ハイスクールD×D~闇桜~   作:水無瀬久遠

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白七話 捨てられた聖女

「よっしゃ!!ダンジョンクリア!!」

 

 

「………君は、一体何をしているんだい?」

 

 

コントローラーを手にガッツポーズを取る此方に、クローディルは呆れた声を上げた。

 

此方が住んでいるのは、小さいとはいえ十分な広さを持った、日本家屋だ。

これは、姉である彼方が彼らの為に用意した住まいであり、普段はここに二人で同居している。

一階建ての6LDKといった間取りで、正直二人だけでは殆どの部屋が手付かずのまま、無人の状態を保っている。

 

別にここまで広い必要はなかったと思うが、もしもの時の眷属避難所としても使うから、と主に言われれば、このまま大人しく使うしかないだろう。

 

 

その中にある此方の部屋は、ダイニングと廊下を挟んだ向かい側にある。

日当たりはそこそこの和室。

元々日本人だった彼としても、畳の方がフローリングよりも落ち着くのだ。

 

その部屋には、小さいとはいえ薄型液晶テレビと種類豊富なゲーム機、そしていくつものゲームカセットが陳列している。

残る家具は勉強机位なモノで、彼の私物はそのゲームのみと言ってもいいだろう。

 

テレビ画面には、『clear!』と花吹雪が散っていた。

 

 

「お、クゥだぁ」

 

「熱の方は?」

 

「もう殆ど平熱。あまりにも暇だったんで、まだクリアしてなかったゲームしてた」

 

 

えへへ~、とおどけた様に笑う彼は、どうみても唯の子供。

はぁ、とクローディルは頭を抱えつつ、溜息をついた。

 

此方の趣味は、ゲームだ。

それこそ、パソコンがあればネットゲームにでも嵌って、学校を休んでしまう引き籠りの如く、彼はゲームが大好きなのだ。

その為、彼は自分の給料の大半をゲームに費やしている。

 

とはいえ、その給料は彼方がその大半を管理している為、彼が実質として受け取っている給料は高校生が平均的に貰えるお小遣い程度。

それでも、彼は喜んでゲームに費やしている。

 

これで、全額彼に渡していたら、と思うとクローディルとしては、本当に心配でならない。

 

 

「それで、今日はどうするんだ?」

 

「ん~……夜はイッセーの契約取りを手伝う予定」

 

「了解した。僕は、ちょっと調べモノをするから、夕方には出る。夕飯は雑炊を作っておくから、きちんと食べろよ?」

 

「卵?」

 

「残念。今日はカニカマで蟹風雑炊の予定。お昼はどうする?」

 

「鍋焼きうどん!」

 

 

元気よく返事をした此方に、了解、と肩を竦める。

この会話だけ聞いたなら、手のかかる弟と相対している様に聞こえそうだ。

 

昼食の準備に取り掛かる為に部屋を出ようと背を向けると、なぁ、と此方が言葉を投げかけてくる。

振り返ってみたが、彼は未だにテレビ画面に視線を移したまま、手元のコントローラーを弄っていた。

 

 

「ネコちゃんは?」

 

「買い出しを頼んだよ。丁度、人参が無くなっていたから、それに追加して幾つかお願いしたんだ」

 

「そっか……」

 

 

興味なさそうな声音で、此方は呟く。

 

目が覚めた時、始めに見えたのは見慣れた自室の天井と、心配そうにタオルを冷やしている小猫の姿だった。

初めこそ困惑したが、すぐに顔を出したクローディルの説明で、彼女が看病を買って出てくれた事が分かった。

 

終始無言ではあったが、彼女が心配してくれた事は分かる。

それでも………

 

 

「……ネコちゃんは、どこまで知ってる?」

 

「何一つ。君が話さないのに、僕がベラベラ話す訳ないだろう?」

 

 

話しはそれだけか?と問えば、うん、と此方が頷く。

クローディルはその横顔を一瞥すると、部屋を後にした。

 

去り際……テレビの明かりに照らされた顔が、少しだけ泣いている様に見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

「本当に大丈夫なのか?」

 

 

自転車の後部をチラリと気にしつつ、一誠が口を開く。

そこに乗っているのは、本日高熱により欠席すると連絡されていた此方の姿。

 

 

「平気だって。高熱ってのは、学校を休むための理由で、正確には仕事を片付けてたんだよ。だから、お前に体を心配される筋合いナッシング」

 

 

OK?と楽しげに笑う彼に、イッセーは溜息が漏れた。

こうして契約取りにでるが、今までの成績は全敗。

しかも、自分の駒は『兵士』だと言われ、一誠の心境としてはもう挫ける寸前。

 

 

「あーあ。俺、最弱の兵士(ポーン)です。いいとこなしですが、爵位持ちになれますかね……えぇと、魔王様でいいのかな?って、魔王様に相談しても仕方ないか」

 

 

ついつい、愚痴が先に出てしまう。

淡く苦笑が漏れる一誠に、此方はクスリと笑った。

 

 

「なれるさ」

 

「そうか?未だに、魔方陣からジャンプする事だって出来ないんだぞ?」

 

「別に、俺だって最初から強かった訳でも、魔力が多かった訳でもない。それなりに努力して、必死に鍛錬して……やっと、どうにかこうにか姉さんの役に立ってる。今は無理でも、ゆっくり慣らしていけば、その内ジャンプするくらい出来る様になるって」

 

「……そうだな。よし、今の目標は魔方陣からジャンプすること!」

 

「おう。悪魔ってのは寿命が長いからな。ゆっくり生きていけばいいって」

 

 

人間からの転生悪魔は、生き急ぐ傾向がある。

それは、自分達が元々最高でも100年ちょっとしか生きられない事を知っているからだ。

悪魔からすれば100年など、瞬きと同じ位の時間。

それを急ぐのは、勿体ない事なのだと、昔自分に戦い方を教えてくれた転生悪魔が言っていた。

あの時、自分はその言葉に絶望すら感じたが、一誠にはその言葉が必要だろう。

彼の漕ぐ自転車に揺られつつ、此方はそう思った。

 

 

時刻は、深夜を回り、一誠はとある一軒家で自転車を止めた。

特に変哲もない、普通の一軒家。

どうやら、そこが一誠の呼ばれた家らしい。

 

 

(………?)

 

 

一誠が端の方へ自転車を止めている間、此方はグッと体を伸ばし……ふと、違和感を感じた。

気配としては、微妙なモノだったがそれでも肌に馴染む、染みついた悪意と敵意。

そんなものを、家の中から感じる。

 

 

「イッセー」

 

 

戸惑いつつ、玄関ブザーへと手を伸ばす彼の手を掴み、制止する。

何かがおかしい……

 

 

「……どうしたんだよ」

 

「嫌な予感がする」

 

 

短くそう告げ、トンッと指で玄関の扉を叩く。

すると、キィ...と小さな金属の軋む音を響かせて、扉が少しだけ開いた。

こんな深夜に、不用心にも扉の鍵をかけ忘れるものなのだろうか。

一誠の表情にも、怪訝なモノが浮かんでいく。

 

 

「先に俺が入る。イッセーは俺の背後に」

 

 

状況から見て、本来ならこのまま一誠を帰し、自分だけで捜索する事が一番だろう。

だが、帰っている途中で襲われる危険性を考えれば、これが一番安全だろうと思ったからだ。

此方が何か呟くと、右手に銀拳銃が現れる。

その瞬間、彼の纏う空気がガラリと変わった。

 

 

「………いくぞ」

 

 

 

 

緊張を孕んだ声でそう告げると、素早く家内へと入る。

廊下や階段に明かりがつく気配はなく、一番奥の部屋だけがぼんやりと光が灯っている事が確認出来た。

辺りに何もない事を確認し、後ろの一誠に手で合図する。

ゆっくりと中へ入ってきた一誠の表情は、紙の様に白くなっていく。

 

 

「な、なんだこれ……」

 

 

外よりも濃厚に感じる悪意と敵意。

それを肌で感じ取ったのだろう、一誠の表情には脅えと不安がありありと映る。

彼の様子に注意しつつ、此方は銀拳銃を構えたままゆっくりとろうかを進み、奥の部屋を目指す。

後ろでは、慌てて一誠が靴を脱いで追いかけようとしていたが、その行為を止める様、指で指示する。

この気配が凶であるなら、靴を脱ぐ行為はあまり良くはない。

少しでも自分達の所持品が残ると、色々と面倒を招く危険性があるのだ。

 

一誠が自分に追いついた事を確認し、進む速度を上げると、明かりの見えた部屋の前で姿勢を低く保つ。

間違いなく、この部屋から敵意が漏れている。

 

 

「……俺が先に入るから、合図したら入ってこいよ」

 

 

小声でそう伝えると、一誠は緊張した面持ちで頷く。

此方は気配を出来るだけ消し、ゆっくりと音を立てない様にして扉を開ける。

隙間から見えた部屋の様子は、蝋燭が無数にあり、部屋の明かりはそこに灯る炎だという事位。

やはり、それだけでは中の様子は分からない。

緊張感を保ったまま、此方は扉を開け放つと中へと侵入し………絶句した。

 

そこに広がる風景は――――――

 

 

「な、んだよ、これ………」

 

 

背後から洩れた声に、此方は反射的に振替る。

そこにいたのは、目を見開き絶句した一誠の姿。

 

 

「ゴボッ」

 

 

光景に、神経が耐え切れなかったのだろう。

彼はその場で腹部を抱え、吐き出した。

その様子に、此方はすぐさま彼へと近寄るとその背を優しく擦りながら、惨憺たる光景を眺めた。

 

 

――――――リビングの光景は、地獄絵図と言ってもいい程に酷い有様だった。

壁に貼り付けられた死体は、上下が逆さまだった。

まるで、何かの儀式を意味するかのように、無残に切り刻まれた死体は、辛うじて男性だと判別できる。

内臓は腹部から零れ、彼を壁に繋ぎ止めているのは、太い釘。

逆十字でも謳っているのだろう、釘はキリストが磔にされた時と同じく、掌、足、そして胴体に撃ち込まれている。

どうみても、尋常な神経の持ち主の殺し方ではない。

 

此方はゆっくりと視線を下へと下げる。

そこに広がるのは、死体から絞り出された血で赤く染まった床。

まだ滴っている様子から、死後それ程たってはいないのだろう。

男が打ち付けられた壁には、彼の血で書いたと思しき血文字。

 

 

「な、なんだ、これ……」

 

「『悪いことする人はおしおきよ!』って、聖なるお方の言葉を借りたものさ」

 

 

部屋の奥より聞こえてきた声に、二人の意識が向く。

そこにいたのは、若い白髪の男。

見た目通りの年齢ならば、十代くらいだろう。

神父らしき恰好をしている事から、彼が自分達の敵である事は容易に想像できる。

此方は一誠を守る様に前へと出る。

 

 

「……お前がやったのか?」

 

 

怒気を孕む声。

低く紡がれた言葉に、一誠は身震いする。

神父は二人の姿を見るなり、ニンマリと笑った。

 

 

「俺は神父♪少年神父~♪デビルな輩をぶった斬り~、ニヒルな俺が嘲笑う~♪お前ら、悪魔の首を刎ねて~、俺はおまんま―――――」

 

 

ガウンっ!!

愉快そうに歌い出した声が、銃声によって掻き消される。

此方が天井へ向けて発砲したのだ。

 

 

「もう一度聞く。お前がやったのか?」

 

 

有無を言わさぬ強い声。

その瞳には暗い輝きが宿り、蝋燭の灯に照らされてヌラヌラと揺れて見える。

普段から見ない程に歪んだ彼の様子に、一誠は体が竦む。

 

―――此方は本気で怒っている。

 

普段ふざけて、彼が怒る事はあるが、これほどまでに怒った彼の姿など、記憶にはない。

だが、神父は一切の戸惑いすら浮かばせずに、ニンマリと笑うだけ。

 

 

「俺の名前はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属してる末端でございますですよ。あ、別に俺が名乗ったからって、お前さん方は名乗らなくていいよ。俺の脳容量にお前らの名前なんざ――――――」

 

 

続きはなかった。

彼の懐へと一瞬にして移動した此方の拳が、見事にフリードの鳩尾を捕え、減り込む。

ビキビキッと嫌な音が一誠の耳にも届く程に、相手の肋骨を軋ませると、そのまま壁へと叩き付ける。

 

ガンッと音を響かせ、フリードはズルズルと床へ座り込んでしまった。

 

 

「聞こえなかったのか?」

 

 

氷塊を思わせる程に、冷たい声。

座り込んだフリードを見下ろし、此方の表情はほぼ無表情。

だが、その瞳だけは憤怒がありありを浮かんでいた。

 

 

「俺は、お前がやったのかって聞いてんだよ。」

 

 

ゾクッと背筋が凍る。

此方は、相手を殺すつもりだ。

それこそ、完膚なきまでの絶対的力の差によって。

 

見下したままの此方の前で、フリードがゆっくりと体を起こす。

折れた肋骨で内臓を痛めたのだろう、よろよろと立ち上がりながら、ペッと床へ血を吐き出す。

 

 

「っけんな。ふざけんなよッッ!!クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!悪魔の分際でチョーシ乗ってんじゃねぇぞっっ!!このクソ餓鬼ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

 

狂ったように罵声を上げだしたフリードへ、此方は特に意を帰す訳でもなく、ゆっくりとした足取りで近寄る。

フリードも懐から出した柄だけの剣から、光の刀身を作り出し応戦しようと構えたが、それよりも此方の方が早かった。

横薙ぎの一撃を紙一重で交わすと、彼の持つ銀拳銃のグリップがフリードの頬へ食い込む。

そのまま、力任せに振り払うとフリードの身体は簡単に宙を舞い、そのまま壁へと再度激突した。

 

ドンッと響く音と、壁へと減り込む体。

それを静かに見下ろす此方は、一誠の目からも正気には見えない。

カチリ、と彼の持つ銀拳銃が鳴る。

 

ゆっくりと銃口が、フリードの頭部へと狙いを定めると、ハンマーに指が掛かる。

 

マズイ……

 

本能的に、一誠は何かを感じた。

このままではいけない気がした。

 

 

「やめ―――」

 

「やめてください!」

 

 

突然の来訪者。

反射的に此方の持つ銀拳銃の銃口が、声の主へと向けられる。

ヒッと短い悲鳴が上がる。

そのまま、引き金に指を掛けた瞬間―――

 

 

「止めろ!!やめてくれ!!」

 

 

銃口と来訪者の間へ、一誠が身を躍らせる。

その瞬間、すぐさま此方は銃口を逸らす。

緊迫していた空気が、一瞬にして途切れる。

 

 

「……イッセー」

 

 

僅かに責める様な響きを含む声に、一誠は何も答えない。

だが、必死に来訪者であるシスターの少女を庇っていた。

その頑なな態度に小さく舌打ちすると、此方は持っていた銀拳銃を空へ投げる。

拳銃はクルクルと宙を舞うと、空気に溶け込む様に霧散して無くなった。

 

 

「……どういうつもりだ」

 

「頼む!!この子だけは、見逃してくれ!」

 

 

必死さすら漂う声に、此方は訳が分からないまま、仕方なく頷いてみせる。

どうせ、彼女から敵意は感じない。

 

だが、彼とシスターとの接点は此方の記憶にはない。

思考を巡らせていると、ふと前にリアスに叱られている一誠の姿を見た事を思い出す。

確か、あの時は教会へ近付くな、といった説教だったのではなかっただろうか。

つまり、あの時一誠が怒られた原因が、目の前にいる少女なのだろう。

と、精神的に余裕が出来たらしい少女が辺りを見渡し………

 

 

「!い、いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

壁へと架刑にされた遺体に、悲鳴を上げた。

途端、此方は怪訝そうに表情を歪める。

彼女の出で立ちから見て、この男の仲間だと思って間違いはないだろう。

だというのに、死体を見て彼女は信じられないとでも言いたげに悲鳴を上げた。

彼女は、彼らの中でもイレギュラーなのだろうか……

 

 

 

「可愛い悲鳴をありがとうございます!そっか、アーシアちゃんはこの手の死体は初めてですかねぇ」

 

 

フリードの声に、思考に入り浸っていた此方の意識が呼び戻される。

それと同時に、すぐさま一歩身を引く。

ヒュンッと何かが飛んでいく気配と共に走る、頬の激痛。

僅かに熱いモノが頬を伝っていくことから、どうやら掠って、出血している様だ。

 

 

「よーく、とくとご覧なさいな。悪魔くんに魅入られたダメ人間さんは、そうやって死んでもらうのですよぉ」

 

「……そ、そんな……」

 

 

フリードの言葉にショックを受けたのだろう。

彼女は口元を手で覆うと、一歩、また一歩とその場から後ずさる。

どうやら、こういった状況に遭遇した事は一切ない様だ。

 

 

「アーシア」

 

 

一誠が気遣わしげに少女を支える。

どうやら、彼女はアーシアと言う様だ。

 

 

「……フリード神父………この人は……」

 

 

視線だけが、一誠へと向けられる。

すると、最初に会った時と同じくニンマリ顔で、フリードは愉しげに言う。

 

 

「人?違う違う。こいつはクソの悪魔くんだよ。ハハハ、何を勘違いしているのかなかな」

 

「―――――っ。イッセーさんが……悪魔……?」

 

 

息を呑み、一誠を見詰める瞳には驚愕が浮かぶ。

一誠は居た堪れないのか、視線を下へと逸らしていた。

その反応に、フリードは何かを感じたのだろう。

ニマリと邪悪な笑みが映る。

 

 

「なになに?キミら知り合い?わーお。これは驚き大革命。悪魔とシスターの許されざる恋とかそういうの?マジ?マジ?」

 

 

面白おかしそうに、フリードが一誠とアーシアを交互に見ている。

その視線に耐え切れないのだろう、一誠の表情に苦渋の色が浮かぶ。

 

(……イッセー)

 

詳しい経緯は知らないが、彼が教会に立ち寄ったのは、迷子となったシスターを教会へ送り届ける為だった筈だ。

多分、それまでの間に話をして、もう一度会う約束をしていたのかもしれない。

彼は悪魔になってから、まだまだ日が浅いのだ。

 

人間だった時の様に、ただ親切に道を教え、普通に他愛ない話をして、親しくなった。

ただ、それが互いに悪魔とシスターだっただけなのだ。

それを愉しむ様なこの男の言動が気に喰わない。

 

此方の中で、再度怒りがフツフツと湧き上がる。

 

 

「アハハ!悪魔と人間は相容れません!特に教会関係者と悪魔ってのは天敵さ!それに、俺らは神すら見放された異端の集まりですぜ?俺もアーシアたんも堕天使様からの加護がないと生きていけない半端ものですぞぉ?」

 

 

堕天使……

 

その言葉で、彼らの状況がすぐに予測出来た。

つまり、彼女はシスターではあるが、教会から追放された身の上なのだろう。

そして、彼らを守護しているのはこの街へ来た堕天使。

そいつが、一誠を殺した張本人だと思って、まず間違いないだろう。

 

 

「まあまあ、それはいいとして俺的に、このクズ男さんを斬らないと、我慢できないんだよねぇ。特にテメェ。さっきからバカスカ殴ってくれちゃってよぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

 

銃と剣を握り、フリードが憎々しげに此方を睨む。

此方としても、こいつをこのまま返すつもりなどない。

すぐさま、銃を出そうと構えると、二人の間に金色の髪が揺れた。

此方が目を見開く中、自分と神父との間に立ったのはアーシアだった。

 

これは予想していなかったのだろう。

フリードの表情が険しくなる。

 

 

「……おいおい。マジですかー。アーシアたん、キミ、自分が何をしているのか分かっているのでしょうかぁ?」

 

「……はい。フリード神父、お願いです。この方々を許して下さい。見逃して下さい」

 

 

その一言に、一誠と此方が息を呑む。

彼女は敵である筈の自分達を庇おうとしているのだ。

 

 

「もう嫌です……。悪魔に魅入られたといって、人間を裁いたり、悪魔を殺したりなんて、そんなの間違ってます!」

 

「はぁぁぁぁぁぁああああああああああああっ!!!?バカこいてんじゃねぇよ、クソアマが!悪魔はクソだって、教会で習っただろうがぁ!お前、マジで頭にウジでも湧いてんじゃねぇのか!!?」

 

 

表情を憤怒で歪ませたフリードが、アーシアへと罵倒する。

それでも、必死にアーシアはその場から退こうとはしない。

 

 

「悪魔にだって、いい人はいます!」

 

「いねぇよ、バァァァァァァカ!」

 

「わ、私もこの前までそう思ってました……。でも、イッセーさんはいい人です。悪魔だって分かってもそれは変わりません!人を殺すなんて許されません!こんなの!こんなの主が許す訳がありません!」

 

 

自分の意見を強く発言する彼女の身体は恐怖からか、震えていた。

それでも、庇う様に伸ばされた両腕を下げる事なく、真っ直ぐな表情で神父から自分達を守ろうとしている。

 

一誠なら分かる。

 

だが、彼女はきっと自分が一誠の友人だから庇ってくれているのだろう。

先程、不注意だったとはいえ、銃口を向けた相手でも、だ。

 

静まる空気の中、フリードはゆっくりとアーシアへ近付く。

 

 

「っ」

 

 

間髪入れずに、此方の腕がアーシアを抱き、後ろへと下げさせる。

彼女の顔スレスレを、フリードの拳銃を持った手が通り過ぎた。

 

こいつは、彼女へと手を上げたのだ。

それも、唯子供を叱る程度の力加減ではなく、本気で……

チッと神父の口から舌打ちが漏れる。

 

 

「フリー、ド神父……」

 

「……堕天使の姉さんからは、キミを殺さない様に念を押されているけどねぇ。ちょっとムカつきマックスざんすよ。殺さなきゃいいみたいなんで、ちょっとレ○プ紛いなことまでしていいですかねぇ?それぐらいしないと、俺の傷心は癒えそうにないんでやんすよ」

 

 

ブツブツと紡がれる言葉。

此方は恐怖で震えるアーシアを、一誠へと預けた。

 

 

「イッセー、絶対前に出るな。それと、その子、アーシアだっけ?絶対に守り抜け。そんでもって、後で紹介しろ」

 

「あぁ!絶対に紹介するし、守ってみせるぜ!」

 

 

 

震えるアーシアを大事そうに抱き留め、一誠がニィッと笑みで答える。

それが強がりから出た行動だったとしても、彼は死んでも守り抜こうと努力するだろう。

 

ふぅ……と息を吐き、此方がフリードへ姿勢を低くして構える。

 

 

「おいおい、さっきの銃はどうしたんだよ、クソ悪魔ちゃん?」

 

「テメェ程度の格下相手に、銃を出すだけ無駄だ。遊んでやるから、さっさと来いよ」

 

 

苛立ちを含むフリードへ笑みを浮かべると、チョイチョイと指で挑発する。

それだけでも、相手の神経には十分作用したらしい。

一瞬にして、表情を憤怒へと変わった。

 

 

「……殺すぞ、クソ悪魔」

 

 

騒がしい雰囲気が一転、殺意と敵意だけが蜷局を巻いて、空気を淀ませる。

 

仕掛けてきたのは、フリードが先だった。

音もなく銃を発射し、此方へと距離を詰める。

 

 

「―――フッ」

 

 

短い気合い。

此方の手刀が弾丸を弾き、近付いてきたフリードの顔面へ拳を叩き込む。

ひゅんっ、と嫌な音を立てて、彼は反射的に体を捻る事で回避した。

が、それを想定していた様に此方の膝が、今度こそフリードの顔を捕え、思いっきり上空へと打ち上げる。

 

 

「――――――ハッ!!」

 

 

がっ!!

 

 

「ぐふっ……!!?」

 

 

上空へと上がったフリードの背へ、(ショウ)を打ち込む。

そのままの勢いで、壁へと吹き飛ばされ、すぐに動かなくなった。

 

一瞬の出来事に茫然とする中、クスッと此方が笑う。

 

 

「手加減はしたが……暫くは寝てろ。この変質者」

 

 

ベェー、と子供の様に舌を出す。

その時、床が蒼白く光り出す。

光はゆっくりと形作り、やがて一つの紋章を象る。

二人にとって、馴染み深いグレモリー眷属を示す印。

 

カッ!

 

床に描かれた魔方陣が強く発光すると、そこに浮かぶ上がる人影。

その人数からして、フルメンバーだろう。

 

 

「兵藤くん、此方くん、無事かい……って、もう終わってるみたいだね」

 

 

淡く苦笑した木場が、床で伸びている神父を眺める。

 

 

「……此方先輩、無事ですか?」

 

「見ての通り、返り討ちにしてやったぜ」

 

 

てててっ、と走り寄る小猫へ、此方は得意げにVサインを出して応じる。

その様子に、リアスが深々と溜息を漏らすと、額に手をやり、やれやれと首を横に振る。

 

 

「本当に……やんちゃが過ぎるんじゃないかしら?」

 

「元気な印っすよ。それに、イッセーには怪我一つ負わせてませんよ」

 

「そう。ありがとう、此方。私の可愛い下僕を守ってくれて」

 

「それが、仕事ですんで」

 

 

少しだけ呆れの混じる声で、此方へと礼を述べるが、彼は軽く肩を竦める程度で応対する。

 

普段通りの彼だ。

昨日見せた異様な空気は全くない、普段通りのからかい混じりに応対してくる此方の姿に、リアスはほっと胸を撫で下ろし、一誠へと向き直ると、表情を曇らせた。

それは、一誠が守る様に抱きすくめているアーシアだろう。

 

 

「その子……シスターでしょう?」

 

「こ、この子は……」

 

「シスター・アーシア。イッセーが襲われそうになったのを、身を挺して守ってくれた子ですよ」

 

 

少々緊張を孕んだリアスの声に、一誠がどう説明したものか、と困惑した声を上げた時、此方が間髪入れずにフォローする。

とはいえ、彼女は悪魔の仇敵である教会側の人間。

良い顔は出来ないのだろう。

それでも、彼女の行いを無下には出来ないのか、少しだけ苦笑が混じった笑みを浮かべた。

 

 

「そうなの。ありがとう、シスター・アーシア。私の可愛い下僕を助けてくれて」

 

「い、いえ……!」

 

 

まさか、悪魔から感謝されるとは思わなかったのだろう。

目を丸くし、頬を真っ赤にしたまま、慌てた様に首を振る。

その様子に安心したのか、一誠の表情も緩む。

と、緊張を含む声で、朱乃が部長!とリアスを呼ぶ。

 

 

「この家に堕天使らしき者達が複数近付いていますわ。このままでは、鉢合わせになってしまいます」

 

「一難去って、また一難ってか」

 

 

クソっと此方が毒づく。

だが、このまま悠長にいては、不利になるのはこちらだろう。

 

 

「朱乃、本拠地へ帰還するわ。ジャンプの用意を」

 

「はい」

 

 

リアスの指示により、朱乃が呪文を唱え出す。

 

 

「部長!この子も一緒に!」

 

 

一誠がアーシアの肩を抱き、懇願する。

だが、リアスは首を横へ振った。

 

 

「無理よ。魔方陣を移動できるのは悪魔だけ。しかも、この魔方陣は私の眷属しかジャンプできないわ」

 

「そ、そんな……」

 

 

悲嘆にくれた表情で、一誠が茫然とする。

だが、アーシアの方は予測がついていたのだろう。

彼から離れると、ニッコリと微笑んだ。

 

 

「私は大丈夫です。だから、イッセーさん。また、また会いましょう」

 

「アーシア…」

 

 

言葉を探す様に、一誠の視線が彷徨う。

そうこうしている間に、朱乃の詠唱が終わり、床の魔方陣が再び蒼く光り出す。

 

(……馬鹿げてる)

 

ぼんやりと頭に浮かんだ考え。

それを実行する事は容易いが、成功する確率は正直2割が限界だろう。

だが、迷っている暇はない。

 

此方は頭を乱暴にかくと、ボンッと一誠をリアス達の方へと突き飛ばす。

 

 

「っ!!?此方!!」

 

「リアス嬢、このバカ連れて、さっさと部室へ!」

 

「ちょっ!!?此方!!」

 

 

よろけた一誠を受け止め、リアスが非難がましい声を上げる。

多分、一緒に帰るとでも言いたいのだろう。

だが、此方は首を横へ振った。

 

 

「その魔方陣じゃ、他眷属の俺は移動できない。俺は後から向かうから、先に戻ってろ!」

 

「何言ってるの!!?貴方も帰るのよ!!」

 

「部長!もう無理ですわ」

 

 

リアスが怒った様に声を荒げる中、彼らの姿は光となって、その場から消失する。

丁度いいタイミングで、移転が発動した様だ。

残されたのは、アーシアと此方のみ。

 

 

「……行ってしまいました」

 

 

ポツリ、とアーシアが呟く。

その言葉に、はぁ、と此方が溜息を漏らした。

 

 

「アーシア、だっけ?」

 

「はい。アーシア・アルジェントと言います」

 

「ん。俺は詩神此方。まぁ、知っての通り悪魔で、イッセーとは学校の友人………と、そんな会話してる場合じゃねぇよな」

 

 

淡く苦笑すると、此方は笑みを消して彼女と向き合う。

 

 

「お前、教会から追放されたんだよな?」

 

 

ビクッとアーシアの肩が跳ねる。

悲しげに歪む表情は、多分涙を我慢しているからなのだろう。

答えない彼女へ、此方は唯静かに手を差し出す。

 

 

「俺には、グレモリー眷属を守る義務がある。護衛として、この領地で堕天使が好き勝手やっているのは、気に喰わない。お前ら、はぐれ悪魔祓いについても、だ」

 

「………」

 

「だから……アーシア・アルジェント。俺はお前を重要参考人物として、これから連行する。場所は、リアス・グレモリーの根城である駒王学園旧校舎………今、イッセーがいる場所だ」

 

「っ!!?」

 

 

バッとアーシアが顔を上げた。

その表情には、どこか話が読めないとでも言いたげに、困惑している。

 

 

 

彼の言っている意味が分からない。

だが、此方の表情は真剣そのもので、とてもじゃないが冗談を言っている様には見えない。

 

 

「アーシア、お前が俺を………イッセーを信用したいのであれば、俺に運命を委ねてみないか?」

 

「イッセーさんを……」

 

 

イッセー……

その名前が出ると、彼女は戸惑いながらも此方の手に自分の手を重ねる。

その様子に、最終確認する様にいいのか?と呟くと、彼女は決心した様にしっかりと頷く。

 

 

「此方さんは、イッセーさんのお友達なんですよね?」

 

「ああ」

 

「なら、私は信じます。イッセーさんのお友達は、私を助けてくれるっと」

 

 

だから、信じます。

そう微笑む彼女に、此方は淡く苦笑する。

この子は根があまりにも素直すぎる。

彼女はその優しさ故に、きっと苦労もしてきたのだろう。

そんな気がした。

 

 

「よし。なら、アーシア。取り敢えず、その十字架を外して、手で握ってくれ。絶対に、放したらダメだからな?」

 

 

此方の指示に従い、アーシアは首にかけてあった十字架を慌てて外すと、ギュッと両手で強く握り込む。

それを確認すると、此方は彼女の腰を掴み、ヒョイッと肩へ担ぎ上げる。

ひゃっ、と可愛らしい悲鳴が後ろから聞こえた。

 

 

「悪いけど、走って戻る事になるから。首に腕を回して。……でも、十字架は近づけない様に」

 

 

悪魔にとって、十字架や聖水程危険なモノはない。

それを理解しているのか、アーシアは此方が言う通り、慎重に此方の首へと腕を回し、十字架を持つ手を遠ざける。

 

 

「行くぞ」

 

 

短く告げ、此方はすぐさま家を後にする。

外に出ると、微かにしか感じなかった気配が正確に掴めるようになる。

どうやら、あの家には結界が張ってあったようだ。

相手との距離を計算し、常闇に染まる街を疾走する。

出来るだけ、道順を複雑にしているが、相手は空の上。

地上を走る程度では、撒ける可能性は薄い。

それでも、速さで撒くしかないだろう。

 

 

「あ、あの!此方さん!!」

 

「話すな、舌噛む」

 

 

何か告げようとしたアーシアへ、そう忠告した瞬間、ガキッと壊滅的な音が耳元に届く。

どうやら、忠告した瞬間に舌を咬んだらしい。

言わんこっちゃない、と此方は内心で溜息を漏らす。

 

とはいえ、彼女が懸念しているのは、逃げ切れるかどうか、だろう。

気配から推測して、相手は三人。

こちらは、アーシアを庇いながらの戦闘となるのだから、かなりの劣勢を強いられるだろう。

 

 

「み、見えまひた」

 

「ちっ」

 

 

アーシアの声で、背後へと視線を向ければ、確かに僅かではあるが黒い翼が視認できる。

距離は縮まる一方。

 

(……やるしか)

 

アーシアを左手で支え、右手に銃を出そうと神経を集中させる。

と………

 

 

ケーーーーン

 

 

此方の耳に届いたのは、鋭い狐の鳴声。

驚いて足を止め、振り返った先で真っ白な狐が、此方を追ってきた堕天使目掛けて、青白い火の粉を浴びせているのが見えた。

 

見覚えのあるそれは、クローディルの使い魔である天狐だ。

 

 

「……悪い!!頼んだ!!」

 

 

声を張り上げ、狐へと礼を述べると、彼女は早く行けと言わんばかりに、尻尾を大きく振る。

その勇ましい姿に、淡く苦笑すると此方はアーシアを抱え直し、闇の中を疾走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

「ちわ~ッス!!シスターの速達便でぇっす!!!」

 

「っ!!?アーシア!?」

 

「イッセーさん!!」

 

 

二人が部室へついた時、既に転移を済ませていたグレモリー眷属全員が待機していた。

とはいえ、彼がアーシアを連れてきた事に呆れているのだろう。

溜息やら、苦笑が辺りを包む。

 

そんな中、一誠とアーシアは再会出来た事がよほど嬉しかったのか、互いに抱きつきあう。

 

 

「無事だったんだな!!アーシア!!」

 

「はい!此方さんが、助けてくれました!」

 

「そっか……此方、サンキューな」

 

「………勘違いしてるとこ、悪いんだが。俺がアーシアを連れてきたのは、捕虜の為だ。別に慈善事業で連れてきた訳じゃない」

 

 

喜びが収まらないのか、一誠が此方の手を掴み、ブンブンと振る中、此方は手を強引に振りほどくと、ベシッと彼の頭を叩く。

 

はぁ、と吐き出す息が妙に熱っぽく感じる。

少しだけ視界がぼやける気がしていると、小猫が心配そうに此方の傍へとやってくる。

 

 

「此方先輩、顔が赤いです」

 

「ん?……あ、やば」

 

 

小猫に言われ、軽く首筋に触れてみると、そこは普段よりも高い熱を持っている。

どうやら、完全にぶり返してしまったらしい。

そう自覚してしまえば、症状の悪化は早いもので、一瞬にして足元が覚束なくなり、吐き気すら感じてしまう。

身体のバランスを崩す此方を、傍らで小猫が受け止める。

 

 

「先輩!?」

 

「ごめん……熱ぶり返したっぽい」

 

 

あはは、と笑うが、周りの視線は厳しいまま。

どうにも、これは怒られるパターンの空気らしい。

と、背後から感じ慣れた気配が増える。

それと同時に、嫌と言う程感じられる怒りのオーラも……

 

 

「君は……」

 

「げっ!!調べモノで、いないんじゃなかったのかよ」

 

「……この大馬鹿者がぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ぎゃっ」

 

 

クローディルの怒声と共に、此方の頭へ拳が叩き込まれる。

脳が揺れているかの様な感覚に、うげっと吐き気が込み上げてきた。

此方は殴られた頭部を擦り、涙目でクローディルを睨む。

 

 

「本気で病人を殴るな!」

 

「病人なら、病人らしく寝てろ!!この猪突猛進狼小僧!!」

 

「うるせぇよ!男の娘!!」

 

「搭城!!その馬鹿をソファーに投げ飛ばせ!!朱乃!タオルと水!!」

 

「は、はい!!ただ今!!」

 

 

いきなり指示された朱乃は、ピシッと背を伸ばすとすぐさま彼に言われたモノを取りに、奥へと消えた。

小猫もビクッと体が跳ねたが、投げ飛ばす事はせずに、此方の躰をソファーへと横たわらせた。

 

 

「病み上がりな状態で、十字架持ちのシスターを抱えるから、こんな事になるんだ」

 

「あ、やっぱり、あの天狐を向かわせてくれたのは、クゥだったか」

 

「丁度、情報が入ってね。それで、君が無茶しそうな予測が立ったから、彼女に君の様子を見てくる様に頼んだんだ。そしたら、案の定だったよ」

 

 

朱乃から受け取ったタオルを水で冷やし、此方へと投げつける。

べしゃっと嫌な音を立てて、彼の額に当たった。

 

 

「俺、病人」

 

「そう思うなら、少しは自分の体を労われ。この大馬鹿者が」

 

 

口を尖らせ、タオルを少し上げる彼に、クローディルは特に取り合う事無く、平然と返す。

口では勝てない事を知っているのか、それとも思った以上に体がだるいのか、此方はそれ以上は何も言わずに、そのままタオルを落とし無言となった。

 

 

 

「さて、と」

 

 

大人しくなった此方の様子を確認し、アーシアへと向き直る。

 

 

「君は?」

 

「あ、アーシア・アルジェントです」

 

「ふぅん。じゃあ、アルジェント。君は自分の立場を理解出来ているかい?」

 

「立場、ですか?」

 

「……キツイ言い方をするけど、今の君に求められている事は、情報の開示だ。それ以上に君へ求める事なんてないし、それ以外に君の利用法がない」

 

「お、おい!ローゼ!!」

 

 

非難の声を上げる一誠。

だが、その声はクローディルの鋭い視線によって掻き消される。

 

 

「兵藤、君はお人好し過ぎる。相手を信用する事は、確かに美徳だと僕は思うよ。だが……そのせいで、君は眷属を危険にさらしていると自覚した事はあるかい?」

 

「え……?」

 

「彼女は君にとって、友人なのかもしれない。だが、彼女が堕天使側の住人であるなら、僕らの情報は相手に開示されていると考えてもいい。下手をすれば……君は眷属全員を殺すきっかけを作ってしまった事になるんだ」

 

 

君は理解いているのかい?

そう言うクローディルの言葉は、冷たく突き放す様な響きを帯びる。

 

アーシアはそんな子じゃない……

 

そう主張しようとして、声が詰まる。

アーシアは違うと断言できる。

だが、その彼女を利用している方は?

彼女は純粋だ。

純粋で、優しくて……そんな彼女が、信用している人物に自分達の事を聞かれれば、話してしまうかもしれない。

敵対している、と彼女が知らなければ……

 

凍り付く空気の中、わざとらしい咳払いが響く。

視線を向ければ、そこには未だ横になったままの此方が笑っていた。

 

 

「クゥ、意地悪すんなって」

 

「君も、少しは緊張感を持て」

 

「俺には必要ないよ。だって、お前が俺の代わりに判断してくれるだろ?俺は、その子が敵だとは思えない。クゥ、お前の意見は?」

 

 

優しい笑みで問えば、彼は降参だ、と溜息を漏らした。

 

 

「……僕も、アルジェントが危険人物だとは思えないよ。何より、彼女の瞳は綺麗過ぎる」

 

「そっか、よかったよ。俺の勘が迷惑かけなくて」

 

 

子供の様に無邪気に笑う此方に、呆れすら感じる。

彼には危機感というモノが、本当に欠落しているんじゃないだろうか、と疑いたくなる。

 

 

「……意地の悪い事を言って、悪かったね兵藤。でも、君の浅はかな考えが、眷属全体に響く事は絶対に忘れないでくれ」

 

「……ごめん」

 

「いや。僕もキツイ言い方をしたね。ごめんなさい。さて、アルジェント」

 

「は、はい!」

 

「僕らは君の事を何も知らない。どうして、堕天使と行動を共にしていたのか、とかね。だから、君について話してくれないか?」

 

「話す、ですか?」

 

 

不思議そうに首を傾げたアーシアへ、うん、とクローディルは軽い調子で頷く。

 

 

「此方が言わなかったかい?『紹介してくれ』ってね」

 

「そ、それって……」

 

「詩神眷属掟、その一!見た目、種族で相手に偏見を持ってはならない!きちんと会話し、相手を知った上で、判断を下すべし!!」

 

「………とまぁ、僕らの主から、口酸っぱく言われていてね。僕らは、君がどういった人間なのかを知った上で、今後の事を決めたい」

 

 

声を張る様に宣言した此方の言葉を継ぐ形で、クローディルがまとめる。

護衛や捜査を縄張りとする眷属であるが故に、利用され、犯罪へと加担させられたり、民を苦しめる片棒を担がされる危険すらある。

それ故に、そういった事に巻き込まれない様、主である彼方より仕事に出る際は、これでもか!と言うほどに言われてきた掟。

勿論、判断が自分では難しいとなれば、一旦眷属へと持ち帰り、全員で議論する事もある。

 

 

「ま、気楽に自己紹介程度だって考えてくれて、構わねぇよ。な、イッセー」

 

「おう!」

 

 

戸惑った様に表情を歪ませるアーシアへ、此方が軽くフォローを入れ、一誠が元気づける様に手を握る。

それで、幾分かは落ち着いたのだろう。

 

彼女は淡く笑むと、ゆっくりとお伽噺をなぞる様に、話し出した。

 

 

それは、『聖女』として祭られた少女の末路。

欧州のとある地方で生まれた少女は、生まれて直ぐに両親から捨てられ、教会の孤児院でシスターとして育てられる。

子供の頃から信仰深く育てられた彼女は、八つの時に不思議な力の存在に気が付く。

それは、誰かの傷を癒す事の出来る、特別な力。

 

それを偶然、カトリック教会の関係者に見られ、彼女の人生は一気に加速する。

少女は、カトリック教会へと連れていかれ、治癒の力を宿した『聖女』として、崇められる様になったのだ。

それからは、訪れる信者に加護と称して、肩だの悪い所を治癒していく生活。

少女の意思等、元からないかの様に……

 

だが、少女は決してそれを苦だと思った事はなかった。

教会の関係者は良くしてくれるし、怪我を治す事自体は嫌いではない。

自分の力が沢山の命を救える……

神が授けてくれた大事な力に、感謝の念を忘れた事等なかった。

 

 

だけど……少女は孤独だった。

誰一人として、少女の友人がいなかったのだ。

優しくしてくれるし、大事にしてくれる。

だが、その裏では自分が異質なモノである事を知っていた。

そして、人間としてではなく、治癒できる生物としての認識だという事も……

 

 

ある日、彼女に転機が訪れる。

少女は、偶々自分の近くに現れた悪魔を治癒してしまったのだ。

怪我をし、息絶え絶えの悪魔を、心優しい少女は見捨てる事が出来なかったのだ。

 

それが、少女の人生を反転させた。

その光景を偶然見ていた教会関係者の一人が、それを内部に報告したのだ。

 

 

『悪魔を治癒できる力だろ!?』

 

『そんな馬鹿な事がある筈がない!』

 

『治癒の力は神の加護を受けた者にしか効果を及ぼさない筈だ!』

 

 

治癒自体は、それ程珍しい力ではない。

だが、神の断りから外れた悪魔等の種族を治癒できる力は規格外だ。

それ故に、彼女は『魔女』として、異端視される様になる。

 

 

『悪魔を癒す魔女め!』

 

 

聖女と崇められた少女は、悪魔を治癒できるというだけで、今度は『魔女』として迫害され、カトリックから追放された。

行き場をなくし、彷徨った少女を拾ったのは極東にある『はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)』の組織。

 

 

「……きっと、私の祈りが足りなかったんです。ほら、私、抜けているところがありますから」

 

 

そう笑うアーシアの瞳には、涙が滲んでいた。

想像を絶する彼女の過去に、部室は静まり返る。

そんな中、成程、とクローディルが小さく呟いた。

 

 

「教会が、どれだけ神器について無知なのかが、よく分かったよ。それとも、彼らは壊れた神に縋る生き方しかないのかな?」

 

「……?」

 

「…いや、こっちの話だよ」

 

 

意味深な呟きに、祐斗が首を傾げたが、クローディルは軽く流す。

 

 

「これも主の試練なんです。私が全然ダメなシスターなので、こうやって修行を与えてくれているんです。今は我慢のときなのです」

 

 

それは、まるで自分に言い聞かせるかの様な言葉。

自虐とも取れる彼女の言葉に、違う、と此方が呟く。

 

 

 

「神は命を育む事は出来ても、守る事なんて出来ない。まして、人間を救えるのは……人間だけだ」

 

「でも、でも……」

 

「アーシア」

 

 

力強い声が、彼女の名を呼ぶ。

一誠は彼女の手を握り直し、真正面から彼女を見詰める。

 

 

「アーシア、俺が友達になってやる。いや、俺達もう友達だ。あ、悪魔だけど、大丈夫。アーシアの命なんて取らないし、代価もいらない!気軽に遊びたい時に、俺を呼べばいい!あ、ケータイの番号も教えてやるからさ」

 

 

捲し立てる様にいう一誠は、ハッとして顔を上げる。

勢いで言ってしまったが、今は部室。

目の前には眷属仲間と主であるリアスの姿があるのだ。

自分の行動が、彼らに迷惑をかけてしまう……

そう、クローディルから注意を受けたばかりだと言うのに、勝手に代価はいらないだとか、シスターに友達だとか言ってしまった。

それでも……後悔はしたくない。

 

 

「……部長、俺」

 

「いいのよ、イッセー。言いたい事は分かってるわ」

 

 

優しい声と笑みで答えるリアスには、慈愛すら感じられた。

彼女の言葉で、部の空気がゆっくりと柔らかなモノへと変わっていった。

 

 

「ごきげんよう、アーシア。私はリアス・グレモリー。イッセーの主で、悪魔よ」

 

「リアス、さん……」

 

「あらあら。姫島朱乃と申します。よろしくお願いしますね、アーシアちゃん」

 

「……塔城小猫です。」

 

「僕は木場祐斗。兵藤くんとは、同学年なんだ。よろしくね、アーシアさん」

 

「朱乃、さん……小猫、さん……木場、さん……」

 

「僕はクローディル。クローディル・ローゼリア。長いからローゼと呼んでくれて構わない」

 

「俺も必要か?」

 

「ローゼ、さん……いえ、此方さんはちゃんと覚えてますから、大丈夫です」

 

「ん。そっか……じゃあ、これで友達だな」

 

「え?」

 

「ここにいる全員が、アーシアに自己紹介した。つまり、アーシアを友人として……仲間として受け入れるって事だと俺は思うぞ?」

 

 

ニシシッと笑う此方に、全員がつられる様に微笑む。

異様なモノを見る目ではない、優しい瞳……

人の温かさに触れられた様な気がして、アーシアの頬を涙が伝う。

だが、それは冷たく辛いモノではなく、温かく優しいモノ。

 

 

「わ、私……」

 

「俺とアーシアは友達だ!それに、ここにいる皆がアーシアの友人になるんだ!訳の分からない事は抜き!そういうのはなしだ!」

 

 

「イッセーさん……」

 

「アーシア、これからも宜しくな」

 

 

それが、最後だったのだろう。

彼女は、一誠にしがみつく様に抱きつくと、大声で泣きだした。

今までの辛さも、今日の嬉しさも全部まぜこぜにして、彼女は唯泣いた。

叫ぶような嗚咽を誰一人止めさせないまま、アーシアが泣き止むまで、誰も口を開く事はなく…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

その後、泣き疲れてしまったアーシアをソファーへと運び、人知れずリアスが溜息を零す。

 

 

「それで……これから、どうしましょうか」

 

 

多分、その言葉に含まれた意味はアーシアを、だろう。

彼女は悪魔であれ、鬼ではない。

彼女の過去を知って、それでも出ていけ、だなんて言える程、冷血漢にはなれなかった。

だが、根本的な問題はまだ目の前にあるのだ。

 

それは、彼女が堕天使側の住人だという問題が……

 

 

「これから、を判断するのは『王』たるリアス嬢ですよ。ですが、判断材料くらいなら、僕から提示できると思います」

 

「そういや、クゥ。調べ物ってなんだったんだ?」

 

 

ふと、此方は日中の会話を思い出す。

彼が調べ物と称していなくなる事は、よくある事だった為、特には追及しなかったが、その割には早い帰還な気がする。

普段、彼が調べ物だと言って家を出たなら、翌日の早朝まで帰ってこない方が記憶にある。

だからこそ、こんなに早く帰ってくるとは思っていなかったのだ。

 

 

首を傾げる此方へ、クローディルはクスッと少しだけ愉快そうに笑う。

 

 

「ちょっと、この町を歩いている『はぐれ悪魔祓い』を捕獲して、話を聞いていたんだ」

 

「はぐれ悪魔祓い、ですって!?」

 

 

彼の言葉に、リアスが目を丸くする。

一誠と此方が堕天使と接触した時から、この町で複数の堕天使が何かの計画を立てている事は察していた。

だが、それは堕天使全体の計画なのだろう、と今まで黙認してきたのだ。

もし、自分達に仇なすのであれば、それは返り討ちにするつもりではあったが、それでもリアス側から攻撃を仕掛けようとは思わなかった。

流石に、堕天使全体を相手取ってまで、戦う必要はないし、寧ろ愚の骨頂だ。

 

全員の表情が厳しくなっていく。

 

 

「率直に言えば、今回の計画は堕天使全体が関与した計画ではなく、中級程度の堕天使(バカ)が上に黙って決行した、どうしようもない計画だそうだよ」

 

「あ、やっぱそうなんだ」

 

「此方!?貴方、分かっていたの?」

 

「ん……だって、クゥから聞いてた印象と違ったもんで。クゥ、堕天使のお偉いさんってのは、戦争反対なんだろ?」

 

「まぁ、大雑把に言えばね。でも、中には未だに戦争を望む過激派がいるから、僕も少し慎重に動いていたんだけど……その割には、あまりにもチマチマし過ぎて、正直何がしたいのか全く理解できなかったけど、中級程度の計画なら意味不明なのも、納得出来るよ」

 

 

軽く肩を竦めるクローディル。

どうやら、既に二人は今回の計画が堕天使全体によるモノではない、と大雑把に察しがついた様だ。

 

 

「なら……彼奴らの目的って、なんだよ。なんで、俺は殺されたんだ?」

 

「兵藤が殺されたのは、申し訳ないが『ついで』だったんだと思うよ。前にも言ったけど、堕天使は神器所有者を勧誘、若しくは殺害しているからね。それで、今回の計画はそこに寝ているアルジェントが、要みたいなんだ」

 

「この子が…?」

 

 

全員の視線が、スヤスヤと安らかな寝息を立てるアーシアへと集まる。

 

 

 

「彼女の神器、正式名称『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』は強い癒しの力。彼らはそれを自分のモノにして、アザゼル様やシェムハザ様のお気に入りになる事が目的なんだよ」

 

「……ちょっと待て、クゥ。神器を取り上げるって」

 

 

サッと此方の顔色が蒼くなる。

その意味が分からないらしい一誠が、心配そうに表情を歪めた。

 

 

「お、おい。どうしたんだよ」

 

「兵藤、君はまだ神器について、きちんと話した事はなかったね。神器は魂と強く癒着しているんだ。それ故に、堕天使は勧誘に失敗した場合、相手が脅威となるなら殺害する事になってる。でも、最近では神器所有者から、神器のみを摘出できる術式も出来ているらしいよ。……その所有者を殺す事で、ね」

 

「じゃ、じゃあ、アーシアは……」

 

「このままいけば………間違いなく殺される」

 

 

此方が吐き捨てる様に呟く。

ずっと自分を聖女だと崇めていた信者達に迫害され、苦しんできた彼女。

その最後は、堕天使に利用されての死とは、本当にどれだけ彼女の命運は呪われているのだろうか。

 

 

「……リアス嬢、そこで僕から提案があるのですが」

 

 

嫌な沈黙が続きそうな中、クローディルがリアスを見る。

 

 

「何かしら?ローゼリア君」

 

「リアス嬢には、眷属の空きがありましたよね?」

 

「空き?でも、部長には『女王』も『騎士』も、『戦車』も『兵士』も、それからあった事ないけど『僧侶』もいるんですよね?」

 

 

不思議そうに首を傾げる一誠。

そういえば、彼に話したのは駒の特性が主だった気がする。

あ~、と此方が唸る。

 

 

「あのな、イッセー。チェスってのはそれなりの数があるだろ?チェスの駒分だけ、『悪魔の駒』だって存在するんだ。主たる『王』、そしてその補佐役であり、チームの要と言ってもいい『女王』は各一、『騎士』、『戦車』、『僧侶』は各二、そして『兵士』は最も多い八つ」

 

「つまりね、イッセー。私は未使用の駒が後三つ残っているの。それで、ローゼリア君が言いたいのは、この子を眷属に加える気はないか?って事よね?」

 

「はい。アルジェントの回復能力は彼女の話にあった通り、堕天使や悪魔といった神の加護から程遠い者でも治癒できるでしょう。きっと、リアス嬢のお役に立つ筈です。それから……一応の保険にはなるかと」

 

「言い訳を作っておくって事だな?」

 

「どうせ、君も兵藤も彼女を見殺しにするつもりはないんだろ?それなら、もしもの時の保険があって、しかるべきだと僕は思うよ。アーシア・アルジェントは堕天使側の住人だが、彼女自身が堕天使のやり方についていけずに逃走。その後、この街を仕切るグレモリー家次期当主に拾われ、彼女は望んで悪魔へ転生した……と、こんな感じにね」

 

 

相手が独断でやっている計画である以上、別に自分達がその計画を阻止した所で、一悪魔と一堕天使の小競り合い程度で済むだろう。

だが、念には念を入れるべきだ。

 

それに、アーシアの神器を欲しているのが彼らだけと思う事は危険だ。

もし、彼らを追っ払ったとしても、『彼女は堕天使側の住人だから、返せ』と言われてしまえば、彼女の身柄を引き渡さねばならない。

その為の保険でもあるが……

 

リアスは少しだけ思案気に腕を組むと、小さく首を横に振った。

 

 

「私の独断では決められないわ。彼女自身にも聞いてみないと……」

 

「僕もそれがいいと思いますよ。彼女は今まで、神に忠誠を誓っていた忠実なるクリスチャンですからね。いきなり、悪魔になれ、というのも問題があるでしょう。取り敢えず、今日は僕が部室に泊まります。アルジェントの事もありますし……この馬鹿もいますので」

 

「クゥ、さっきから俺の事馬鹿としか言ってないんじゃないか?」

 

「馬鹿に馬鹿と言って、何が悪いのか……僕にはさっぱり分からないよ」

 

 

ムゥと口を尖らせる此方へ、クローディルはふん、と別方向を向く。

その仕草が気に喰わないのか、此方は拗ねた様に額のタオルを目元に落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっとこさ、後半戦。
……長かった(ホロリ)

予定では、次かその次位で一巻分は白サイド完結。
黒サイドは完全に後二話程度で一巻分は完結予定です。

続く二話……黒サイドをどうやって絡めようかと、現在頭を悩ませ中。


さて、ここからは私情なのですが……感想を頂いた方の大半から『ローウェンのファンです!』というご意見が寄せられております。
え?ロウちゃんのファンですか!?あの人のどこがいいんですか!?
笑顔の裏で、自分と主以外は見下してますよ←←
ま、まあ、イメージとしてダークヒーロー的な位置にいるローウェンですから、想像以上にファンがいるのやも……

個人的には、此方が凄く好きなのですが……
まあ、ローウェンとの交わりで対局な性格って設定した結果、甘ったれな弟キャラが確定しましたけど。
ローウェンが典型的なお兄さまキャラなら、此方は大人になろうと背伸びしてる弟キャラだろ!!とか意気込んでます、はい。



頑張れ、此方。水無瀬は応援してるからね!!←←

えっと……なので、クールビューティーなロウちゃんだけでなく、一生懸命背伸びしてる弟キャラな此方も宜しくお願いします。




それでは!
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