ける。

 

「てめぇ、何をした…?」

 

「さぁ、何かな…」

 

 女はルクルットの隣で倒れていたンフィーレアを男に投げつける。そして腰から下げたメイスを手にしながらクラナに近づいてくる。そしてンフィーレアを受け取った男も杖をこちらに向けながら油断無くクラナを睨みつけている。

 

(よし、それでいい。)

 

 得体の知れない術。だがそれも術者を倒してしまえば効果はきれる。女の一撃で気を失ったルクルットよりクラナの排除を優先するのは当然だろう。

 

「まぁなんでもいいけど。んじゃあ、ちょっとムカついた事だし遊ばせてもらおうかなぁ。」

 

「ほぅ…どうやって、遊んでくれるんだ?」

 

 クラナがルクルットに放ったのは『ぬくもりの火』触れた自キャラや他プレイヤー、さらには敵の体力をゆっくり回復するというものだ。ルクルットが回復する時間を稼ぐために挑発する様な発言をするクラナ。

 

「こうするんだよっ!」

 

 メイスを大きく振りかぶった女はスティレットの刺さっていない方の肩に力一杯叩きつける。骨の軋む嫌な音が響く。レベル60の彼女のHPからすれば、大した一撃では無いが、それでも痛みは感じる。各種耐性を持っているクラナだったが、女の一撃はその値を超えて痛みを与えてきた。

 

 そうして、彼女の遊びは始まった。振り上げては叩きつけるを繰り返す。メイスが叩きつけられる度に小さくうめき声を上げるクラナ。そしてその度に表情が明るくなって行く女。

 

 そんな殴打の応酬の中で、彼女は見逃さなかった。ルクルットの意識が覚醒しているのを。目と目が合う。そして今にも女に跳びかかりそうなルクルットに、口だけを動かして言う。

 

 行け

 

 その意味を理解したルクルット。一瞬の迷い、だがすぐに意を決して起き上がり走り出す。

 

「っ!クレマンティーヌ!」

 

 男がいち早く気がつくが、その時にはもうすでにルクルットは窓を体当たりでぶち破り脱出していた。

 

「行ったか…」

 

 走り去る音に女は愉悦に満ちていた顔を歪ませ、男はギリギリと歯ぎしりをする。

 

「おのれ、あの火は回復のものだったのか…!クレマンティーヌ!遊んでいる暇はなくなった!さっさと引き上げるぞ!」

 

「っち…まぁこの女全然喚かないし遊んでても楽しく無いもんねぇ…さっさと殺してあげるよ。」

 

 そう言ってメイスを大きく振りかぶり、そのままクラナの頭に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 組合でのハムスケの登録は案外簡単に終わった。ハムスケの姿を記録する為に、写生か魔法を使って記録するか聞かれたが、写生ではかなり時間が掛かるという事だったのでガゼフから貰ったお金もあるのでせっかくだし魔法を選んだ。

 

 そうして組合の外に出ると、外で待っていたモモさんとハムスケが見た事のない老婆と話していた。

 

「あぁアロン。こちらはンフィーレアさんの祖母のリイジー・バレアレさんだ。」

 

「おぉお主がこの森の賢王を従えた冒険者か。わしの孫が世話になった様じゃの。お礼を言わせてもらうよ。」

 

「いや、あくまで依頼を完遂したまでだ。」

 

 お礼を言われる様な事はしていない。だが、ここで彼女にあえたのは幸運だ。

 

「これからンフィーレア殿の所に行くのだが、一緒にどうだ?」

 

「それは良い提案じゃな。お主らの冒険にもちと興味があるしの。」

 

 考えてみれば私達はンフィーレアの店の場所を知らない。このまま彼女に案内してもらおう。

 

 そう言って三人と一匹が歩き出した時、叫び声が響いた。

 

「モモンさん!アロンさん!」

 

 私とモモさんが正面から走ってくる声の主の方を見ると、それは師匠と一緒にンフィーレアの店に行った筈のルクルットだった。必死の形相でこちらに向かってくる様子からしてただ事ではない。そして、そこに師匠がいない事も気になる。

 

「どうしたんだ、一体何があった?」

 

「く、クラナちゃんが!…はぁ…クラナちゃんがやばいんだよ!」

 

 息を切らしながらルクルットが言った事は、一瞬で私とモモさんの警戒レベルを一気に引き上げた。

 

「落ち着けルクルット。一体何があった?」

 

 モモさんが詳しく話を聞こうとする。

 

「…はぁ…み、店に変な男と女が忍び込んでて。そいつらから俺を逃がす為にクラナちゃんが…」

 

 そこまで聞けば十分だった。その二人の目的などはこの際関係無い。ルクルットの様子からすれば師匠はかなり危険な状態という事だ。

 

「リイジー・バレアレ!今すぐお前の店に案内しろ!」

 

 

 

 

 

 

 裏口の扉を蹴りやぶり、そのまま中に突入する。そこで目に入ってきたのは至る所に傷を負った師匠の姿だった。

 

「師匠!」

 

「遅いぞ…馬鹿弟子が…」

 

 そう言った師匠はぬくもりの火に包まれており、近づくと優しい火の光は私をも癒し始める。近寄って見てみれば、頭からは血が流れており、メイスの様なもので全身を殴打されていてそれがゆっくりと癒されている。

 

 そうして、傷を癒している師匠から何があったのかを聞いていった。クレマンティーヌという女とマジックキャスター。ンフィーレアのタレントを狙って彼を攫いに来た事。そして、彼を使い何らかの方法を用いてアンデットの軍勢を召喚する事。そして、師匠がルクルットを生かす為にその身を犠牲にしていた事。

 

「ダメージ事態は大した事は無い。ルクルットがお前達を呼びに行った後は『鉄の体』を使ったからな。」

 

 『鉄の体』文字通り全身を鉄の様に硬くする呪術で、それを使えば確かに殆どダメージは受けないだろう。ならなぜ始めに使わなかったのかと言われれば、この呪術は移動速度がかなり下がる。それこそ全身が鉄の様に重くなる。下手に使ってルクルットに標的を変えられる事を危惧して、その女のお遊びに師匠は付き合ったのだろう。

 

「分かった。後は私達でなんとかする…師匠はゆっくり休んでいてくれ。」

 

「…すまない。少し二人きりにしてくれないか?」

 

 唐突な師匠の言葉に、モモさんはゆっくりと頷きリイジーを連れて母屋の方へ向かった。そして、扉がしまるのを確認した師匠は怯える様な様子でゆっくりと口を開いた。

 

「…お前がくれたあの剣を…奪われてしまったのだ…」

 

「えっ?」

 

「本当にすまない……本当に…申し訳ありません……」

 

 そこまで言われて私は気がついた。彼女達ナザリックの者達は私達を至高の御方と崇拝し、絶対の忠誠を誓っている。そんな私達からの贈り物は、それこそ神から授けられた物だ。それを他人に奪われる。私からしてみればキャラ作りの為にあげただけだ。だが師匠にしてみれば自分の命よりも大切なものだった筈だ。だからこそ、今師匠は涙を流しているのだ。

 

「…泣かないで師匠。大丈夫、怒ったりしないから。師匠は頑張ったよ…」

 

 前にデミウルゴスが言っていた。至高の41人に作られた者の一番の喜びは、私達至高の41人の役に立つ事だと。そして、最も恐れる事が私達至高の41人に失望され、見捨てられる事だと。だからこそ、師匠はここまで怯えているのだろう。失態を重ねてしまった上に、私から貰ったものを奪われてしまった。その事に呆れられ、失望され、見放されるので無いかと。

 

 だから私は師匠を抱き寄せる。彼女の心を癒すように、優しく。

 

「アーロン…様…」

 

「大丈夫…私はいなくなったりしないよ……だから待ってて、すぐに奪い返してくるよ。それまでに、いつもの師匠に戻っててね。」

 

 何度か師匠の頭を撫でながらそう言うと、すぐさま立ちあがる。このまま師匠を慰めていたい気持ちはある。だがそれ以上に、湧きあがる怒りを抑えきれなくなりそうだった。握りしめた拳は痛みを感じるほど強く握られている。それをどこかにぶつけたい衝動に駆られるが、こんな事に使うべきではない。これを振り下ろすべきは大罪を犯した愚か者だ。

 

「絶対に…許さん…」

 

 

 

 

 

 

 

 




2巻までの話までしか考えて無いので、一度そこで区切ろうと思っています。

ここまで構成など考えずその場の勢いだけで書いてきたので、
そこから続きを書くか新しいものを書くかはまだ決めていません。



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