無窮なるガーズ   作:おさぴら

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10.再会の刻

「そろそろ他の話に移ろうか、君は何で逮捕されたか知っている?」

 

 

ガチコウがペンを2,3度鳴らし、椅子に座りなおした。

ガーズは服を奪った奴が女性だったかどうか記憶をめぐらす。

しかしどうにも思い出せない。

思い出すことを諦め、質問に答えることにした。

 

 

 

「知らねェ」

 

「それは元々知らないから?それとも忘れたから?」

 

「それも分からねェ」

 

「なるほど…」

 

 

 

ガチコウは再び紙に書き込みを始めた。

何度か、記入する言葉を選ぶようにペン尻をくわえた。

そのたびに何か閃いたように、嬉しそうに書き込みを再開する。

 

 

 

「それじゃ、もっと踏み込んだ質問いっちゃおっか」

 

 

 

ガチコウは書いていた紙とペンをテーブルに置き、端に寄せた。

そしてガーズの目をじっと見つめ少しだけテーブルに身を乗り出した。

雰囲気が変わった。

ガーズはその鳥のような鋭いまなざしから目線をそらさず、ただ黙って次の質問が来るのを待った。

 

 

 

「剣はどこだ」

 

 

 

恐ろしい声だった。

とても先ほどまでと同じ人物が発した声とは思えない、ドギツイものだった。

その声と表情から作り出される剣幕は、曖昧な返答をさせてくれなかった。

しかし、ガーズは臆することは無かった。

 

 

 

「知らねェ」

 

「嘘をついてもためにならないぞ」

 

「知らないものは知らないし、分からないものは分からない」

 

「そうか、協力してくれると思ったのに…残念だよ」

 

 

 

嫌な雰囲気が部屋一帯を包み込んだ。

ガーズは涼しい顔をしていた。

これから起こることが決して良いことではないことは確かだった。

ガチコウが動きを見せようとした時、後ろの職員が前へ歩み出た。

 

 

 

「待ってください、このガーズは本当に剣がどこにあるか知りません」

 

 

 

それまで後で静かだった職員が声を発したことでガーズは少し驚いた。

それ以上にガチコウは驚いていた。

ガーズはやはりこの声に聞き覚えがあった、しかしどうしても思い出せない。

 

 

 

「急にどうしたんだ?まさかガーズを庇おうとしているのか?」

 

 

 

ガチコウは放っていた畏怖のオーラを少し弱め、しかし決してそれを消すことなく職員に顔だけを向けた。

首だけが回り、恐ろしさにいっそう輪がかかる。

 

 

 

「いえ、正しいことは認められなければならない、と思って発言した。それまでです」

 

 

 

職員はそういって胸のあたりに手をかざした。

その気丈はガーズに似て、少しも臆する様子はなかった。

 

 

 

「そういえば、"清く正しく誠実に"が白組のモットーだったね」

 

「はい、ですので真実をそのまま伝えた次第です」

 

「それで?ガーズを弁護したとしてもこいつの処刑は変わらないよ、どういうつもりなの」

 

「先ほどお伝えした通りです、それ以上もそれ以下もありません」

 

 

 

ガチコウは今日が覚めたように、はじめと同じように椅子に腰かけた。

少し呆れたような顔をして目をしばらく閉じていた。

後ろの職員はいつの間にか元の位置に戻っていた。

 

 

 

「しかし困ったね、剣の場所を知らないとなると…」

 

「何で剣の場所をそんなに知りたがる」

 

「僕が知りたいわけじゃないよ、そうしろって言われているから」

 

 

 

再び静寂が部屋を覆った。

 

 

 

「うーん、これ以上聞くことは無いな…残念だけどそろそろ時間だ」

 

「俺様の処刑の時間か」

 

「そうなんだ」

 

「それで?どんな処刑をするんだ?」

 

 

 

ガチコウはその言葉を待ってましたと言わんばかりに、声を上げた。

 

 

 

「鳥葬だよ!!」

 

 

 

ガチコウはそういうと着ていたコートを脱ぎ捨てた。

一瞬にしてガチコウの鋭い鉤爪がガーズの喉を捉える。

 

 

 

「よけなさい!ガーズ!」

 

 

 

その一言によりガーズは寸出のところで攻撃をかわす。

いや、かわさせられた。

ガーズは何が起こったか理解できなかった。

 

 

 

「まさか処刑の邪魔までするとはね…さっきの弁護と言い君は何故そこまでしてガーズを庇うの?」

 

「"恩を忘れるべからず"も白組のモットーですから」

 

「もしかしてその恩を返すためにガーズを助けるってこと?」

 

「ガーズを殺させはしません。たとえそれが多くの敵を作ることになっても」

 

 

 

職員は顔に着けていたマスクを外した。

ガーズはその顔に見覚えがあった。

職員の声と顔がガーズの頭を駆け巡る。

もう少しでそれが誰なのか思い出せる。

 

 

 

「久しぶりね、ガーズ。それともこの姿で会うのは初めてだから、初めましてかしら?」

 

 

 

フードを脱ぎ捨て、淡いブルーの長い髪がなびく。

首のオレンジのマフラーが少し遅れて同じように動く。

 

 

 

「私は白組のウチキ、あなたをここから助けてあげましょう」

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