天孫降臨〜Heavens Door〜   作:ポンメルン

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対局中一切しゃべらなかった矢野の本名とキャラが判明します。





団欒

「「ありがとうございました」」

 

対局後の挨拶をして咲夜は「ふぅ……」と少しため息をついて椅子に深くもたれかかる。

 

咲夜は今まで経験してきたネット麻雀でのどの対局よりも疲労を感じていた。もちろん一筋縄で勝てるとは到底思ってはいなかったが、完全に春の術中にハマって踊らされ続けたこと、さらにさきの対局の間自分自身が好調だったということが咲夜をヘコませた。

 

(麻雀に本気に取り組み出したのがあのインターハイを見てからだから自分が強い訳じゃない事は自覚してたけど、滝見さんとでさえここまで実力差があるんだもん、神代さんとなんてもう…………)

 

「はぁ……………」

 

対局が終わってから何度目かの大きなため息をつく。

 

すると後ろから突然冷たい何かが咲夜の頬に押し当てられた。

 

「きゃあっ!!」

 

咲夜が驚いて椅子から飛び上がり後ろを振り向くと、

 

「どうしたの梢さん、そんなに辛気臭い顔して」

 

と言いながら手に缶ジュースを持った矢野と春が立っていた。

 

 

「もう、びっくりしたじゃない………」

 

「だって梢さんの背中からもう暗ーいオーラがむんむん漂ってたからね〜

少し心配した訳だよ。ね、はるる?」

 

「うん………(ポリポリ」

 

矢野の言葉に相槌を打つ春。

しかし2人の様子を見た咲夜が

 

「矢野さんと滝見さんって元から知り合い……?」

 

と問いかけると、2人は少し驚いたような顔をした。

 

「そうだけど………自己紹介の時に言ったよ?」

 

「え…………?」

 

咲夜は対局前のことを思い出そうとするがどうにも記憶にない。どうやら対局に集中しすぎて頭に入ってなかったらしい。

 

「たぶん………明梨の自己紹介なんてほとんど聞いてなかった…………(ポリポリ」

 

咲夜の様子を見て春が呟く。

 

「えぇーーーひどいよ梢さーん…………」

 

「ご、ごめんね………」

 

「んじゃあ、改めて自己紹介。矢野明梨、1年D組。はるるとは中等部の頃からの友達だよ」

 

そう言って矢野が差し出した手を咲夜が握り返す。

 

「改めてよろしく、矢野さん」

 

そう言って咲夜が手を離そうとすると、逆に矢野が咲夜の手を強く握りしめた

 

「や、矢野さん………?少し痛いんだけど…………」

 

咲夜が戸惑いながら手を振りほどこうとすると、矢野がニヤっと口角をつりあげ、満面の笑みで咲夜の顔を見る。

 

「それとね〜わたし、可愛い女の子に目がないんだ〜」

 

「………………え?」

 

「はるるもすっごく可愛いけど、梢さん、いや、咲夜さんもそれと同じくらい可愛いよね!!わたし、一目惚れしちゃった!!」

 

「え?え?えぇ!?」

 

突然の矢野の豹変に意味が分からず混乱する咲夜に構わず、怪しい手つきで咲夜の手を撫で回しはじめる矢野。

 

咲夜が助けを求めるように春の方へ目線を向けるが、春は少し目を逸らして

 

「梢さん………明梨のこの状態になったら逃げられない、諦めて………(ポリポリポリポリ」

 

と誤魔化すように黒糖を高速で食べ始めた。

 

「フフフ…………はるるほどじゃないけどこの柔らかそうなおもち……………」

 

「ちょ、ちょっと矢野さん!?何処を!?」

 

「あぁ………その表情…………たまらないですよ、咲夜さん………………」

 

「やぁめぇてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………10分後

 

咲夜の体を堪能し落ち着きを取り戻した矢野が、赤面し涙目になって仁王立ちする咲夜に土下座していた。

 

「いやはや、すみません咲夜さん。わたし変なスイッチが入ると止まらなくなってしまうもので……………」

 

「………………今回はもういいけど、次したら許さない…………」

 

「はい……………肝に銘じておきます……………」

 

さらに深々と土下座する矢野。

 

すると春が咲夜の隣へ歩いてきて

 

「明梨もちゃんと反省してるし、許してあげて欲しい……」

 

と少し頭を下げた。

 

「いや、もう怒ってないよ。……………けど、滝見さんも見て見ぬ振りをしてたような…………」

 

咲夜が春をジトっと見ると、春はまた少し視線を逸らし

 

「巻き込まれたく、なくったから…………」

 

と少し頬を赤くしてそう言った。

 

「あぁ………」

 

咲夜は妙に納得して、そうつぶやいて引き下がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、咲夜達はジュースを飲みながら団欒していると、磯野が3人の元へやって来た。

 

「3人とも打ち解けたようで良かったよ。1年生も増えてきたしまだ打つなら空いてる卓に入ってくれていいよ」

 

そう言って磯野は他の体験入部に来た1年生達に声をかけに行った。

 

 

 

 

「滝見さん達はまだ打つの?」

 

咲夜が2人に問いかける。すると春が突然咲夜の方へ向き直った。

 

「春、でいい」

 

「え…………?」

 

「滝見さん、はよそよそしいから。春、でいい」

 

どうやら春は咲夜の一歩引いた態度が気になっていたようだった。

 

「そっか、じゃあ春、で。そっちも咲夜、でいいよ」

 

「もちろん………、咲夜」

 

少し気恥ずかしいのか、2人とも「フフっ」と笑い合う。

 

「じゃあわたしも明梨、って呼んでいいよ!わたしは、さくちゃんって呼ぶから!」

 

すると明梨が1人仲間外れに思ったのか2人の間に割って入ってきた。

 

「うん、よろしく明梨」

 

「こちらこそ、さくちゃん!」

 

そのまま3人は何故か少しの間クスクスと笑い合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次の話から地の文の表記を「矢野」から「明梨」に変えます。

磯野さんは知りません。
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