私のまちがってしまった青春ラブコメはもう取り戻せないのだろうか   作:ぶーちゃん☆

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予想通り、ほぼ雪ノ下様の独壇場になってしまいました。
そして八幡が居なくなっちゃいました。




戦慄する二人のぼっちと三人のリア充(笑)

 

突如現れたお怒りオーラを放ちまくっている四人の少女+ご迷惑お掛けしますとペコペコしている一人の少女の登場に、場の空気がピリッと刺激的になった。主に比企谷君が。

 

ま、まぁ確かに比企谷君が一番引きつった顔はしてるけど──実際は私もえらい顔してるんだろうけど──もちろんしーちゃん達だって物凄い困惑気味。

そりゃそうだろう。総武の制服着た明らかに自分達より遥かに高カーストそうな美少女三人に加え、今まさに話題にしていた中学時代のカーストトップの折本かおりが、自分達に敵意を向けてきてるんだから。

「え……?なに……?」と、迫って来る四人に縮こまっていた。

 

このまま一方的な蹂躙が行われちゃうのかと緊張して見ていると、事態は思わぬ方向へ。

 

「ん?あれー?えっと確か……雪ノ下さんと……由比ヶ浜さん、だよね。お!一色ちゃんもいんじゃん」

「あらこんにちは。確か折本さん……と言ったかしらね」

「や、やっはろー、バレンタインぶりだねぇ……」

「あ、あれ?……なんで折本先輩まで……?」

 

おっとまさかの世間話が始まってしまいました。

比企谷君も私もしーちゃん達も緊張感のなか「待て!」された状態で取り残されちゃってますね、コレ。

 

※※※※※

 

「久しぶりー。え?なに?どしたの?」

「折本先輩こそ、なんでここに居るんですか?」

「へ?なんでっていうか……」

 

するとチラッと気まずそうにこちらに視線を向け、私と目が合うとあからさまに視線を逸らした。おいっ……

 

「いやー、なんでも何も、ココあたしの地元のカフェだしさー、学校帰りにたまたま寄っただけだよ?ねー、千佳」

「そ、そうだねー……」

 

ヤツラは嘘を吐いている……

 

「そ、そういう一色ちゃん達はなにしてんの?地元違うよね。総武の学校帰りに寄る店でもなくない?

雪ノ下さんて確かあたしがバイトしてるカフェの近くに住んでるとかって聞いたし、クリスマスに聞いた限りじゃ一色ちゃんも全然違うよね?

もしかして由比ヶ浜さんが地元近いとか?」

「や、やー……あ、あたしはここから二駅くらい先の駅かなー……?」

 

困ったように笑いながら目を逸らすお団子美少女(由比ヶ浜さん?)を見てから、同じくスッと目を逸らす黒髪美少女(雪ノ下さん?)といろはすちゃんを一瞥してから、ヤツはニヤリと笑った。

 

「あー、やっぱ一色ちゃん達も面白そうだから比企谷を尾けて来たクチでしょー。ヤバいウケる!痛っ!?」

 

『も』!?あんた今『も』って言ったからね!?

折本さんはすぐさま仲町さんに頭をはたかれました。

 

「貴女はなにを言っているのかしら私達が比企谷君ごときを尾行するはずが無いでしょうおかしな言い掛かりをするのであれば名誉棄損で訴えることも辞さないけれどよろしいかしら」

「そそそそんなワケ無いし!ヒッキー尾けるとかキモいし!」

「わ、わたしたち、先輩なんかを尾けるとかそんな暇人じゃないですけどっ!?」

 

…………尾けて来たんですね分かります。

私が驚愕の視線を向けていると、いろはすちゃんがそっとおっきい乳の後ろに隠れた。

やはりアイツか……

 

あの娘……葉山君に連行されながらも、こっそりハーレム仲間に連絡着けて尾行させやがったな……

 

「「「あ、あはははは……」」」

 

顔を真っ赤にさせて俯く黒髪美少女と、乾いた笑いでその場を乗り切ろうとする三人のトップカースト。

そんな中、登場から引きつった笑顔のまま終始ペコペコしてる仲町さんだけが、やけに私の心を和ませてくれました……

 

こうして誰一人得をしないまま、強襲してきたメンバーの自己紹介?が終わった頃に、ようやく我に返って息を吹き返した集団が居た。

もちろん私達じゃないよ?だって私も比企谷君も聞きたくもなかった真実にグッタリしてるもの。

だってこの人達、ずっと尾けて来たって事は、私達の話、始めっから全部聞いてたんでしょ……?うん。もういつでも死ねる。

 

「ね、ねぇ!なんなの!?」

「意味分かんねぇんだけど!」

「いきなり入ってきて勝手に話進めないでくんない?」

 

ああ……やめときゃいいのに……あんたら空気読めないの?この人達と自分達の格の違いが分かんないの?なんでわざわざ死地に赴くのかねー……

 

すると、黒髪美少女の雪ノ下さんが、あまりにも美麗な動作でしーちゃん達の方へと振り返り、そしてあまりにも美麗な微笑で優しく語り掛けた。

その絶対零度の一言にて虐殺ショーの始まりがここに高らかに宣言されたのであった。

 

※※※※※

 

「あら、まだ居たのね。あまりの存在感の無さに気が付かなかったわ、ごめんなさい。

そういえば先ほどモブがどうこうと言っていたけれど、mob……集団や群れと言った意味ね。

つまり十把一絡げのその他大勢のキャラクターに対して、よくアニメーションやインターネットなどで用いられる用語、及びその意味合いから陰の薄い個人に対して使われる蔑称ね。

ふふっ、成る程、存在感の無さに気が付かない程度の存在。言い得て妙ね」

 

女の私でさえ惚れ惚れするような美しい微笑みで恐ろしい言葉をしーちゃん達へと放つ。

あんな綺麗な笑顔なのに見てるだけでちびっちゃいそうなんですけど。

私があのグループの一員だったら心臓発作を起こしちゃう自信があります。

 

「ところで確かカースト制度とは古くはヒンドゥー教における上級身分から奴隷などまでを分類する身分制度の事よね。

その意味合いを使って、最近では学生社会などで一つのコミュニティー内における人間関係を、容姿や人望で区分して上下関係を表す際に持ちいる言葉だと記憶しているわ。

見たところ、お世辞にも飛び抜けて容姿が優れているという訳でも無さそうなのだけれど、それで貴女達はカースト制度の上位に位置するのかしら?」

 

オ、オウ……

私、すでに白目を剥きそうなんですけど、同じように白目を剥きそうなしーちゃん達を、今度はいろはすちゃんが上から下へと舐め回すように観察してからとってもいい笑顔をした。

 

「ぷっ!上位カーストっ」

 

嘘……でしょ……?雪ノ下さんといい、いろはすちゃんといい、そんな素敵な笑顔でなんでこんなに恐いの!?

 

「カースト?車で音楽聴ける機械?」

「結衣先輩は喋らない方がいいです」

「ウケるっ」

 

今の会話の流れでカーステは無いだろ。あの娘、総武高校にどうやって受かったの?てか私、あの娘が受かった同じ年に落ちちゃったんですけど。

 

「もしくはとても素晴らしい人望を持ち合わせているのかしら。

それにしてはこのような公共の場所でヒステリックに獣のように喚き散らしたり暴力を振るおうとしているその獣のような人格を見る限り、とてもそうは見えないのだけれど。

もしくは学業が飛び抜けていい………………ごめんなさい。それは無いわね」

 

ひ、酷いっ……しーちゃん達の制服をわざと一瞥してから、少し申し訳なさそうな憐れむような顔で首を振り即座にその意見に否を付けた。

 

「容姿は、まぁ良くて並、人格は獣並、学業は……。申し訳ないのだけれど、私には貴女達がカーストの上位に位置していられるという理由がどこにも見受けられないわ?

もしよければ、どういった理由で、どのようにして、身分制度の上位に居られるのかを後学の為にもご教授頂けないかしら?

私は残念ながらそのカースト制度という物から外れてしまっている存在みたいだから、貴女達の貴重な意見がとても興味深いのだけれど」

 

心底キョトンと首をかしげ、とても素敵な氷の微笑を向ける。

たぶん同じような事を他の誰かに言われたのだとしたら、コイツ等はまた激昂して喚き散らしたんだろうけど、総武高校の制服を着ているわ、とんでもない美女だわ、そして尋常では無く冷たい視線に晒されているわのこの状況では、この程度の女達ではガクガクと震える身体と涙を堪えて口を噤ぐ以外にはどうする事も出来ないんだろう。

もちろん私だったらすでに昇天してるまでありますっ!

 

すると雪ノ下さんは、さらに冷たい眼差しになった。

うっそん!?そこからさらに冷たくなれる物なの?

 

「……そこにいる男は、貴女達よりはよっぽどその他大勢と言えないわね。

寧ろその他大勢よりも遥かに劣る程に目も心も腐っているわ」

 

ここへ来てまさかの比企谷君ヘイトに回る……だと……?

 

「でもね、少なくともこの男は、どうでもいい十把一絡げの存在の貴女方と違って、他に替えが無い存在なのよ。

貴女達なんかよりも、よっぽど存在価値のある人間だわ。

…………貴女達ごときが、比企谷君に存在価値が無い人間だなんて言わないで貰えるかしら」

 

……凄い。コレが言いたかったんだ、この人は……

コレの為にここまでの物凄い罵倒……あなたどんだけ怒ってたのよ……それに、どんだけ愛されてんのよ、比企谷君。

ふと見ると、由比ヶ浜さんもいろはすちゃんも、優しい笑顔で雪ノ下さんと比企谷君を見つめている。

 

こんなの、私なんかが入る余地なくない……?なんか、私だけ場違いな気がしてきた。

この場で一番のその他大勢って、私じゃん……私だけじゃん……

 

「あのさー」

 

その時、雪ノ下さんの言葉を黙って聞いていた折本さんが口を開いた。

 

「さっきあんたら、あたしの名前出してたけどさ、えーっと……どこの誰子ちゃん達だっけ?

比企谷と同じで、あたしもあんたらの事なんて全っ然記憶に無いんだけどさー」

 

すると折本さんは私の肩をいきなり抱き寄せた。

え!?な、なに!?

 

「なんか上位カーストがどうとかワケ分かんないこと言ってたけどさ、少なくともあたしはあんたらの事なんか知んないし興味も無い。

でも言っとくけど美耶はあたしの友達だから。雪ノ下さんじゃ無いけど、あんたらが名前出してたあたしには、あんたらより美耶の方が遥かに価値があんだよね。

あんたらがどんだけ自分の世界で価値があるか知んないけど、あたしからしたらあんたらはその他大勢なんだよ。

だからその他大勢のあんたらがさ、あたしの友達の美耶に友達居ないとかぼっちとかって勝手に馬鹿にしないでくんない?」

 

────やばい……ちょっと泣きそう……てかちょっと泣いちゃってんだけど私。

 

ありがとう折本さんっ……

でもこれだけは言っとかなきゃね。

 

「……ぐすっ……まだ友達未満だからっ……!」

「美耶手厳しいっ、ウケる!へっへー、でも『まだ』って聞いちゃったー」

 

うぅ……うっさい……!

 

※※※※※

 

あまりにも美しい氷の女王に蔑まれ、自分達の中でも上位カーストとして知られている折本さんにも罵倒されたしーちゃん達は、もはや一言も発する事も出来ずにただ震えて泣きながら逃げ去るのみ。

だからやめとけって言ったのに……

 

でも雪ノ下さんはまだ言い足りなかったみたい。あれだけ言っといてまだ!?

そして黙って逃げ去ろうとしたコイツらにトドメを刺した。

 

「あら、モブだって言葉くらいは発する物だと思うのだけれど。

言葉も発さない集団や群れは、そのうちmobどころか 『a back ground』、背景になってしまうかも知れないから、十分に気を付けなさい」

 

やめてっ!もう死んじゃう!

そしてアイツ等が去った後の事を考えると私が死んじゃう!

 

「さて」

 

雪ノ下さんのその一言と共に、比企谷ハーレムの皆さんは一斉にこちらを向いた。そして私は白目を剥いた。

 

もうダメポ……なんか折本さんのおかげでこれから優しく生きて行けるかと思ったのに、どうやら私の寿命はすぐに来ちゃったみたいです。

 

 

しかし、雪ノ下さんは私を一瞥するとあまりにも意外な言葉を放ったのだった。

 

 

「由比ヶ浜さん、一色さん。あの騒がしい人達のお陰で興も削がれた事だし、私達もそろそろ帰りましょうか」

 

あ……れ?

 

 

つづく

 





ありがとうございました!
前回はなんだかたくさんのご感想を頂きありがとうございました。とても有り難かったです。

物語は終盤となりますが、次回もよろしくお願いいたします。


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