西暦2138年、DMMO-RPGという言葉がある。
ゲームの世界に実際に入り込んだごとく遊べるゲームのことで、これが発売して以来爆発的に売れた。
値段は少々高価であったが、夢に見ていたゲーム内に入って遊ぶことができるということで子供から大人まで、それこそ老若男女に限らず購入する者があとを絶たなかった。
そんな中過去数多発売されたゲームの中に一つのタイトルがある。
「YGGDRASIL」~ユグドラシル~
2126年に発売されたゲームで、そんなユグドラシルの特徴は「プレイヤーの自由度が広い」ことであった。
過去のゲームのレベル制とは違い、基本となる各種族と各職業にレベルが割り振られている。
総合レベルの限界である100レベルに到達するまで複数の種族レベルと職業レベルを割り振るというシステムであった。
このシステムの前提上、狙わない限りは他人と寸分違わぬキャラクターはできないようになっていた。
外装についても各人が別売りのクリエイトツールを使用することで詳細な外見を設定することもできた。
このシステムの影響から日本人のクリエイト魂に火をつけた。
元来日本人のオタク気質とマッチし、キャラクターや武器の外観に熱を入れる者が多く、キャラクターのロールプレイングをするものも後を絶たなかった。
強いキャラを作るよりも、個性的なキャラを作る者が多く存在し、そんなところもこのユグドラシルというゲームが長く続いた要素なのかもしれない。
そんなユグドラシルというゲーム内で一人の少女がモンスターの群れに囲まれていた。
少女の外見は、一見して人型のように見えるが白色の長いロングの髪の中からは耳のようなものが生えている。
耳はいわゆる獣耳というような有体で、どうやら狐を模した耳であるようだ。
服はドレスアーマーというべきか、紫色のドレスのところどころには鋼鉄のアーマーがつけられている。
少女の眼球は怪しい輝きを放っており、白目と黒目が逆転している。
少女がモンスターを殴りつけるごとにモンスターは減っていき、ついにモンスターがいなくなったところで少女は地面に座り込んだ。
「やっといなくなったかな。」
少女の鈴のような声が付近にこだまするがその言葉に返事をするものはいない。
ふう、とため息を一つ吐き、モンスターが落とした金貨とクリスタルを拾う少女、その中に一際輝きを放つクリスタルを見つけ、少女の表情が和らぐ。
「やっと神器級のクリスタルが出ました。疲れました。」
少女はそのクリスタルを大切そうにかばんにしまうと少女の体からまばゆい光がほとばしり、数秒後にはその場には誰もいなくなった。
「ただいまです。」
少女の声が響いた室内は豪華絢爛という言葉が相応しい部屋であり、部屋の中央には黒曜石の輝きを放つ円卓が鎮座していた。
円卓を豪華な椅子が41人分席が囲んでいるが、現在は数名のものが座り雑談をしていた。
「お、ミコミコさんこんちゃっす。」
黒色のどろどろとした塊が少女に話かけた。
古き漆黒の粘体~エルダー・ブラック・ウーズ~ スライム種では最強に近い強力な種族である。
武器防具の劣化能力に優れており、嫌われ者の象徴だ。
「ヘロヘロさんこんにちは。今日はあまりメンバーがインしてませんね。」
ミコミコと呼ばれた少女は、その表情を和らげ、答えた。
「そうなんですよ、クリスマスですからね。皆さんリアルで忙しいのかもしれません。」
金と紫で彩られた豪華なローブに身を包んだガウンを羽織っている骸骨が答えた。
むき出しの頭部には皮も肉もついていない骸骨、ぽっかり開いた眼には赤黒い怪しい光がともっている。
死の支配者~オーバーロード~
最高位の凶悪な魔法を使用するということでこちらも嫌われ者だ。
「モモンガさんこんにちは。そうですね、皆さんリアルが忙しいのかもしれません。」
ミコミコと呼ばれた少女が答えると、ヘロヘロと呼ばれたスライムと、モモンガと呼ばれたアンデットは肩をすくめて見せた。
この3人は別にモンスターというわけではない。
ユグドラシルのプレイヤーが選べる種族には人間種のほかに亜人種、そして能力値が高いが他の種族よりも制限が多い異形種とう種族がある。
当然この3名はプレイヤーが選択することができる異形種、その上位種と呼ばれる存在である。
モモンガが続けてミコミコに向かって話しかける。
「ミコミコさんは狩りですか?最近はインしてもずっと高位ダンジョンにもぐってたみたいですけど・・・。」
「そうなんですよ。実はどうしても新しい防具が欲しくて神器級のクリスタル狙いで高位ダンジョンで廃狩りしてまして。」
ミコミコはうれしそうな顔をしながら話している。
「お、その顔はもしかしていいアイテムが手に入りましたか?」
「そうなんですよ、私のキャラクターの特性上武器は装備できない代わりに9つ防具が装備できるんですが、いままで8つ神器級の防具を装備していたのに1つだけ手に入っていなくて・・・。今回やっと手に入れたのでクリエイトして使用しようかと。」
「それはおめでとうございます。これでギルドアインズ・ウー ル・ゴウンの戦力がまた増えましたね。」
モモンガとヘロヘロが自分のことのように喜んでいる姿を見たミコミコは心が温かくなるようであった。
「それでは今日は狩疲れたのでそろそろログアウトしますね。」
「おつかれっす。」
「また今度。」
モモンガとヘロヘロに見送られ、ログアウトするミコミコであった。
ミコミコは、暖かいギルドメンバーがいるこのユグドラシルというゲームを愛していた。
しかし、それも一昔前の話である。
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