ハイスクールD×D~闇桜~   作:水無瀬久遠

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白三話 変わりゆく日常

 

その日、此方は強烈な違和感を感じていた。

それは、目の前にいるイッセーから感じるものだと気付いたのは、恒例行事となった彼らをボコッた時の感覚からだ。

 

松田、元浜共に一発で沈めたのに対して、イッセーは一発ではその場に沈まなかった。

相手は人間。

悪魔である自分が、彼らを本気で殴れば正直、命はないに等しいだろう。

その為、出来るだけ手加減をして殴っているのだが、それでもかなり痛い筈だった。

現に、休日に入る前はこれで三人仲良く沈めていたのだ。

しかし、今日は違った。

 

つまり……

 

 

「……おい、イッセー。休日中に何かあったのか?」

 

「そうだ!!聞いてくれよ、此方!!お前、夕麻ちゃんの事覚えてないか!?」

 

「夕麻?……そんな奴、学校にいたか?」

 

「金曜日の放課後に知り合った俺の彼女だよ!!メールに写真つけて、送っただろ!?」

 

「金曜日?」

 

 

 

金曜日といえば、夜の活動中に確かにメールの着信音が鳴った気がする。

が、しかし……

 

 

「悪い、電源切ってた」

 

「おいぃぃぃぃいいぃぃぃぃ!!!?」

 

 

 

此方は軽く笑いながら、制服のポケットから携帯を取り出す。

確かに、電源を落としたまま休日を過ごしていたらしい。

まぁ、携帯なんて連絡してくるのはクローディル程度なので、連絡ができなくても特に支障はないのだ。

 

電源を立ち上げ、メールフォルダーからイッセーのメールを開く。

確かに、そこには黒髪の女性と『彼女ができました☆名前は天野夕麻ちゃんです♪』という文字。

此方はそれを確認すると、すぐさまメールを削除した。

 

 

 

「おいぃぃ!!!?なんで、削除すんだよぉぉぉぉ!!!!?」

 

「あ、悪い。なんかイラッと来た」

 

 

 

血の涙を流しながら、胸倉を掴んでくるイッセーに、此方はしれっとした顔で答える。

が、流石にウザくなったので、そのまま顔面に拳を減り込ませて沈黙させた。

今度は、本来の力の2割で。

 

 

「兎に角、俺はお前が夕麻とかいう女といた事は認める。元浜、松田、お前らはこのバカからなぁんも聞かされてねぇのか?」

 

「あぁ」

 

「つうか、イッセーのイタイ妄想だろ?その夕麻ちゃんって脳内彼女」

 

 

二人ともマジだ。

此方には理解できて、彼らが忘れてしまった、と考える事が自然だろう。

なら、十中八九『こちら』側のテリトリーだ。

そこまで分かれば、大体の察しがつく。

イッセーのこの防御力上乗せの理由に………

 

 

(放課後、リアス嬢に確認だな)

 

 

それよりも、と机に卑猥な本やらDVDを広げだした元浜、松田をぶちのめしつつ、此方は内心で溜息を零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

「おい、イッセー」

 

「ん?お前もくるか、此方」

 

 

いかねぇよ、と苦笑する。

この後、やけっぱちになったイッセーの発案により、松田の家でAV鑑賞会をする事になった。

勿論(?)此方も誘われたがきっちり断った。

顔面に拳を減り込ませながら。

 

 

「あんま、夜出歩くなよ」

 

「?」

 

「いや……最近、夜になると行方不明者が出るって、噂があんだよ。現に、何人か帰ってこなくて、捜索願が出てるらしい。お前だけじゃなく、元浜もだ。中防じゃねぇが、夜8時には家に帰れよ?」

 

 

なんと説明すべきか悩んだが、これが一番説得力があるだろう。

取り敢えず、イッセーの件に自信が持てるまで、彼らを夜外に出さない方がいい。

そう判断したが、此方の中で小さな罪悪感があった。

 

話は本当だ。

昨日の晩、姉の『女王(クイーン)』を務めるミリアーナから、はぐれ悪魔が町に住みついたらしいという情報が入ってきているし、クローディルの調べではもう何人か行方不明として捜索願が出されているとの事だ。

だが、それとは違う別の嫌な予感があった。

 

顔を顰めた此方に、二人は本気で心配してくれていると感じたらしく、快く頷いて帰って行った。

 

 

「……此方?浮かない顔をしてる様だが、どうした?」

 

「クゥ。使い魔借りていいか?」

 

「?別に構わない。と、いうより、そろそろ君も持ったらどうだい?」

 

「気に入ったのがいれば、考えるよ」

 

 

気の乗らない返事に、クローディルは軽く肩を竦めると、その手に白銀の子狐を呼び出した。

悪い、と一言断り、その子狐に支持を出すと、それを是とした子狐はポォンと外へと飛び出していった。

 

 

「しっかし、いつ見ても綺麗な狐だよなぁ」

 

「まぁね。彼女は天狐(テンコ)だ。神の末席に位置する妖怪を使い魔にできるなんて、僕も信じられないよ」

 

 

天狐とは、古来より日本で天狗等に例えられる妖怪だ。

その姿は狗や狐に例えられ、実力は九尾をも凌ぐと言われている。

地域によっては、その妖怪を神として祭っている事もあり、神の使いとしても有名なのだ。

そん天狐を悪魔が使役しているのだから、変な話だよなぁと此方は苦笑する。

 

 

 

「それより、何か心配事かい?」

 

「ん、ちょっとな。クゥ、今日は生徒会か?」

 

「いや、ミリアからの連絡の件もあるから、今日はオカ研に行く予定だ。……その心配事は連絡絡みか?」

 

「いや……別の違和感だな。なぁ、クゥ。今日はイッセーに会ったか?」

 

「いや。………クラスも違うだろ?今日は体育もなかったから、会う機会は廊下ですれ違う程度だが……生憎、教室からあまり出なかったから。兵藤になにか?」

 

「あいつ、悪魔になってるみたいなんだ」

 

 

此方に言葉に、クローディルは顔を顰めた。

 

 

「悪魔に……って、彼はこの前まで人間だった筈だ。ソーナ嬢から、そんな話を僕は受けていないけど」

 

「俺も、ソーナ嬢があの馬鹿を転生させたとは思ってねぇよ。もっと確率がある上級悪魔がこの学園にはいんだろ?」

 

「………成程、だな」

 

 

歩みを始めた此方に倣い、クローディルはその横に並んで歩きながら、淡く苦笑した。

確かに、此方の言う彼女であるなら、可能性は十二分にある。

 

一旦外へ出て、小さな林の奥。

古びた洋館を彷彿とさせるシルエットは、部室として使っている旧校舎へと歩を進める。

二階建ての木造建築であるそれは、一見古びた廃墟にも見える。

地震でもおきれば、一発で倒壊するだろうなぁと此方は毎度同じ事を思いながら、室内へと入った。

 

 

「詩神此方、入ります」

 

「はぁい」

 

 

女性の返事を聞いた後、此方は失礼しますと告げると、中へと入る。

部室内は、異様という言葉でのみ語れる。

床、壁、天井に至るまでに文字と魔法陣が埋め尽くし、正直女の子がいる空間ではない。

 

その部屋で唯一まともに見えるのは、デスクと本棚、それからソファー位なものだ。

そのソファーには、既に先客がいた。

 

 

「リアス嬢、ご機嫌麗しゅうございます」

 

「社交辞令はいいわ、此方。朱乃、お茶をお願い。あら、今日はローゼリア君も一緒なのね」

 

「ご無沙汰しておりました、リアス嬢」

 

 

クローディルが恭しくその女子生徒に頭を下げる。

 

 

 

紅い髪を揺らしながら優雅に微笑む彼女は、リアス・グレモリー。

二人の主が使える上級悪魔であり、七十二柱が一角、名門グレモリー家の次期当主となる女性だ。

リアスに促され、此方とクローディルは彼女の向かい側へと座る。

と、それを見計らった様に、黒髪の女性がお茶を手に戻ってきた。

 

 

「はい、どうぞ」

 

「すみません、姫島さん」

 

「ありがとう、姫島……うん、美味しい」

 

「あらあら……クローディル君に褒められると照れてしまいますわ」

 

 

うふふ、と穏やかに微笑む女性は姫島朱乃。

長く艶やかな黒髪をポニーテールに纏めた、リアスの懐刀だ。

接待を終わらせ、朱乃がリアスの横に並ぶと此方が口を開く。

 

 

「お尋ねしたい事があります。実は―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

「……夕飯、作り損ねた」

 

 

此方は深い溜息を漏らして、家路を歩いていた。

その後、クローディルと共にミリアーナからの情報と自分達が聞きたい情報を伝える為に、部活そっちのけで、討論となった。

討論、とは名ばかりの質問攻めだ。

 

取り敢えず、はぐれ悪魔の件は住処を探すと同時に、大公からの書状が着き次第討伐という流れとなった。

 

そして、一番此方が気になっていたイッセーの悪魔化についてだが……それは、全てリアスにはぐらかされてしまったのだ。

何を聞いても、いずれ分かるの一点張り。

 

一瞬、殴り飛ばしたい衝動に駆られたが、そこはクローディルによって宥めすかされ、何とか我慢出来た。

因みに、そのクローディルだが今は姫島宅にお邪魔している。

そのまま泊まって来いと言っておいたが、多分律儀に0時前までには帰ってくるだろう。

 

我が親友ながら、奥手だなぁと、此方は苦笑した。

 

と………

 

 

「……イッセー?」

 

 

突き当りを一瞬、見知った影が疾走していった。

それと同時に、その背後を追う黒い影も………

 

 

「……マジかよ」

 

 

頭が理解するよりも早く、此方は走り出す。

彼を追う影を追い越し、イッセーへと並んだ。

 

 

 

「よっ!!イッセー、こんばんち~」

 

「こ、こんばんちーじゃねぇよ!!つうか、此方いつの間に!!?」

 

「それは、俺の台詞だ。夜8時には家にいろって、言っただろ!!?」

 

「そ、それが、ちゃんと帰ったんだよ!!その後、母さんにコンビニで牛乳買ってきてくれって頼まれて!!!」

 

 

今の現状、と言う訳か……

チラッと背後を見る。

未だ、捕まえられるか、られないかの距離を保って追いかけてくる相手に、小さく舌打ちする。

相手は、完全に狩りを楽しんでいる様だ。

流石に、こんな狭い道で戦闘なんて始めたら、周りへの被害が尋常ではない。

 

 

「……イッセー、こっちだ!!」

 

 

頭に叩き込んでおいた地図と現在地を照らし合わせ、路地の中へと走る。

イッセーもその声に従い、目を白黒させながらも此方の後を追う。

暫くの間入り組んだ道を走り抜け、最終的には開けた場所についた。

 

………公園だ。

 

そこで、此方の足が止まった。

 

 

「ここ……」

 

「イッセー?」

 

 

臨戦態勢に入ろうとした時、譫言の様に呟く声に顔を顰めた。

イッセーは息を整えながら、辺りを見渡し、喘ぐ様に呟く。

 

 

「間違いない……ここは、俺が夕麻ちゃんとデートした時に立ち寄った……」

 

「おい!!………くるぞ!!!」

 

 

此方の声に、イッセーの肩が震えた。

その姿をチラリと一瞥し、此方は背後で悠然と降り立つ男を睨む。

まるで変質者の様なコートと帽子を纏う男の背には、黒い翼が生えている。

その姿に、此方はククッと喉の奥で笑った。

 

 

「お前、どこの部隊所属だ?」

 

「逃がすと思うか?下級の存在はこれだから困る」

 

 

此方の問いを無視し、男は笑う。

どうやら、相手の実力すら分からない馬鹿の様だ。

となれば、警戒する必要はないと思っていいだろう。

此方は溜息をつくと、乱暴に頭をかいた。

 

 

「お前の属している主の名を言え。こんな所でお前達の邪魔をされると迷惑なんでな」

 

「あ、主……?」

 

「イッセーは黙ってろ。俺は詩神彼方の『兵士(ポーン)』詩神此方。こいつは、最近悪魔に成り立ての新人でな、主はグレモリー家次期当主。……お前はどこの部隊所属だ?」

 

「ふっ………寝言は寝て言え。詩神彼方と言えば、悪魔勢の中でも抜きんでた実力者だ。その眷属が、こんな寂れた市街などにいる筈がなかろう?」

 

 

男はクツクツとおかしそうに笑った。

 

 

どうやら、相手はこちらの存在に納得してくれていない様だ。

ブツブツと何やら呟くと、男はニタリと嗤う。

 

 

「ふむ。主の気配も仲間の気配もなし。消える素振りも見せない。魔方陣も展開しない。状況分析からすると、お前達は『はぐれ』か。ならば、殺しても問題あるまい」

 

「……よりにもよって、『はぐれ』扱いか。最近の堕天使ってのは、頭の悪い奴しかいねぇのか?クゥはもっと利口だったぜ?」

 

 

呆れたとでも言いたげに、此方は肩を竦めた。

すると、男は侮辱されている事を理解したらしく、体を怒りに震わせ、手を高々と掲げた。

 

 

「その減らず口、いつまで続くか拷問してやろう!!」

 

 

ブンッと耳障りな音を立てて、男の手に光らしきモノが集まり、槍の形を形成する。

フッ……と此方は笑みを浮かべる。

 

 

「イッセー、俺の後ろから出るなよ?」

 

 

先に手を出したの相手だ。

それは大事な事だし、正当防衛なのだから、殺しても文句はないのだろう。

此方は腕を胸の前で組むと、小さく呟く。

 

 

「誓いを果たせ。咎を断罪し、人形を解放せよ!!」

 

 

カッと此方の手が眩く発光すると、そのまま横に振る。

 

ガウンッ!!ガウンッ!!

 

 

「がっ………!!?」

 

「おせぇよ、ばぁか」

 

 

闇夜を貫く閃光。

ニッと嗤う彼の前に、男は膝をつく。

腹部と右肩から零れる鮮血を抑え、その表情に驚愕が浮かぶ。

 

……此方の持つ二丁の銀拳銃(リボルバー)をその目に焼き付けて。

 

 

「ぎ、銀の二丁拳銃………お前、本当にあの詩神眷属の……」

 

「だから、言っただろ?俺は詩神此方だってな」

 

 

上から聞いてんだろ?と残虐に笑う彼に、男は傷を押さえながら後ずさる。

 

 

「い、命だけは……」

 

「残念。堕天使側と事を構えない方法ってのは、相手を完全に黙らせる事………つまりさ、殺せって事なんだよ」

 

 

んじゃ、と銃口を向けると、男はすぐさま歪を返して、上空へと逃げる。

 

 

「これでも……!!!」

 

 

ブンッと無数の光の槍が降り注ぐ。

面倒そうにそれを眺め、チラリと後ろを見る。

背後にはイッセーがいるのだ。

交わす訳にもいかないし、かといって……

 

 

「は、はは!!後ろにお荷物を抱えている事が勝敗を分けたな!!」

 

 

動く様子のない此方に、男は勝利を確信したかの様に笑う。

その表情は、完全に安心しきっている。

此方は呆れた様に溜息を漏らすと、右手に持つ銃を振る。

 

 

「モーションチェンジ、連射撃(マシンガン)」

 

 

カッと迸る光と共に、銃はリボルバーからサブマシンガンを模した形へと変わる。

此方はそれを迫りくる光の槍に構え、狙い撃つ。

 

ダダダダダダダダダダダダダダッッッ!!!!!

 

鼓膜を破壊せんばかりの轟音。

彼の銃弾は全ての槍に着弾し、粉砕していく。

そこで、男の表情が凍りついた。

 

 

「チェックメイト……」

 

 

ガウンっ!!

 

 

「がっ………」

 

 

左手に持つリボルバーから放たれた弾丸は、男の頭を打ち貫く。

脳漿が舞い、男の体が地面へと叩き付けられる。

此方は暫し銃を構えたまま、男の死骸を見詰めたが、死んでいる事が確定すると、体から力を抜く。

それを見計らい、銃は光の粒子となって霧散した。

 

残ったのは、静寂のみ………

 

 

 

「さてっと……怪我はねぇか、イッセー」

 

 

後ろにいたであろうイッセーへと振り返り、此方は淡く苦笑する。

当のイッセーは、ポカァンと呆けた顔で倒れ伏した男と此方を見詰めていた。

少し刺激が強かったか?と思いつつ、どう説明するべきかと悩んでいると、イッセーの背後に赤い閃光が煌めく。

しめた、と此方は内心でガッツポーズを取る。

 

 

 

「あら、此方じゃない。……どうやら、片付けてしまったのね?」

 

 

全く……と苦笑するリアスに、此方はすみません、と悪びれる様子もなく答える。

 

 

「え?り、リアス先輩!?え?ゆ、夢!?夢なのか!!?今、なんか光ったと思ったらリアス先輩が……」

 

「天誅!!」

 

「ごふぁぁっぁぁ!!!!?」

 

 

動揺してリアスと此方を交互に見ているイッセーに、此方の容赦ない拳が叩き込まれる。

それは見事に腹部の辺りへと入り、空中へとイッセーの体を放り上げると、ベシャッと悲惨な音を立てて地面へと叩き付けられた。

若干ではあるが、彼の口から魂らしき白い影が見える。

 

 

「んじゃ、俺は帰りますので、後の説明はリアス嬢にお任せします!!リアス嬢の下僕ですもんね!!」

 

「ちょっ!?此方!!」

 

 

素早く男の死骸を燃やすと、此方はその場に魔方陣を展開させ、自宅へと飛んだ。

案の定、自宅にはクローディルがいた。

風呂上りらしく、頬を上気させたまま冷蔵庫の麦茶に手を伸ばしている。

 

魔方陣で帰ってきた此方を怪訝そうに見る。

 

 

「遅い帰りだったな、此方。取り敢えず、夕飯はまだそうだな。姫島から煮物を貰って来てあるから、それを温めて食べるといい」

 

「サンキュー。で、クゥ……これ、なんだが」

 

 

ん?と麦茶を口にしているクローディルへと、先程の羽を見せる。

途端、彼の表情は険しいものへと変わった。

 

 

「同胞の羽、か」

 

「一戦交えた。誰だかわかるか?」

 

「ドーナシークだ。僕は直接関わりを持った訳じゃないが、後輩の下にいた堕天使だったと思う。……彼一人だったのか?」

 

「楽しげに、『はぐれ』狩りをしてたぜ?」

 

「『はぐれ』?……全く、中級堕天使程度が相手の実力すら分からないなんて、本当に堕天使達の将来が暗いよ」

 

 

頭を抱えるようにして、椅子に座る。

ごめんな、と小さく呟くと、気にするなとクローディルが返す。

 

 

「そもそも、ここはリアス嬢とソーナ嬢が治めているんだ。そこへ喧嘩を仕掛けてくる堕天使なんて、正直部隊から追い出されたならず者しか考えられない。未だ拮抗状態だというのに……考えの浅はかな馬鹿どもめ」

 

 

忌々しげに呟くクローディルに、淡く苦笑が漏れる。

彼は元堕天使の上級部隊で活躍していた、根っからの悪魔嫌いだった。

いや、今でも眷属やグレモリー眷属、シトリー眷属位としか親しくしている姿を見た事がない。

彼にとって、悪魔は仇なのだ。

 

此方は何となく居た堪れなくなり、またごめんと呟く。

しかし、当のクローディルは馬鹿、と一言告げて、持っていた空のコップで軽く此方の額を叩く。

 

 

「何がごめんだ。君が間違っているだなんて、僕は思っていないよ。どうせ、グレモリー眷属の誰かが襲われていたんだろ?そうでなきゃ、君が殺す様な真似はしない」

 

 

僕に気を使うな、と笑う彼に、此方は苦笑しながら、悪いと言う。

未だ、クローディルにとって堕天使は『同胞』のままだ。

だから、と言う訳ではないが、此方も手傷は負わせるが、命までは取らない様にしている。

 

……とはいえ、此方は殺しが好きではない。

彼の本質は優しいのだ。

例え、自分が殺されそうになったとしても、命を取ろうなんて考えない。

しかし、その対象が仲間へと移った時、彼は夜叉にも修羅にもなる。

 

それを知っているからこそ、クローディルは彼に恨み言を言う事はない。

自分も、彼の優しさに命を救われた者の一人だ。

 

 

 

「ほら、さっさと夕飯を食べてしまえ。明日、リアス嬢へ問い質しに行くんだろ?」

 

「おう!」

 

 

ニッと笑う此方にクスッと微笑むと、クローディルは冷蔵庫にしまっておいた煮物を電子レンジの中へと入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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