私のまちがってしまった青春ラブコメはもう取り戻せないのだろうか 作:ぶーちゃん☆
今回は完全なるオマケです!
本編とは一切関係の無いアイツ視点のお話なので、こういうのが苦手な人はご遠慮願います><
あくまでもオマケとしてお楽しみくださいませ(汗)
「じゃねー、また明日ー」
「じゃねー」「行ってらー」「ばいばーい」「また明日ねぇ」
3月のとある日の放課後、今日も今日とて私の友達 一色いろはが颯爽と教室を飛び出していった。
いつもと変わらないような光景に見えるが、ヤツの様子はいつもと若干の違いを感じないこともない。てか違う。違いすぎるっ!十万石まんじゅう!
おっと、埼玉に魂を売っちゃイカンよ。
「なんかいろはちゃんさぁ、いつもと様子違く無かったぁ?」
「ねー。比企谷先輩んトコ行くにしたって、楽しそうというよりは……なんか若干ご機嫌斜め?」
「そーいや朝からなんかちょっとイライラしてたね。なんかあったんかな、アイツ」
やっぱ違うと感じてたのは私だけではないようで。
……ケッ、なにがあったか知んないけどさ、全速全力で比企谷先輩んとこに行けるだけで十分幸せじゃねーかよ。ケッ。
「やべー、香織の顔が比企谷先輩の目みたいに腐ってんだけど」
うるさいよ!なんだよ目どころか顔腐っちゃったの!?私!
「まぁ仕方ないんじゃない?ジェラジェラしちゃうよねー、香織ー? とっとと諦めて、とも君みたいな素敵な彼氏早く作っちゃえばいーのにー。あ!とも君みたいな素敵なのはなかなか居ませんけどもぉ」
腹っ立つわー、そのツラ。早く別れちゃえばいいのに。
あ、でも別れたら別れたでアホみたいにめんどくさくなりそうだから、やっぱあんた達はそのまま永遠に結ばれちゃえばいいよ。
いやん香織ってばツンデレ可愛い☆
「でもその荒んだ表情は残念さが際立っちゃうから気を付けた方がいたいぃぃぃ!」
流れに乗ってお前まで調子のんなよ?いやマジでなんであんたに残念呼ばわりされなきゃなんないの?
お前よりは残念さが若干弱いってプライドがあるのよ私ゃ。
なにその可哀想なプライド!こういうのって目糞鼻糞っていうのよねっ。やだ目にゴミが。
そして私は襟沢の顔をガッチリキャッチでギリギリと締め上げながらスクッと立ち上がる!
この際だからあんたらにはっきり言ってやんよ!この熱い思いってヤツをさぁ!
「べ、別に私 比企谷先輩のことなんて好きでもなんでもないんだからねっ!?」
「はいはいツンデレツンデレ」「そーだねー、香織ー」「て、手をっ……手を離してっ……」
「」
……ちょ、ちょっとそこの暖房さん!?今日はちょっとばかり効き過ぎじゃないかしら!?
……熱いよぅ……誰かそこの暖房を消してよぅ……!
──そしてとても大切で大好きな友人達との素敵なガールズトークを終えた私は、人知れず涙を拭きながら部室へと歩を進める。
……なんだよちくしょう……!みんなして私の可憐な乙女心を弄びやがってよぅ……!
いまに見てろよ!?絶対幸せになってやるんだからぁ!
と、仄かな平塚フラグを立てながら部室の扉に手を掛けたのだが……あ、なんだよ今日部活休みかよ……
あっれー?そんな話あったっけぇ?ちゃんと連絡してくださいよ部長ー。
そして一応確認の為に取り出したスマホをチェックした私は、危うくスマホを床に叩きつける寸前になりました。
[部長
ごっめーん!今日デートの約束があるんだったー!
てなわけで今日の部活動は休止としまーす☆
なんだよー、お前ら突然の休暇とか超ラッキーじゃーん!]
こんの糞アマ……
× × ×
てなわけでホントに予定外の時間が出来てしまいました。
ふむ、とても大切で大好きな友人達(笑)はもう帰っちゃっただろうしなぁ。
んー……よっしゃ!んじゃ千葉にでも遠征してラノベかマンガの新刊漁りにでも行っちゃいますかねー。
んで楽しいの発見できたら、今度比企谷先輩と交換っこしっちゃおーっと♪ふひっ!
そんな淡い期待に胸躍らせて校門まで歩いて来たんだけど、そこで私はいつもと違う風景を目撃したのでした。
「……ん?」
おやおや?なんか校門の前で他校の生徒が校内を覗きこんでるぞ?
その子は、ちょっと小柄で──ちょうどウチのいろはくらいかな?──なかなかに可愛い顔立ちをした、海浜総合高校の制服を身にまとったポニーテールの女の子だった。
ウチの男子とデートの待ち合わせとかかな?
……チッ、美少女が制服で他校の校門前で男待ってるとかどんな当て付けだよ爆発すればいいのに。
と、また若干顔が腐りかけた私なのだが、……いやいやだから顔が腐るってなんだよ。私って結構可愛いのよん?
……おや?女の子の様子が……
別にキングスライムに合体する前のスライム達ほど様子がおかしいわけじゃないんだけど、どうやら誰かを待ってるって感じでも無いみたい。
待ってるというよりは、どちらかというと校内に侵入したそうな?でも帰りたそうな?どっちだよ。
……うーん。海浜さんといえば、クリスマスやらバレンタインで、いろはが利用したり利用されたりとWINーWINなパートナーシップを築いて最大限のグループシナジー効果を生んだあの海浜さんよね。
もしかしてまたいろはにネゴシエーションしに来たのかな?ちゃんとアポイントは取ってあるのかしら?
……危うく意識を失いかけた私だけど、なんか困ってそうだし、それになんかよく分かんないけど私に似たモノを感じる気がするし(可愛い子だし、可憐な恋する乙女なトコとかが似ちゃったのかなっ♪きゃっ☆)、ちょっと声掛けてあげよっかな。
ふふ……たまたま生徒会長様のご友人様が通りかかったことを神に感謝なさい?
「あの〜、海浜の生徒さんですよね?ウチになにか御用ですか?」
「あ、え、えっとー……」
するとその子は小動物みたいにビクッと震えると、不安げな眼差しを私に向けてきたのだった。
× × ×
借りてきた猫のように、怯えるような瞳でおどおどと私を見つめるポニテ少女。
……ふ、ふへへ。ど、どうしたんやぁ?おいちゃんに話してみぃやぁ?
……完全に変態である。(キートン感)
「あの、ですねー。ちょっと生徒会長さんに呼ばれて来たんですけど、勝手に校内に入っちゃっていいものかどうか分かんないんですよー」
「呼ばれ?……あ、じゃあやっぱ生徒会関係のお仕事かなんかで呼ばれて来たんですかねっ。ちょっと待っててくださいねー」
ふむふむ。やっぱ生徒会関係者さんなのかな。ほいじゃおいちゃんがなんとかしてあげますかね。
そして私はまたもポケットからスマホを取り出すと、今ごろ比企谷先輩とキャッキャウフフしているであろうあの女に電話を掛けた(血涙)
『もしもし香織ー?どうしたのー?』
「あ、いろはー?あのさぁ、海浜の生徒さんが校門まで来てるんだよねー。どうすればいいー?」
『……え!?マジで!?来たの!? それって結構可愛い感じの女の人?……海浜って、まさかろくろ回してる人じゃないよね!?』
なんで校門前でろくろ回してんのよ。そんなのがもし居ても、私声かけねーよ。
「んー、そうそう。ポニテの可愛い子」
『可愛い子って……その人二年生だかんね?』
「……え?二年生なの!?や、やっべ、先輩じゃん……」
『まぁそんなのはどうでもいいけど……』
……そんなのって。なんかいつにも増して辛辣だなこいつ。
「で?どうしよっか?生徒会室に連れてけばい?」
『あ、じゃあわたし迎えに行くからさ、裏口の方にある教員用の通用口の入り口って分かるー?』
「ん?裏口の?……教員用の通用口…………あー、はいはいあそこねー……っとぉ、そこまで連れてけばいい?」
『うん。そこで入校許可証出さなきゃだからさー』
「ほいほーい!」
『んじゃ悪いけどよろしくねー』
「かしこまっ☆」
よし。今日も1日1かしこま無事に消費完了っと!
そう私がスマホに向けて横ピースをしていると、なんだかとっても痛い痛い視線を感じるよ?
「!?」
恐る恐る痛々しい視線の方へと目線を向けると、ポニテ先輩が驚愕の表情を私に向けていた。
「……はっ!?」
──し、しまったぁぁぁっ!素人さんの前でかしこまっちまったぁぁぁっ!
しかも私ってば横ピースしたままでやんの(白目)
「」
「」
ふ、ふぇぇぇぇ……視線が痛いよぅ……!
その瞳からは「こいつオタクじゃね?」って意志をビンビンに感じるよぅ……!
わ、私オタクとかじゃないんですけどっ!?
「……そそそそれじゃ私に着いて来てくださいねっ……!な、なんか教員用通用口の前で待っててもらってとか言われたんでっ……」
「……あ、うん」
油断ダメ!絶対!
一般人にオタクって事がバレたら絶対ダメなんだからぁ!
オタクって自己申告しちゃってんよ。
× × ×
……いやいや待てよ?そもそも一般人の素人さんが、はたしてかしこま☆に反応するのだろうか……?
女子高生の単なる仲間内の可愛い挨拶みたいなもんって思わない?普通……
なのにあそこまで過剰に反応するってことは……まさかこいつもオタク……なのか?
いやいや“こいつも”って、私は違いますよ?
「あの〜……」
そんな心の葛藤と無言の気まずさに思わず声掛けちゃったけど、私なにを語り掛けるつもりなのん?
「もしかしてあなたも玄人の方ですか……?」とでも語り掛けるつもりなのん?
なにそれ怪しさ満点!
「はい?」
こ、これでもしもこの人がオタクじゃなかったとしたら、私の社会的地位が終了しちゃいそうよね……
嗚呼っ……ここまで築き上げてきた清楚系美少女の地位がっ……
誰が清楚系美少女だよぷっぷー(笑)とかって天の声が聞こえるような気がするけど気にしなーい!
と、とりあえず当たり障りの無い質問でお茶を濁してみますかね。
「そういえば今日はどのようなご用件でウチにいらっしゃったのかなー?なんて」
「……へ?ん、ん〜と……」
するとこの推定オタク少女は、予想外にも答えに詰まる。
あれ?私てっきり「生徒会のお仕事なんですよー」とかって迷い無く答えるもんかと思ってたよ。
ああ、あれか?その普通の答えを、脳内で意識高い系ワードに変換しなきゃいけないのかな?
すげーキツい縛りだな。恐るべし!海浜総合生徒会役員共!
「……や、やー……なんて言ったらいいのか……。あ、あれ!あれだ!ちゅ、中学の時の友達に会いに来た、みたいな?」
……っへ?なにそれ予想外!脳内変換に手間取ってたわけじゃないのね。
「中学の、友達……?それでなんでいろはに呼ばれたんだろ……? 確か今日はHR終わったら猛ダッシュで奉仕部行ってたような……」
そうなのだ。よくよく考えたらいろはのヤツ、今日は(今日も)生徒会じゃなくって奉仕部に入り浸っているはずなのだ。
そんないろはに呼び出されたってウチに来た以上、どう考えても生徒会関係の仕事話なわけ無いのよね。
「奉仕部!?」
すると、この推定オタク少女はあろうことか奉仕部という名に食い付いた。超食い付いた。
「あ、れ?……その中学のお友達というのは奉仕部の人なんですか……?」
なにそれもう嫌な予感しかしない。
「……えと、その奉仕部というのはイマイチよく分からないんだけど、まぁその関係者……かな」
「そ、そうなんですかー。……ゆ、雪ノ下先輩か、もしくは由比ヶ浜先輩、かなー……?」
……などとなんとか誤魔化そうと必死にそちらへ誘導しようと藻掻く私なのだが、なんかもうそんなの絶対に有り得ない……
だって、由比ヶ浜先輩の中学時代の友達にいろはがなんら興味なんかあるわきゃないし、雪ノ下先輩に中学の友達なんて居るはず無いし……って私ヒドくね?
そんな私の当たってほしくない予想通り、この推定オタク少女は、その瞬間リンゴのように真っ赤に頬を染め上げ、もじもじしつつ上目遣いでこう答えるのでした……
「……あ、や……ひ、比企谷君……っていう男の子なんだけどー……」
「……ひ、ひきっ!?」
ぐへぇっ!香織は白目を剥いた!
× × ×
……マ、マジかよあのスケコマシ……まだこんな隠し球があんのかよっ……」
マジでYOU爆発しちゃいなYO!
てか、無意識にボソボソ呟いちゃってた気がするんだけど、き、聞かれてないわよね……!?
ぐふっ……ちょ、ちょっとだけクラクラするわ?
マジなんなのよあんのスケコマ八幡がぁ!どこまで手ぇ出しゃ気が済むのよっ!?
このもじもじ具合からして、完全に惚れられてんじゃん!あんにゃろう!
……愕然と放心しちゃった私は、結局そのまま一切の言葉も発することも出来ずに、お通夜状態でお客人を目的地まで送り届けるのがやっとこさでした……
「あ、あの……」
お客人を通用口の前までお連れした私は、明らかに私に対して警戒心をあらわにしている彼女に対して、なんとか笑顔を貼りつけて最後のお持て成しをする。
こ、この人もしや……
「ここで待ってればいろは来ると思うんで……。じゃ、じゃあこれで失礼しま〜すっ……」
「あ、えと……わざわざありがと……」
や、やっぱこいつ……もしかして私の秘かな突撃でラブ的なハートに感付いてんじゃなかろうな……
「いえいえー……」
──一仕事終えた私は、ふらふらとその場を去る……
千葉に遠征して、ラノベ漁りウキウキひゃっほい♪比企谷先輩とイチャラブ貸し借りうっひょー!とか、そんなこと考えていた時期が私にもありました。
比企谷先輩のことを中学の友達だと宣いながらも、頬を染めてもじもじしていた少女の表情を思い私は思う。
──ねぇ……私って何番目の女なのん……?
終わり☆
番外編③の、まさかの香織視点バージョンでした!
次回最終回とか大嘘でしたね!てへっ☆
ホントは③の後書きにオマケとして掲載するつもりだったんですけど、後書きにオマケとして載せるには無駄に長くなりすきちゃったんで、番外編オマケとして別掲載することにしました(汗)
あざとくない件や恋物語集を読んで香織を好きになって下さっている多くの読者さま方の中でも、この作品を読んでない方もたくさんいらっしゃると思いますので、これを読んでる読者さま限定の香織、この香織を読めるのはこの作品だけ!と、誠にレアな香織となっております(笑)
ではでは次回こそ最終回の予定なのでよろしくです♪