秘色のフレイムヘイズ   作:sairu

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あの日・・・・
高校生になる少し前、常識に縛られていた魂の時間が動き出した

時がたつにつれ光無き世界に光が生まれ晴天として世界を青く染める
やがて摂理に従い光は高度を下げ・・

生まれ出づる灼熱の炎が如き赤・・・

両色が混在する世界


夕焼けの手前

坂井悠二は、現在進行形で深刻に悩んでいた・・

 

「う~・・・・むむむ・・いや・・でも・・う~む~・・・」

一人頭を抱えて唸っている姿は傍から見れば完全に怪しい人。

 

『全く・・・いったい何をしてるんですか』

 

悠二の腕から芯の強そうな女性・・・いや声色的には少女の声が呆れた口調で呟いた。

悠二にフレイムヘイズとして力を与えている紅世(ぐせ)の王、頂の座(いただきのくら) ヘカテーである。

 

彼らが現在何処にいるかというと

レストランや居酒屋、百貨店などが立ち並ぶ繁華街の一角にある

小さめのゲーム屋さん。その中である。

このゲーム屋さんは、悠二が通っている御崎高校の生徒の間では有名で

どんな手を使っているのか、ほかのゲーム屋さんに比べて格段に安いのだ。

 

 

ここまで話せば冒頭の悠二の悩みの理由、ヘカテーの呆れの理由は簡単に想像できるだろう

 

 

 

そう・・どのゲームソフトを買うかで悩んでいるだけだ。

 

実にくだらない理由

これでは紅世の王ヘカテーが呆れてしまうのも当然と言えよう。

だが当人坂井悠二にとっては切実かつ深刻な悩みなのである。高校生になったということで

母、千草(ちぐさ)から中学の時は5000円しか貰っていなかったお小遣いが7000円にUPしたのだ

その大事な大事なお小遣いは高校生になるのと共に買い換えた長財布の中に入っている。

そもそも長財布に換えた理由は周りのみんなが持っているからという日本人特有のありきたりな理由だったりする、そこにほんの少しだけ長財布の形とそれに付属しているチェーンがかっこいいかも・・・という思いもあるのだが・・

 

そう・・ほんの少しだけ・・

 

そのチェーンはというとジャラジャラうるさいというヘカテーの批判により外されており

長財布だけが制服の後ろポケットに入っている。

心配性なのかわからないが何度も何度も財布の中身を確認しているせいで現在微妙なバランスによってかろうじてポケットに入ってる危険な状態だ。

 

今の時代ゲームはグラフィックもシステムも良くなり高校生が気軽に買える値段では無くなってしまっている。

 

故の悩み・・・

「ねぇ・・・・ヘカテー・・・」

自分では決められないと判断した悠二は、自らの魂の相棒に声をかけるが・・

『私は知りません』

帰ってくるのは感情の篭っていない冷たい返事であった。

「はぁ~・・・・」

 

現在は4月の末、新しく入学した生徒がそこそこ環境になれ、友人同士でゲーセンやら

レストランで食事など理由で繁華街に進出してはその喧騒をさらに増長させている。

そんな中幾度目か悠二の溜息は、店の店主が織り成す紫煙の空間芸術を散らせては、消していった

 

 

 

 

 

悠二が頭を抱えて悩んでいるころ・・

 

「ここらへんでいいかしら・・」

繁華街からそう遠くない位置に女性の声が響き

囲われた部分を因果関係から切り離す炎が突如周囲に展開された

 

 

 

 

 

「・・・・・っ!!」

『封絶(ふうぜつ)・・ですね ここからそう遠くありません』

今の今までどちらのゲームがいいか頭を悩ませていた悠二の思考が瞬時に切り替り

それと同時に悠二の鋭敏な感知能力が徒と違う気配を感じ取った。

「ヘカテー・・この気配は?」

今まで感じたことの無い気配に多少の警戒をしながらヘカテーに尋ねる

『同業者・・フレイムヘイズの気配です』

「へ~この気配がね・・・ってこんな呑気にしてる場合じゃ無い!」

驚愕した顔で今まで小声で話していたことも忘れて叫ぶ。

当然周囲の人はヘカテーの存在を知らないので悠二に不審な目を向けるが

そんな事を気にする余裕の無い悠二は幅の狭い自動ドアを壊さんばかりの

勢いで外に飛び出し繁華街の喧騒の中に消えていった。

 

 

そんな急な加速に、微妙なバランスをとっていた財布が耐えれるはずも無くゲーム屋の床には真新しい財布が一つぽつんと落ちていた・・

 

「ここか・・・」

『どうやらそのようだ・・・徒(ともがら)の気配はどうだ?』

何者かの声・・前者は幼さを残した女性の声

後者は何かを通して発せられたような 重く低い男の声

しかし声はするものの男の姿は無く少女がそこに居るだけであった・・

 

眼下には赤く燃え上がる炎のドーム

陽炎の歪みの中 孤立した異質世界 人 鳥 虫 微生物にいたるまで全ての生けるものが動きを止めドーム内のインテリアに成り下がる空間

その中を動くモノがいた・・・

 

「中には居ないみたい」

『ふむ・・・中に居るのは燐子(りんね)か』

再び発せられる男女の声

 

「どっちにしても 好きにはさせない」

『当然だな・・・』

現在立っている高層とは言えないにも高いマンションの屋上から

跳躍体制になりつつ少女は見えない男と会話をする。

 

「行く・・・・」

少女が飛び降りようとする瞬間

『待て! 我らの他にもいるぞ』

男の声が少女を制止させた

「誰・・・あいつ・・・」

少女の瞳の先

白きマントを纏った者が知覚不能な炎のドームに突っ込んでいくのを見た。

 

 

 

 

「気色悪い・・・」

封絶突入後第一声がそれである・・

孤立した異質世界の制約を受けず動ける者、人の形をした人で無い者フレイムヘイズ坂井悠二。

学生服は同じだがその上に白いマントのような物を纏っている。しかしその服装など目に留まらないほど大きな違いがあった。

晴天の空の如く明るすぎる水色の髪、透き通るサファイアが如き輝く瞳

どちらも日本人・・・いや人としてありえない出で立ちである。

『毎回思いますが・・・たしかに悪趣味ですね・・・』

悠二の腕・・正確には右腕につけている腕輪から、ヘカテーの同意・・・

 

実際に二人がそう思うのも仕方ない事だ

封絶内で動いている悠二以外の人外は、容姿も酷く人を逸脱していた。

一つはマヨネーズのマスコットキャラそっくりな三頭身の人形

もう一つは有髪無髪のマネキンの首を固めた玉

さらに両方、人の倍の背丈ときている。

 

どちらも元は人に近しいものだったかもしれないが、こうなっては人形と呼ぶにも

人形に失礼な代物である。

「ん~・・あんた、だれ?」

マヨネーズ人形が巨大な目で睨みながら、子供っぽい声で自分たちの喰事(しょくじ)を邪魔するように正面に立っている秘色(ひそく)に問いかけた。

知能が低いのか封絶の中に入れ動けるのは限られている、そしてその髪と瞳の色を見れば一目瞭然なのだが・・・

「フレイムへイズね・・・最近私たちの邪魔をしてくる・・・」

悠二から見て左側の首玉が、玉の中心の裂け目から女性の声を発した。どうやらそこが口らしい・・・

こちらは首から上が付いているからか、フレイムヘイズと気づけたようだ。

「はぁ~・・やっぱり燐子か・・・」

がっくりと肩を落としつつ気落ちしたように悠二が呟いた。敵が目の前にいるのにもかかわらず、なかなかの余裕っぷりである。

『燐子を倒し続けていれば、いずれは本体である徒が出てくるでしょう』

ヘカテーも別段悠二の余裕を咎める様子は無いようだ。それだけ悠二を信頼しているのか、それともヘカテーも燐子ばかりで同じ心境なのか・・・声だけでは判断の仕様が無い

『それと・・・ほかにフレイムヘイズが居るようなので私の名前は伏せて下さい』

『もっとも私を知っている者ならあまり意味ないのですが・・・』

一応の忠告・・・悠二からの返答は無かったがヘカテーはそれを肯定と受け取ったようだ。

 

一方は自分の仲間がやられる程の相手と知っているため警戒

一方は本命ではなかったという落胆

この二極の奇妙な睨み合い?はもう少し続くように思われたが・・・

その可能性は大きく裏切られる  輝く火花を散らせ降って来る赤き流星のために・・・

 

 

着弾まで後             1秒             

 

 

 

 

『悠二!!』

悠二の右腕から焦った声でヘカテーが叫んだ。

「っ!!」

悠二もヘカテーの声に反応して瞬時に跳び退く

その瞬きする間もない一瞬後

 

封絶を突き破った者が悠二の一瞬前まで居た場所に着地した。

・・・避けなければ踏みつけるつもりだったのか・・・

 

「うぁああああぁあああ! 僕の腕がああああぁぁあああ!」

鼓膜を叩く不快な悲鳴が人形から響いた。

見るとマヨネーズ(燐子)の体が左右非対称になって、左腕のあった場所からは流血のように火花が散っている。

その左腕自体は体から離れた直後火花となって散った。

 

「ッチ・・・」

『はずしたな・・』

少女の舌打ちと男の残念そうな声が前から聞こえた。どうやら一撃で仕留めたかったようだ・・

悠二は自分を踏み潰そうとした人物を多少の憤りを持って睨んだが、相手は自分に背を向けているので当然気づくはずも無い。

それ以上に悠二はその姿に驚いた。

 

(女の子・・・)

 

紅蓮の炎を彷彿させる赤い長髪、漆黒を纏ったような黒いマント、それぞれが着地の衝撃で靡(なび)き揺れていた・・・ 

だがその背中からは少女のか弱さなど感じさせぬ圧倒的な威圧感。

その威圧感に相応しく少女の右手にはかなり大きな太刀が握られている。

マヨネーズ(燐子)の腕もそれで切り落としたと見て間違いないだろう。悠二に刀を見る目は無いが素人でも十分に業物だとわかる風格を醸し出している。

初めて見る他のフレイムヘイズその灼熱の存在感に悠二は、自分の仕事など忘れたように見入った。

 

悠二が見とれている間に少女と燐子が戦闘を開始した。

 

「お前!よくも僕の腕をををおおおお!」

マヨネーズ(燐子)は残った腕でなぎ払うように巨大な拳を振るった。人外の容姿にたがわぬ力で空気を切り裂き少女に飛来する。

少女はそれを後退することで避け、拳が自分の前を通り過ぎた瞬間右手で持っていた太刀に左手を添え

一気に間合いを詰める。

跳躍・・・そして右下段に構えていた太刀を左上に切り上げ、マヨネーズ(燐子)の左右を整える。

マヨネーズ(燐子)は腕の遠心力で釣り合っていたバランスが崩れ左に傾く、少女は切り上げた腕をそのままに体を左に回転させ、後ろからマヨネーズ(燐子)の右肩から左下へ向けて切り下す。

そして着地・・

切られたマヨネーズ(燐子)は声を上げることすらできず・・轟音を立て地面に沈んだ・・切り口から最後の火花を散らせながら・・おそらく何が起きたか理解する前に散っていくだろう

この間わずか数秒・・・その無駄の無い洗練された動きが悠二に経験の差を知らしめた・・

そして忘れてはいけないのはこの炎のドーム内にいる燐子は2つだということ

 

『後ろだ・・』

「うん・・」

落ち着き払った両者の声。

 

 

首玉(燐子)はついさっきまで目の前にいた悠二のことなどすっかり忘れ、自分の仲間を瞬殺した赤き化け物の一瞬の隙 自分に背を向けて着地した瞬間を狙って口を広げながら飛び掛った。気配を読まれてることも知らずに

 

少女は着地した時前に出していた右足を左足を軸にして半円を描くように滑らせ、

後ろを振り向きカウンターの要領で、襲ってくる首玉(燐子)を迎え撃とうとする。

 

両者がぶつかる三瞬程前、

 

 

「炎弾(フラムスパラート)」

右手を首玉(燐子)に向け、今まで忘れられていた男の呟くような声。

 

 

「うぐぁあああああああ」

首玉(燐子)は真横から明るすぎる水色の炎の直撃を受け、大きい口もその他の小さい口からも苦悶の声を上げ、その直線上にある今日は休みらしいレストランへ壁を破壊しながら入店して行った・・

 

「・・・やっぱり同業者か・・」

少女が今までの構えをとき、しかし警戒しながらこちらを向き言い放った。その瞳は髪と同じ

灼熱の色に染まっている。

(やっぱり)が付くのは確信はできないが、そうだろうと思っていたからだろうか

まぁ猛進して封絶の中に入っておきながら、敵を前に肩を落とすだけで何もしていなければ確信できないのは当然だろう。

 

『ふむ・・・たしかにフレイムヘイズだが気配が異質だな・・・それに先程の炎の色は・・』

少女の首から提げているペンダントから男の声が響いた。

姿の見えない男の正体である

 

『気を許すな・・・』

ペンダントから少女への警戒を促す言葉

「・・・・・」

少女は多少の疑問はあるが無言で悠二に構えなおした。

目の前にいる学生の証である黒い制服を着て、白いマントのような物を纏っている

青き少年に・・

 

 

「・・・助太刀は・・・要らなかったかな・・・・?」

悠二は頬を掻きながら戸惑ったように言った。

完全に自分が先に燐子と対峙していた過去など忘れきった発言。

『そうですね・・・気づいてるようでしたし』

ヘカテーからの同意・・・

『悠二がさっさと仕掛けていればこんなことにならなかったでしょう』

ヘカテーからの非難・・・

『それに・・・今の今まで悠二が見とれていたせいですよね・・・』

ヘカテーからの殺意・・・

 

「え?・・・・え~と・・・・」

悠二はどれも事実なので反論できない、手首から無情な殺気が悠二を侵食する・・

冷や汗が頬をつたう・・

 

レストランから突如轟音

 

どうやら会計をすませてきたらしい

少女も悠二もそちらへ警戒する

(ふぅ・・・・助かった~・・ありがとう燐子・・・)

警戒しながら馬鹿なことを考えている奴もいるが・・・

それがちょっとした隙になったのか悠二の後ろから、美しい・・しかしどこか無機質な雰囲気を纏う女性が、その背中に手を伸ばして来ているのに気が付けなかった。

 

『悠二!後ろ!』

ヘカテーの焦ったような叫び

「っく!・・」

振り返りざま白いマントからどう考えても収まりきらない大錫杖を反射的に取り出し防ぐ。

その錫杖は三角形の錫杖頭に三角形の遊環を持つ戦闘用というよりは祭事に使われそうな物。

『っ・・・・・』

錫杖取り出した瞬間ヘカテーが何か言おうとしていたが・・・結局言わなかった。さほど重要なことではないからか

 

完全に油断していたせいで体勢が悪い・・・いくら女性とはいえ徒が作り出した存在、その力は普通の人間をはるかに上回る。上から覆いかぶさるように力を加えてくる美女に対し、いくらフレイムヘイズとはいえ下から押し返す悠二はいささか部が悪い。そしてその両者の力を受けてビクともしていない錫杖はやはり戦闘用なのだろう

さらに悪いことは続く

『悠二、首玉がこっちに来ます』

なぜか冷静にヘカテーが言った。

レストランに吹き飛ばした首玉(燐子)が火花を纏い、かなりの速度で悠二との距離を詰めてくる

火花の出てる量から見てかなりダメージを与えていることはわかるが、悠二にぶつかる前に飛散する可能性は低い。

このとき悠二が一人であったなら、燐子は悠二にかなりのダメージを与えることができただろうが

このときはもう一人、しかも徒(燐子)にとって最悪なフレイムヘイズがいた。

 

もう一人のフレイムヘイズの少女は首玉(燐子)とは比べ物にならない速さで接近、横なぎに両断。

上下の半球になってしまった玉首(残骸)は地面に接触する前に火花となり飛散した。

 

「く・・あ・・ありがとう・・」

美女の圧力を耐えている悠二は苦しみながらも助けてもらった少女に礼を述べた。

 

「元は私の獲物・・」

姿は見えないがぶっきらぼうな返事が耳に届く

 

挟み撃ちを免れたことで多少余裕ができた悠二が美女に反撃した。

悠二がわざと力を抜き、また籠める。一見無駄、そして不利な動作に見えるがそれにより錫杖が振動し、

遊環が鳴る・・・

 

 

「星(アステル)よ!」

今日はじめてのいい声?で叫ぶ

 

それと同時に錫杖頭から“明るすぎる水色”の光弾が無数に美女に迸り炸裂。

 

「ぎゃああああ!」

美女に似つかわしくない悲鳴を上げ下半身が爆ぜる。

 

同時に

「ごが・・・・」

いい声?をあげた男が、間の抜けた声をあげる・・・

至近距離で美女(燐子)を攻撃したため、爆発の衝撃で彼女の履いていたヒールが吹き飛び見事に

錫杖を持っている腕の間をすり抜け悠二の顎にアッパーを決めたのだ。

自分の放った攻撃なので炎によるダメージはないが、爆風により吹き飛ばされた“物”は別である。

 

 

 

不運・・・・

 

 

 

『至近距離で放つからです・・』

左手で顎を押さえ薄っすら涙ぐんでいる悠二にヘカテーは呆れながら言う

「・・・・・・うう」

しかし、人間よりはるかに丈夫なフレイムヘイズを涙ぐませるとは・・・

自業自得とは言え、かなりの武器(ヒール)である。

満員電車での対痴漢撃退用具及び無差別足背圧殺器具の名は伊達では無いようだ・・

 

「フレイムヘイズ・・・討滅の道具め・・・」

下半身の爆発により今まで悠二を観察していた赤髪の少女の近くに墜落。

そして顔を憎悪で歪ませ悠二達に言い放った。

 

『そうですか』

いまだに復帰しない悠二に代わりヘカテーが興味なさそうに返す。

「ふふふ・・・私のご主人様が黙ってはいないわよ・・」

「いい加減・・出てきてほしいよ・・」

下手な脅し文句にやっと復活した悠二が顎を押さえながら溜息混じりに答えた

 

『もう・・・いいだろう』

確かめることは確かめたと言いたそうな低い男性の声が

美女(燐子)を見下ろしていた少女に告げる。

初めて会ったとは言え同じフレイムヘイズ、悠二がなぜ下半身のみを攻撃したのかを明敏に察していた。

徒本人の情報収集、そしてこれ以上は何もでないだろうと判断した上での言葉。

少女は躊躇無く太刀を振り上げ・・・振り下ろす。

普通なら聞こえてくる絶叫が聞こえてこず、代わりに金属同士がぶつかる高い音が響く。

 

悠二が少女の太刀を美女をかばうように錫杖で受けていた。

いい加減燐子狩りに飽きている悠二としては、なんとしても本体の場所を聞き出したかった。

故の行動。

だがその行動が裏目に出る。少女の攻撃を悠二が受け止めた瞬間、上半身だけの美女の中から

“何か”が飛び出し封絶の外に逃げ去ってしまった・・

 

少女も悠二も気づいたが、

少女は悠二が前にいるため

悠二は後ろを向いているため

どちらも反応が遅れ、逃がす結果へと繋がった。

 

「あれが本体だったの?」

『そうです』

悠二は本体が逃げた方を見つめながら腕輪に聞くとそれにヘカテーは短く答えた。

 

「はぁ~・・・せっかく追い詰めたのに逃がしちゃった・・・」

『いまさら言ってもしかたありません・・あの燐子は今まで戦ってきたものと少々異なっていました。』

「敵もようやく切り札を出してきたってことかな?」

『そう思っていいと思います』

「ずいぶん間抜けなフレイムヘイズね」

落ち込む悠二をヘカテーがフォローしていると、後ろにいる少女が馬鹿にした声をかけてきた。

振り返ると少女がこちらを憎憎しげに睨んでいた。

「あの燐子の口ぶりから久々に“王”を討滅できるかと思ったのに・・それをみすみすにがすなんて・・」

少女は忌々しそうに言う

「ごめん・・・いつもの燐子と少し違って油断してた・・それちちょっとイレギュラーもあったし・・・」

悠二は前半は多少申し訳なさそうに後半は少し責めるように言う。

ちなみにジト目で

 

『逃がしてしまった物は仕方がありません。町の人が喰われなかっただけでも良しとしましょう。』

ヘカテーが険悪なムードを打開しようと仲裁を入れた。

 

「ふんっ・・・・」

そう言って少女は封絶から出ようと一歩踏み出したとき

『待て・・・確認したいことがある』

ペンダントが少女を止めた

「「・・・・?」」

少女も悠二も意図がわからず首を捻る

 

『質問に答えてもらうぞ・・・“頂の座”』

『やはり気づいていましたか・・・“天壌の劫火”』

有無を言わさぬ男の口調に対しヘカテーは落胆気味に答えた。

『その前に・・・悠二そろそろ封絶が解けます』

「え?・・・ああそうだね」

聞きなれぬ言葉について考えていた悠二がヘカテーの声に、はっと我に返った。

「このままだと店の人がかわいそうだしね」

そういいながら右手で持っている錫杖を振るう。すると燐子に破壊されたレストランや戦闘に巻き込まれ砕けた人も時間を巻き戻すように修復された。

「ふぅ・・・これでいいかな」

そう言い錫杖をマントの中に戻しマントごと消す。それと同時に人間離れした明るすぎる水色をした瞳と髪が元の黒髪に戻る。

同様に少女も大太刀を黒いマントに入れ、灼熱の如き赤が艶やかな黒色に変化する。

 

直後周りを覆っていた炎のドームが散り、孤立した世界が元の世界と繋がった。繁華街ほどではない喧騒が耳を煩わせる。

 

『さて、し「お前、どうやって町を修復した」・・・・』

男の声に被せる様に少女が質問。ただし悠二に向かって

 

「え、どうやってって普通に?」

「そんなことは聞いてない!どこからその力を持ってきたかを聞いてるの!」

困惑したような返答に少女は強く聞き返した。

 

「自分の存在の力をつかった」

悠二は少女に当然のように答える

 

「なっ・・・」

『己の存在の力を・・だと』

驚愕する両者。それも当然、自分の存在の力を使うのは身を削る行為に等しい。フレイムヘイズとて戦闘以外に存在の力は使用しない。自らを傷つけるなど特別な趣向の持ち主以外は誰も好みはしないだろう。

 

『それも含めて、話してもらうぞ・・』

ペンダントがヘカテーに尋ねる。

『説明で「その前にさ・・・二人って知り合い?」・・・・』

今度は悠二がヘカテーを遮り質問した。

 

『知り合いと言うより知っていると言ったほうが正しいですね。“天壌の劫火”通称アラストール・・紅世の徒の間では有名な名です。同胞殺しとして・・』

悠二に会話を邪魔され不機嫌そうにしかし律儀に答えた

『同胞殺し・・か間違ってはいないが貴様も今は同じだろう』

こちらも理由は違うが不機嫌そうに返す。

『それとも何か企んでいるのか?仮装舞踏会(バル・マスケ)が三臣柱(トリニティ)“頂の座”ヘカテー』

『信じる信じないは別にして私はもう仮装舞踏会(バル・マスケ)の一員ではありません。』

『一員ではない・・仮装舞踏会(バル・マスケ)を裏切ったのか?ヘカテー』

『客観的に見ればそういうことになるでしょう。』

『信じられんな』

『さきほども言ったように貴方に信じてもらう必要はありません、アラストール』

ペンダントと腕輪の言葉の応酬、道行く人はこの状況を見て何を思うだろうか、少女と少年が向かい合ったまま一言も喋らずに見つめあう。しかしそこに恋愛のような雰囲気は無くギスギスした雰囲気が場を占めている。

『それに私が抜けたのは仮装舞踏会(バル・マスケ)と言う名の組織です。』

『つまり祭礼の蛇(創造神)を裏切ったわけでは無いということか・・だがそもそも仮装舞踏会(バル・マスケ)は祭礼の蛇(創造神)が作った組織ではないのか?』

『今は話せません。しかし私は今や貴方と同じ同胞殺し、人を喰う徒は私の敵です。例えその対象が仮装舞踏会(バル・マスケ)の一員であろうと例外ではありません』

『・・・むぅ。。』

アラストールに向けて放った(同胞殺し)を逆に自分に使うことで意表をつきさらに仮装舞踏会(バル・マスケ)に対する覚悟を突きつけることによって反論を抑える。

その結果アラストールは言葉をつなげれず呻く・・・

 

『では先程の、町の修復になぜ自分の存在の力を使う?フレイムヘイズにとって己の存在の力はそのまま戦力になる。この町には王レベルの徒がいて、もし襲ってきたときに存在の力が十分に溜まっていなければ死ぬことになる。そんな危険を冒してまで自分の力を使う意味はあるのか?』

アラストールは追求ではなく単なる疑問として聞いた。

『それは・・悠二の意地・・いやエゴですね。今回は貴方がたが居たので少し狂いましたが、本来の悠二の戦闘では極力周りへの被害は避けています。これは目立たないためでもあるのですが、それに他のフレイムヘイズと違って悠二はどんなに存在の力を消費しても使い切らない限り一日で回復します。』

悠二が最初の台詞で苦笑していたがヘカテーはきっぱりと言い切った。

『そんな都合のいいことができる訳・・・いや・・一日・・・・まさか』

アラストールが反論しようとしたところで気づいた

「どうかした?アラストール」

ヘカテーの言うことに驚いていた少女が何かに気づいたらしいアラストールに問いかける

『フレイムヘイズ自体が“ 零時迷子”を内包してる・・だと?』

『確かにそれならそのような事が可能だ・・』

少女に答える口調ではなく独り言を呟くように語った

それを聞いた少女は目を丸くして悠二を見た、正確には悠二の中にあるものを

その視線に対し悠二は照れ笑い+苦笑という奇妙な顔で受けた

 

「そんなことが・・できるの?アラストール」

 

『できないことは無い・・・ただ我もフレイムヘイズに内包している物を見たのは初めてだ・・そもそも“零時迷子”いや、それに限らず宝具は人間と“紅世の徒”が共に望む時に生まれる物、故にそのどちらにも有益でこそ害はない。気配が少々異質なのはそのせいか・・・』

少女の問いにアラストールが少々自信なさげに答えた。

 

『私と会った時すでに悠二は“零時迷子”を内包していました。それにより悠二は外部から存在の力を取り入れることも時間をかけて取り戻す必要もありません。故にフレイムヘイズの思想である“100の内99を生かす為に1を殺す”悠二はその負の部分をする必要がありません』

 

『・・・・・・・・!!』

ヘカテーの言葉にアラストールは声を失う

 

「フレイムヘイズの思想、理念は理解してる。でも僕にはその悪いところをする必要がない。だったら全ては無理だとしても、手の届く範囲の人ぐらいは救いたい、例えそれがトーチだといしても・・」

 

「それが僕のフレイムヘイズたる覚悟」

 

「っく・・・・」

まだフレイムヘイズになって間もない半人前が一丁前にフレイムヘイズの覚悟などほざいて少女はイラつく、そして殺気の篭った目で悠二を睨む、

 

『やめておけ・・・世の中には色々なフレイムヘイズがいてそれぞれが、それぞれの覚悟の元戦っている

それに対して他人がどうこう言うことはない。今こちらからけしかけて同業者に追われたくはないだろう?』

アラストールが少女を諌めた

 

「でもアラストール!こいつ・・・偉そうなこと言いながらこの町はトーチだらけじゃない、何が“人々を救う”?救えてないからトーチになってるじゃない!」

アラストールに言いながら悠二にも言う

 

「この町にいる徒は僕がフレイムヘイズになる前から居たらしくて・・・・そして僕も半人前だから要領が悪くてね・・・」

苦笑しながら少女に言いつつも自分にも言う

 

『確かに半人前で要領も悪いですが先程の戦闘で誰も喰わせていないというのはかなりいい事だと思います。』

ヘカテーの思わぬ賛辞に悠二は少し頬を赤らめ照れる

「ふんっ・・今回は私が居たからじゃないの?」

少女からの安い挑発

「僕でもあれぐらいは余裕だよ」

ヘカテーの褒め言葉に調子を良くしたのかその挑発に乗る

「どうだか・・・」

「なんだと・・・」

 

 

『悠二』

『そのへんにしておけ』

お互いの契約者が少女と悠二を呆れながら止めた

このまま放置しておくと喧嘩になりかねなかったため

さすがにフレイムヘイズ同士の喧嘩は避けたい。

 

『しかし先程の燐子は今まで狩って来た燐子と違いました。そろそろ本命が出てくるかもしれないですね』

ヘカテーの自信に満ちた言葉

「・・・・・・」

それに対して少女が何か言いたげだったが、アラストールにとめられたことを思い出し、思いとどまった

 

『そうだな・・・。だがやはり何か企みがあるかもしれん、しばらくの間監視させてもらうぞ』

『ええ、邪魔さえしなければお好きにどうぞ』

アラストールの提案にヘカテーは冷静に答えた。

 

「う~んもうすこしおしとやかだったら可愛いんだけどな・・」

ヘカテーとアラストールが話をしている間に何を考えているのか、悠二は突然少女に言い放つ。

「は?・・・・」

『ばか・・・か?』

少女は突然の事に頭がついていけず、困惑した声をあげる。

さすがにアラストールは悠二の『言葉』の意味は理解していた。

そんなことなど気にせずに悠二は顎に手を当て小声でつづける

「いや・・・逆にそのギャップがいいのかも・・・・でもな・・いや・・」

どうやら声が外に漏れているのに気が付いていないらしい。

 

『悠二・・・・家に着いたら話があります』

ヘカテーから絶対零度の声が響いた。アラストールでさえ萎縮するであろう殺気があたりに充満する。

「え・・・・何?え?どうして怒ってらっしゃるんでございますか?」

もはや敬語なのかどうかも窺わしい日本語で悠二がヘカテーに問う。

『わからない・・それ自体が罪です!』

帰ってくるのは冷たい返事のみ・・・

『さて早く帰りましょう、千草が待っています』

「は・・はははは」

悠二から出てくるのは乾いた笑いのみ・・・その意味は押して知るべし・・

「じゃ・・じゃあ色々あるから帰るね・・ヘカテーの機嫌も悪いし・・・」

少女とアラストールに悠二が言う。

『決して悪くありません!』

ヘカテーからのムキになった返事

『これだけは警告しておくヘカテーには気をつけろ』

アラストールからの忠告それに悠二は答える

「ふふふ・・僕はヘカテーを信じてるさ」

『・・・・そうか』

 

「じゃあよろしく・・」

これから監視のためそばに居ることになる、そのために挨拶をと思い

手を伸ばした

「私は貴方を監視するだけ、馴れ合う真似はしないわ」

少女は手を出さなかった。かわりに出てくるのは挑発文句

悠二は未練なく手を元の位置に戻した。もう挑発には乗らないようだ。

『悠二!さっさと帰りましょう!』

「わ・・わかってるって」

 

「じゃあ・・・いや・・・またね」

言いかけて言い直した

「ふんっ」

帰ってくるのは無愛想な返事のみ、それに対し別に何も思わなかった悠二はその場を去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

『あやつ・・・確信犯だな』

「え?・・どういう意味?」

『はぁ~・・・』

 

ヘカテーのことを聞いたときあいつは笑顔で答えた・・まったく疑うことをしない屈託のない笑顔で

言い切った。

 

そして自分の言葉を理解できない少女に対し、父親としてか兄としてか溜息つきたくなるのは仕方ないことだった。

 

 

 




前書きのことは華麗にスルーしてください><
いや~やってみたかっただけなんですよ・・・ね・・・
大して深い意味はありませんのでwただ自分の厨ニ病の顕現ですw

本来は悠二君のゲームの話はもっとありました、ゲームの名前やどちらを買うことによって起こる周囲の事情など
でもぶっちゃけどうでもいい話なんで結局省きました。
それにしても7000円とか・・・いいですよね~w自分もそれぐらいもらいたい・・・

長財布の話・・これは完成する直前に思いついたもので完全に蛇足ですw
この蛇足は次話に続きます。

自分の妄想を文にするのがここまで難しいものだと悟りました・・・
ノートPCで打ち込んでいる最中・・・カーソルが何故か×の上に
そして手のひらが打ち込んでいる間にマウスポインティングディバイスを叩いてしまい・・・
いままで苦心して考えた文がおじゃん・・・泣けましたね・・ということで気長にだらだらやって生きたいと思います
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