「うおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉ!!!!!」
深夜の街に、アホっぽい叫び声が木霊する。
その発信源である一誠は、自転車を一心不乱に漕ぎ、前籠に入れてあるチラシをポストの中に突っ込んでは、またひたすら漕ぐ。
(あからさまに、近所迷惑だよなぁ)
その姿に、此方はボンヤリとそう思った。
彼が行っているのは、見ての通りチラシ配り。
これも、一応悪魔の仕事である。
「お、お前、なぁ……」
「おっと、イッセー。この先を左に曲がったら、四件もあるぞ」
「マジかぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ!!」
一誠は、これでもかと言うほどに絶叫する。
今更ではあるが、此方がいるのは一誠が必死になって漕ぐ自転車の後方。
つまり、荷台に座っているのだ。
完全に体力が必要な漕ぐ作業は一誠に押し付け、此方はリアスより預かっている携帯端末を見る。
そこに映っているのは、この街の地図で、所々に赤い印が点滅している。
そこが、チラシを配る家を示す目印だ。
「ほれほれ、あと40件だぞぉ」
「ちくしょおおぉおおおおぉぉぉぉぉ!!仕方ないよな!仕方ないもんな!俺、悪魔だもーん!!」
此方の言葉に涙を流しながら、一誠は暗い夜道を疾走していく。
こうなったのは、暫く前に遡る―――――
◇◆◇◆
「私の元に来れば貴方の新たな生き方も華やかになるかもしれないのよ?」
蠱惑的な笑みで、リアスが一誠を見詰める。
全員が悪魔である事を一誠に理解させた後、今後の事について話し合う事となった。
きちんと理解させねば、色々と厄介な内容があるのだ。
「掻い摘んで言うが……俺達転生悪魔ってのは、謂わば下僕だ」
「げ、下僕……」
「そ!!お前みたいに転生させられた以上、転生させた悪魔……お前の場合はリアス嬢だな、彼女の下で働く義務がある。これは、絶対事項だ」
「此方もそうなのか?」
「俺の場合は……ちょっと複雑でな。転生させたのは、とある公爵様でさ。姉さんが最上級転生悪魔となった後、その人から姉さんが俺を引き取ったんだ」
「え、えっと……?」
「君には、まだ理解出来ないと思うけど……下僕は交換し合う事が出来るんだ。此方は、姉が爵位を持った事によって駒と交換した……位に思っててくれれば十分だよ」
此方の説明に目が点となった一誠に、クローディルが苦笑しながらも補足する。
この『悪魔の駒』というのは色々とルールがあるのだ。
それを理解させるには、まだ早すぎるだろうと判断し、簡単に締めくくる。
「まぁ、兎に角、だ。俺達は主の為に、馬車馬の如く働くっつぅこと」
「うわ……」
此方の言葉に、一誠が哀愁漂う表情で固まる。
あまりの言い草に、リアスは片眉をヒクヒクと痙攣させ、他のメンバーは苦笑する。
本質としては間違ってはいないだろうが、それでも言い方というモノがある。
仕方ない、と言う様にクローディルが溜息を零した。
「悪魔には、階級がある。君も分かる通り、人間界にだって、階級はあるだろう?そうだな……社長とか部長とかかな。悪魔は未だに人間界で言う貴族……爵位での階級制が一般的なんだ。昔は、家柄や血統なんかで分けていたんだけど、最近はそうじゃない。実力さえあれば、十分伸し上がれるシステムがある」
「??」
「あ~~……クゥ。イッセーにそれ言っても、分からねぇって。こいつ、究極の馬鹿だからさ」
今にも耳から煙が出そうな表情で固まる一誠に変わり、クローディルの話に此方が相槌を打つ。
クローディルもそれが分かったのか、淡く苦笑してリアスへと主導権を戻す様に、彼女へと視線を投げた。
コホンっとリアスが咳払いする。
「やり方次第では、モテモテな人生も送れるかもしれないわよ?」
「――――――っ!!?どうやってですか!?」
異様な食いつきを見せる一誠。
その様子に、此方がポンポンとクローディルの肩を叩く。
慰めるかの様な行動に、彼は終始苦笑。
スケベ根性も、ここまでくれば立派である。
「純粋な悪魔は昔の戦争で多くが亡くなってしまったのよ。その為、悪魔は必然的に下僕を集める様になったの。まぁ、以前の様な軍勢を率いる程の力も威厳も消失してしまったけれど。それでも新しい悪魔を増やさないといけなくなった。悪魔にも人間同様に性別はあるから、悪魔の男女の間に子供は生まれるわ。それでも自然出生で元の数に戻るには相当な時間がかかってしまうの。悪魔という存在は極端に出産率が低いから。それでは堕天使に対応出来ない。そこで素質のありそうな人間を悪魔に引き込む事にしたわけ。下僕としてね」
「やっぱり、下僕じゃないですか」
「イッセー、俺の話を聞いてたか?俺の姉は俺同様に転生悪魔だ。でも爵位持ちで下僕持ち。おまけに小さいとはいえ、領地も持ってる。……つまり、実力が上に認められさえすれば、お前も爵位持ちになれるって事だ」
「ま、ままままままじで!!!!?」
ガッと此方の肩を掴む。
此方はその手を邪魔だ、と捻り上げると、器用に関節技を決める。
ギリギリと嫌な音を立てつつ、部屋に響く一誠の悲鳴。
「……此方、私の下僕を離してあげて」
「えぇ~~~、煩いじゃないっすか」
「いいから」
語調が強まった事を確認し、此方は特に執着も見せずにパッと一誠から手を離した。
「えっと……つ、つまり、やり方次第では俺も爵位を!?」
「えぇ。不可能じゃないわ。勿論、それ相応の努力と年月がかかるでしょうけど」
「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!」
「うるせぇ!」
「がでぶっ!!?」
喜びに叫ぶ一誠の頭に、此方の拳がクリーンヒット。
そのまま、床にめり込ませるという荒技となった。
「此方先輩、容赦ありませんね」
「大丈夫だ。この程度でくたばる様なイッセーなら、入学当時に死んでる」
「君ねぇ……どれだけ、彼をどついたんだい?」
平然と真顔で対応する此方に、クローディルが呆れた様に聞く。
とはいえ、無傷とは言い難いが死んではいないらしく、ピクピクと腕が動いている事が確認できる。
「……でも、まぁ。ある程度は先輩として、力を貸してやらなくも――――」
「ハーレム王に俺はなる!!」
「…………」
問答無用で、再度一誠の頭部が床へと減り込んだ。
◇◆◇◆
悪魔の仕事は専ら夜に行う事が原則である。
これは、悪魔が夜の住人である為に、闇の世界になると、力が増大するという事に由来する。
それとは逆に光の世界……朝方に弱くなる傾向がある。
悪魔にとって、光は猛毒。
その為、光を武器とする堕天使、天使、そして天使に祝福された悪魔祓いは、天敵と言ってもいいだろう。
「そういやさ、此方って小猫ちゃんの事『ネコちゃん』って呼ぶよな」
「ん?」
ある日の放課後。
一誠と共に旧校舎へと続く道を歩いていると、彼が何か思い出した様にそう聞いてくる。
此方は、基本的には渾名で呼ぶ事は少ない。
普段も苗字で呼び捨てにする事が多く、一誠が記憶している限り、親しげに渾名呼びをするのは自分とクローディル、そして小猫の三人のみだ。
……木場に関しては、嫌味が混じっている為除外する。
「……ネコちゃんとは、長い付き合いなんだ。彼奴が悪魔じゃなかった時からの、な」
「え!?マジかよ!」
「まぁ、基本的には俺の方が100年以上年上だけどな」
「……お前、幾つだよ」
「えっと……大政奉還、くらい?」
「まさかの幕末生まれ!!?」
あんぐりと口を開ける一誠に、此方は苦笑した。
確かに見た目では、彼と大差ない。
それなのに、数百年を生きているベテランだなんて、彼は信じられない気持ちなのだろう。
「悪魔ってのは、成熟すると姿を自由に変えられるんだ。姉さんも、俺と大差ない見た目だぞ?」
「す、すげぇな。悪魔の若作りってのは。……て事は、此方も老けてみせる事が出来るのか?」
「……いや、俺はまだ成熟してないんだ」
「悪魔の成熟って、そんなに年数が必要なのか?」
「基本的には、人間の成人と大差ないらしい。ただ………俺はずっと寝てたから」
語尾を濁し、此方の歩調が早まる。
その行動を拒絶と捕えたのか、一誠はそれについての言及はせず、待てよ、と慌てて彼に歩調を合わせた。
前にも、似た様な行動を取った事があったためだろう。
その日以来、一誠は不用意に此方へと言及する事はなくなった。
それを有り難いと思う反面、申し訳ないとも思う。
だが………知らなくて良い事など、この世には大量に存在するのだ。
そう、知らなくて良い事など………
「入りまーす」
「どうも」
二人で入った部室は、暗幕により光を完全にシャットアウトした闇の世界。
唯一の光である蝋燭の炎が、赤々と辺りを照らしだしていた。
そして、その周りには自分達を抜かした部員。
元々、クローディルは部員ではない為、普段からは顔を出さない、と事前に一誠へは説明してある。
「来たわね」
二人の姿をリアスが確認すると、すぐさま朱乃へと指示を送る。
その様子に、此方はピンッと来たのか、へぇ~、と小さく嘆息した。
「イッセーに、仕事をさせるんですか?」
「えぇ。チラシ配りも終わり。今日からは、本格的に悪魔としての仕事を始動してもらうわ」
「おおっ!俺も契約取りですか!」
「馬鹿。初めから、お前に指名がくる訳ねぇだろ?」
嬉しそうに燥ぐ一誠に、此方が溜息を零す。
横から入れられた指摘に、一誠が首を傾げた。
「指名?」
「仕事の度合いにもよるが……大概は指名制だ。契約内容によっては、お前でも平気だと判断された時のみ、お前がその仕事を請け負う。だが、大概は顧客でな。同じ悪魔へと契約を頼むケースが殆どだ」
「初めはレベルの低い契約内容からが基本ね。小猫に予約契約が二件入ってしまったの。両方行くのは難しいから、片方は貴方に任せるわ」
「……よろしくお願いします」
ペコリと礼儀正しく頭を下げる小猫。
どうやら、今回は小猫の代役としての仕事らしい。
すると、リアスが此方へと視線を向ける。
「此方、貴方はどうするの?」
「……今回は、パスで」
「え!?お前、一緒に来ないのか?」
「俺は俺で、仕事があるんだよ。お前と四六時中一緒ってのは、どうにも気色悪すぎる」
心底嫌そうな表情で言う此方に、ひでぇ!!と一誠が泣きべそをかく。
本当に、表情豊かな奴だ。
それに、と此方が顔を逸らす。
「グレモリーの魔方陣から移動出来るのは、グレモリー眷属のみ。俺がお前と移動するには、もう少し高度な魔方陣が要求されるし、発動に使う魔力も半端ないからな。俺とお前で行けば、十中八九お前の魔力がすっからかんになって、帰ってくれなくなる」
魔力の消費が激しいと、身体に変調を来たす。
折角の初仕事を、台無しにするのは少々忍びないと思ったのだろう。
朱乃に手招きされ、一誠が魔方陣の中央へと立つ。
此方は朱乃の詠唱を聞きながら、壁に寄り掛かり、成行きを見守る。
リアスからの説明を熱心に聞きつつ、表情を硬くしている一誠は誰が見ても緊張している様に見えた。
一通りの説明が終わったのだろう、魔方陣から朱乃とリアスが離れる。
瞬間、一誠の掌と魔方陣が強い光を放つ。
どうやら、繋がった様だ。
「魔方陣が依頼者に反応しているわ。これから、その場所へ飛ぶの。到着後のマニュアルも大丈夫よね?」
「はい!」
「良い返事ね」
しっかりと返事をした一誠へ、リアスが微笑む。
光が強くなっていく中、先程まで沈黙を保っていた此方が、彼の名を呼んだ。
「しっかりやってこいよ」
「おう!任せとけ!」
彼の言葉に笑顔とガッツポーズで答え、光が最高潮へと達し、網膜を焼く。
この光が消えた時、彼の姿はこの部室にはないだろう。
そう………その予定だった。
光がゆっくりと収縮していくと、そこに浮かんだ人影。
相手は、恐る恐るといった度合いで、ゆっくりと目を開き……絶句した。
そこに広がるのは、見慣れた筈の部室。
流石に、この事態は予測していなかったのだろう。
リアスは額に手を当て、朱乃も困った様に笑う。
木場に至っては、溜息を零し、此方はその場で必死に笑いを堪えている。
「イッセー」
リアスが困惑気味に彼の名を呼ぶ。
「残念だけど、貴方、魔方陣を介して依頼者の元へジャンプ出来ないみたいなの」
怪訝そうな表情で、首を傾げる。
意味が分かっていないらしい一誠へ、此方は笑いを噛み殺しつつ説明する。
「魔方陣ってのは、ある一定の魔力に反応して動くんだ。依頼者への瞬間移動ってのは、それ程大きな魔力が必要な代物じゃない。さっき、俺が言った方法じゃなければな。それこそ、子供だって、ピョンピョン移動できちまう程、その魔方陣を発動させるのは、たやすい筈なんだ。………総合して言うと、お前の魔力は子供以下。下手すれば、赤ん坊以下だな」
「な、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ!!?」
此方の言葉を理解したらしい一誠が、その場で頭を抱えて絶叫する。
これは、本当に酷い有様なのだ。
普通、悪魔であれば純潔、転生関わらず、ほぼ全員が出来る事なのだから。
「……無様」
小猫が無表情でぼそりと呟く。
痛烈な一言に、一誠はほぼノックダウン寸前。
しかし、このまま議論していても意味はない。
どうやら、彼の出世街道は波乱どころか、タンカーが突っ込んでくる程の大波乱なようだ。
「イッセー。前代未聞だけど、これ以上依頼者を待たせる訳にもいかないわ。足で直接現場へ行ってちょうだい」
「足!?」
予想の遥か斜め上を行く彼女の回答に、驚愕する一誠。
此方はもう押さえが聞かないのか、その場で体を丸め、必死に腹部を押さえている。
ここで爆笑しないだけ、彼なりの優しさだと思いたい。
「チャリですか!?チャリでお宅訪問!?そんな悪魔存在するんですか!?」
ビシッと効果音が聞こえそうな程、無言で指を差す小猫と此方。
完全に、一誠の心を抉りに抉っていく反応である。
とはいえ、こればっかりは仕方がない。
「う、うわぁぁぁぁぁん!がんばりますぅぅぅ!!」
涙を流しながら退場していく一誠。
その姿を見送り、此方は喉の奥で笑いながら、近くにあったソファーに座る。
「本当に、退屈しなくていいよな。彼奴が来てから」
「……流石に、予想外だったわ」
一誠が瞬間移動できなかった事がショックだったのだろう。
リアスは額に手を乗せたまま、天を仰ぐ。
流石に、意気消沈の様だ。
とはいえ、一番ダメージを負ったのは一誠の方だろう。
帰ってきたら、少しくらいフォローしてやろうと内心で思う。
「まぁ、今だけっすよ。多分、未だに体が慣れないだけですって」
「……そうかしら?」
「情愛の深いグレモリー家のご令嬢が、自分の下僕疑ってどうするんですか」
未だ不安げな彼女に、此方は苦笑する。
確かに、今回の事は此方も予想はしていなかったが……可能性の一つ位には考えていた。
だが、まさか本当に起こるとは思っていなかったのだ。
やはり、本当に起こると爆笑を抑える事で必死になってしまったが……
さてと、と此方は気を取り直す様に伸びをすると、自分の鞄をひっくり返す。
そこから出てきたのは、教科書や筆箱といった学生らしいモノではなく、分厚い書類の束。
その量に、隣まで寄ってきた小猫達が目を丸くする。
「……先輩、これ」
「流石に、これ以上期限を伸ばせなくてな。本当なら、初仕事はちゃんと成功させてやろうと思ってたんだが……眷属仲間に迷惑かけられないし」
書類に目を通しつつ、サラリと答える。
それにしても、かなりの量だ。
多分、一誠のチラシ配りに同行する為に、自分の仕事を蹴っていたのだろう。
「……これでも、結構減ったんだぞ?お蔭で、一週間は徹夜したけどな」
今も眠いよ、と苦笑する彼からは、先程は感じなかった疲労の色が見えだす。
一誠の前では気取られまいと、彼なりに気を使っていた様だ。
書類へと没頭する此方へ、朱乃がコトンと紅茶を置く。
「あらあら……此方くんは、どうしてイッセーくんにそこまで肩入れするんですか?」
「……………」
何気ない質問だったのだろう。
微笑みながら問う朱乃に、ピタッと此方の手が止まる。
彼の微妙な変化を感じ取ったのだろう、小猫が少し不安そうな表情で此方を見上げる。
「………罪滅ぼし」
「え……?」
「イッセーが殺された時……俺は何も知らなかった。毎日彼奴と会ってた筈なのに、彼奴に近づく堕天使に気づかなかった」
あの日、放課後を共にしていれば―――
あの時、携帯の電源を入れていれば―――
あの時、公園に行っていれば―――
全ては仮定の話だが、それでも自分の中の罪の意識は消えない。
グッと握る手は白くなり、微かに震えている。
「イッセーは馬鹿で変態で、どうしようもないエロガキで……友達思いで努力家で……俺の友人だったんだ」
「此方先輩……」
「なのに……俺は彼奴を助ける事も、守る事も出来なかった。それが、たまらなく悔しい」
ずっと、隠していた此方の本心。
出来る事なら……友人を自分の世界へ巻き込みたくなかった。
悪魔はこうした仕事ばかりじゃない。
契約は一番安全な貢献であり、転生悪魔が最も評価される貢献は……
「…此方先輩」
白む彼の拳に、そっと小猫が手を重ねる。
優しく労わる様な温かさに、手の力を抜き、此方は顔を上げた。
不安を宿し揺れる彼の瞳をじっと見つめ、ふわりと微笑む。
「先輩は悪くありません」
「……ネコちゃん」
「兵藤先輩は生きてます。悪魔であれ、生きているんです。だから……次があるなら、助ければいいと思います。此方先輩が昔、私にしてくれた様に」
優しく紡がれた言葉に、此方は目を丸くし……そして、淡く苦笑すると彼女の頭を撫でた。
どうやら、慰められてしまったらしい。
確かに、一誠は生きている。
なら、過去をどれだけ悔やんでも、取り返しがつかないだろう。
ありがとう、と自然と言葉が出てくる。
「落ち込むなんて、俺らしくないよな。よっし、さっさと書類片付けて、今日はのんびり寝かせてもらうとするかね!」
よし!と気持ちを切り替えたのだろう、黙々と書類へ没頭していく彼の存在に、全員の表情に苦笑が映る。
護衛という立場ではあるが、それでも自由奔放に誰かを守ろうとする姿勢は、彼らしい。
「……仕事終わったら、手伝ってもいいですか?」
「ん?別にいいよ。ネコちゃんだって、疲れるだろ?俺も終わったら、今日は夜寝るし」
いいですよね?と一応許可を求める彼に、リアスは構わないと頷く。
元より、彼は自分の護衛として同行してくれている悪魔。
本来であるならば、自分達の仕事に参加する必要はないのだ。
「リアス嬢からの許可ももらえたし、さっさと終わらせて帰るか」
「……一緒に帰ってもいいですか?」
「おう」
「あ、じゃあ、僕も一緒に帰りたいな。此方君と」
「てめぇは死ね、キヴァ」
ギンッと射殺せそうな視線で睨めば、酷いなぁと祐斗が苦笑する。
気が付けば、いつもと変わらぬ放課後となっていた。
・
友人の危機に颯爽と登場させようか、とも思っていたんですが、結局これが書きたいが故に却下した水無瀬です(笑)
主人公はカッコよく、強く、チートで面白い。
これが、オリ主のセオリーなのかなぁ~とは思うのですが、水無瀬のオリ主は精神的に弱いのが最大の特徴かもしれません。
力があるからこそ、守れなかった事に対して必要以上に責任を感じてしまう……
そんな弱さがあるから、強くなりたいと願える。
水無瀬のオリ主はそんな感じです(苦笑)