流石に早く着きすぎたらしくクラス分けの発表もされておらず、入学式の会場である体育館も空いていなかった。
「あっはは、流石に早過ぎたよね。他の生徒もいないみたいだし、校舎の周りでも見てまわろっと」
そう言って再び歩き出す咲夜。
とその時中庭のベンチに座る女生徒が目に入った。
(今日は始業式だけだから先輩ではないよね……?)
咲夜が近付いてみると、その女生徒は何やらさっきからずっと食べているのが見えた。
深緑色の髪色でロールのかかったポニーテールで、なかなかいいおもちをしている。
(なに食べてるんだろ?黒っぽいしかりんとう?まあ同じ1年生だろうし話しかけてみよう)
咲夜がさらに近づき
「はじめまして、あなたも1年生?こんな朝早くからこんな所で何を食べてるの?」
と優しく微笑みながら挨拶をする。
(誰に対してもこの調子で接するために無垢な中学男子たちは尽く夢を抱きそして散って行ったのであr)
「…………………(ポリポリ」
(……………あれ……?)
しかし女生徒は相変わらず黒い何かを食べ続けるだけで返事が無い。
(き、きこえなかったのかな…………いやいやこの距離でそんなはずは…………)
予想外の反応に咲夜が戸惑っていると
「……食べる………?」
そう言って女生徒は咲夜の方へ手に持っていた袋を向ける。
よくみるとそれはかりんとうではなく黒糖のようだった。
「え、あ、ええ、ありがたく頂戴するね」
若干咲夜がテンパりながら袋から一つ黒糖を取り出す。
そして口へ運び食べた瞬間咲夜の顔が綻んだ。
「何これ、すっごく美味しい………こんな黒糖はじめて………」
咲夜のその反応を見て嬉しかったのか、女生徒ははじめてニコッと笑い
「それが自慢……」
と咲夜の目を見てそう言った。
咲夜は女生徒が自分に少し打ち解けてくれた気がして嬉しくなり、笑顔を返した。
そして咲夜は女生徒の隣にこしをおろし再び向き直って言った。
「私は梢 咲夜って言うの。あなたは?」
女生徒は少し驚いたような顔をして、一瞬間をあけてから
「滝見 春、よろしく」
「うん、よろしくね滝見さん!クラス同じだといいね」
「私は別に、同じじゃなくても構わない………」
「ガーン…………」
こうして咲夜は(若干一方的ではあるが)新たな友人、滝見春と出会った。
「そう言えば滝見さんはなんでこんな時間にこんな所で黒糖食べてたの?」
「………8時だと思って来たら7時だったから(ポリポリ」
「そ、そうなんだ………」
表情を崩さないまま答える春に咲夜は
(もしかして滝見さんって若干天然?)
と少し苦笑いをした。
次の話からはモブとか教師との絡みはなるだけカットしてさっさと麻雀部に行こう