艦これのSS(仮)   作:ヘッツァー

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長いことお待たせいたしました。
言い訳になってしまいますが、引っ越しなどで忙しく書く暇を確保できなかったのと、前回同様全部書き上げてから投稿しようとしておりました。
ですが、我慢できなかったので少しずつ投稿していきますwww
どうぞお楽しみいただけたら幸いです。


いつか、あの空で(16)

翌日、俺は執務室を訪ねていた。

演習を行うためのの提督の許可を貰う為である。

 

「演習許可?流石だな杉田、えらく熱心じゃないか。つい先日大きな戦闘を終えたばかりだというのに。」

「いや、あの時に本当は演習する予定だったじゃないですか。それが救援要請で無しになっていたので、その埋め合わせのようなものですね。」

「と言っても、つい昨日の事だ。今日くらいはゆっくりしても良いんじゃないか?」

 

まぁ、確かに休息は重要だ。

それは変わりない。

だが、俺は列機達に早急に身につけて欲しいのだ。

少しでも多く、生き残るための術と知恵を。

 

「鉄は熱いうちに打てって言うじゃないですか。」

「・・・なるほど、まぁ良いだろう、許可する。使用する機体は旧式だが零戦の二二型でいいんだな?まぁ、五二型があるから使用していないし、大鳳の部隊は先日の出撃のせいで整備中だからか。ん?二二型は二機でいいのか?」

 

俺の考えを知ってか知らずか、少しの沈黙の後提督殿が許可を下してくれる。

そして、二二型の申請台数が二機である事に気付き、怪訝な顔をする。

俺は、それに対して説明する。

 

「はい。俺が使う機体は六二型の予備機です。爆装ではなく同重量の模擬弾を装備させますが。」

 

ハンデとしてはこれくらいが良いかな。

艦爆も使ってみたいし。

まぁ、あれをただの艦爆と言うには少し語弊があるかもしれないけど。

 

「ほぉ?面白そうだな、朝の職務が片付けば観に行こう。」

「まぁ、どうなるかは分かりませんよ。六二型は繊細な機体ですから、無理に飛んでしまえばすぐにお陀仏です。でも、多分大丈夫でしょう。」

「大した自信だな、ますます楽しみだ。では、頑張ってくれたまえ。」

「はっ、では、これで失礼します、提督殿。」

 

俺は敬礼した後、執務室を後にする。

さぁて、存分にシゴいてやろうかな。

 

「菅野で良い、と何度言えば良いのだろうなぁ。」

 

ぼそりと呟いた彼の一言を、聞く者は誰一人いなかった。

 

しばらくして、また執務室の扉が叩かれる。

 

「提督、失礼します。」

「ああ、大鳳か、どうかしたのか?」

 

入って来たのは、またもや先日の戦闘に出撃していたメンバーの一人である大鳳だった。

 

「いえ、その、杉田さんを探しているのですが、どこにもいなくて。提督さん、どこにいるか知りません?」

「んー、杉田の奴は・・・いや」

 

菅野はニタァと意地の悪い笑みを浮かべると、大鳳へこう告げる。

 

「杉田の居場所を教える代わりに、職務を手伝って貰おう!」

「えっ⁉︎ま、まぁ、そのくらいなら良いけれど。それならさっさと片付けちゃいましょう!」

 

実に大人気ない提案に対し、最初は驚いたものの、大鳳は二つ返事でそれを了承する。

 

「おっ、良いのか?いやー、助かるよ。秘書官の長門は駆逐艦の演習の監督しに行ったっきり戻ってこねぇし、他の面子はこういう雑務はやりたがらないからな。」

「お安い御用です!で、どのくらいまでやれば良いの?」

「取り敢えず朝の分だから、こんくらいかな。ほい半分。」

「あら、これだけ?これなら直ぐに終わるわね!さて・・・え?」

 

大鳳は早速一枚目の資料に目を通す。

そしてその後にすぐ固まってしまった。

 

「どうした?分からないものがあったか?」

「てっ、提督、その、これは?」

「ん?何々、『ケッコンカッコカリ』か、確か艦娘強化の方法の一つだったな。全く、強化にしてももっと他の形があったろうに。」

「・・・・・・。」

「んん⁉︎顔が真っ赤だぞ大鳳⁉︎どうした、具合でも悪いのか?」

 

ぷしゅーと頭から蒸気を放ちつつ、それでも大鳳はその書類から目を離さない。

菅野は怪訝に思っていたが、ふと今朝見た青葉新聞の記事が頭をよぎった。

そして、妄想の世界へ旅立っている大鳳にこう告げる。

 

「大鳳さん、大鳳さん。」

「えっ、あ、はい!な、何かしら⁉︎」

「この『ケッコンカッコカリ』は、なんと!提督以外とも効果を発揮するらしいんだよ。」

「・・・・・・。」

「いやー、大抵の場合艦娘は提督の任に就いてる奴以外とあまり交流がないから提督を選ぶけど、たまに普通の士官とかと付き合ったりしてる奴もいるらしいんだよねって、大鳳さん?」

「・・・・・・。」

 

何度呼びかけても大鳳からの返事は無く、それどころか大鳳は後ろ向きに倒れてしまった。

倒れた大鳳が床に頭をしこたま打ち付ける一歩手前で菅野はなんとか支える事に成功する。

そして、そのまま生存確認へと流れるように移行する。

 

「おーい、もしもーし?あちゃー、こりゃダメだ、完全に意識失ってるわ。」

 

菅野は取り敢えず大鳳をソファーへ運ぶと、ため息をつきつつ呟く。

余計な事をするんじゃなかった、と。

 

そんな菅野が大鳳に渡さなかった方の書類の束。

その一番上の書類のタイトルは、『妖精化検体志願書』。

 

菅野がその書類に目を通しつつ、ぼそりと呟く。

 

「あぁ、早く源田司令帰って来ねえかな・・・。」

 

この菅野もまた、空に魅せられた男の一人であった。


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