ハイスクールD×D~闇桜~   作:水無瀬久遠

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黒三話 異変と勧誘

禍の団(カオス・ブリゲード)』の仕事に、勧誘と言うモノがある。

これは、有能であり世間的にも外れてしまった『はぐれ者』を仲間に引き入れて手駒としよう、といった内容だ。

これは、人数的に余力を欲する『旧魔王派』や人間に拘る『英雄派』が主に行っている。

 

一応は美猴も『英雄派』の括りとなるのだが、殆ど彼はそれから外れている。

因みに、ローウェンと黒歌はテロ組織に所属はしているが、どこかの派閥に入っている訳ではない。

ある意味、フリーの遊撃兵だ。

 

いや、傭兵とでも言うべきだろうか。

 

 

ローウェンは痛む頭を押さえ、美猴と共に深い森の中を歩く。

目深にフードを被り、その表情には苛立ちがありありと浮かんでいた。

 

 

「それで……美猴。何故こんな事になったのですか?」

 

 

地を這う様な声に、美猴はビクッと肩を震わせると、あはは……と乾いた笑みを浮かべる。

どうやら、いつも以上にご立腹らしい。

 

 

「い、いや~~~、ほら?一応は俺っちも、お前も『禍の団』の構成員な訳だしぃ。こういった仕事も大事じゃん?」

 

「残念ながら、僕は構成員である前にオーフィスの従者です。その為、僕に対する要請は戦闘のみという約束なんですよ……と、前にも話しましたよね?」

 

 

ふふふ……と暗く笑む彼は、完全に瞳が暗い光を宿している。

ヒィィィと悲鳴を上げる美猴。

 

 

「これには、黒歌の分も含まれているんでぃ!!」

 

「……黒歌さん、ですか?」

 

「じ、実はさ……旧魔王派に黒歌の存在が知られちまって……」

 

「美猴……」

 

「お、俺っちのせいじゃないって!!」

 

 

益々険悪な表情へと変わる彼に、美猴の顔色も悪化していく。

だが……それが本当であれば、厄介な事になった。

出来る事なら、暫くは彼女の存在を有耶無耶な状態にしておきたかったローウェンにとって、彼女を囲ったままにしておく事には、少々リスクが出てきてしまったのだ。

 

元より、ローウェン自身は『禍の団』に一線を引き、そこから入ってくる輩を全て消す事でオーフィスの安全を確保してきた。

だが、彼女が気に入ってしまった者達については、全て保留として、殺さず逃がさずを貫いていた。

 

彼らがオーフィスの居場所を言いふらすのであれば、即座に殺す。

そうしないのであれば、暫くは見逃しておく。

それが、ローウェンが自分自身に言い聞かせてきたルール。

 

勿論、黒歌の存在もこれに該当するのだが、彼女は勝手が違う。

黒歌は元々『禍の団』の構成員ではなく、自分が連れてきて、勝手に所属させてしまった。

そんな存在である彼女を、他の派閥が見逃す筈はない。

これは、十分な恐喝材料なのだ。

 

そして、その黒歌の存在が公となり、美猴がローウェンに殺される事を覚悟して(いるかどうかは定かではないが)連れてきた。

それだけ、面倒な事になっているのだろう。

 

 

「……それで、奴らはなんと?」

 

「文句はねぇみたいでぃ。黒歌はSSランク指定のチョーお尋ね者だしな。でも、仕事をしないってのは頂けないっつぅ感じかねぇ」

 

 

つまり、構成員なら仕事をしろ、と言いたいのだろう。

だが、正直まだ彼女を表に出す事には賛成できない。

未だに彼女の首を狙う悪魔は多数いる。

そんな中で、勧誘の仕事なんてさせれば、今以上に面倒な事になるだろうし、オーフィスが腰を上げる危険性まである。

……彼女は、自分の気に入った者に関して、少々寛容なのだ。

 

はぁ……とローウェンの口から溜息が漏れた。

 

 

「分かりました。それなら、少々気が乗りませんが、同行致しましょう。………ただし」

 

「名前を出すな、だろ?俺っちだって、分かってるって、ナイトメア」

 

「……それなら、構いませんよ」

 

 

美猴の言葉をしっかりと確認し、再度フードを被り直し、口元をスカーフで覆う。

一見して黒尽くめとなった彼は、低い声で行くぞ……と告げると、森を抜ける。

その先にあったのは、廃墟と化した教会。

どうやら、ここをねぐらとしている『はぐれ』を勧誘しろ、という事なのだろう。

気配を辿ると、中には数十人という人間の気配に混じり、魔力の波長を感じる事が出来る。

 

 

「……相手は?」

 

「なんでも、単独で動いてる堕天使っつぅ話でぃ」

 

 

共に教会を見上げていた美猴に尋ねれば、事前に調べたらしい情報が返ってきた。

堕天使……

天使が人間によって堕落させられた存在。

 

それの勧誘を、悪魔である黒歌にさせよう等と、よくも考えられたものだ、と内心で毒づく。

確かに、これならば美猴が自分を連れてきた理由がぼんやりと分かる気がする。

 

 

「兎に角、さっさと済ませるぞ」

 

「了解でぃ」

 

 

彼の呑気な返事を聞き、ローウェンは古びた扉を開ける。

中には、事前に感じていた気配の主達が、突然の来訪者に警戒の色を強めていた。

 

それは当然だろう。

ここに来る前も、そして扉の前で教会を見上げていた時も、二人は気配を完全に絶っていたのだから。

思い思いに武器を取り出す彼らに、ローウェンは低く嗤う。

 

 

「お前らに用はない。さっさとここのボスを出せ」

 

 

冷たく突き放す様な響きには、濃厚な殺意が滲む。

その気配に、全員がたじろぎ、中には武器を手に震えている者までもがいた。

だが、唯一人だけその様子を楽しげに笑う人間……。

 

 

「んーんー。お宅らはなぁんの用っすかねぇ~?」

 

 

イカれた笑みと共に、男が一人前に出る。

気配からしても、人間に間違いないだろう。

だが、その手には光の刀身を生やした柄だけの剣と銀の銃が握られている。

そこから連想させられる相手の職種は……

 

 

「……はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)か」

 

「イエスイエ――――ス!!俺ってば、神様の為に頑張って悪魔を殺しちゃう、とっても偉い神父さんなのでぇ~~す」

 

 

イエーイと可笑しなテンションで笑う男に、ローウェンは溜息を漏らす。

本当に、最近溜息の回数が増えている気がする。

 

 

その原因は、近くにいる美猴が主なのだが……彼は出来るだけローウェンと目を合わさぬように、明後日の方向を見ている。

取り敢えず、館に戻ったら一発殴ろう。

 

 

「ここの主に用がある。会わせてもらいたい」

 

「ここのボスっすかぁ?てか、なぁんでここに来たんすかねぇ。あんた、メッチャクチャ怪しいじゃないっすか。悪魔?悪魔?悪魔っぽいから、殺してOK!!つぅわけで、死にやがれ覆面野郎」

 

 

全く話が咬みあわず、男は何を思ったのかローウェンへ向かって銃口を向ける。

だが、特に何も変化は起こらない。

あえて変わった所を上げるならば、ローウェンの纏うマントがふわりと揺れた位だろうか。

 

その事実に、男の表情に初めて笑みではなく、驚きが映る。

 

 

「ふん……所詮は、この程度の生き物と言う訳か」

 

 

つまらなそうに、呟く。

きっと、何も知らない人間が見たならば、何も起こっていないと思うのだろう。

だが、男は確かに発砲した。

対悪魔用の武器である、退魔銃……光の弾丸を。

しかし、その弾丸を受けた筈のローウェンは何事もなかったかの様に振る舞っている。

いや、正確には当たる直前に消したのだ。

 

彼の能力によって………

 

 

「さっさと、お前達の主を呼べ。用事が済めば、俺達はいなくなる」

 

「さっさと、呼んだ方が身の為だと思うぜぃ。今、ナイトメアは心底機嫌が悪いからなぁ」

 

 

切実とも感じられる声音で、美猴が付け加える。

だが、正直言って彼にとっても死活問題なのだ。

ただでさえ、無理矢理連れだした上に、攻撃まで受けている。

彼が目の前の人間を殺していないだけ、まだ理性が働いている証拠だろう。

だが……一度殺しが始まれば、勧誘どころの騒ぎではない。

多分、この教会そのものが消滅する事となるだろう。

 

 

美猴としては、それについては何ら問題はないが、これ以上彼の機嫌が損なわれれば、被害は自分へと帰ってくる。

一日絶食なんて生温い。

きっと、生きている事を後悔させられる程に、自分は責め苦を味わう事になる。

 

美猴の中で、それは決定事項に変わっていく。

 

 

 

 

(頼むから、これ以上機嫌を損なわせないでくれぇい)

 

 

 

内心、冷や汗ものだ。

そして、その願いは見事に叶う事となった。

彼らの後方より響く足音。

その瞬間、辺りがどよめき道を開ける。

 

そこにいたのは、美しい女性だった。

だが、その背には黒い翼。

つまり、彼女がここのボスなのだろう。

 

 

「私の根城に何か御用かしら?」

 

「あんたがここのボスでぃ?」

 

「私はレイナーレ。いずれ、至高の堕天使となる者よ」

 

 

偉そうに胸を張る彼女を、ローウェンは興味なさそうに見つめる。

感じる魔力は中の下といった所だろう。

それならば、前にすれ違ったあの青年の方がよっぽどマシな雰囲気がある。

 

 

………あの青年?

 

 

ふと、自分の思考に疑問が生じる。

何故、あの青年の事が思い浮かんだのだろう。

彼とは、あの時すれ違っただけで面識等は一切ない。

それなのに、こんなにも思考の端に引っかかるのは一体……

 

 

「おい、ナイトメア!!」

 

「!?」

 

 

意識が思考から浮上する。

隣を見れば、帰ろうとしている美猴の姿。

どうやら、話し合いは終わったらしい。

そして、その結果が決別であった事も容易に想像できた。

彼に促されるままに教会を後にしようとして……ローウェンの足が止まった。

 

 

「おい、レイナーレ」

 

「……何よ」

 

「あの男には手を出さない方が身の為だぞ」

 

 

突然の言葉に、レイナーレのみならず美猴も首を傾げる。

 

 

「あの男?」

 

「こげ茶色の髪と蒼い瞳の男だ。年は17位でこの近辺の高校に通っているらしい」

 

 

言いたい事はそれだけなのだろう。

それ以上は言わず、ローウェンは教会を後にする。

その後を慌てて美猴が追ってきた。

 

 

「お、おいおい、ローウェン!」

 

 

一体、彼は何が言いたかったのだろう。

美猴は訳が分からないと言いたげに、ローウェンを呼び止める。

その声に、彼は歩調を緩める程度で堪えた。

 

 

「一体、どうしたってんだ?お前らしくないでぃ」

 

「……いえ。唯単に、僕の獲物を捕られたくなかっただけ、だったのかもしれませんね」

 

「何の話でぃ?」

 

「僕の独りよがりですよ」

 

 

話しは終わりだ、とでも言いたげにローウェンはゲートを開く。

だが、美猴には一瞬であれ見えた。

彼の口元がとても嬉しそうに……そう、お気に入りの玩具を手に入れた子供の様な無邪気な笑みが不気味に張り付いている事に……

 

 

 

 

 

 

・0




どうしても、オリジナル要素が多くなりやすい黒サイド;;
少々、内容が薄くなってしまっていますが、そこはご愛嬌でお願いします。


さて、補足です。
文中に出てくる『ナイトメア』という名前。
これは、ローウェンが仕事をする際に使う名前となります。

大雑把にいえば、ハンドルネームですね!←

流石に、テロリストのパトロンから貰える資金では、ローウェンが必死に算盤を叩いて補っている幻霧の館のエンゲル係数は賄えませんので、彼が人知れず夜な夜な働いている訳です。
誰よりも苦労人です。頑張れ、ロウちゃん!!←←←




それでは!
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