私のまちがってしまった青春ラブコメはもう取り戻せないのだろうか   作:ぶーちゃん☆

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【後日談③】かしこまられる元ぼっち

 

「ねぇねぇかおりー、今度駅前に出来たばっかのクレープ屋さん行こうよー」

「それあるー!あたしもちょ〜っとだけ気になってたんだよねー」

「だよねー」

 

……………。

 

「あ、そうそう!駅前と言えばこないだ由香がさぁ……」

「えー!?なにそれマジウケるんだけどー」

「でっしょぉ?」

 

…………。

 

「ってかさー、なんで美耶ってばさっきからずっと黙ってんの?ウケる」

「そうだよミヤミヤ〜!ミヤミヤも交ざってきなよー」

 

 

なんだよミヤミヤって。あんたついさっきまで二宮さんて言ってたじゃねーかよ、なんとか町さん。

 

…………いやいやそうじゃなくってさぁ。あっれー?なんかおかしくなーい?私ついさっき絶縁宣言しませんでしたっけ?なんで普通に3人仲良く帰ってるんですかね。

 

「? ……てか美耶さっきからなんでぶすっとしてんの?」

「そこから!?」

 

ちっきしょ!無視してたのに私のツッコミスキルがオートで発動しちゃったじゃないか!

 

「やっと喋った。ウケる」

「ウケねーよっ!

……あ、あのさ、私つい今しがたあなたに絶縁宣言しませんでしたっけ……?」

「絶縁宣言とかおっも!美耶面白すぎ!」

 

いやいや絶縁宣言に対して満面の笑顔でウインクにサムズアップっておかしいでしょ。

 

「ミヤミヤって唐突に意味分かんないこと言って赤面するとことか可愛いよねー」

「あなたも大概おかしいからね!?なんで二宮さんからいきなりミヤミヤになっちゃってんの!?

距離の詰め方おかしくない!?」

「ツッコミ冴え渡りすぎててちょおウケる」

「いやウケねーから!」

 

なんなの?私をツッコミマスターにでも育て上げたいの?世界を獲らせたいの?

現時点でもあなた達相手ならすでに結構イイ線行っちゃいそうなんですけど。

 

「あ、そっかぁ!さっき比企谷に告って振られたのが発覚しちゃったのが恥ずかしいのかー。

もー、美耶ってば可愛いんだからー」

「発覚した事実じゃなくって、無理やり発覚させられた事実を問題視してんのよ!」

 

もうやだリア充っ……!

私のライフは対リア充耐性が無いから、ごりごりと削れるほど無いんですよ。こちとらリア充の弱パンチがかすっただけでKOなんすよ。You Lose! OK?

 

「ま、まぁまぁ、いーじゃんいーじゃーん。抜け駆けして友達にはなれたんだからさぁ!」

 

てへっ、じゃねーよ。てかあんたやっぱ根に持ってんでしょ。私を捨て駒に使ったくせに。

 

「だ、大体さぁ……なんで着いてくんのよ。さっき教室で決別の挨拶したじゃん……」

「決別とか重っ!ウケる」

 

ふぇぇ……もうやだよぅ……!

 

「まぁまぁ、いいじゃんミヤミヤー、友達なんだし。ちょっと駐輪場まで一緒に行くだけじゃん」

「だからミヤミヤやめて!?……そ、それに別に私、あなた達と友達になった覚えなんて無いって…」

 

そこまで言うと、仲町さんは私の言葉を遮ってきた。ぐいぐい来るわね。

 

「だってさっきミヤミヤさ、「二宮美耶復帰第一号の友達は比企谷君がいいの」って言ってたでしょ?

だったらもう第一号が比企谷君で決定したんだから、友達未満?とかのわたし達が二号三号だっていいじゃーん」

「ヤバい二号三号とか、あたしら美耶の愛人臭が漂っててウケる!」

 

うっせーわ。

 

「わたしさ、ミヤミヤの友達になりたいな……。ダメ、かな……?」

 

ちょっと仲町さん?潤々お目々で上目遣いとか、なんかあなたちょっとあざといんですけど。それズルくない?

 

「〜〜〜っ! ……ま、まぁ、し、仕方ないから……と、友達になってあげなくもなくもなくもない……わよ……?」

 

血を吸うわよ?

 

「きゃー! 真っ赤になっちゃって超可愛いー!」

 

……ちょ、ちょっと抱きつかないでくれるかしら。柔らかい肉まんが二つ当たってますんで。うん。Bの79。…………よしっ、ギリギリ勝った……!

…………これが、私 二宮美耶もかなりの小ぶりサイズという事実が発覚した瞬間である。全米が泣いた。

 

「結局どっちなのか良く分かんない上に超上から目線!ウケるっ」

 

ホントうっせーわ。健康的でハリのありそうな大きめの美乳は黙ってて頂けませんかね。そしてあんたにゃ言ってねーよ。

 

「へへ〜。よっし!じゃあ今度こそあたし達と美耶は友達ってことで!」

 

だからあんたには……

 

「ふふっ、よろしくね!ミヤミヤっ」

「……だ、だからミヤミヤじゃないってばよ……」

 

べ、別に嬉しくなんかは全然無いんだけど、なんだか顔が熱くなってきちゃって、俯いてセリフがゴニョゴニョしちゃった私の両脇を、ニヤニヤしながら肘でぐりぐりしてくる私の新しいお友達のお二方なのでした……。ええいっ!やめい!

 

※※※※※

 

「じゃーねー美耶ー!滅菌されちゃわないようにねー」

「……ひどっ!?」

「へへっ、比企谷によろしくね!

あ!あとさ、比企谷にいつ遊びに行けるのかちゃんと聞いといてねー。

出来れば二人がいいけど、比企谷が照れくさいって言うんなら美耶も一緒でいいからって言っといてー」

 

なんなの?私はオマケなの?絶対言ってやんない。

てか滅菌ってホント酷すぎないかしら……。そ、そりゃ確かに比企谷ハーレムのあの子達にとっての私は間違いなくしつこいヨゴレなんですけどもね?

 

 

駐輪場にて解散かと思われた私達の軽快なガールズトーク(美耶は含まれず)なのだが、駐輪場で別れたのは仲町さんだけで、結局そのあとは一番うるさいのと二人で総武高校の近くまでの軽快なガールズトーク(美耶は含まれず)となりました。

すごいよね、自転車漕ぎながらずっと一人で喋ってましたよこの人。

 

元気に手をぶんぶん振りながらよろよろと去っていく折本さんを見送る私。……あー、ホントウザい。付き合いきれないわよ、まったく。

……とかなんとか言いながらも、あの子の背中を見送る目元と口元がついつい緩んじゃってる私って、もしかしてツンデレってやつなんですかね。言わせんな恥ずかしい。

 

 

そして私は一人キコキコ自転車漕いで、ついに魔王城の目前まで辿り着いたのです。

どうしよう。私まだ虹のしずく入手してないし、一旦聖なるほこら(愛しの我が家)に帰ってもいいですかね。私ドラクエ3好きすぎだろ。

 

 

「っはぁ〜〜〜……」

 

眼前にそびえる総武の校舎を見上げて深々と溜め息を吐く私。っべー……夢じゃなければ確か昨日も来たわよね、ここ……

しかもイケメンとか天然水に絡まれたり、比企谷君を大声で呼び止めて無視されたりと、総武生皆々様の痛々しい視線受けまくって大恥かきまくって、「二度と来るかぁ!」と叫びかけたその翌日にまた来ちゃうとか、私ってどんだけドMなのん?実はお仕置きにハァハァと興奮しちゃうタイプなのん?

 

そしてそんな私の現状の表情は、二日連続でここに来てしまった後悔からくる引きつった表情と、今日も大好……友達の比企谷君に会える嬉しさからくる緩みきった表情、そしてこれからハーレム女子に囲まれるであろう絶望からくる愕然とした表情がぐるぐるとローテーションを繰り返している。どうしよう、下校中の生徒さん達から見たら完全に変態さんじゃないですかやだー。

これ比企谷君だったら確実に通報されちゃってるところだよ。私可愛い女の子で良かった!うふ。

 

 

さ、茶番はこれくらいにしといて、改めて校門の外から校内を見渡してみる。

──えと……こ、これどうすればいいの……?どこ行けばいいの……?来なさいとか言われたから仕方なく来たはいいものの、勝手に入っちゃってもいいのかな……?

 

──ちょっと!?入校許可をバンバン出すとか言ってた生徒会長さん!?まずあんたがココに居てくんなきゃ、出すもんも出せないじゃん!私、お恥ずかしながら比企谷君とまだ連絡先も交換してないんだよ?

……あ、比企谷君の連絡先超欲しい。じゃなくって!どうすりゃいいのよ。昨日に引き続き、さっきから超ジロジロ見られてますし私。

……これはあれだ。よし帰ろう。即断即決が大事よね。あーあ……比企谷君に会いたかったなぁ……

 

「あの〜、海浜の生徒さんですよね?ウチになにか御用ですか?」

 

そんな時、比企谷君に後ろ髪を引かれながらも踵を返そうとした私に、とある一人の総武生からお声がかかったのでした。

 

 

ん?なんだかこの娘、ちょっと折本さんに似てるわね……

 

※※※※※

 

「あ、え、えっとー……」

 

突如声を掛けられてプチパニックな私。ぼっちはアドリブに弱いんです。

 

しっかし……総武ってレベル高くね……?

たまたま声を掛けてきただけのモブちゃんが折本さんクラスのリア充美人とか、一体どうなってんのよこの学校。こんなに物語に都合のいい学校なんかあるかよ。フィクションかよ。

 

……ふむ。しかしせっかく声を掛けてきてくれたわけだし、仕方ないからこのリア充オーラ溢れるモブちゃんに聞いてみますかね。ホントは帰りたかったのにちくちょう。

基本リア充なんかには関わりたくない私だけど、……うーん……なんでだろ。なんだかこの娘ならイケそうな気がするんだよね。どことなく折本さんに似てるから、かな?

 

「あの、ですねー。ちょっと生徒会長さんに呼ばれて来たんですけど、勝手に校内に入っちゃっていいものかどうか分かんないんですよー」

 

実際は生徒会長にじゃなくて雪女に呼ばれたんですが。まぁ、いろはすちゃんにも来いやコラと言われたし間違ってはいないよね。こう言った方が早いし。

 

「呼ばれ?……あ、じゃあやっぱ生徒会関係のお仕事かなんかで呼ばれて来たんですかねっ。ちょっと待っててくださいねー」

 

にひっとそう言うと、モブちゃんはブレザーのポケットからスマホを取り出して、どこぞに電話を掛け始めた。

あ、確かに折本さんにも似てるけど、私の趣味的な見方でいくと、崖登りしたり吊橋渡ったりと熱いアイドル活動をしてる「おつかー!」でお馴染みのひなきちゃんに似てるかも。このにひっとした元気な笑顔とか。(注・崖登りも吊橋渡りもアイドル活動にはなんら必要のないスキルです)

 

「……あ、いろはー?……あのさぁ、海浜の生徒さんが校門まで来てるんだよねー。どうすればいいー?」

 

……ん?いろは……?

あ、ありゃ?まさか私たまたまいろはすちゃんの友達にゲットされちゃったの?

 

「……んー、そうそう……ポニテの可愛い…………ん?はいはい……裏口の?……教員用の通用口…………あー、はいはいあそこねー……っとぉ、そこまで連れてけばいい?」

 

なんか可愛いとか言われちゃってますけど私っ!でもいろはすちゃんの友達なら私の方が先輩になるんだから、遠慮しないで美人のお姉さんとか綺麗なお姉さんとか言ってもいいのよ?

胸部は私の方が後輩みたいですけど。全米が泣いた。

 

「ほいほーい!……かしこまっ☆」

 

「!?」

 

「……はっ!?」

 

「」

 

「」

 

……ちょっとこの娘かしこまっ☆とか言いましたよ?そして引きつった顔して明らかに私から目を逸らしましたよ?

ああ……(察し)

 

「……そそそそれじゃ私に着いて来てくださいねっ……!な、なんか教員用通用口の前で待っててもらってとか言われたんでっ……」

 

「……あ、うん」

 

『ぼっちとぼっちは引かれ合う。それはもうニュータイプばりに』などと過去の偉人(昨日の私)が言ってたこともあったけど、この世にはそれと同様に、深層心理の奥深くで引かれ合うものが他にもあるのだ。

……この娘、こんなにリア充な見た目なのに残念なオタなのね……。だからか、私が初見からこの娘ならイケそうって感じたのは。

 

そして私は『べ、別に私オタとかじゃないんですけどもっ!?』と、白々しく背中で語る残念リア充かしこまっ娘ちゃんに連れられて、ついに総武高校の門をくぐるのでした。

……こいつオタはオタでも隠れるタイプか……。隠れてるつもりで全然隠れられてない辺りが、漂う残念さの所以か。

 

※※※※※

 

「あの〜……」

 

駐輪場を借りて愛機を停めさせてもらい、教員用通用口とやらに向かう道すがら、引きつった顔に無理やり笑顔を貼り付けたかしこまっ娘ちゃんが、気まずさに耐えきれなくなったのかなんか話し掛けてきた。

かしこま☆に反応した私もあなたと同類なのは分かってんだろうし、無理に潜まなくてもいいのに。

 

「はい?」

「そういえば今日はどのようなご用件でウチにいらっしゃったのかなー?なんて」

「……へ?ん、ん〜と……」

 

どのようなご用件でと仰られましても、ハーレムの男に手を出したら女共に呼び出されちゃって〜、てへっ。なんて答えられるわけないしなぁ……

てかこの娘いろはすちゃんの友達ならハーレム事情くらい知ってんのかな。

 

「……や、やー……なんて言ったらいいのか……。あ、あれ!あれだ!ちゅ、中学の時の友達に会いに来た、みたいな?」

 

愛に来た、なんつって。

 

「中学の、友達……?それでなんでいろはに呼ばれたんだろ……?

確か今日はHR終わったら猛ダッシュで奉仕部行ってたような……」

「奉仕部!?」

 

あ、やっぱこの娘奉仕部事情とか知ってんのね。

 

「あ、れ?……その中学のお友達というのは奉仕部の人なんですか……?」

 

あれ?なーんか空気が変わったぞ?

 

「……えと、その奉仕部というのはイマイチよく分からないんだけど、まぁその関係者……かな」

「そ、そうなんですかー。……ゆ、雪ノ下先輩か、もしくは由比ヶ浜先輩、かなー……?」

「……あ、や……ひ、比企谷君……っていう男の子なんだけどー……」

「ひ、ひきっ!?」

 

はい。完全に事情通ですね。なんなら事情関係者だったりして。せめて情事関係者じゃないことを祈るばかり。

するとかしこまっ娘ちゃんは「……マ、マジかよあのスケコマシ……まだこんな隠し球があんのかよっ……」などと、愕然とした様子でブツブツと呟いている模様です。

あのね?私難聴系じゃないから、そのセリフ全部聞こえちゃってるからね?

 

 

程なくして目的地へと到着した私達。

かしこまっ娘ちゃんは、警戒心からか口元をヒクヒクさせながらもなんとか笑顔で声を掛けてくれた。

 

「あ、あの、ここで待ってればいろは来ると思うんで……。じゃ、じゃあこれで失礼しま〜すっ……」

「あ、えと……わざわざありがと……」

「いえいえー……」

 

なにか思うところがあるのか、フラフラとした足取りで去っていくかしこまっ娘ちゃんの背中を見つめながら私は思う。

 

 

 

 

 

────マ、マジかよっっっ…………!!なんなのこの学校!?

たまたま声を掛けてくれた女の子までもが比企谷ハーレムの一員なのっ!?やだなにそれ怖い!やっばい!ちょっとこれ私の想像の範疇超えてんだけど!?

 

だって雪女(ツンデレ枠)でしょ?メロン団子(おっぱい枠)でしょ?暗黒天然水(あざと後輩枠)でしょ?……あとイケメン(やらないか枠)もか。

なんかそう考えると、この学校のどいつもこいつもがみんなハーレム要員に見えてきちゃったよ。

かしこまっ娘ちゃんだけじゃなくて、さっきすれ違った時にガン付けられた長髪ポニーテールの美女ヤンキーとか、すぐそこに舞い降りてる真っ最中のテニス部の美少女天使とか、みんなみんなハーレム要員に見えてきて困るんですけど。

さ、さすがにそんなわけ無い……よね?

 

そんな、困惑を隠せずにただ立ちすくむ事しか出来ずにいた私の肩がぽんっと優しく叩かれたのだった。

 

 

「お待たせしましたー!さ、もう尋問始まってるんでちゃちゃっと行っちゃいましょうかー」

 

尋問、もう始まってるってよ。

 

 

つづく

 





スミマセン><
今回出てきたかしこまっ娘ちゃんは単なるモブキャラですので、知らない方は流してくださいませ(汗)


さて、もしかしたらサブタイで分かった読者さんもいらっしゃるかとは思いますが、ついにアレを出しちゃいました。
まさか自己満なオリキャラクロスをやってしまう日が来ようとは……お恥ずかしいかぎりでございます(´Д`;)
前々から一緒に居るシーンが見たいというお声をたくさん頂いていたもので……
ちなみにどの世界線のアレなのかは、読者さまの好みのご想像にお任せします。


と、いうわけで、アレの出演はさておき、ようやく美耶ちゃんが総武高に辿り着きました。
作者 折本大好き過ぎだろ。


そして、私にしては珍しく、奉仕部内での様子もラストシーンもまだ考えてない(思いつかない汗)状態なので、たぶん最終回であろう次回の更新はちょっと遅れちゃう……かも?


ではではまたお会いいたしましょう(^^)/

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