ハイスクールD×D~闇桜~   作:水無瀬久遠

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白六話 駒の特性

 

 

「遂に、大公から討伐依頼が来たか」

 

 

旧校舎へと続く道を歩きつつ、此方は小さく表情を歪める。

その隣には、書類を手に同じく表情を歪めているクローディル。

 

一誠には、先に行ってもらい、此方はクローディルと落ち合った後、こうして部室を目指している。

今回は、リアスへの伝言があるからだ。

 

 

「実力としては、僕らの足元にも及ばないと思うけど……リアス嬢にお願いするレベルとして、それ程難易度が高い訳じゃないと思うよ」

 

「まぁ、そうだろうけどさ……」

 

 

堕天使の動向が気になる状況で、はぐれ悪魔まで迷い込んでくるとは、正直面倒の一言だ。

本当に、一誠が眷属になって以来、全く退屈しない状況が続きすぎている。

 

ところで、とクローディルが書類を整理しつつ、此方を見る。

 

 

「兵藤の方は?二回とも、契約が破断したんだって?」

 

「一回目は依頼者のケアに回って、二回目はゴスロリを纏った世紀末覇者だって話だぜ?本当に、彼奴は楽しませてくれるよ」

 

 

ククッと喉の奥で、上機嫌に笑う此方に、こら、とクローディルが苦笑する。

 

 

「あまり、からかい過ぎるなよ?」

 

「大丈夫だって。抉る様な真似は極力控えてるから」

 

「極力って事は、やってるんだろ?」

 

「モチッ!!」

 

 

グッと親指を立てる彼に、クローディルが呆れたとでも言いたげに溜息を漏らす。

だが、最近は自分の仕事の時間をきちんと取りつつ、休みを取っている様子で、内心ではほっと胸を撫で下ろす。

ここ最近、ずっと一誠につきっきりだったせいか、自宅でも疲労が見て取れた。

とはいえ、彼の頑固さは筋金入りで幾らクローディルが休め!と怒鳴っても、彼が言う事を聞かない事は、目に見えている。

別に、書類程度の仕事であれば、自分だって手伝えるのだ。

 

少しは頼ってほしいと思うが、彼なりの努力だと分かっているから、どうにも言えない。

 

(全く……彼方が心配するのも無理はない)

 

自分達の主である、美しい和装の少女が思い浮かぶ。

こうして、護衛としての仕事を請け負う際に、彼女は心底心配していた。

彼がシスコンならば、彼女はブラコンと言ってもいい。

とはいえ、此方程彼方は重症ではないが。

 

 

旧校舎内へと入り、階段を上った突き当り。

普段から見慣れた部室の扉を前に、ふと此方が足を止まる。

クローディルも何か感じたのだろう、少しだけ驚いた様子でドアノブを掴んだまま固まった。

 

 

「……珍しい。リアス嬢が下僕を説教してるみたいだね」

 

 

中から微かに聞こえる声は、普段の穏やかな感じではなく、少し怒気を込めたもの。

どうやら、何かあった様だ。

此方はクローディルへと目配せし、彼もその意味を理解したらしく、出来るだけ音を殺して扉を開ける。

部屋には、腰に手を当てて仁王立ちしているリアスと、その彼女を前に正座している一誠、その周りには部員が立っていた。

どうやら、また一誠が原因らしい。

 

 

「教会の関係者と関わってはダメよ」

 

「……ネコちゃん、どうしたんだ?」

 

 

足音を殺し、一番近くにいた小猫へと小声で声をかける。

彼らの存在に気付かなかったのだろう、小猫は声を掛けられた瞬間にビクッと肩を跳ねさせ、すぐさま此方を見上げて目を丸くする。

此方の後ろで、クローディルが淡く苦笑した。

 

 

「……兵藤先輩が、教会に行ったそうです」

 

「教会?……クゥ、この街に教会なんてあったか?」

 

「ん~……あ、確か、小高い丘の上に一件あったと思うよ。でも、あそこは無人……見捨てられた教会でよかった筈だけど」

 

 

う~ん、と唸るクローディル。

本来、教会とは神側のテリトリーであり、悪魔にとっては敵地だ。

だが、教会の全てが神側のテリトリーという訳ではない。

神に見捨てられた教会や、邪神等に占拠された神社といった、古びた無人の場所は悪魔や堕天使の隠れ蓑として使われてしまう事もあるからだ。

 

そして、ここは悪魔であるグレモリー家が治める土地。

そこにある教会が、正常に機能しているとは思えないと言うのが、此方の考えだ。

それはクローディルも感じているのだろう。

そのせいか、返答も煮え切らない様子だ。

 

二人で顔を合わせて悩んでいる間に、どうやら一誠への説教が終わったらしい。

リアスは顔を上げると、人数が増えている事に目を丸くした。

 

 

「あら、いつの間に来たの?此方。……ローゼリア君もいらっしゃい」

 

「ご無沙汰しておりました、リアス嬢」

 

 

礼儀に倣い、クローディルは丁寧にお辞儀する。

その間、此方はふわ~、と猫の様に欠伸をし、その姿をリアスがジト目で睨んでいたが、あまりに見慣れた様子だった為、あえて無視した。

 

 

「本日は、大公より頂戴致しました討伐の依頼をお持ちしました」

 

 

どうぞ、と差し出された封筒に、彼女の表情が若干曇る。

それは、周りも同じだった。

 

 

―――はぐれ悪魔。

主を裏切り、または主を殺して逃走する悪魔を示す言葉だ。

唯でさえ、悪魔の力は人間にとって脅威でしかない。

その為、悪魔の仕事の一つとして、はぐれ悪魔の討伐がある。

ルールに縛られない野犬程、恐ろしいものはないからだ。

 

 

「……そう。今日の仕事は中止よ。全員、討伐に備えて頂戴」

 

 

渡された封筒の中身を確認し、リアスが全員に指示を出す。

その意味が分かる三人は素早く頷いたが、唯ひとり意味が分からずに、取り残されているらしく、キョトンと辺りを見渡している。

 

なぁ、と此方が一誠を一瞥し、リアスへと声を投げる。

 

 

「イッセーも連れてくのか?」

 

「そうね……悪魔の戦いを見ておいても良い頃だと思うの。此方は反対かしら」

 

「いや……コイツはリアス嬢の下僕だからな。主であるアンタの考えに従うよ。ただ、俺個人にも仕事が入ってるから、今回の同行はクゥがする」

 

「え?」

 

 

これは予測していなかったらしく、リアスが怪訝そうに顔を顰める。

きちんと理由を説明しろ……

そう訴える視線を完全に無視し、此方はクローディルの肩に手を乗せ、頼んだ、とだけ言うと魔方陣を展開させ、その場から姿を晦ませる。

 

その行動に、リアスは暫しポカン..としていたが、彼がいない事を理解すると、ムスッと頬を膨らませる。

 

 

「もぅ!!此方は勝手過ぎるのよ!!」

 

「すみません、リアス嬢。彼奴にも、彼奴で仕事を掛け持ちしてるんですよ。今回は僕がお役に立てる様、全力でサポートさせて頂きますので、どうぞご容赦を」

 

 

淡く苦笑しながら、拗ねるリアスを宥めすかす。

あまりに慣れた手つきだ。

と、状況を飲み込めていない一誠へ、祐斗が不憫に思ったのか、そっと耳打ちする。

 

 

曰く、此方が護衛の仕事をすっぽかし、単独で行動する事は極々当たり前の光景であるという事。

その為、こうして彼の尻拭いにも見えるフォローをクローディルが代役として行っているという事。

そして、この状況はよくあるのだそうだ。

 

 

「此方の奴、何してんだよ」

 

「さぁ?僕も何度か聞いてみたけど、殆どはぐらかされてしまって、何をしているのか、よく分からないんだ」

 

 

クローディル君も答えてくれないからね、と苦笑する祐斗。

どうやら、誰が追及しても答えは返ってこないそうだ。

ふと、そこで一誠の中にある疑問が浮かぶ。

 

 

「なぁ。そういえば、此方は俺達とは違う眷属なんだよな?なのに、どうしてグレモリー眷属と一緒に行動するんだ?」

 

「それは、詩神眷属が他の悪魔の護衛を生業とした悪魔だから」

 

 

返答は先程から話していた祐斗からではなく、リアスを宥めていたクローディルから。

彼は淡く苦笑すると、軽く手招きする。

よくみれば、自分達以外は既に彼の近くへと集まっていた。

 

 

「取り敢えず、近くまで飛ぶから」

 

「お、俺、魔力全くないけど……」

 

「その辺りは解消済。早めに討伐を終えたいからね」

 

 

行くよ、と言う声と共に眩い光が世界を包む。

ふわりと浮く感触は未知なモノで、ヒヤリと背筋が冷える様な感覚がした。

 

そして、光が消えた時、周りに広がったのは暗黒に満ちた世界だった。

 

 

気づけば、時刻は深夜。

悪魔が最も行動しやすい時間帯だ。

周囲は背の高い草木が生い茂り、遠目に廃屋となっている建物が見える。

遠目でも不気味な雰囲気を醸し出すそれに、一誠は体を震わせた。

 

 

「……血の匂い」

 

 

小猫がぼそりと呟き、制服の袖で鼻を覆う。

クローディルも辺りを見渡しつつ、あまりにも淀んだ空気に顔を顰めた。

周囲に満ちる敵意と殺意は、湿った風の様に肌を舐め付け、気分は最悪だ。

リアスも状況を確認したらしく、クルリと震える一誠の方へ向き直る。

 

 

「イッセー、いい機会だから悪魔としての戦いを経験しなさい」

 

「マ、マジっすか!?お、俺、戦力にならないと思いますけど!」

 

「何も戦えって言ってる訳じゃないと思うよ。兵藤、見る事聞く事も十分経験なんだ。特に君はまだ神器の存在にも慣れていないしね」

 

 

ブンブンと首を横に振り、拒絶する彼へ、クローディルがフォローを入れる。

 

 

「それに……今、君に必要なのは下僕の特性を間近で見る事だと思うし」

 

「下僕の特性?」

 

 

怪訝そうに問う彼へ、そうね、とリアスが思案気に続ける。

 

 

「そろそろ、イッセーにも悪魔の歴史を含めて、その辺を教えてあげるべきね。……大昔、我々悪魔と堕天使、そして天使を率いる神は三つ巴の大きな戦争をしたの。大軍勢を率いて、どの勢力も永久とも思える期間、争い合ったわ。その結果、どの勢力も酷く疲弊し、勝利する者もいないまま、戦争は数百年前に集結したの」

 

「正確には、凍結……が正しいかな。大打撃を受けた各陣営は、もはや軍勢を保てる状況ではなくなってしまった。それは、天使や堕天使のみならず、悪魔陣営もね。それでも争いは終わらない。ちょっとの隙が全滅を招くんだ」

 

「そこで悪魔は少数精鋭の制度を取る事にしたの。それが『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』―――」

 

「イーヴィル・ピース?」

 

 

聞き慣れない言葉に、一誠が首を傾げる。

 

 

「爵位を持った悪魔は、人間界のボードゲーム『チェス』の特性を下僕悪魔に取り入れたの。下僕となる悪魔の多くが人間からの転生者だからって皮肉も込めてね。それ以前から悪魔の世界でもチェスは流行っていた訳だけれど。それは置いておくとして。主となる悪魔が『(キング)』。私達の間で言う私の事ね。そして、そこから『女王(クイーン)』、『騎士(ナイト)』、『戦車(ルーク)』、『僧侶(ビショップ)』、『兵士(ポーン)』と五つの特性を作り出したわ。軍団を持てなくなった代わりに、少数の下僕に強大な力を与える事にしたのよ。この制度が出来たのは、ここ数百年の事なのだけれど、これが意外にも爵位持ちの悪魔に好評なのよね」

 

「好評?チェスのルールがですか?」

 

「上位者に有り勝ちな闘争本能さ。『私の騎士が強い!』、『俺の戦車の方が優秀に決まってる!』って具合にね。それ以来、ゲームとしてのルールを決めて上級悪魔達は自分の下僕同士を戦わせる様にしたんだ。全く……下の者の気持ちなんてまるで考えない、悪魔らしい遊びだよ」

 

 

少しだけ苛立ちの含んだ声で、クローディルが呟く。

その瞳には、僅かに暗い感情が映り込んでいる。

殺気すら漂わせる雰囲気に、一誠が体を震わせる。

良く見れば、傍にいたリアスも若干顔色が悪い。

クローディルはスッと視線を下げ、小さくすまない、と呟く。

すると、先程まで感じていた殺気は霧散し、微かに残るのは気まずそうな雰囲気だけ。

 

気を取り直す様に、コホンっと咳払いする。

 

 

「リアス嬢は、成熟した悪魔ではないから、君達が公式な大会に出場するのはもっと先の話だよ。ゲームをするにしても、魔王様方からの許可や家同士の許可がない限りは出来ない」

 

「じゃあ、木場達もそのゲームをした事はないってことか?」

 

「うん」

 

一誠の問いに、祐斗が頷く。

それなら、と一誠の視線がクローディルの方へ向く。

彼はその意味を把握したのか、淡く苦笑して首を横に振った。

 

 

「残念ながら、僕はまだゲーム未経験者だよ」

 

「でも、お前らの主様ってのは成熟してるんだよな?」

 

「僕らの主、彼方はゲームに参加しているし、大会でも優勝経験があるよ。ただ、僕と……此方は、未だにゲームへの参加はまだなんだ。僕と此方は彼女の眷属の中では一番新米だからね」

 

「へぇ~。……部長、俺の駒は、役割や特性って何ですか?」

 

「そうね―――イッセーは」

 

「話しは、ここまでみたいですよ」

 

 

一誠の問いに答えようとしたリアスの言葉を、クローディルが低い声で遮る。

辺りに立ち込めていた敵意や殺意が濃度を増し、空気がいっそう淀んでいく。

何かが近づいてきた証だ。

 

 

「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そう臭いもするぞ?甘いのかな?苦いのかな?」

 

 

地の底から聞こえる様な低い声音。

ずるり、ずるりと何かを引き摺る様な音が響く。

 

 

「はぐれ悪魔バイザー。貴方を消滅しにきたわ」

 

 

リアスは一切臆する事無く、言い渡す。

瞬間――――

 

ケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタ……

 

異様な嗤い声が、空間に響き渡る。

それは、完全に人間の発するモノとは次元が違い過ぎる。

そして、正気の悪魔が発するモノでもない。

 

ぬぅ………

 

暗がりからゆっくりと現れた、上半身裸の女。

だが、女の躰は宙に浮いて見える。

いや、違うのだ。

巨大な獣の上に、人間の女を模した上半身裸のそれがくっついているのだ。

 

バケモノとでも言うべきだろう。

四つの異形の足には鋭い爪、尾は蛇の様に揺蕩っている。

大きさは、目検討だが5mはあるだろう。

その姿に、クローディルは嫌悪すら漂わせる視線を向けた。

 

見るに堪えない、醜悪な姿なのだ。

 

 

「主の元を逃げ、己の欲求を満たす為だけに暴れまわるのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、貴方を消し飛ばしてあげる!」

 

「こざかしいぃぃぃぃぃ!小娘ごときがぁぁぁ!その紅の髪の様に、お前の身を鮮血で染め上げてやるわぁぁぁぁぁ!」

 

 

吼えるバケモノに、リアスは鼻で笑うだけの余裕を見せる。

その様子をチラリと視認すると、クローディルは後ろへと下がる。

お手並み拝見、とでも言う様に。

 

 

「雑魚程洒落のきいたセリフを吐くものね。祐斗!」

 

「はい!」

 

リアスの命を受け、祐斗がすぐさま飛び出す。

その速さは、視認すら出来ない程のモノであり、一誠が驚いた様に視線を彷徨わせながら、祐斗の姿を追う。

 

 

「イッセー、さっきの続きをレクチャーするわ。祐斗の役割は『騎士』、特性はスピード。『騎士』となった者は速度が増すの」

 

 

バケモノの動きを牽制しつつ、その速度を増す姿は、既に見えない部類へと変わっていた。

そして、一瞬、銀光が煌めく。

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」

 

 

木霊した悲鳴は、バケモノのモノ。

何が起こったのか、全く分かっていない一誠へ、リアスは状況から目を逸らさずに告げる。

 

 

「祐斗の最大の武器は剣。目では捉え切れない速力と、達人級の剣捌き。二つが合わさる事であの子は最速のナイトとなれるの」

 

 

腕を切り落とされ、どす黒い血が噴き出ている。

痛みのせいでのたうつバケモノの足元へと、小柄な人影が近づいていく。

―――搭城小猫だ。

 

 

「次は小猫。あの子は『戦車』。戦車の特性は――」

 

「小虫めぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!」

 

 

バケモノが怒り狂ったような血走った眼で、小猫を睨むと、その巨大な足で踏み潰そうと、振り下ろす。

誰が見ても絶体絶命な状況だろう。

 

だが、当の本人は気にする事なくそれを受け止めた。

 

 

「『戦車』の特性はシンプル。馬鹿げた力。そして、屈強なまでの防御力。無駄よ。あんな悪魔の踏みつけぐらいでは小猫は沈まない。潰せないわ」

 

 

必死の形相で潰そうとする悪魔に見向き一つせず、小猫はその足を完全に持ち上げ、どかしてしまう。

 

 

「……吹っ飛べ」

 

 

軽いフットワークで空高くジャンプすると、その腹部目掛けて拳を鋭く打ち込む。

 

ドドンッ!!

 

彼女の数百倍はあろう巨体が、たった一撃の打撃で宙を舞い、壁へと叩き付けられる。

この光景には、一誠は茫然と口を開く。

完全に開いた口が塞がらない状態だ。

 

 

「最後に朱乃ね」

 

「はい、部長。あらあら、どうしようかしら」

 

 

リアスの命に応え、朱乃はゆったりと笑みを浮かべながら、小猫によって倒れ込んだバケモノの傍へと歩み出す。

 

 

「朱乃は『女王』。私の次に強い最強の者。『兵士』、『騎士』、『僧侶』、『戦車』、全ての力を兼ね備えた無敵の副部長よ」

 

「ぐぅぅぅぅぅ……」

 

 

まだ、抵抗する気力があるのだろう。

近寄ってきた朱乃の姿を、憎々しげに睨む。

だが、それを見て臆する朱乃ではなく、不敵な笑みすら浮かばせている。

その姿に、うっすらと背筋が凍った。

 

 

「あらあら、まだ元気みたいですね?今日はクローディル君がいますから、はりきってしまいましょうか?」

 

 

ふふ、と嬉しそうな笑みを浮かべ、天へと手を翳す。

 

カッ!

 

刹那、天空が光り輝き、バケモノに雷が飛来する。

 

 

「ガガガガッガガガガッガガガッッ!!!」

 

 

激しく感電するバケモノ。

全身が酷く焼け焦げ、腐臭すら漂うその様子に、朱乃は嬉しそうに頬を上気させていく。

 

 

「あらあら。まだ元気そうね?まだまだいけそうですわね」

 

 

カッ!!

再び、雷がバケモノを襲う。

 

 

「ギャァァァッカカカカッカ!!!」

 

 

誰が聞いても、断末魔にしか聞こえない様な悲鳴。

だが、それに全く意を返さず、続けざまに雷がバケモノを間髪入れずに襲う。

 

その度、雷の明かりに照らされ、ボンヤリと浮かぶ朱乃の表情を彩るのは冷徹な程に美しい嘲笑。

 

完全に楽しんでいるようだ。

 

 

「全く……姫島は本当に好きだね」

 

「な、何が!!?」

 

「おや、知らなかったのかい?姫島が得意とするのは、魔力を使った攻撃で……雷や氷、炎といった自然現象を魔力で起こす力なんだ。そして、どうにも彼女は一旦戦闘が始まると、相手がどれだけ懇願しようとも、敗北を認めようとも、自分の興奮が収まるまでは、手を止めたりしなくてね」

 

「え″…」

 

「彼女は究極のSよ」

 

 

サラリと告白するリアスに、一誠の顔色はみるみる青褪めていく。

 

 

「俺、すっごく怖いっす……」

 

「怯える必要はないわ、イッセー。朱乃は味方にはとても優しい人だから、問題ないわ。貴方の事もとても可愛いと言っていたわ。今度甘えてお上げなさい。きっと優しく抱きしめてくれるわよ」

 

「うふふふふふ。どこまで私の雷に耐えられるのかしらね?ねぇ、バケモノさん。まだ死んではダメよ?トドメは私の主なのですから。オホホホホホホホホ!」

 

「…………いや、本当に大丈夫だからね?」

 

 

高笑いをしながら、未だに攻撃を続ける彼女が心底怖いのだろう。

怯えた表情で、クローディルの背後へと隠れる一誠に、クローディルは淡く苦笑する。

本当に、彼女は仲間への情愛はあるのだ。

流石に、仲間である一誠へ拷問めいた行動は取らないだろうと信じたい。

 

 

それから数分間、朱乃の高笑いと共に雷攻撃は続いた。

 

 

「……姫島、そろそろ本当に止めておくべきだと思うぞ?」

 

「………あら」

 

 

流石に見かねたのか、クローディルが溜息混じりに忠告すると、朱乃は一息ついた様に攻撃を止めた。

既に相手は満身創痍であり、その目は死んだ魚の様に濁っている。

地面へと倒れたままのバケモノへリアスは近づくと、手を翳した。

 

 

「最後に言い残す事はあるかしら?」

 

「……死ね」

 

 

バケモノから発せられたのは、その一言だった。

リアスは特に意を返す事なく、掌からどす黒い魔力の塊を撃ち出し、バケモノを捕縛する。

弾はみるみる大きくなり、バケモノを覆い隠す。

そして、それが宙へと消えた時、バケモノの姿も完全に消滅していた。

 

ふぅ……とリアスが息をつく。

 

 

「終わりね。みんな、ご苦労様」

 

 

その一言で、張りつめていた空気が簡単に緩んでいく。

だが、クローディルは未だに表情を曇らせたまま、辺りを注意深く見詰めていた。

その様子に、彼の背に隠れるようにしていた一誠が不思議そうに見る。

 

 

「ローゼ、どうしたんだ?」

 

「いや……」

 

 

言葉を濁したまま、辺りへと向けられた視線。

それは彷徨う事を止め、一点を見詰めだす。

そこは、バケモノが消し飛ばされた筈の場所。

そして、その近くにいるのは………

 

 

「――――朱乃!!」

 

「っ!!?」

 

 

警告を告げる様に鋭い声を彼が発するのと、空間から赤黒い光が漏れるのはほぼ同時。

 

ブンッ!!

 

光りから伸ばされた手が、一番近くにいた朱乃を薙ぎ払う様に撓る。

その間へといつの間にか移動していたクローディルが、庇う様に朱乃を抱きすくめる。

バキッと鈍い音が空間に響き渡った。

 

 

「クローディル君!!?」

 

「ローゼリアくん!?」

 

 

直撃を受け、地面へと転がる彼の姿に朱乃が悲鳴にも近い声を上げ、リアスも驚いた様に声を上げた。

 

 

ぬっと姿を現したのは、先程と同じ姿をしたバケモノ。

だが、その纏う姿は明らかに違う。

全員の表情に驚愕が写る。

 

 

「さ、さっき、消し飛ばされた筈っすよね!!?」

 

「ど、どういう事なの!!?」

 

 

狼狽える一誠の声と、状況が全く読めていないリアスの声。

全員が混乱したまま、武器を構え、相手を見据える。

その様子に、ケタケタとバケモノは笑った。

 

 

「所詮は小娘。貴様らが攻撃していたのは、私の餌に過ぎないんだよ!!」

 

 

ブンッと再度撓る腕。

それにすぐさま対応して、全員が散り散りに逃げる中、一誠だけが対応しきれずに体を竦ませる。

 

 

「っ!!?逃げなさい!!イッセー!!」

 

 

流石に、彼へと気を回せるほど冷静ではなかったのだろう。

慌ててリアスが悲鳴にも似た声で、一誠へと叫ぶ。

だが、もう遅い。

脅えきったままの表情の彼へと腕は撓り―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――その鼻先で、ピタリと腕が止まる。

 

 

「全く……油断大敵って言葉の意味をちゃんと理解しているのかい?」

 

 

場違いではないか、と思う程に涼やかな声。

声の主は、ゆっくりと体を起こすと口元に滲んだ血を指で拭う。

 

余裕すら感じさせる仕草に、バケモノが怪訝そうに睨みつけた。

 

 

「貴様……私の腕を直撃して、その程度だと!?」

 

「直撃?」

 

 

ふっとクローディルの口元に笑みが映る。

その笑みは、相手を小馬鹿にした様。

ギンッとバケモノの血走った双方が、彼を睨んだ。

 

 

「ろ、ローゼ!!お前、大丈夫なのかよ!?」

 

「僕より、自分の心配をすべきだと思うけど………いや、素直に受け取らせてもらうよ。ありがとう、兵藤。僕はご覧の通り、ほぼ無傷だよ。倒れた時に、唇を切った位じゃないかな?」

 

 

少し怯えた様子だが、第一にクローディルの怪我を心配してくる一誠に、一瞬目を丸くし、少しだけ呆れた様な口調で答える。

とはいえ、こういった純粋な心配を向けられるとは思わなかったのだろう。

少しだけ、その瞳に柔らかなモノが映り、一誠へと向けられたが、すぐさま霧散する。

 

次に移ったのは、バケモノへの殺意。

 

 

「さて……僕としては、特にグレモリー眷属に思い入れがある訳ではないけど、仕事なのでね。それに、僕個人ではなく……兵藤は、僕の親友が大事に思っている友人だ。そして、彼女に手を上げたのも、頂けないよ?」

 

 

クスッと笑みが浮かび、口調はいつもとほぼ同じ。

だが、彼の纏う空気は怒気を孕み、一瞬にして殺気が膨れ上がる。

彼の代わり様に、全員がその場で硬直する。

 

 

「あぁ、そういえば、答えてなかったね?僕は直撃なんてしてないよ。だって―――――」

 

 

スッ……と上げられた右手が、空で何かを掴むと、そのまま引き寄せる。

その刹那―――

 

 

シュルシュルシュル.....

 

 

 

「っ!!?」

 

 

ギシッと音を立てて、バケモノの肉体へと何かが絡まる様な感触が襲う。

それは、目では捉えきれない透明な糸――

 

 

「―――こうして、君は僕の糸で捕えられているんだから」

 

 

ゆったりとした口調。

僅かな月明かりに反射する糸は細く、クローディルを基準として、四方よりバケモノを補足している。

良く見れば、一誠の前で止まってしまっている腕にも、無数の糸が絡め取り、その動きを阻害していた。

その光景は、獲物を捕らえた蜘蛛。

 

その事に気づいたバケモノは、ヒッと短い悲鳴を上げた。

 

 

「ぎ、銀の糸……!!?まさか、貴様!!」

 

「あぁ。自己紹介が必要かい?僕はクローディル・ローゼリア。我が主、詩神彼方侯爵の名において、仕事の障害である君を排除させてもらうとするよ」

 

「っ!!や、やはり!!貴様は、あの『緋眼の銀狼(ひがんのぎんろう)』っ!!?」

 

 

悲鳴にも似た声と共に、ズッ...と何かがずれる様な音が響く。

次の瞬間、バケモノは断末魔すらあげられずに、その四肢を糸によってバラバラに裂かれ、完全なる肉塊へと変貌していった。

クスリ、と彼は笑う。

 

 

「全く……もし、今日同行していたのが『銀銃の黒狼(ぎんじゅうのこくろう)』だったら、君は生きている事を後悔させられていただろうね」

 

 

僕は、そこまでしつこくはしないけど。

 

そう呟き、右手を横へと振る。

先程まで空間を支配していた糸は、主の命に従う様に空間へと消え去っていた。

残ったのは、耳が痛くなる程の沈黙……

 

 

「リアス嬢、油断は大敵ですよ?」

 

「……ごめんなさい。もう、倒したモノだと思ったの」

 

「いいですか?ここは、相手がずっと住みついていた、謂わば敵のテリトリーなのです。相手とて、主から逃げ遂せる事が出来た悪魔。逃走の準備位していたでしょう。『王』たるもの、様々な状況を想定し、それに応じた駒の移動を考えねば、全滅するのですよ?」

 

 

厳しい口調で咎めると、リアスは心底反省した様に、シュンと彼の説教を聞いている。

その姿に茫然としている一誠へ、又しても祐斗が近づくと、そっと耳打ちしてくれる。

 

 

曰く、これも日常茶飯事なのだと。

 

 

 

 

「僕らは確かに君の護衛ではあるけど、そんな様子ではゲームなんてとてもではないが、即皆殺しに合う。それから、『王』自らが前へと出るなんて、愚の骨頂だと前々から……」

 

「ほ、本当に凄いな。部長がどんどん小さくなっていくぞ?」

 

「あはは……部長も、クローディル君には頭が上がらないみたいなんだ。チェスゲームでは、彼に一回も勝てなかったみたいだし」

 

 

未だに続くクローディルの説教に、一誠が茫然とし、祐斗が苦笑する。

長々と続いた説教も、一段落ついたのだろう。

ふぅ、と彼が息をつくと、不機嫌な声で朱乃、と彼女の名を呼ぶ。

 

 

「君も、警戒が足りないよ」

 

「……ごめんなさい、クローディルくん」

 

「もし、僕が気づかなければ骨折は覚悟してもらう事になっていた。戦闘に出るな、とは言わない。君は、グレモリー眷属の『女王』だ。前に出て、チームを『王』共々支える事こそ、『女王』に必要な事だと、僕も理解している。………それでも、君に怪我をされると、僕の心臓が壊れてしまうよ」

 

 

溜息混じりに呟かれた言葉は、純粋に心配から出た言葉。

彼に心配させた事が心苦しいのか、朱乃はもう一度ごめんなさい、と彼へ謝罪する。

心底反省している様に捕えたのだろう、クローディルもそれ以上は言わずに、ただ彼女の髪を優しく撫でた。

 

その仕草に、一誠は何かを感じ取ったのだろう、近くにいた祐斗を肘で突く。

 

 

「なぁ、あの二人って……」

 

「此方君の話では、もうほぼ確定らしいよ?」

 

「マジかよ!?じゃ、じゃあ、此方が言ってたお手付きって、ローゼの事だったのか!!?」

 

 

ガクリと肩を落とす彼へ、祐斗が苦笑しつつもポンポンと労わる様に背を叩く。

狙っていた訳ではないにしろ、それでも美人な部員に彼氏がいると分かれば、残念だと思わない男はいないだろう。

と、話が済んだらしいクローディルが二人へと歩み寄り、首を傾げた。

 

 

「このまま解散になるんだが……どうした?兵藤」

 

「あ、えっと……あはは……」

 

 

純粋な疑問をぶつけてくる彼へ、一誠の代わりに祐斗が曖昧に笑う。

多分、彼に『朱乃先輩の彼氏なのか?』と聞けば、否定するだろう。

彼は相手をどれだけ愛していても、束縛しようとか、自分のモノになってほしいとは思わないらしい。

 

内心は驚く程情熱的なくせに、淡泊な反応しか出来ない残念な奴、と評価したのは彼の親友。

 

その通りだと、祐斗も納得してしまう。

 

 

「まぁ、兎に角、このまま自宅解散らしいよ。一誠は、そろそろ帰らないとご両親が心配するんじゃないかな?家族がいるんだから、大事にするといいよ」

 

「お、おう。っと……部長、あの聞きそびれてしまったんですけど」

 

「……何かしら」

 

 

クローディルの説教が聞いたのだろう、少々げっそりとした印象のリアスが、それでも気前よく応じる。

 

 

「俺の駒……っていうか、下僕としての役割はなんですか?」

 

「『兵士』よ。イッセーは『兵士』なの」

 

 

優しい口調で告げた言葉に、一誠はその場で崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

完全にハートブレイク状態だった一誠を自宅へと返し、一同は再度部室へと戻ってきた。

依頼主へと報告するという義務があるからだ。

それに、彼には言ってはいなかったが、彼女の眷属には家庭もなければ、家族もいない。

その為、いつ帰ろうとも誰も叱る人間がいないのだ。

 

部室の扉を開け、耳に飛び込んでくる水音。

一体何事だ、と身構える仕草を取る祐斗と小猫へ、クローディルが手で軽く制す。

水音は部室に備え付けられたシャワー室から。

 

 

「……血の匂いがします」

 

 

渋い顔で呟く小猫に、クローディルは無言で歩を進め、シャワーカーテンに手を掛けると、一気に開く。

途端、部屋に先程よりも大きくシャワー音が響き、そこにいるであろう人物へ、クローディルは舌打ちした。

 

 

「っ―――――――――君は大馬鹿者かッッ!!!!!」

 

 

雷でも落ちたか、と思うほどの怒号。

普段から声を荒げない彼にしては、珍しい状況だ。

何事か、と全員が彼の背後へと回り、言葉を失う。

 

 

そこにいたのは――――服のまま、血で真っ赤に染まったそれを流している此方。

 

 

白かったシャツは、既に本来の色を失い、赤く染まっている。

自分で治療したらしき包帯は、申し訳程度に腕に絡みつく程度で、全く意味を成している様には見えない。

 

そして、至近距離からクローディルに怒鳴られていると言うのに、彼の反応は薄い。

のろのろと視線を上げ、普段の姿など見る影もない。

 

クローディルは自分が濡れる事も気にせず中へと入り、シャワーを止めると此方へ肩を貸す様に寄り添う。

彼の体温は普段よりもかなり高い。

 

 

「リアス嬢、部室を濡らしてしまいますが……」

 

「それどころじゃないでしょう!?」

 

 

一応の断りを入れようとしたが、無用だったらしい。

構わないとでも言いたげに彼に言葉を遮った彼女へ、クローディルは控えめに頭を下げた。

 

 

「朱乃、タオルを頼めるか?それから、祐斗は包帯を。搭城は此方を運ぶのを手伝ってくれ」

 

 

申し訳ないと思いつつ、周りにいた部員へと指示する。

それに、誰一人として文句を言う事無く、すぐさま従ってくれる。

 

失礼します、と小猫がクローディルとは逆方向へ入り、彼を支えた。

 

 

「どうしますか?」

 

「取り敢えず、ソファーへ」

 

 

了解しました、と小猫が答える。

すぐさま彼の躰を移動させ、ソファーへ座らせると、朱乃から受け取ったタオルで身体を拭いていく。

服は既にずぶ濡れで、座ったソファーは水をたっぷり吸ったせいで、色が変わってしまった。

 

 

「クゥ……あつい……」

 

「傷が熱を持ったんだ、馬鹿。化膿はしてないし、それ程深いモノじゃないから、僕が縫合するよ」

 

「ん~………」

 

 

舌足らずの声に、呆れながらもそう答える。

拭きながら確認しただけで、わき腹にある切り裂かれた様な傷がよく目立つ。

腕等は擦り傷程度に見える為、そこは消毒して包帯を巻けば平気だろう。

 

クローディルは慣れた手付きで、傷を指でなぞりながら、自身の魔力で作り出した糸で縫合する。

同じ眷属同士ならば、魔力を相手へ送り込む事で治癒を早める事が出来るからだ。

一通り治療を済ませ、祐斗から受け取った包帯を丁寧に巻いていく。

不安なのか、ずっと彼に寄り添う様に身を寄せている小猫が、クローディルへと視線を向けた。

 

 

「……先輩」

 

「傷が発熱してるだけだ。大事に至る事はないよ。でも、明日は休ませて一旦様子を見る。僕も一緒に休んだ方がいいだろうね」

 

 

未だ、ぼんやりと眠そうな表情でいる此方の髪をワシャワシャと拭きながら、苦笑する。

 

 

「常備薬は毎月彼方から送られてくるし、足りない様なら連絡を入れればいいだけだ。大丈夫。明日には、元通りの傍若無人な此方に戻っているよ」

 

「……ねぇ、ローゼリア君。そろそろ、話してくれてもいい頃合じゃないかしら?」

 

 

何時にもなく、怒気を込める様な口調でリアスが呟く。

その瞳は、どこか咎める様に細められ、睨んでいるかの様な雰囲気すらあった。

クローディルはそれを一瞥すると、また此方へと視線を戻した。

 

 

「何を、です?」

 

「此方が姿を消す理由よ」

 

「さぁ?それは僕にも分かりません」

 

「嘘をつかないで!」

 

「嘘、じゃありませんよ。彼への仕事は、全て主である詩神彼方が管理しています。僕では、彼に仕事が入った、程度にしか分かりません」

 

 

もういいですか?、とクローディルがリアスを睨む。

どこか投槍の口調には、彼らしからぬ怒気が含まれている。

きっと、何を言っても無駄なのだろう。

リアスはグッと唇を咬むと、いいわとだけ呟いた。

 

 

「…ローゼリア先輩、お手伝いさせて下さい」

 

「搭城……」

 

 

彼を肩で支え、帰り支度を始めたクローディルへ、小猫が手を出す。

その瞳は、雄弁に拒絶の色を濃くしていたが、小猫は屈する事なく、此方を支える。

 

 

「お願いします」

 

 

ハッキリとした口調で押せば、彼も観念したかの様に、溜息を零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





彼の身に一体何が起こっているのか……
それを書くのは、かな~~~~り!!先のお話しとなります(苦笑)

今回は、そんな伏線のお話。
此方&クローディルは、基本的に戦術よりも暴れたい黒狼ときちんと状況把握した上で戦術を立てる銀狼コンビです(笑)
その為、攻撃力としては圧倒的に此方が優勢ですが、手数ではクローディルの方が強いです。


さて、少しだけ補足を。
クゥちゃんの能力ですが、魔力を糸状に変形させて攻撃するのが得意です。
後、トラップとか拷問なんかも得意です←
前のお話に書きましたが、彼は堕天使出身。
実は、元エリートさんだったりします。その為、そういった直接的強さよりも間接的強さに磨きをかけていったのでしょう。



それでは!
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