死の支配者と白面金毛   作:にゃんこ大先生

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幻想はまだ終わらない

西暦2138年、ギルドアインズ・ウール・ゴウンのギルドホーム「ナザリック地下大墳墓」、その第9階層ロイヤルスイート(円卓の間)41人分の豪華な椅子はほとんどが空席だ。

かつては全員が鎮座していた席にいまある影は2つだけ。

 

「本当に久しぶりです、ヘロヘロさん。ユグドラシルのサービス終了時とはいえ、正直本当に来てもらえるなんて思ってもいませんでしたよ。」

   

「いやー、本当におひさーです、モモンガさん。」

   

「リアルで転職されて以来ですから、どれぐらいになりますかね?・・・2年ぐらい前ですかね。」

   

ギルドメンバーであるモモンガとヘロヘロは昔話に花を咲かせていた。

ヘロヘロの愚痴をモモンガが一方的に聞くという構図ではあったが、久しぶりに再開した友人との会話に話が弾むようであった。

そのうちヘロヘロから

 

「そろそろ睡魔がやばいのでアウトします。最後にあえてうれしかったです。」

 

そんな言葉を皮切りに、ヘロヘロがログアウトし、再び静寂が円卓の間を包んだ。

   

「今日がサービス終了の日ですし、お疲れなのはわかりますが、最後まで残っていかれませんか。」

   

そんな言葉はのど元で止まり、口にすることが出来なかった。

モモンガは心の底でため息を漏らす。

自分が出したメールに答えて駆けつけてくれたメンバーに感謝をしつつ、モモンガはサービス終了を玉座で迎えるべく立ち上がり、最後だからとギルド武器「スタッフオブアインズウールゴウン」を装備し、玉座へ向かうのであった。

 

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「どうしよう。間に合うかな。」

 

寒空の中、仕事を終えた一人の女性が夜道を走って帰宅していた。

 

「モモンガさんからメールが来たのに・・・。早くしないとサービス終了に間に合わなくなる。」

 

目の前の赤信号にイライラとしながら女、巫女塚美子(みこづかよしこ)は一人帰宅を急いでいた。

午後11時55分、サービス終了まで後5分も無いが、女は靴を脱ぎ捨て即座に自宅の寝室にあるパソコンの電源を入れた。

「ユグドラシル」アイコンをクリックし、ゲームを起動する。

ゲームにインしなくなったあともアップデートがあるときはパソコンを起動し、パッチをインストールしていたため起動にそれほど時間をかけることなくユグドラシルにログインすると、自分の操作キャラである「ミコミコ」をクリックし、ユグドラシルにダイブした。

   

   ~ミコミコがログインしました~

 

ギルドチャットに自身がログインしたことが表示されると、すぐさまミコミコにモモンガから伝言(メッセージ)が飛んできた。

 

「ミコミコさん来てくれたんですか。今は玉座の間にいるのですがリングを使ってすぐにこれますか。」

 

モモンガの少し急いだような声が、直接頭の中に聞こえてくる。

久しぶりに聞いたギルドマスターの声に、ミコミコはうれしい気持ちを抑えてすぐに返事をした。

   

「すぐに行きます。仕事で遅れてしまってすいません。モモンガさんからのメールには朝気がついたのですが、帰宅が遅くなってしまって・・・。」

 

「いえいえ、最後に来ていただけただけでもうれしいです。最後の時は玉座で迎えようと思っていまして、ミコミコさんもいかがですか?」

   

モモンガからの返答を待たずしてミコミコはリングオブアインズウールゴウンを使用し、玉座の間までテレポートした。

ギルドアインズウールゴウンの玉座の間は地下第10階層に設置されており、ギルドの最深部である。

かつて1500人という規模でプレイヤーがこのナザリック地下大墳墓に攻め入ったということがあったが、41人しかいないギルドメンバーで守りきり、この第10階層玉座の間までとうとう攻められなかったという経緯がある。

そんな玉座の間にはプレイヤー41人各人の旗が掲げられており、当然ギルドメンバーであるミコミコの旗も内部に飾られている。

視界の隅に表示されている時計には

     

     23:57

 

サーバー停止は0:00分、もうほとんど時間はない。

   

「モモンガさん、最後にこのユグドラシルでお会いすることが出来てうれしいです。」

   

「いえいえ、最後に来ていただけただけでも嬉しいです。」

   

2人の会話は弾む。

     

     23:59

   

「もう時間がありませんね。最後に言わせてください。私はモモンガさんがギルドマスターでよかったです。モモンガさんがマスターでなければ、

そして、アインズウールゴウンというギルドに所属していなければこのゲームをここまで続けていなかったと思います。」

     

     23:59:50

   

「本当にありがとうございました。」

    

2人は向き合い視界の隅に表示されている時計に目を向けた。

     

     23:59:55

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           57

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           59

      0:00:00

    

時計がサービス終了時刻を示した時、視界がブラックアウトし・・・・・

    

「「・・・・・ん?」」

    

2人声が重なり目を開ける。

見慣れた自分部屋に戻っていない目の前にいる友人も先ほどのままである。

時間は正確だ、今頃サーバーダウンで強制ログアウトがされるはずである。

      0:01:00

    

サービス終了時刻である0時は確実に過ぎている。

 

目の前の友人も困惑しているようだ。

サービス終了時間が過ぎても強制ログアウトされず自身の困惑しながら目の前の友人を見ていたミコミコはコンソールを開こうと手をかざした。

    

「コンソールが浮かび上がらない・・・?」

    

GMコールを行うべくコンソールを開こうとしたミコミコであったが、何度虚空を撫でてみてもコンソールが浮かび上がらないことに疑問を抱いていた。

    

「どうかなさいましたか?モモンガ様ミコミコ様」

 

初めて聞く女性の声、ミコミコがコンソールを出そうとしているときにふと女性の声が聞こえたのである。

2人は声の発生源を探す、そして誰が言葉を発したか理解したときさらに困惑することになるのであった。

それは顔をこちらに上げたNPC「アルべド」のものであった。

 

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