秘色のフレイムヘイズ   作:sairu

5 / 7
まえがき
いや~本当に申し訳なかったです。。。予備校うんぬんでw
注意
今回の作品は今までの比ではないほどキャラクターがぶっ壊れています。
ゆえにサブタイトルからわかると思いますが(仮)ですw
この話はいつも通り一気に作ったわけではなく、時間の合間に合間に作ってたんで色々とおかしい所や読みにくい所があるかもしれません。
それでもいいって方はどうぞ~^^


初心者≠弱者

 

 

 

ガシャンバキバキガシャゴシャバキン・・パキ

 

 

 

静寂に包まれた炎のドームに何かが壊れる耳障りな音が木霊した。

その音源地に秘色の髪をして白いマントを纏うものが居た。

フレイムヘイズ化した坂井悠二である。その悠二の眼前には先ほどまで共に戯れていた、友達だったものが散らばっている。悠二が右手に持っている錫杖トライゴンで横薙ぎった結果がこの惨状。

悠二は若干《・・》顔を曇らせてトライゴンを持つ手と反対の手を、振り返りながら自分の後ろの廊下に向ける。

 

 

(炎弾《フラムスパラート》)

 

その悠二の掌に秘色の炎が現れ、廊下を一直線に横切る。途中に居る同じように友達同士で笑い合い、そのままの形で止まっている生徒たちを、破壊に巻き込みながら反対の壁に当たり、壁を爆砕する。

悠二はそれを確認した後直ぐに、徒の気配がする自分の教室に向かって駆け出す。

この方法こそが悠二の人の守り方。徒に喰われる前に自らで人を壊す。いくら徒だろうと人の形で無い物から存在の力を喰らうことはできない。だからこその手段。そしてその修復に自分の存在の力を躊躇無く使える悠二だからこそできるやり方でもある。

 

 

 

悠二が友達を壊して(・・・)いる頃、教室ではシャナが口の端を少し吊り上げ教室の中心で窓を睨みながら立っていた。

「やっときた・・・」

その目は待ってましたと言わんばかりに爛々と輝いている。

そして戦闘に邪魔な自分の近くの(主に悠二の)椅子と机を蹴飛ばし、足を肩幅に開き、堂々と窓を正面に立つ。そして腰まである長い黒髪が、黒い大きな目が、灼熱の光を灯す。

 

火の粉が舞う中、黒いコートを纏い、右手に大太刀を携えた少女、天壌の劫火がフレイムヘイズ炎髪灼眼の討ち手がそこに居た。

直後後方から爆音が聞こえてきた。

「っ!?」

自分の気配探知が間違っていたのかとすぐさま振り返るが、何も起こらない。怪訝そうな顔をするシャナにアラストールが叫ぶ。

「前だ!」

またもや慌てて振り返る。そして何も起こらなく・・・無かった。

「トランプ?」

期待していた物と違っただけに気の抜けた声が出てしまう。

封絶の炎の中、窓の外に炎の光をエッジで反射させ、浮かぶものは長方形の遊具。

反転し見せた柄は、スペードのエース。

その宙に浮く一枚のカードから、何をどうやったのか二枚目のカードがはらりと落ちる。

それを皮切りに三枚目、四枚目、五・・・窓の外に次々とカードが現れ増殖していく。

やがてスピードを増し、目にも留まらぬ速さでカードの海を作る。

 

そして突然、今まで自由気ままに動き回っていたカードが一点を指向する。

フレイムヘイズ、シャナに向かって。

静かに漂っていた海は突如荒れ狂い、津波の如く窓ガラスをぶち破り、教室になだれ込んだ。

カードの刃の奔流がシャナの小柄な体を飲み込もうと、目前に迫る。

 

まさに目と鼻の先。その数cmもしくはmmに青い壁が現れる。

それだけではなく、シャナの周りを円形に青い壁が守護する。

触れたカードは、跡形も無く燃え(・・)上がり、数を減らす。

 

「これは・・・」

目の前に突如現れた青き炎、シャナは目を見開き、つぶやく。

知っている炎の色、人を散々からかってくれた嫌な奴、そして要りもしないときに手を出す変な奴。

(・・・悠二)

 

─シャン─

シャナを囲っていた炎が火力を上げ、シャナを円の端に、中心を廊下側へと拡大。そして教室を半分を幻想的な明るい水色で包み込む。

シャナと対極に位置する教室の入り口に秘色の髪をした人が白いマントそ翻し立っていた。

 

 

「今度は、助太刀が必要かい?」

二人目のフレイムヘイズ悠二がシャナに笑いかける。

 

 

 

シャナはチラリと悠二を一瞬見、視線を目の前の青炎、その奥のカードの激流に戻す。

今なお数多のカードが奔出し、壁に当たっては燃やされていた。

 

灼熱の光を灯すシャナの双眸がカードの流れの中心を見抜く。それに向けて体制を低く、太刀を両手で持ち右上段刺突の構え。

 

 

「いらないわ!」

 

 

言い終わるが早いか行動が早いか

 

瞬間

 

両足に溜めていた力が開放され赤き弾丸となり青壁を突き抜ける。幾多の生徒や机、他もろもろを支え続けていた頑強な床は突如受けた規格外(・・・)の力に耐えられず、悲鳴をあげ皹(ひび)裂ける。

シャナは速度を落とすことなく両手で持つ大太刀の切っ先をカードの流れの中心に突き立て、何かに刺さった感覚を感じると即座に太刀を抜く。

シャナが切っ先を突き立てるのと同時に宙を流れるカードの統制が乱れ、炎の壁を飛び出してきたシャナを囲み切り裂くといった一連の作業ができない。

それ以前にトランプの刃程度ではシャナの羽織っているコートを貫くことができないので、その行動自体が無意味なのだ。

 

 

 

「白・・・・か」

シャナが青い壁を突き破ったのと同時に、火力と範囲を狭めつつ教室の中心に向かう悠二が思案気な表情に観察者の目という研究者顔負けの顔をしながらつぶやいた。

もし悠二が池速人のような眼鏡をかけていたら、確実に、絶対に、キラーンという効果音を体のどこからか発し眼鏡を輝かせるだろう・・・

 

フレイムヘイズになるからといって、少女向け(今は成人男性も含まれるのか?)の魔法少女よろしく

服装が変化するわけではない、羽織る程度はあっても着ている物が変化すること無い。

ゆえに、学校に来ているシャナも悠二も羽織っているものは違えど中身は学生服なのだ。

極々普通の学生服・・・そんなものを着ながらアレだけの跳躍をするとどうなるだろうか?

そう・・・見えてしまうのだ。

 

何とは言わないが・・・

仮に悠二がただのミステス(宝具を内包した封絶内を自由に動けるトーチ)だったなら、早すぎて見えなかっただろう。

 

何とは言わないが・・・・

そこはフレイムヘイズ、動体視力も並の物では無い。それ以前に周囲の人がほぼ全員固まっているのでそれを見たらいいのではないか?などと年齢ゆえに考えたりはするが、

 

何とは言わないが・・・・・

それをやったら最後、右腕に付けている悪魔が光臨し間違いなく、冗談ではなく、文字通りに“ぐちゃぐちゃ”にされるだろう。

 

『・・・どういう意味ですか?』

真剣に思案している悠二に、意図がわからずヘカテーは怪訝そうに尋ねる。

 

「え・・?いやなんでもない。」

悠二は今見た映像を自分の脳内フォルダに保存することに夢中で、言い訳を思いつく暇がない。

『・・・・・』

もしヘカテーが顕現していたら、訝しげな顔をして悠二に詰め寄る事ができるのだが現状況で、それはかなわなかった

 

悠二がこのような事を考えている間も戦闘は続いていた。

トランプの流れの中心にいた何かから切っ先を抜いたシャナは、空中で態勢を整え大太刀を振りかぶり刀身に炎を纏わせ一気に振り下ろした。

悠二の炎とは比べ物にならない破壊の力を含んだ灼炎(しゃくえん)は周りにあるカードと酸素を取り込み大爆発を起こす。

炎と爆風は教室内を縦横無尽に駆け回り、後方にいる悠二にも襲いかかろうとしたが悠二の周りに張られている青い炎に防がれた。防御に主を置いている自在法なだけに、外からの攻撃

に対しては強いのだ。

爆炎と爆風が薄れたころ悠二が目にしたのは、教室の端に悠然として立つシャナと、それとは対照的な教室の姿。

先の踏込でも傷ついたと言うのにさらに追い打ちを食らっていた。傷に塩を塗るどころではない傷にナイフを突き刺すような所業だ。

床は焼き剥がれコンクリートがむき出しになり、黒く燻っている。周りにあった机や椅子は原型を留めている物がほとんどない。

封絶内では人でも物でもいくら壊しても修復できるが、いつも見慣れている光景なだけにさすがにいい気はしない。

 

「ここまでしなくても・・・・」

『凄まじいですね・・』

両者からその様な言葉がでても仕方がないだろう。

悠二は苦々しい表情で周りを見て、そして、シャナを見る。その時初めてシャナの持っている大太刀の切っ先に何かが引っかかっている事に気づいた。

昨日、悠二が庇ったために取り逃がしてしまった人形の燐子。

人形は無残にも肩からバッサリと切られ、切っ先を胸に深くめり込ませながら太刀の先に掲げられている。

その腹には風穴が空き、白くはみ出た綿と共に火花を流血のように振り撒いて、シャナの初撃が的確に当たっていた事を証明している。

 

「う・・ぎぎ・・・が」

人形が口から低い呻きを漏らす。冷静に考えてみれば少し不思議である、昨日の燐子も苦悶の声や悲鳴を上げていたが果たして道具に痛みなどあるのだろうか?

燐子の制作過程の副産物なら仕方ないのだが、痛みを付けないほうが道具としてはいい仕事をすると思われる。

シャナは、人形に何か話しかけようとしたが途中で止め、周りを見渡す。

いつの間にか人形から散っていた花火が地面を飛び跳ね、シャナを取り囲んでいる。飛び跳ねているうちに、なぜか大きくなる火花がシャナを中心に回り始める。

「う、くくく。。。」

呻き声をいつの間にか忍び笑いに変え、傷口から大量の火花を放出した。その火花の一粒一粒がマネキンの頭の形を作り人形と合体。

そして火花からできた首がいくつもくっつき人形を中心にして巨大化していく。中心に人形が入っているが首玉再臨。

シャナを取り囲んでいる火花も首に変化はしたものの人形にはくっついておらず、依然シャナを中心に回り続ける。

突如、首の一つがくすくすと笑いだす、それに呼応して首玉やシャナの衛星と化している首もくすくすと笑いだす。

異様な光景が、教室を包み込む。普通はあんまりな光景に腰を抜かす|乃至≪ないし≫唖然として固まってしまうが

もうとっくに見慣れてしまった悠二とヘカテーはそれにたいし反応すらしない。

 

「シャナ、体を守って」

いままで教室の中心付近に、青い炎を張り傍観(・・)に徹していた悠二がふいにシャナに言う。

 

─シャラン─

 

悠二が右手に持つ錫杖トライゴンを床に打ち付け鳴らすと、今まで悠二の周囲を囲っていた青い炎が飛散、及び複数に分かれて収束。

光球を作り出す。

 

─シャラン─

 

「星(アステル)よ!」

悠二がトライゴンを真っ直ぐシャナに向けて叫ぶ。

同時に悠二の周りを浮遊していた光球が、それぞれの目標である首玉に光の尾をを引いて走る。

 

着弾。

「ギャアアアアア!」

「ぐううぅぅぅ!」

「ぐあああああ!」

 

それぞれの首がそれぞれの叫び声や苦悶の声を上げ、爆砕する。

爆風による砂埃が晴れた時、中心には・・・

 

「ゴホッゴホッ・・・呼びかけと・・行動の間が、ゴホッ・・短い!」

爆炎や爆風は黒いコートで防いでいたものの、舞い上がった砂埃によって苦しめられるシャナがいた。

 

「あ・・・ごめん・・」

「ごめん・・・じゃ、すまないわ!!」

悠二はトライゴンをおろしつつ謝罪するが、埃まみれになったシャナの怒りが収まる訳もなく、足を地面に打ち付け両手をふるい体全体で

怒りを露わにする。

 床が可哀想だ。

 

「うふふ、すごい爆発だったね。こんにちは。おちびさんにのっぽ君、逢魔が時に相応しい出会いだ」

と突然韻を浮かせた声がかけられた。別に悠二が長身かと言うとそうではなく、対比物であるシャナが小さいために悠二が大きく見えるのだ。

 

壊れた窓の奥、長身の男が純白のスーツを着こなし、その上に同じく純白の長衣(ちょうい)を纏い浮いていた。

純白の長衣と浮いていることで、シーツのお化けを彷彿(ほうふつ)させる曖昧な存在。

触れれば輪郭がかすれそうな、線の細い美男子。声は独特な韻を含み、壊れた弦楽器のようだ。

 

悠二もシャナもお待ちかねの紅世の王。だが・・・

 

 

「だから・・・シャナなら防ぐって思ってたんだよ!それにもう謝ったじゃないか!」

「あんな至近距離から打って、謝ってすむと思ってるの!? それでも特別に譲歩して許してあげるから、一週間私にメロンパン買ってきなさいって言ってるの!」

「それ全然譲歩になってない、むしろ逆(ry!」

「うるさ(ry!」

「(略)!」

「(略)!」

・・・・

・・・

・・

二人は色々と忙しくて全く気付いていなかった。当然こんな言葉の暴風雨に曖昧な存在による韻の浮いた声など通る筈もない。

 

「あ・・あの・・・」

完全に蚊帳の外である王は予想もしていなかった事態に茫然としてしまい、隙だらけの敵を攻撃することさえ忘れている。

相変わらず韻の浮いた声だが明らかに先ほどのような自信は見られない。

 

『悠二!いいかげんにしてください!敵です!』

『いい加減に落ち着け!敵だ!』

 

このくだらない争いに終止符を打ったのは、やはりというべきか其々の契約主である。

「え?」

「ッ!」

その言葉で両者は目が覚め、窓の奥にいる姿を確認し驚きの声を上げる。

シャナはとっさに太刀を構え王を睨み戦闘態勢に入るが、悠二は王という違和感に戸惑い、体が動かない。

 

「あんたが主?」

シャナが今までとは違う凛とした声で問う。

 

「・・・・そう、“フリアグネ”、それが私の名だ・・」

返す男は声に力がなく、何故か(・・・)戦う前から疲れているようだった。

 

アラストールが若干疲れた声で投げやりに言う。

『“フリアグネ”・・・ああ・・フレイムヘイズ殺しの“狩人”か・・』

フリアグネと名乗った男はアラストールの声色で若干元気を取り戻す。

「殺しの方で、そう呼ばれるのは好きじゃないな。本来はこの世に散る“紅世の徒”の宝を集める。それゆえの“狩人”の真名なのだけどね・・・」

その少し光を取り戻した目がシャナの胸元のペンダント“コキュートス”の中を射抜こうとがんばっている。

「そういう君は、我らが“紅世”に威名轟かす“天壌の劫火”アラストールだね。直接会うのは初めてかな。こっちの世界に来たとは聞いていたけど・・・・君の“フレイムヘイズ”も初めて見たよ」

次いで気だるげにシャナに目をやる。

「・・・・ふぅ・・・これが君の契約者“炎髪灼眼の討ち手”か・・・噂っていうのは本当に噂なんだね・・・」

何故か勝手に哀愁を漂わせ、ひとりごちる。

 

フリアグネが遠い世界へ行っている間、悠二は違和感に慣れヘカテーと会話していた。

「宝を集めるか・・・紅世の徒でも収集家ってのはいるんだね・・・」

『宝具にはかなり役に立つ物も数多くありますからね。でも“狩人”フリアグネの場合収集家ではなくこちらの世界で言う宝具ヲタク、宝具萌え~に近いと思われます。』

「・・・・・・・・・・・・宝具萌え・・ね」

『そうです』

「・・・・・・・・・」

ヘカテーの口調はいつも通り淡々としいたが、明らかに引っかかる単語がある。

悠二は中学の頃と違い、学校で授業ではないにしろ楽しく過ごしてそれに伴い様々な知識や人間関係も増えた。

中学の時冷め切って、養いきれなかった感情が次々と生まれ、成長していく。

だが、それは一緒に学校に行っていたヘカテーも同じだったと言うことだ・・・。

 

「さて・・・君だね。私の大事な燐子を散々壊してくれたフレイムヘイズは、一体誰の・・・いや待てよ。その色とその声は・・・」

遠い世界から帰ってきたフグネリアは悠二を見て、自分の過去の記憶を探る。

「驚いたね・・・。“頂の座”まさか君が人間に力を貸しているとは・・・その子よっぽど重要な物(・)なのかい?」

『何が言いたいのですか。フリアグネ』

フグネリアの言葉にヘカテーの声のトーンが少し下がる。悠二も僅かながら目つきが鋭くなり、トライゴンを握り締める。

「ふふふ、そんなに殺気立たないでくれ、ただ興味深いと思ってね。創造神の人形(・・)である君がそんな行動を取っている事が」

フグネリアの薄い切り口のような唇の両端が持ち上がる。

「やめろ!ヘカテーは人形なんかじゃない。お前の燐子と一緒にするな!」

悠二は我慢できなくなり、フリアグネに向かってトライゴンを振り叫ぶ。

「一緒になんかしてないさ。・・・そうだね、私の方が少し優秀かな」

少し前の疲れはなんだったのか?今は目はギラギラと輝き、口はこれ以上釣りあがらない所まで上がっている。

「お前・・!!」

悠二の目には憎しみの光が煌々と燃え、歯を食いしばり、今にも飛び掛りそうだ。

『悠二!やめてください。落ち着いて・・』

ヘカテーが悠二の腕から必死に叫ぶが悠二の耳に届かない。悠二の怒りに呼応してヘカテーの契約者の証である明るすぎる水色の炎が体から火の粉となって辺りに振りまかれる。

ヘカテーが止められず、フリアグネに飛びかかろうとする瞬間。

悠二の視界が黒く染まる。

シャナが悠二とフリアグネの間に、悠二を背にして立っていた。

『言動に惑わされるな坂井悠二。多数の宝具を駆使し、フレイムヘイズを幾人も屠っている強力な“王”だ。成りたてのお前には荷が重い』

意外にも悠二を諌めたのはシャナの契約主であるアラストールである。

「邪魔。下がって」

シャナから非情な一言。だがその非情な言葉が悠二の頭の血を下げた。

今まで流れや怒りで麻痺していた、本来の感覚が徐々に戻ってくる。それと同時に自分がどれほど馬鹿な真似をしていたかがわかる。ほんの少しでも集中すればわかるであろう自分との絶対的な経験と力の差。

嬉々としてシャナに手を貸した時の自分の言葉が頭の中を反芻し、悠二の心を蝕む。

(何が助太刀だ・・・逆に足手まといに・・・)

先ほどとは違う理由でトライゴンを握り締める。

 

「ヘカテー・・・ごめん・・」

対峙しているシャナとフリアグネ。そのシャナの後ろで悠二は沈痛な顔でヘカテーに謝った。

『自分と敵との力の差を見極められなければ無駄死にします。今度は気をつけてください』

ヘカテーが悠二を叱る。今の悠二にはヘカテーのその言葉がそのまま心に響き渡り、深く刻まれた。

「・・・ご『でも・・・ありがとうございました』・・・・??」

悠二が二度目の謝罪を言うのに被せてヘカテーが言った。

『私のために怒ってくれたんですよね?』

いつもは淡々としているヘカテーの言葉に少しながら感情が篭る。

「え・・・そ「マリアンヌ!!」ッ!?」

今までシャナと対峙して話をしていたフリアグネが急に調子っ外(ぱず)れな声を上げる。その声と同時に今までシャナ背後に居たと言うことで怠っていた警戒を瞬時にする。

フリアグネの顔は悲しみの色に染まり再び叫んだ。

「ああ、ごめんよ、私のマリアンヌ!こんな怖い子達と戦わせてしまって」

妙に芝居がかっている動作で振られた、やはり純白の手袋の先に、一枚のカードが挟んである。

ぴ、と指の振りと共にカードが浮き、

「なっ!?」

「ん?」

シャナと悠二の周りで焦げたカードが一斉に宙を舞う。

その焦げたカードはフグネリアの指先に浮かぶ一枚のカードに収束し、元の一枚のカードになる。ただし半分以上が焦げており、もうトランプとしては使えないだろう。

それを見たフリアグネは表情を変え驚嘆した。

「へぇ、私自慢の“レギュラーシャープ”をここまで、消し炭にするとは」

ただの燃えカスになったカードを指先で取り、マジシャンよろしく袖に滑り込ませる。

もう片方の手には何時のまにか、ぼろぼろのびりびりになった人形マリアンヌが大切に抱かれていた。

フグネリアは再び表情を悲しみの色に戻し愛する人形の有様を見つめ。

「ああ、全くいつもフレイムヘイズはひどいことをする」

マリアンヌが口を無理やり動かし詫びる。

「申し、訳あり、ません、ご主人、様」

「謝らないでくれ、マリアンヌ。君を行かせた私も悪いんだ。それにフレイムヘイズがまだ同じ所に二人もいるなんて思わなかったんだよ」

フリアグネはひどく優しい笑みを浮かべ、マリアンヌに息をかける。すると、先ほどまで今にもばらばらになりそうなマリアンヌの体が光輝き、ぼろぼろの姿になる前戻った。元々くたびれてびれていたのか、新品同様とまでは行かなかった。

「さぁ、これで元通りだ。慣れない宝具なんてもたせて、ごめんよ」

フリアグネは猫なで声で愛おしそうにマリアンヌを抱き寄せ頬ずりする。

「そんな・・・身に余るお言葉です。ご主人様、でも今は・・」

マリアンヌが僅かに潤んだ目でフグネリアに言う。

それにフリアグネはうんと答えようやくシャナ達のほうへ顔を向ける。

 

その奇行を見ていた悠二はヘカテーに

「ヘカテー・・・さっきの言葉修正するよ」

『?どの言葉ですか?』

色々と気落ちした声で呟く、

「フリアグネは宝具萌え~じゃなく人形・・フィギュア萌え~だ・・・」

『フィギュア萌え~ですか・・・』

実際に持っているのはフィギュアじゃないのだがそこらへんは割合した。

『宝具とどう違うんですか?』

ヘカテーは変更の意図がわからず悠二に純粋に聞く。

「あれ(・・)を人間が普通にやってるかやって無いかの違いだよ」

『・・・・本当なんですか?』

悠二は遠い目をして語っているが、ヘカテーはなにやら認めたくないようだ。

「ヘカテー」

『はい』

「世界はね・・・広いんだよ」

『・・・・そう・・みたいですね』

ヘカテーの姿は見えないが恐らく、悠二同様遠くを見つめているであろう・・・。

 

 

悠二とヘカテーが遠くを見つめている間。シャナとフリアグネの話は続いていた。

「ふふふ、昨日と今日でわかったけど、おちびさんの方はフレイムヘイズのくせにまともに炎が扱えないようだね。もう一人の方はまだ未知数だったけど・・ありがとうアラストール、君のおかげで謎が解けたよ」

シャナはフリアグネの前半の言葉に過敏に反応していた。一方アラストールは自分の言葉のどこに落ち度があったのか、必死に考えている。だがそれをフリアグネが丁寧に説明してくれた。

「彼はこの町に急に現れた、この町の周囲は監視してるつもりだったからそれでも十分驚いたけど、それ以上に彼の戦い方がわからなかったのさ。」

フリアグネは続ける

「燐子を派遣して調べさせても、体外の燐子は炎弾で処理されてしまう。炎弾しか使えないのかと思い少し強めの燐子を送るとあの杖を出し新たな自在法で倒されてしまう。そしてその杖は何なのか確認する前に直ぐしまってしまう」

「そして今回もそうだ。また新たな自在法を出して実力が未知数だったのさ。だけどそれが“フレイムヘイズに成り立て”と契約主が“頂の座”なら全部繋がる」

「つまりそういうことだよ。感謝するよ“天壌の劫火”アラストール」

フリアグネは満足そうな顔を浮かべシャナの首に釣り下がっているペンダントを見る。

『むう・・・だが契約主が誰なのかは炎弾の色を見ればわかったのではないか?』

確かに自分のせいで敵に情報を与えてしまったアラストールは、呻くしかできない。だが一応最後の抵抗という名の責任逃れをした。

「ふふ、確かにね。でも確信がなかったのさアラストール、君もそうじゃないのか?あの頂の座がフレイムヘイズになるはずが無いってね」

『く・・・』

自分もヘカテーがフレイムヘイズになるわけが無いと警戒して、悠二を監視しているので否定の仕様が無い。

「ふふ・・・じゃあもう十分情報は集まったし今日はここら辺でお暇させてもらうよ」

そういってフリアグネは踵を返そうとする。

 

「待ちなさい!」

去ろうとするフリアグネをシャナが止める。シャナ自身、自分を侮辱されたことに腹を立てていた。

「何か用かい?無能なフレイムヘイズ君」

フリアグネはめんどくさそうにだが律儀にシャナの方を向く。

「誰が無能ですって?」

シャナは感情を隠そうともせずぶつける。

「耳が聞こえないわけじゃないだろ?君だよ“炎髪灼眼の打ち手”」

「無能かどうか、見せてあげるわ・・・」

シャナはそういい太刀を両手で右下段に構え跳躍の準備をする。

「ずいぶんと無粋なことをするね。やめておいたほうがいい炎が使えないって事は自在法が使えないことととほぼ同義だ。今ここで空中戦はつらいだろう?ただの剣士さん」

フリアグネは心底呆れた顔でそう言い放つ。

そして悠二に視線を向ける。何故かものすごく可愛そうな物を見る眼で見つめ返されるが気にしないことにした。

「別に急ぐことも無いし、ふさわしい状況をつくってからまた伺うよ」

そういい残し、元々細い輪郭がさらに細くなり、背景と同化して消えていった。

 

「くううううううううううう・・・・・」

シャナは言われたことが本当に悔しいらしく、歯を食いしばり柄を握り締めていた。

その様子に悠二は関わらない方がいいと直感的に思い封絶内を修理する事に専念しようとする。

体は事務的に自分の存在の力を使い、教室と友人を修理していく。

だがその心中では今日あった様々な事が去来する。自分の弱さ、そしてシャナ無しでは王を倒せない事

如何にして自分達の力を駆使してあの王を倒すか。考えども答えは直ぐには出ない。

周りでは自分達の日常風景が戻ってくる。床が直り椅子が直り、自分が壊した人も元通りに・・・

昼休みの後には普段(・・)通りの5限6限が待っている。

 

そして封絶が・・・・解けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ・・・面白いね。私が何時襲ってくるかわからないのに、彼はなんで自分の存在の力を躊躇なく使っているんだと思う?マリアンヌ」

「申し訳ありません。ご主人様、私にはなんとも・・・」

「ふふ・・・ごめんよマリアンヌ私もわからないからね・・・もうちょっと調べてみよう」

 

 




どうでしたか?やばいでしょw
批判、感想、誤字脱字報告、質問などドシドシ送ってください~。
尚ヘカテーの恋愛感情云々はまだまだ募集中ですwそちらもお願いします
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