私のまちがってしまった青春ラブコメはもう取り戻せないのだろうか   作:ぶーちゃん☆

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私、今回最終回とか言ってませんよね?
え?言った?たぶんソレ錯覚です。





【後日談④】元ぼっちは残念吸引達人の称号を手に入れた

3月の冷え冷えする校舎内。そんな冷たい空気よりもさらに冷たく凍えそうな心には、借り物の上履きがリノリウムの床と触れ合った時に鳴らすキュッキュッという雑音が、さらに酷く心の冷え込みを感じさせる。

 

 

 

てかあれよね。なんか文学的にスタートさせてみたはいいものの、今私の現状ってそんな格好良いもんじゃないからね。

ハーレム王に手を出しちゃって、そのハーレムメンバーの女共に呼び出し食らって連行中とか、それもう格好良いどころか最高に格好悪かったですありがとうございました。

 

そもそもリノリウムの床ってなんだよ。廊下でいいじゃん廊下で。とりあえずリノリウムっつっとけばOKなんじゃね?って風潮はいかがなものなのかしらん。

 

と、各所に要らん誤解を招いてしまいそうな思考についつい浸ってしまうくらいに、これから訪れるであろう災厄に、私の魂は漆黒の闇に包まれようとしている。

文学風の次は中二満開でした。あらやだお忙しい。

 

 

……だってさぁ、あんなに笑顔(お面)で迎え入れてくれたいろはすちゃんが、まったく笑ってない目のまま鼻歌まじりにずんずん進んでくんだもん恐いよ。

 

──ひ、比企谷君てば、昨日私が告っちゃったこと吐いてないよね……?

いやいやそれはない!だって昨日きっちり口止めしたハズだもん!そもそもあの比企谷君があんな恥ずかしい大事件、口割るワケないし。

 

「あ、あの、いろはすちゃん…」

「は?なんですかいろはすちゃんて。わたし天然水じゃないんですけど」

 

たまらず話し掛けてみたら、とっても素敵な笑顔(お面)で即座に切り捨て御免。やだお侍様に無礼討ちにでもされちゃった気分!切り捨てるならまずは戸部君とやらじゃないの?私ってば彼のせいでいろはすちゃんて覚えちゃったのよ?

 

 

「先にお伝えしときますね。なんかー、雪ノ下先輩達は二宮先輩のことそれなりに認めてるみたいですけどー、言っときますけど、わたしは別に全然認めてないんで。

なんか昨日の盗み聞きによると、中学の時に先輩に酷いことしたみたいですしー?」

「うぐっ!」

 

それ言われちゃうとお姉さん何も言えないですー。だからずっと不機嫌なのねこの子……。でも笑顔は絶やさないんですのよ?

まぁいろはすちゃんも色んな勇者たちをそれ以上の酷い目に合わせてそうですけどね。恐いからいいませんけどっ。ウフフ。

 

しかしここで朗報がひとつ!

なんと今回の主犯格で在らせられる雪ノ下さんは、どうやら私の事をそれなりに認めてくれてるみたいなのー!

乳ヶ浜さんは見るからに温厚そうだし、これは虐殺回避に夢見ちゃってもいいのかも!乳ヶ浜さんて誰?

 

「まぁ? 二宮先輩の非道な行いによって今の捻くれてるけど意外と頼りになる先輩が出来上がったっていうんなら、間接的には感謝ではありますけどね」

 

ひ、非道な行い……

でも、その言い方から察するに、やっぱりいろはすちゃんも比企谷君の捻くれた優しさに救われて心を動かされたクチなのかな。

にしても“意外と”頼りになるなんて言っちゃってからにー!

 

「それにあの自称トップカースト女から、身を挺してバカな先輩を庇おうとしたのはポイント高いと言えば高いですし?」

「〜っ?」

 

……ふっふっふー、やっぱなんだかんだ言って実はいろはすちゃんも単なる捻デレだったりするの…

 

「まぁ、抱きつきすぎでその僅かな収支も株価が大幅な値下がりに転じて最終利益はトントンですけどねー」

 

「……」

 

全然デレてなかった。この子いったいなんの話をしているのん?

 

「おや?そちらは海浜総合の生徒かね?」

 

そんな、どうやら比企谷君だけじゃなくてマネーのお話も大好きそうないろはすちゃんのエセデイトレーダートークに苦笑いしていると、なんかこれまたすっごい美人さんに話し掛けられてしまいました。

マジこの学校どんだけ美男美女に溢れてんだよ。

 

※※※※※

 

「あ、平塚先生こんにちはです」

「ああ、こんにちは」

 

どうやら平塚というらしいこの美人教師。白衣を羽織ってるとこから見て理科系の教師なのかな?

乳ヶ浜さんをさらに上回る万乳引力の持ち主な上に、その立ち居振る舞いはまさにイケてるキャリアウーマンそのもの!

なんかもう美乳を見ちゃっただけでも爆ぜればいいのにって思っちゃう荒んだ残念バストの私からすると、このさぞやおモテになるであろう美人教師はまさに敵そのもの。ちなみにいろはすちゃんはナカーマ!

 

「……あ、どうもこんにちは。海浜総合の二宮と申します」

「やあ、こんにちは。一色と一緒にいるところを見ると、生徒会関係かなにかなのかね?」

「あ"っ……そ、その……えと……」

 

よくよく考えたら、ハーレム王を囲む会・会員に呼び出されて他校の生徒が来たとか、教師になんて説明すんのよ……?

ちょっとコレどーすんの!?って目でいろはすちゃんに助けを求めると、なんといろはすちゃんは事もなげにこう答えた。

 

「あ、こちらは生徒会関係じゃなくて奉仕部関係のお客さまなんですよー」

 

ほー、なんか奉仕部って謎の組織みたいなもんなのかと思ってたんだけど(なにせ高校の部活で奉仕部ってなんだよ?)、ちゃんと認知されてるんだ。

 

「奉仕部……?私はなにも聞いていないが、あいつらはいつから他校の相談まで受けるようになったのだ……まったく……勝手なことをしおって……」

 

そう言ってこめかみを押さえる美人教師。どうやら認知しているどころか内情も詳しいご様子。

 

「……あー、えとー、違くてですねー……ま、まぁ奉仕部の呼び出しではあるんですけど、どちらかというと先輩のお客さまみたいな……?」

「は?比企谷……?君は比企谷の関係者かなにかなのかね?」

「あっ、いえ!はい!……か、関係者っていうか……ちゅ、中学の同級生っていうか……」

 

いきなりLOVEな相手の関係者?なんて聞かれたもんだから、ドキリと心臓がはね上がって慌ててしまった。

やばいやばい。ちょっと顔赤くなってそうっ……

 

そんな赤面してもじもじしちゃった様子の私をシラ〜っとした目で見つめるいろはすちゃんと…………え?平塚先生も!?

 

「……ほう……比企谷の………………。ふっ、比企谷のヤツめ……。ま、まぁたまにはそういうのもよかろう……」

 

えっと……なんでこの人、急にしゅんとなっちゃったんですかね。

 

「……で、ではな。あんまり遅くなるんじゃないぞ」「は、はい」

「……ではでは失礼しまーす」

 

そう言ってフラフラと立ち去る女教師平塚。……えっと……な、なに……?

そして彼女がボソリと一言。

 

「……チッ、爆発しろ……」

 

……えー……

 

スミマセン平塚先生、どうやら私は誤解してたようです。

やばいわこの学校。美男美女が揃い過ぎてマジどうなってんの?とか思ってたけど、なんやかんやでプラスマイナスって取れてるもんなんですね。

 

超美人(残虐)巨乳(おバカ)可愛い後輩($)可愛い後輩2(かしこま)美人教師(やべぇ)爽やかイケメン(ホモオ)

 

 

…………世の中って良く出来てるもんだなぁ(遠い目)

 

「!?」

 

ちょ待てよ!……まさかあの残念女教師まで比企谷ハーレムメンバーなんじゃないでしょうね!?

あはは〜……さ、さすがにそれはない……ですよねー?

 

 

※※※※※

 

比企谷君に対する新たな疑惑に、白目を剥いて意識を失いかけたままでいた私は、ついに地獄の一丁目まで連行されたらしい。

辺りに人気の一切無い“そこ”は、どうやら総武高校の中でも特殊な環境にあるみたい。

一度受験に来た時に校舎内に入ったことはあるんだけど、確かその時はここと反対側の別の棟だったよね。教室とかもあっち側っぽいし、こっちはいわゆる部活棟ってところなのかな。

この人気の無さ。これなら多少の悲鳴や呻き声が辺りに響いても、助けが来る事もなく速やかに対象を始末出来そうですね(白目)

 

「お客様をお連れしましたよー」

 

……ってちょっと!?

私が心の準備をする暇もなく、いろはすちゃんがガラリと扉を開いて室内に入っていってしまった。あなたノックくらいしたらどうなのかしら。

 

「……一色さん。あなたノックくらいしたらどうなのかしら」

 

まさかのシンクロ率である。もしかして雪ノ下さんと私って気が合うんじゃないかしら?あの子も私と同じく孤高の存在っぽいし。

すみません孤高の存在(笑)の私ごときが調子に乗っちゃいました。

 

「次からは気を付けまーす」

 

絶対に次からも気を付けないであろう決意のお返事を聞きながらも、私は現在軽くパニくっている。だってまだ心の準備が!いきなりすぎなんだもん!

ラストダンジョンはもっとこう色々と趣向を凝らしてくんないとさっ……!私まだ主が不在の玉座の後ろとか調べてないのよ?玄関開けたら2分で魔王☆みたいなもんじゃないのよコレ。

 

どどどどーしよー!?この扉をくぐると、その先にはいったいなにが待ってるの!?

……入室した途端に目に飛び込んできたのは、土下座姿の比企谷君でした…………とかいうオチだったら速攻でルーラ唱えなきゃ。

みやは、てんじょうにあたまをぶつけた!

 

「なにしてるんですかー?早く入ってください」

 

おいおい美耶ちゃんそこはルーラじゃなくてリレミトだろっ(笑)と、呪文の選択ミスを一人ツッコんでると、一度入室したいろはすちゃんが、中からぴょこん♪と顔を覗かせた。うん、実にあざとい。

 

「……ふぅぅぅ〜」

 

そして私は、目蓋を閉じて胸に手をあて、深く深く息を吐く。

なんか色々あったけど、ここをくぐれば一日ぶりに比企谷君に会えるんだっ。

えへへ……なんだかんだ言っても、やっぱ嬉しいもんは嬉しいや。やー、ちょっぴり恥ずいですけどもぉ!

 

「し、失礼しま〜す」

 

先ほどまでの決意の覚悟はどこへやら、ちょこっと頬を染めちょこっとドキドキ、私はついに奉仕部さんとやらに突撃するのであった。

 

つづく

 





ありがとうございました!
今回で終わらせる気マンマンだったんですけど、気が付いたら前回投稿から三週間くらい経っちゃってたんで、キリのいいとこで先に更新しちゃいました!テヘ☆
(あっぶね……超油断してた……危うくひと月くらい開いちゃうトコだった汗)
散々お待たせしてしまった挙げ句、部室まで移動するだけの回……orz


次回こそ後日談最終回!次はこんなに開いちゃわないようにしたいれす(・ω・;)


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